2022年度の都道府県別一般病院年間新入院患者数(人口10万人当たり)は、大分県が全国1位、埼玉県が最下位です。医療機関の充実度と地域特性による医療需要の違いが明確に表れています。全国平均は12,195.4人で、地域間の医療格差が顕著です。
概要
一般病院年間新入院患者数(人口10万人当たり)は、その地域の医療機関がどれだけの新規入院患者を受け入れているかを示す指標です。この数値は、地域の医療需要の高さ、医療サービスのアクセスしやすさ、そして医療提供体制の充実度を測る上で非常に重要です。
この指標が高い地域は、医療機関が充実しているか、高齢化が進んでいるか、あるいは周辺地域からの患者を受け入れている可能性があります。逆に低い地域は、医療機関が不足しているか、住民の健康状態が良いか、あるいは他の都道府県の医療機関を利用している可能性が考えられます。2022年度のデータは、地域ごとの医療の現状と課題を浮き彫りにします。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
大分県(1位)
県内の医療機関が充実しており、特に大分大学医学部附属病院を中心とした高度医療体制が整備されています。温泉地としての療養環境も、患者受け入れに寄与していると考えられます。
高知県(2位)
全国でも高齢化率が高い地域であり、医療需要が特に大きいことが背景にあります。高知大学医学部による医師養成や、地域医療連携システムの発展も寄与しています。
鳥取県(3位)
人口当たりの病床数が多く、質の高い医療サービスを提供しています。鳥取大学医学部附属病院の存在や、県境を越えた医療連携も活発です。
島根県(4位)
過疎地域が多い中で、医療アクセスを確保するための取り組みが評価されています。島根大学医学部による人材育成や、へき地医療支援体制の構築が進んでいます。
長崎県(5位)
離島医療の充実や高度専門医療の提供が特徴的です。長崎大学病院の高度医療機能や、離島・へき地医療支援制度が整備されています。
下位5県の詳細分析
埼玉県(47位)
首都圏に位置し人口が多いにもかかわらず、全国で最も深刻な医療供給不足に直面しています。東京都への過度な医療依存や、救急医療体制の逼迫が課題です。
神奈川県(46位)
人口密度が高い一方で、病床数が相対的に不足しています。横浜・川崎エリアへの医療集中や、高齢化進行による需要増加が課題です。
千葉県(45位)
人口増加に医療供給が追いついていない現状があります。東京都への医療依存度の高さや、地域間での医療格差も課題です。
茨城県(44位)
都市部への医療集中が課題であり、県北地域の医師不足が指摘されています。医学部設置による改善が期待されています。
静岡県(43位)
人口に対して医療機関が相対的に不足している状況が見られます。東西に長い地形による医療アクセス格差も課題です。
地域別の特徴分析
九州・四国・中国地方
大分県(1位)、高知県(2位)、鳥取県(3位)、島根県(4位)、長崎県(5位)と、西日本の地方圏が上位を占めています。これらの地域では、大学医学部の存在、地域医療連携の推進、高齢化の進展などが、新入院患者数の多さに影響していると考えられます。
関東地方
首都圏の多くの県が下位に集中しています。埼玉県(47位)、神奈川県(46位)、千葉県(45位)など、人口集中に医療供給が追いついていない状況が顕著です。これは、大都市圏特有の医療供給体制の課題を示唆しています。
社会的・経済的影響
1位の大分県と47位の埼玉県の間には約1.9倍の格差が存在します。この格差は、医学部設置状況の違い、人口密度と医療資源のミスマッチ、地理的条件による医療アクセス差、高齢化率の地域差など、複合的な要因によって生じています。医療を求めた人口移動の促進、地域経済への影響(医療関連産業)、住民の健康格差拡大リスクが挙げられます。
対策と今後の展望
島根県の「しまね地域医療支援センター」や鳥取県の「地域枠医師配置システム」は、医師不足解消と地域定着促進に効果を上げています。遠隔医療システムや医師派遣制度の充実、地域医療連携ネットワークの構築も重要です。人口減少社会における持続可能な医療体制の構築が今後の課題です。ICT活用と広域連携がカギとなります。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 12,707.5 |
中央値 | 12,846.4 |
最大値 | 16,205.2(大分県) |
最小値 | 8,533.3(埼玉県) |
標準偏差 | 1,759 |
データ数 | 47件 |
新入院患者数の地域格差は顕著で、医療機関の充実度と地域特性による医療需要の違いが明確に表れています。偏差値65超の県が5県存在する一方、偏差値35未満の県が6県あり、地域間の医療格差が顕著です。
まとめ
新入院患者数の地域差は、九州・四国・中国地方で新入院患者数が多い一方、関東地方では新入院患者数が少ないという特徴があります。この地域差を是正するためには、地域医療連携システムの構築が重要であり、地域の医療機関が連携して効率的な医療サービスを提供する体制が必要です。また、医師不足解消策の推進により、地域の医療人材を確保し、医療サービスの質を向上させる必要があります。さらに、持続可能な医療体制の確立により、地域の特性に応じた医療サービスを提供する必要があります。今後は地域特性を活かした医療政策の推進と、医療供給体制の整備、持続可能な地域医療の構築が重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大分県 | 16,205.2 | 69.9 | +0.3% |
2 | 高知県 | 15,985.2 | 68.6 | -3.2% |
3 | 鳥取県 | 15,305.7 | 64.8 | +0.5% |
4 | 島根県 | 15,201.7 | 64.2 | -1.9% |
5 | 長崎県 | 14,817.4 | 62.0 | -0.2% |
6 | 北海道 | 14,767.3 | 61.7 | -2.4% |
7 | 鹿児島県 | 14,668.5 | 61.1 | +0.2% |
8 | 徳島県 | 14,499.4 | 60.2 | -1.2% |
9 | 香川県 | 14,219.5 | 58.6 | -2.6% |
10 | 山口県 | 14,181.8 | 58.4 | +0.0% |
11 | 熊本県 | 14,180.8 | 58.4 | -0.9% |
12 | 和歌山県 | 14,069.0 | 57.7 | +0.6% |
13 | 富山県 | 14,064.0 | 57.7 | +0.2% |
14 | 愛媛県 | 14,011.5 | 57.4 | +1.3% |
15 | 岡山県 | 13,948.4 | 57.1 | +0.5% |
16 | 福岡県 | 13,717.7 | 55.7 | -0.9% |
17 | 福井県 | 13,675.7 | 55.5 | -1.4% |
18 | 秋田県 | 13,524.5 | 54.6 | -1.1% |
19 | 佐賀県 | 13,498.3 | 54.5 | +3.4% |
20 | 石川県 | 13,313.9 | 53.4 | -0.0% |
21 | 長野県 | 13,226.1 | 52.9 | -0.7% |
22 | 宮崎県 | 13,043.9 | 51.9 | -0.3% |
23 | 大阪府 | 12,879.0 | 51.0 | -0.9% |
24 | 京都府 | 12,846.4 | 50.8 | -0.8% |
25 | 山形県 | 12,807.4 | 50.6 | -1.4% |
26 | 奈良県 | 12,720.5 | 50.1 | -3.0% |
27 | 広島県 | 12,714.0 | 50.0 | - |
28 | 群馬県 | 12,238.9 | 47.3 | +0.4% |
29 | 兵庫県 | 12,116.5 | 46.6 | +0.6% |
30 | 沖縄県 | 11,928.5 | 45.6 | -4.5% |
31 | 山梨県 | 11,834.9 | 45.0 | +0.1% |
32 | 宮城県 | 11,544.5 | 43.4 | -0.9% |
33 | 福島県 | 11,497.3 | 43.1 | +1.2% |
34 | 岩手県 | 11,395.0 | 42.5 | -3.4% |
35 | 青森県 | 11,341.3 | 42.2 | -3.8% |
36 | 新潟県 | 11,111.5 | 40.9 | -1.2% |
37 | 滋賀県 | 11,042.4 | 40.5 | -0.9% |
38 | 岐阜県 | 10,956.3 | 40.0 | +1.7% |
39 | 三重県 | 10,949.4 | 40.0 | +1.3% |
40 | 東京都 | 10,947.8 | 40.0 | +0.0% |
41 | 愛知県 | 10,623.2 | 38.2 | -0.1% |
42 | 栃木県 | 10,611.6 | 38.1 | +0.3% |
43 | 静岡県 | 10,407.6 | 36.9 | +0.1% |
44 | 茨城県 | 10,357.4 | 36.6 | +1.2% |
45 | 千葉県 | 9,906.5 | 34.1 | -0.5% |
46 | 神奈川県 | 9,814.9 | 33.6 | +0.8% |
47 | 埼玉県 | 8,533.3 | 26.3 | +0.1% |