都道府県別年間日照時間ランキング(2023年度)

概要

年間日照時間は、その地域が太陽光を受ける時間の長さを示す重要な気象指標です。この記事では、2023年度の都道府県別年間日照時間のランキングを紹介します。

日照時間とは、太陽光が地表を直接照らしている時間の合計を指します。日本では、気象庁の観測所において日射計を用いて観測されており、農業生産性、再生可能エネルギーのポテンシャル、観光資源としての価値、住民の健康や生活の質など、様々な面で地域の特性に影響を与えています。

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年間日照時間ランキング(2023年度)

日照時間が多い上位10県

2023年度の年間日照時間ランキングでは、埼玉県が**2,545時間(偏差値69.7)**で全国1位となりました。埼玉県は関東平野の中央に位置し、周囲に遮る山がなく、晴れやすい気候条件が日照時間の多さに寄与しています。

2位は群馬県2,497時間(偏差値67.3)、3位は山梨県で**2,484時間(偏差値66.6)**となっています。これらの県は関東甲信地方に集中しており、山岳地形によって太平洋側からの湿った空気が遮られ、晴天が多いという地理的特徴が表れています。

4位は静岡県2,459時間(偏差値65.3)、5位は茨城県2,454時間(偏差値65.1)、6位は神奈川県2,410時間(偏差値62.8)、7位は愛知県2,378時間(偏差値61.2)、8位は三重県2,373時間(偏差値61.0)、9位は千葉県2,345時間(偏差値59.6)、10位は岐阜県で**2,342時間(偏差値59.4)**となっています。

上位10県のうち、6県が関東甲信地方(埼玉県、群馬県、山梨県、茨城県、神奈川県、千葉県)、3県が東海地方(静岡県、愛知県、三重県、岐阜県)に集中しており、太平洋側の東日本に日照時間が多い地域が偏っていることがわかります。

日照時間が少ない地域の特徴

年間日照時間が最も少なかったのは青森県1,821時間(偏差値32.9)、次いで秋田県1,836時間(偏差値33.6)沖縄県が**1,860時間(偏差値34.9)**と続きます。これらの地域は、それぞれ異なる理由で日照時間が少なくなっています。

東北地方の日本海側(青森県、秋田県)は冬季の降雪や曇天が多く、年間を通じて日照時間が制限される傾向があります。一方、沖縄県は亜熱帯海洋性気候で年間を通じて湿度が高く、雲が発生しやすいことが日照時間の少なさに影響しています。

地域別の特徴分析

地域による日照時間の違い

年間日照時間の分布には、明確な地域的パターンが見られます:

  1. 関東甲信・東海地方の優位性:関東平野から中部山岳地帯にかけての地域は、全国的に見て日照時間が多い傾向があります。特に埼玉県、群馬県、山梨県、静岡県などは年間2,400時間を超える豊富な日照に恵まれています。

  2. 東北・北海道の日照不足:青森県(1,821時間)、秋田県(1,836時間)、北海道(1,889時間)など、北日本は全般的に日照時間が少ない傾向にあります。これは冬季の降雪や曇天の日が多いことが主な要因です。

  3. 瀬戸内海地域の明るさ:大阪府(2,324時間)、兵庫県(2,318時間)、和歌山県(2,328時間)など、瀬戸内海周辺の地域も比較的日照時間が多く、西日本では優位性を示しています。

  4. 九州地方の地域差:九州地方内でも宮崎県(2,213時間)は比較的日照時間が多い一方、長崎県(1,939時間)は少なく、地形や気候条件による地域差が顕著です。

都市部と郊外の比較

興味深いのは、東京都(2,259時間)よりも周辺県である埼玉県(2,545時間)、神奈川県(2,410時間)、千葉県(2,345時間)の方が日照時間が多い点です。これは、都市部のヒートアイランド現象や大気汚染が雲の形成に影響している可能性を示唆しています。また、都市部の高層建築物による日陰の影響も考えられます。

年間日照時間の意義と活用

日照時間が生活や産業に与える影響

年間日照時間は、地域の生活様式や産業構造に大きな影響を与えています:

  • 再生可能エネルギー:太陽光発電の効率は日照時間に直結します。埼玉県や群馬県などの日照時間が多い地域は、太陽光発電の導入に適しています。実際、埼玉県では太陽光発電の普及率が高く、再生可能エネルギーの地産地消が進んでいます。

  • 農業:日照時間は農作物の生育に必須です。茨城県や千葉県などの日照時間が多い関東地方は、野菜や果物の生産が盛んで、農業産出額も高い傾向があります。

  • 観光業:「晴れの国」「日本一の日照時間」などのブランディングは観光PRに活用されています。山梨県は富士山の眺望と豊富な日照を観光資源として活かしています。

  • 健康・生活:日照時間は人間の健康や心理状態にも影響します。十分な日光を浴びることでビタミンDの合成が促進され、季節性情動障害(SAD)の予防にも効果があります。

日照時間と快晴日数の関係

2020年度の快晴日数データと比較すると、興味深い傾向が見られます。快晴日数では鹿児島県が42日で1位でしたが、2023年度の日照時間では鹿児島県は2,102時間(26位)と中位にとどまっています。これは「快晴」(雲量1割未満)と「日照時間」が測定する気象状況の違いを反映しています。

例えば、関東甲信地方の多くの県は快晴日数が0日でも日照時間は全国トップクラスです。これは完全な「快晴」ではなくても、「晴れ」や「薄曇り」の状態でも十分な日射を得られることを示しています。農業や太陽光発電などの実用面では、快晴日数よりも実際の日照時間の方が重要な指標となります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2023年度の都道府県別年間日照時間データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. データの分布:全国平均は約2,145時間、中央値は約2,140時間とほぼ一致しており、データ分布はやや左右対称に近いことがわかります。

  2. 地域的な偏り:最長(埼玉県:2,545時間)と最短(青森県:1,821時間)の差は724時間で、年間では約2時間/日の開きがあります。これは農作物の生育や太陽光発電の効率に大きく影響する差です。

  3. 偏差値による評価:偏差値60以上の「非常に日照時間が多い県」は8県(埼玉県、群馬県、山梨県、静岡県、茨城県、神奈川県、愛知県、三重県)で、関東甲信と東海地方に集中しています。一方、偏差値40未満の「日照時間が非常に少ない県」は6県(青森県、秋田県、沖縄県、北海道、島根県、山形県)で、主に北日本と日本海側に分布しています。

  4. 観測地点の影響:各都道府県の代表地点(主に県庁所在地)でのデータであるため、県内でも地域差がある可能性があります。特に面積の大きい北海道や山間部の多い県では、県内での日照時間の差が大きいことが予想されます。

まとめ

2023年度の都道府県別年間日照時間ランキングでは、埼玉県が2,545時間で1位、群馬県が2,497時間で2位、山梨県が2,484時間で3位となりました。上位県は関東甲信地方と東海地方に集中しており、太平洋側東日本の優位性が明確です。

日照時間の分布には地理的な要因が強く反映されており、山岳地形や海洋からの影響、冬季の気象条件などが複合的に作用しています。特に注目すべきは、関東平野とその周辺地域の日照環境の良さで、これは地形的な要因と気候的な要因が組み合わさった結果と考えられます。

日照時間は太陽光発電や農業、観光業、健康など様々な分野に影響を与える重要な気象指標です。特に再生可能エネルギーの普及が進む中、各地域の日照特性を活かした地域開発や産業振興が期待されます。

今後の気候変動により、日照時間のパターンも変化する可能性があります。継続的な観測と分析を通じて、地域気候の変化を把握し、適応策を検討していくことが求められます。

出典