都道府県別農家数ランキング(2019年度)
概要
2019年度の都道府県別農家数を比較すると、長野県が全国1位で約9.0万戸、茨城県が2位で約7.2万戸、兵庫県が3位で約6.7万戸となっています。農家数は地域によって大きな差があり、都市部では少なく、農業が盛んな地方では多い傾向にあります。
全国マップで見ると、東北地方や北陸地方、九州地方などの農業が盛んな地域で農家数が多いことがわかります。特に長野県、茨城県、福島県などの多様な農業が行われている地域で農家数が多くなっています。一方、東京都や大阪府などの都市部では農家数が少なくなっています。
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上位5県と下位5県の比較
上位5県の特徴
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長野県(89,786戸、偏差値81.0):
長野県は日本有数の農業県であり、特に高原野菜や果樹栽培が盛んです。標高差を活かした多様な農産物の生産が行われており、りんごやぶどうなどの果樹栽培は全国的にも有名です。小規模な家族経営の農家が多く、地域の伝統や文化と密接に結びついています。農家数では全国トップを誇り、その数は2位との差が大きく開いています。こうした背景には、長野県の豊かな自然環境と、農業を支える地域コミュニティの存在が大きく影響しています。 -
茨城県(71,761戸、偏差値70.4):
茨城県は首都圏に近い立地を活かし、野菜や果物の生産が非常に盛んです。メロンやレンコンなどの特産品も多く、農業産出額も全国上位に位置しています。多様な農業経営体が存在し、都市近郊型農業と伝統的な農業が共存しているのが特徴です。首都圏の食料供給基地としての役割も大きく、農業の多様性と規模の大きさが農家数の多さにつながっています。 -
兵庫県(67,124戸、偏差値67.7):
兵庫県は多様な地形と気候を背景に、都市近郊型農業から中山間地域の伝統的農業まで幅広い形態が共存しています。特に酒米「山田錦」の産地としても知られ、米作りや野菜、果樹の生産も盛んです。都市部と農村部がバランスよく存在し、農業が地域経済や食文化に深く根付いていることが、農家数の多さに表れています。 -
福島県(62,673戸、偏差値65.0):
福島県は広大な県土を活かした多様な農業が行われており、果樹や米の生産が盛んです。東日本大震災の影響からの復興過程にありますが、伝統的な農業地域としての基盤がしっかりと残っています。地域ごとに特色ある農業が展開されており、農家数の多さは地域の結束力や農業への誇りの表れともいえるでしょう。 -
新潟県(62,556戸、偏差値65.0):
新潟県は日本有数の米どころであり、稲作農家が多く、農業が県の主要産業となっています。平野部を中心に水田が広がり、コシヒカリなどのブランド米の生産地としても全国的に有名です。米作りを中心とした農業の伝統が今も色濃く残り、農家数の多さは新潟県の農業文化の豊かさを象徴しています。
下位5県の特徴
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東京都(9,567戸、偏差値33.7):
東京都は都市化が進み、農地が減少しているため農家数も全国で最も少なくなっています。高層ビルが立ち並ぶ都市のイメージが強い一方で、都市型農業として少ない農地で高付加価値の農産物生産が行われています。農家数は少ないものの、地元産の新鮮な野菜や果物を求める都市住民のニーズに応える形で、都市農業の新たな可能性も模索されています。 -
沖縄県(14,747戸、偏差値36.8):
沖縄県は亜熱帯気候を活かした特色ある農業が行われていますが、農家数としては少ない状況です。さとうきびやパイナップルなど特産品の生産が中心で、小規模な農家が多いのが特徴です。離島が多く、流通や経営の課題も抱えていますが、地域の気候や風土を活かした農業が根付いています。 -
石川県(15,874戸、偏差値37.4):
石川県では能登半島の中山間地域で伝統的な農業が行われていますが、都市化や高齢化の影響で農家数は減少傾向にあります。加賀野菜など特産品の生産に特化した農業が行われている一方で、農家の高齢化や後継者不足が課題となっています。地域の伝統を守りつつ、持続可能な農業のあり方が模索されています。 -
福井県(16,058戸、偏差値37.6):
福井県は山間部が多く、平野部の限られた農地での稲作が中心となっています。伝統的な農産物である「越前おろしそば」の原料となるそば栽培なども行われていますが、農家数は少ない状況です。農業の効率化やブランド化を進める動きも見られますが、人口減少や高齢化の影響が大きくなっています。 -
富山県(17,314戸、偏差値38.3):
富山県は水田稲作が中心で、大規模化が進んでいるため、少ない農家数で効率的な農業が行われています。「富山干柿」など特産品の生産も行われていますが、全体としての農家数は少ない状況です。農業の効率化や法人化が進む一方で、地域の伝統や景観を守る取り組みも続けられています。
地域別の特徴分析
東北地方
東北地方は全体的に農家数が多く、特に福島県(62,673戸、偏差値65.0)や岩手県(52,688戸、偏差値59.1)が上位に入っています。稲作を中心に、果樹栽培なども盛んで、伝統的な農業地域として重要な役割を果たしています。宮城県(41,509戸、偏差値52.6)、山形県(39,628戸、偏差値51.4)、秋田県(37,116戸、偏差値50.0)、青森県(36,465戸、偏差値49.6)も全国平均前後の農家数を維持しています。
関東地方
茨城県(71,761戸、偏差値70.4)が全国2位と農家数が多く、首都圏の食料供給基地としての役割を担っています。千葉県(50,826戸、偏差値58.0)も上位に入り、栃木県(46,202戸、偏差値55.3)、埼玉県(46,463戸、偏差値55.5)も比較的農家数が多い状況です。一方で、東京都(9,567戸、偏差値33.7)や神奈川県(21,290戸、偏差値40.6)などの都市部では農家数が少なくなっています。
中部・北陸地方
長野県(89,786戸、偏差値81.0)が全国1位、新潟県(62,556戸、偏差値65.0)も上位に入るなど、農家数の多い県が集中しています。愛知県(61,055戸、偏差値64.1)も農家数が多く、岐阜県(48,936戸、偏差値56.9)や静岡県(50,736戸、偏差値58.0)も上位に入っています。一方、富山県(17,314戸、偏差値38.3)、石川県(15,874戸、偏差値37.4)、福井県(16,058戸、偏差値37.6)は北陸地方では農家数が少なくなっています。中部地方では多様な農業が行われており、果樹栽培や高原野菜の生産が特徴的です。
近畿・中国・四国地方
兵庫県(67,124戸、偏差値67.7)が全国3位と特に農家数が多く、岡山県(50,735戸、偏差値58.0)や広島県(45,335戸、偏差値54.8)なども比較的農家数が多くなっています。一方、大阪府(20,813戸、偏差値40.4)では都市化の影響で農家数が少なくなっています。中山間地域を多く抱える県では小規模な農家が点在し、地域の農業を支えています。
九州・沖縄地方
鹿児島県(48,360戸、偏差値56.6)や熊本県(47,879戸、偏差値56.3)などで農家数が多く、多様な農業が行われています。一方で、沖縄県(14,747戸、偏差値36.8)や佐賀県(18,645戸、偏差値39.1)は農家数が少なく、特色ある亜熱帯農業や効率的な農業経営が行われています。
農家数の格差と課題
農家数の地域間格差は、都市化の進展や農業の担い手不足、高齢化などの要因によって生じています。特に都市部では農地の減少が著しく、農家数も減少傾向にあります。一方、農業が主要産業となっている地域でも、高齢化や後継者不足による農家数の減少が課題となっています。
全国的に見ると、農家数は減少傾向にあり、特に小規模農家の減少が顕著です。長野県は全国1位の農家数を誇りますが、その多くは小規模な家族経営であり、今後の継続性が課題となっています。一方で、法人化や大規模化が進み、1戸あたりの経営規模は拡大傾向にあります。このような構造変化の中で、地域の特性に応じた農業のあり方を模索することが重要です。
統計データの基本情報
この統計データは2019年度の都道府県別農家数を示しています。農家数とは、経営耕地面積が10アール以上の農業を営む世帯または、農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯の数を指します。
データの分析から、以下のような特徴が見られます:
- 地域による偏り: 長野県や茨城県など多様な農業が行われている地域で農家数が多く、都市部では少ない傾向があります。
- 規模の格差: 最多の長野県(約9.0万戸)と最少の東京都(約0.96万戸)では約9.4倍の差があります。
- 偏差値分布: 偏差値60以上の都道府県は7県のみで、大多数の都道府県は偏差値40〜60の範囲に分布しています。
まとめ
農家数は地域の農業基盤を示す重要な指標の一つです。長野県や茨城県、兵庫県などの農業県では多くの農家が存在し、地域経済や食料生産を支えています。一方、都市部や北陸地方の一部では農家数が少なく、限られた農地で効率的・高付加価値な農業が行われています。
全国的な農家数の減少傾向は、農業構造の変化を示しており、単に農家数の多寡だけでなく、農業経営の質や持続可能性も重要な視点です。今後は、担い手の確保・育成や農地の有効活用、スマート農業の導入などを通じて、各地域の特性を活かした農業の発展が求められています。
地域の農業を支える農家の存在は、食料生産だけでなく、国土保全や文化継承、景観維持など多面的な機能を持っています。農家数の維持・確保は、持続可能な地域社会の構築にも寄与する重要な課題といえるでしょう。