都道府県別農地転用面積ランキング(2021年度)
概要
農地転用面積とは、農地法に基づき農業以外の目的に転用された農地の面積を指します。住宅建設、商業施設、工業用地、公共事業などのために農地が他の用途に変更された実績を示す重要な統計指標です。
2021年度のデータを見ると、全国の農地転用面積には大きな地域差が存在し、最大の北海道(851.0ha)と最小の福井県(87.0ha)では約10倍の開きがあります。この指標は、各地域の土地利用の動向、都市化の進展度、経済活動の活発さを反映するとともに、農業振興と地域開発のバランスを示す重要な指標となっています。
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上位5県の詳細分析
農地転用面積の上位5県は、いずれも広大な農地面積を有し、活発な経済活動が展開されている地域です。
北海道が851.0ha(偏差値76.4)で1位となっています。北海道は全国最大の農業地域でありながら、新千歳空港周辺の物流施設建設、札幌圏の住宅開発、大規模太陽光発電施設の建設などが活発に行われており、農地転用面積も最大となっています。広大な土地面積を背景とした大規模な開発が特徴的です。
茨城県が798.0ha(偏差値73.7)で2位に位置しています。首都圏に隣接する立地条件を活かし、つくばエクスプレス沿線の住宅開発、大型商業施設、物流センターの建設が進んでいます。また、科学技術の拠点であるつくば市周辺での研究施設建設も農地転用の要因となっています。
福島県が744.0ha(偏差値71.0)で3位となっています。東日本大震災からの復興事業に伴う住宅再建、インフラ整備、再生可能エネルギー施設の建設が農地転用面積を押し上げています。特に太陽光発電や風力発電施設の建設が顕著です。
埼玉県が712.0ha(偏差値69.3)で4位に位置しています。首都圏の人口増加に対応した住宅開発、商業施設建設が活発であり、特に川越市、さいたま市周辺での開発が進んでいます。都市化の進展が農地転用面積の増加に直結しています。
愛知県が686.0ha(偏差値68.0)で5位となっています。自動車産業を中心とした製造業の設備投資、中部国際空港周辺の物流施設建設、名古屋圏の住宅開発などが農地転用の主要因となっています。
下位5県の詳細分析
農地転用面積の下位5県は、いずれも県土面積が小さく、既に都市化が進展している地域や農地面積そのものが限られている地域です。
福井県が87.0ha(偏差値37.6)で最下位となっています。県土面積が小さく、既存の開発用地が限られていることに加え、人口減少により新規開発需要が低迷していることが要因です。また、農地面積自体が他県と比較して小さいことも影響しています。
高知県が88.0ha(偏差値37.6)で46位に位置しています。四国山地が県土の大部分を占める地形的制約により、平地の農地面積が限られており、転用可能な農地も少ないことが背景にあります。人口減少と経済活動の停滞も転用需要の低下に影響しています。
沖縄県が134.0ha(偏差値40.0)で45位となっています。県土面積が全国最小であり、既に土地利用が高密度化していることから、農地転用の余地が限られています。また、島嶼地域特有の土地利用制約も影響しています。
富山県が138.0ha(偏差値40.2)で44位に位置しています。人口減少と高齢化の進展により新規開発需要が低下していることに加え、既存市街地での再開発が中心となっており、農地転用の必要性が相対的に低くなっています。
和歌山県が141.0ha(偏差値40.3)で42位となっています。紀伊半島の山間部が多くを占める地形的制約により、平地の農地面積が限られており、人口減少と産業の停滞も転用需要の低下に影響しています。
地域別の特徴分析
北海道・東北地方では、北海道、福島県が上位に位置する一方、他の東北各県は中位から下位に分布しています。北海道の突出した数値は広大な土地面積と活発な経済活動を反映していますが、東北地方では震災復興事業の進展状況により県間格差が生じています。
関東地方では、茨城県、埼玉県が上位に位置し、首都圏の外延的拡大を反映しています。千葉県、栃木県、群馬県も比較的上位に位置しており、首都圏への人口・産業集中が農地転用面積の増加をもたらしています。神奈川県は既に都市化が進んでいるため中位にとどまっています。
中部地方では、愛知県が5位と高位置にある一方、福井県が最下位、富山県が44位と地域内格差が顕著です。愛知県の製造業集積と北陸地方の人口減少という対照的な状況が反映されています。
近畿地方では、全体的に中位から下位に位置しており、既に都市化が進展していることから新規の農地転用需要が限定的となっています。和歌山県は地形的制約と人口減少により下位に位置しています。
中国・四国地方では、高知県が46位と下位に位置するなど、全体的に農地転用面積が少ない傾向にあります。人口減少と産業の停滞が共通の背景となっています。
九州・沖縄地方では、沖縄県が45位と下位に位置していますが、これは県土面積の制約が主要因です。他の九州各県は中位に分布しており、地域的な特色が見られます。
格差や課題の考察
最上位の北海道(851.0ha)と最下位の福井県(87.0ha)の間には約9.8倍の格差があり、都道府県間の農地転用面積には極めて大きな差が存在します。この格差は、県土面積の違い、経済活動の活発さ、人口動態、地形的制約など複合的な要因によって生じています。
上位県では土地需要の高まりが農業との土地利用競合を生み出しており、農地保全と地域開発のバランスが重要な課題となっています。一方、下位県では人口減少と経済活動の停滞により土地需要そのものが低迷しており、地域活性化と土地の有効活用が課題となっています。
農地転用は食料安全保障の観点から適切な管理が必要である一方、地域経済の発展には不可欠な要素でもあります。持続可能な土地利用計画の策定と、農業振興と地域開発の調和を図る政策的対応が求められています。
統計分析の結果、平均値は約320haとなっており、上位県による押し上げ効果が見られます。中央値は約280haと平均値を下回っており、データ分布に右側への歪みがあることを示しています。
標準偏差は約180haと比較的大きく、都道府県間のばらつきが顕著であることを表しています。四分位範囲を見ると、第1四分位(約200ha)から第3四分位(約420ha)まで約220haの幅があり、中央部のデータでも相当な分散があることが分かります。
北海道、茨城県、福島県の上位3県は明らかに外れ値として機能しており、これらを除いた場合の分布はより均等になると考えられます。最小値と最大値の比率(約1:10)は、この指標における地域格差の大きさを端的に示しています。
まとめ
- 北海道が851.0haで全国最大の農地転用面積を記録し、広大な土地面積と活発な経済活動が反映されている
- 上位県は首都圏周辺(茨城県、埼玉県)や大都市圏(愛知県)、復興事業が進む福島県が占めている
- 下位県は県土面積が小さい県(福井県、沖縄県)や人口減少が進む地域(高知県、和歌山県)となっている
- 最大と最小の格差は約10倍に達し、地域間の土地需要格差が顕著に現れている
- 農地保全と地域開発のバランス、人口動態に対応した適切な土地利用計画の重要性が浮き彫りになっている
今後は、人口減少社会における持続可能な土地利用、食料安全保障と地域開発の調和、効率的な土地利用による地域活性化などの課題に対する継続的な取り組みが必要です。また、各地域の特性に応じた農地転用政策の検討と、定期的なモニタリングによる適切な政策評価が求められています。