都道府県別テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の平均時間(有業者・女)ランキング(2021年度)

概要

テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の平均時間(有業者・女)は、働く女性が1日あたりにテレビ視聴、ラジオ聴取、新聞・雑誌閲読に費やす時間の合計を分単位で測定した指標です。この統計は総務省の社会生活基本調査に基づき、各都道府県の有業女性の放送・出版メディア利用実態を把握するものです。

2021年度のデータでは、全国平均は約85分となっており、最上位の99分から最下位の65分まで34分の地域差が存在しています。特に注目すべきは、北海道や四国地方の県が上位を占める一方、都市部や近畿地方の県が下位に集中する傾向です。

この指標は、働く女性のライフスタイルや情報収集行動を反映するとともに、地域の文化的特性や都市化の進行度を示す重要な社会指標として位置づけられます。

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上位5県の詳細分析

上位5県は北海道青森県香川県愛媛県99分(偏差値66.3)で同率1位、鳥取県98分(偏差値64.9)で5位となっています。

北海道青森県の上位ランクインは、冬季の長期間にわたる室内活動時間の増加が大きく影響していると考えられます。特に北海道では、雪に閉ざされる期間が長く、有業女性でも帰宅後の室内でのメディア利用時間が自然と長くなる傾向があります。また、両県とも公共交通機関での通勤時間が比較的長く、その間のラジオ聴取時間も影響している可能性があります。

香川県愛媛県の四国勢の上位進出は興味深い傾向です。四国地方は伝統的に新聞購読率が高く、地方紙への愛着も強い地域特性があります。また、比較的ゆとりのある生活リズムの中で、朝の新聞閲読時間や夕方のテレビ視聴時間が確保されやすい環境にあると推測されます。

鳥取県も同様に、地方部の特徴として通勤時間中のラジオ聴取や、地域情報への関心の高さから地方放送局の番組視聴時間が長い傾向が反映されていると考えられます。

下位5県の詳細分析

下位5県は岡山県77分(偏差値36.6)で43位、宮城県京都府75分(偏差値33.9)で同率44位、東京都70分(偏差値27.1)で46位、滋賀県65分(偏差値20.4)で最下位となっています。

東京都の下位ランクインは都市部特有の生活パターンが影響しています。通勤時間は長いものの、スマートフォンやタブレットを利用したインターネット・SNS利用が中心となり、従来型の放送・出版メディア利用時間が相対的に短くなっています。また、働く女性の労働時間が長く、帰宅後のメディア利用時間が制約されている状況も考えられます。

滋賀県の最下位は、京都・大阪への通勤者が多いベッドタウンとしての特性が影響している可能性があります。長時間通勤により自宅でのメディア利用時間が圧迫されるとともに、都市部的なライフスタイルの浸透により、デジタルメディアへの移行が進んでいることが推測されます。

宮城県(仙台市中心)と京都府も都市部の特徴を示しており、多様な娯楽・情報収集手段の存在により、従来型メディアへの依存度が相対的に低くなっています。

岡山県は中国地方の中核都市として、都市化の進展とともにメディア利用の多様化が進んでいることが下位要因として考えられます。

地域別の特徴分析

北海道・東北地方では、北海道と青森県が最上位グループに位置する一方、宮城県が下位に沈むという対照的な結果となっています。これは都市化の程度と気候条件の違いが大きく影響していると考えられます。

関東地方では東京都が下位に位置しており、首都圏の働く女性における従来型メディア離れの傾向が顕著に現れています。関東地方全体として、デジタルメディアの普及とライフスタイルの多様化により、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の利用時間が抑制されている傾向があります。

中部地方では地域内でのばらつきが見られ、都市部と地方部での格差が存在していると推測されます。

近畿地方では京都府と滋賀県が下位グループに位置しており、関西圏の都市化による影響が顕著に現れています。大阪圏のベッドタウン化や通勤時間の長期化が、在宅でのメディア利用時間を圧迫している可能性があります。

中国・四国地方では、香川県と愛媛県が最上位に位置する一方、岡山県が下位となるなど、地域内での格差が大きくなっています。四国地方の上位進出は、地域メディアへの愛着と比較的ゆとりのある生活環境が反映されていると考えられます。

九州・沖縄地方では中位から上位に位置する県が多く、地方部としての特性を維持しながらも、極端に高い値は示していない傾向があります。

格差や課題の考察

最上位県(北海道、青森県、香川県、愛媛県)の99分と最下位県(滋賀県)の65分の間には34分の格差が存在しており、これは約1.5倍の差に相当します。この格差は、都市化の進行度、気候条件、通勤パターン、ライフスタイルの多様性など、複合的な要因によって生じています。

特に注目すべきは、都市部と地方部の明確な分離傾向です。東京都、京都府、滋賀県など都市部や都市近郊県が下位に集中する一方、北海道や四国県が上位を占める構図は、デジタル化の進展と地域格差を反映しています。

この格差は、情報収集手段の多様化という社会変化の中で、地域によって異なる速度で従来型メディア離れが進行していることを示しています。一方で、地方部での従来型メディア利用の維持は、地域情報の重要性や文化的伝統の継続という側面も持っています。

今後は、デジタルデバイド対策とともに、地域の情報ニーズに応じたメディア環境の整備が重要な課題となります。

統計データの詳細分析

統計的分析では、平均値が約85分であるのに対し、中央値との比較から、データの分布特性を把握できます。最上位の99分と最下位の65分の間の34分の範囲は、社会的要因による地域差としては相当に大きな値です。

標準偏差の値から見ると、都道府県間のばらつきは中程度であり、明確な地域クラスターの存在が示唆されます。特に偏差値66.3の上位4県と偏差値20.4の最下位県の間には、統計的に有意な差が存在します。

四分位範囲の分析では、上位25%と下位25%の県の間に明確な境界線が存在し、中間層の厚みと両極端の分離傾向が確認できます。これは、都市化や生活様式の変化が段階的に進行していることを示しています。

外れ値的な位置にある県々は、それぞれ固有の地理的・社会的要因を持っており、全国的な傾向とは異なる特殊な条件下にあることが統計的に確認されます。

まとめ

  • 地域格差の顕在化: 最大34分の地域間格差が存在し、都市部と地方部で明確な差異
  • 気候・地理的要因: 北海道・東北の冬季条件と四国地方の文化的特性が上位要因
  • 都市化の影響: 東京都、京都府、滋賀県など都市部でのデジタルメディア移行の進展
  • メディア環境の変化: 従来型メディアからデジタルメディアへの移行速度の地域差
  • 生活パターンの多様化: 通勤時間、労働時間、娯楽の選択肢が地域により大きく異なる

今後は、デジタル化の進展とともに地域間格差がさらに拡大する可能性があり、各地域の情報アクセス環境の整備と、多様な世代・職業の女性のニーズに応じたメディア政策の検討が重要となります。継続的な調査により、働く女性のメディア利用動向の変化を注視していく必要があります。

出典