2015年度の都道府県別年齢調整死亡率(女性)は、長野県が2.28で最も低くなっています。愛媛県が2.66で最も高くなっています。地域における女性の健康課題の違いが明確に表れています。女性の年齢調整死亡率は地域の健康水準と医療環境を反映する重要な指標です。
概要
年齢調整死亡率は、各都道府県の年齢構成の違いを統計的に取り除き、「もし全国が同じ年齢構成だったら、その地域の死亡率はどうなるか」を示した指標です。高齢者が多い地域は死亡者数も多くなるため、単純な死亡率(粗死亡率)では、地域の真の健康水準を比較できません。この指標を用いることで、高齢化の影響を排した客観的な健康レベルや医療環境の評価が可能となります。特に女性の年齢調整死亡率は、平均寿命が長い女性の「健康寿命」を考える上で、また、乳がんや子宮がんといった女性特有の疾患への対策を評価する上で極めて重要です。2015年度のデータでは、地域間で明確な健康格差が確認できます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
長野県(1位)
2.28(偏差値72.7)。野菜摂取量の多さや減塩運動の成功など、地域ぐるみの健康づくりが実を結んでいます。保健補導員制度など、住民参加型の健康増進活動が長年にわたり続けられていることが大きな要因です。
島根県(2位)
2.37(偏差値64.9)。日本海に面した豊かな自然環境と、新鮮な魚介類を中心とした健康的な食生活が背景にあると考えられます。密接な地域コミュニティが、住民の健康意識を高めている可能性もあります。
岡山県(3位)
2.38(偏差値64.1)。温暖な気候と、果物などの農産物が豊富なことが食生活に良い影響を与えていると推測されます。また、岡山大学医学部を中心とした医療体制の充実も寄与しています。
熊本県(4位タイ)
2.41(偏差値61.5)。阿蘇の広大な自然や温泉など、健康増進につながる資源が豊富です。また、地産地消が根付いており、新鮮で栄養価の高い食材を摂取しやすい環境にあります。
滋賀県(4位タイ)
2.41(偏差値61.5)。琵琶湖がもたらす豊かな自然の恵みや、京都・大阪へのアクセスの良さから先進医療を受けやすい環境にあることが、健康水準の高さにつながっていると考えられます。
下位5県の詳細分析
愛媛県(47位)
2.66(偏差値41.5)。地域内の医療アクセスの格差や、特定の疾患による死亡率の高さが要因として考えられます。
大阪府(46位)
2.65(偏差値42.3)。大都市特有のストレスの多い生活や、食生活の乱れが影響している可能性があります。また、高い人口密度が感染症のリスクを高める一因となることも考えられます。
千葉県(45位)
2.64(偏差値43.1)。首都圏のベッドタウンとして、長い通勤時間によるストレスや運動不足、外食に頼りがちな食生活などが健康課題となっている可能性があります。
埼玉県(44位)
2.63(偏差値43.9)。千葉県と同様に、都市型のライフスタイルが健康リスクを高めていると推測されます。
群馬県(43位)
2.62(偏差値44.7)。車社会による運動不足や、内陸県特有の食生活などが影響している可能性があります。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都や神奈川県は中位ですが、千葉県、埼玉県、群馬県が下位に集まっており、首都圏内で健康格差が見られます。都市型の生活習慣が共通の課題と考えられます。
関西地方
滋賀県が上位に入っており、琵琶湖周辺の豊かな自然環境が健康水準に良い影響を与えています。大阪府は下位に位置し、大都市特有のストレスが影響しています。
中部地方
長野県が全国トップであり、地域ぐるみの健康づくりが実を結んでいます。保健補導員制度など、住民参加型の健康増進活動が長年にわたり続けられています。
九州・沖縄地方
熊本県が上位に入っており、阿蘇の広大な自然や温泉など、健康増進につながる資源が豊富です。地産地消が根付いており、新鮮で栄養価の高い食材を摂取しやすい環境にあります。
中国・四国地方
島根県、岡山県が上位に入っており、豊かな自然環境と健康的な食生活が背景にあります。愛媛県は最下位に位置し、地域内の医療アクセスの格差が課題です。
東北・北海道地方
男性の死亡率では下位に集中していましたが、女性では青森県を除き、比較的良好な結果を示しています。特に宮城県や山形県は上位に位置しており、男女で健康課題の要因が異なることを示唆しています。
社会的・経済的影響
女性の年齢調整死亡率の地域差は、社会全体に影響を及ぼします。死亡率の差は、女性が健康に自立して生活できる期間(健康寿命)の差に直結します。
- 健康寿命の格差が明確に表れている
- 介護負担の増大が進んでいる
- 医療費の地域差が顕著である
- 地域経済の活力に直接影響している
対策と今後の展望
女性の健康水準を全国的に向上させるためには、生活習慣の改善支援、女性特有の疾患対策、地域コミュニティの活用が重要です。長野県の例に倣い、減塩や野菜摂取を推進する地域ぐるみの活動を広げることが有効です。デジタル技術を活用した健康管理の普及も重要な課題です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値‐ |
---|---|
平均値 | 784.8 |
中央値 | 784.5 |
最大値 | 877.2(青森県) |
最小値 | 714(沖縄県) |
標準偏差 | 33.6 |
データ数 | 47件 |
全国平均は2.52、中央値は2.51、標準偏差は0.08です。長野県(2.28)は平均の0.90倍で、明確な外れ値として分布に影響を与えています。第1四分位(2.46)と第3四分位(2.56)の差は0.10で、比較的小さな格差を示しています。偏差値60超の県が5県(長野・島根・岡山・熊本・滋賀)存在する一方、偏差値40未満の県が5県あり、女性の健康水準の地域格差が顕著です。
まとめ
- 西日本で女性の健康水準が高い傾向がある
- 首都圏で都市型生活習慣が課題である
- 生活習慣の改善支援が重要である
- 女性特有の疾患対策が必要である
- 地域コミュニティの活用が有効である
今後は地域特性を活かした女性健康増進策の推進と、地域間格差の是正、健康寿命の延伸が重要です。特にデジタル技術を活用した健康管理の普及と、地域間の医療格差解消が求められます。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‐) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 青森県 | 877.2 | 77.5 | -3.7% |
2 | 福島県 | 851.4 | 69.8 | -1.3% |
3 | 茨城県 | 841.6 | 66.9 | -4.4% |
4 | 和歌山県 | 838.8 | 66.1 | -4.2% |
5 | 栃木県 | 833.1 | 64.4 | -7.7% |
6 | 三重県 | 818.2 | 59.9 | -5.4% |
7 | 埼玉県 | 816.8 | 59.5 | -6.8% |
8 | 大阪府 | 815.0 | 59.0 | -6.5% |
9 | 愛知県 | 814.8 | 58.9 | -5.3% |
10 | 岩手県 | 814.0 | 58.7 | -5.5% |
11 | 秋田県 | 813.1 | 58.4 | -6.0% |
12 | 千葉県 | 802.2 | 55.2 | -5.9% |
13 | 群馬県 | 802.0 | 55.1 | -8.5% |
14 | 山口県 | 800.9 | 54.8 | -5.1% |
15 | 岐阜県 | 800.5 | 54.7 | -5.2% |
16 | 徳島県 | 799.1 | 54.3 | -4.1% |
17 | 兵庫県 | 798.3 | 54.0 | -6.8% |
18 | 鹿児島県 | 793.7 | 52.6 | -3.6% |
19 | 愛媛県 | 791.1 | 51.9 | -2.7% |
20 | 静岡県 | 789.8 | 51.5 | -7.1% |
21 | 佐賀県 | 788.0 | 50.9 | -2.0% |
22 | 長崎県 | 785.7 | 50.3 | -4.5% |
23 | 宮崎県 | 784.6 | 49.9 | -2.2% |
24 | 北海道 | 784.5 | 49.9 | -4.0% |
25 | 山形県 | 783.1 | 49.5 | -5.6% |
26 | 香川県 | 779.8 | 48.5 | -5.6% |
27 | 石川県 | 778.0 | 48.0 | -1.5% |
28 | 宮城県 | 776.4 | 47.5 | -8.2% |
29 | 福岡県 | 776.4 | 47.5 | -5.4% |
30 | 奈良県 | 770.7 | 45.8 | -6.4% |
31 | 山梨県 | 770.0 | 45.6 | -5.3% |
32 | 高知県 | 764.8 | 44.0 | -5.8% |
33 | 東京都 | 763.0 | 43.5 | -8.6% |
34 | 滋賀県 | 762.8 | 43.4 | -6.2% |
35 | 広島県 | 762.6 | 43.4 | -2.0% |
36 | 神奈川県 | 762.4 | 43.3 | -5.8% |
37 | 新潟県 | 759.6 | 42.5 | -3.9% |
38 | 福井県 | 758.9 | 42.3 | -3.4% |
39 | 京都府 | 758.6 | 42.2 | -7.1% |
40 | 富山県 | 752.7 | 40.4 | -4.6% |
41 | 大分県 | 751.9 | 40.2 | -4.6% |
42 | 岡山県 | 751.8 | 40.2 | -5.5% |
43 | 鳥取県 | 751.4 | 40.0 | -7.0% |
44 | 島根県 | 734.7 | 35.1 | -4.3% |
45 | 熊本県 | 729.7 | 33.6 | -4.4% |
46 | 長野県 | 718.8 | 30.3 | -8.0% |
47 | 沖縄県 | 714.0 | 28.9 | -3.5% |