概要
一般世帯平均人員とは、一般世帯の総人口を一般世帯数で割った値で、1世帯あたりの平均人数を示す指標です。この記事では、2020年度の都道府県別一般世帯平均人員のランキングを紹介します。
一般世帯平均人員は、地域の家族構成や世帯形態の特徴を反映しており、地域の社会構造や生活様式を理解する上で重要な指標です。2020年度は、山形県や福井県、佐賀県などの地方県で平均人員が多く、東京都や北海道などの大都市圏や北海道で平均人員が少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
一般世帯平均人員が多い上位5県
2020年度の一般世帯平均人員ランキングでは、山形県が2.61人(偏差値71.7)で全国1位となりました。山形県は三世代同居の割合が高く、また核家族世帯でも子どもの数が比較的多いことが、平均人員の多さに影響しています。
2位は福井県で2.57人(偏差値68.8)、3位は佐賀県で2.51人(偏差値64.6)、4位は富山県で2.50人(偏差値63.8)、5位は岐阜県で2.49人(偏差値63.1)となっています。上位県には日本海側の県が多く、伝統的な家族観や三世代同居の文化が残っている地域の特徴を示しています。
一般世帯平均人員が少ない下位5県
最も一般世帯平均人員が少なかったのは東京都で1.92人(偏差値22.7)でした。東京都は単身世帯の割合が高く、また核家族世帯でも子どもの数が少ない傾向があることが、平均人員の少なさに影響しています。
46位は北海道で2.04人(偏差値31.2)、45位は大阪府で2.10人(偏差値35.5)、44位は鹿児島県で2.11人(偏差値36.2)、43位は高知県で2.11人(偏差値36.2)となっています。下位県には大都市圏の都府県や高齢化が進んだ地方県が多く、単身世帯の増加や少子化の影響を示しています。
地域別の特徴分析
東北地方の家族構成
東北地方では、山形県(1位、2.61人)、福島県(9位、2.42人)、秋田県(10位、2.41人)、岩手県(14位、2.39人)が上位に位置する一方、青森県(19位、2.34人)、宮城県(26位、2.30人)は中位に位置しています。全体として東北地方の平均は2.41人と全国的に見て高い水準にあります。
山形県、福島県、秋田県、岩手県が高い平均人員を示している理由としては、三世代同居の割合が高いことが挙げられます。特に、山形県は全国で最も三世代同居の割合が高く、これが平均人員の多さに大きく寄与しています。また、これらの県では農業や地場産業が盛んであり、家族で働く形態が残っていることも影響しています。
一方、宮城県は東北地方の中では比較的平均人員が少なくなっています。これは、仙台市という大都市を有しており、単身世帯や核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、若年層の単身世帯が多く、これが平均人員を引き下げています。
関東・甲信越地方の世帯形態
関東・甲信越地方では、栃木県(16位、2.38人)、茨城県(17位、2.37人)、群馬県(18位、2.35人)が中位に位置する一方、東京都(47位、1.92人)、千葉県(33位、2.23人)、神奈川県(41位、2.15人)、埼玉県(28位、2.28人)は中位から下位に位置しています。関東地方全体の平均は2.24人と全国平均を下回っています。
栃木県、茨城県、群馬県が比較的高い平均人員を示している理由としては、郊外型の住宅地が多く、子育て世帯が多いことが挙げられます。また、これらの県では三世代同居の割合も比較的高く、これが平均人員の多さに寄与しています。
一方、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県などの首都圏の都県は、全国的に見ても平均人員が少なくなっています。これは、単身世帯の割合が高いことが大きな要因です。特に、東京都では若年層の単身世帯や高齢者の単身世帯が多く、これが平均人員を大きく引き下げています。また、核家族世帯でも子どもの数が少ない傾向があり、これも平均人員の少なさに影響しています。
中部・北陸地方の伝統的家族観
中部・北陸地方では、富山県(4位、2.50人)、福井県(2位、2.57人)、岐阜県(5位、2.49人)、新潟県(6位、2.48人)が上位に位置する一方、愛知県(27位、2.29人)、静岡県(12位、2.40人)、石川県(20位、2.34人)、三重県(23位、2.33人)は中位に位置しています。中部地方全体の平均は2.42人と全国の中でも最も高い水準にあります。
富山県、福井県、岐阜県、新潟県が高い平均人員を示している理由としては、三世代同居の割合が高いことが挙げられます。北陸地方は伝統的に家族の絆を重視する文化があり、親と子と孫が同居する形態が比較的多く残っています。また、これらの県では持ち家率も高く、広い住宅に家族で住む傾向があります。
一方、愛知県などは、中部・北陸地方の中では比較的平均人員が少なくなっています。これは、名古屋市などの大都市を有しており、単身世帯や核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、愛知県では自動車産業などの製造業が盛んであり、若年層の単身世帯が多いことが平均人員を引き下げています。
近畿地方の都市化と家族形態
近畿地方では、滋賀県(7位、2.44人)、奈良県(15位、2.38人)が上位から中位に位置する一方、京都府(42位、2.12人)、大阪府(45位、2.10人)、兵庫県(34位、2.23人)、和歌山県(29位、2.28人)は中位から下位に位置しています。近畿地方全体の平均は2.27人と全国平均を若干下回っています。
滋賀県、奈良県が比較的高い平均人員を示している理由としては、大阪都市圏のベッドタウンとして子育て世帯が多いことが挙げられます。特に、滋賀県は琵琶湖周辺の自然環境の良さから、子育て世帯の移住先として人気があり、これが平均人員の多さに寄与しています。
一方、京都府、大阪府などは、全国的に見ても平均人員が少なくなっています。これは、京都市や大阪市などの大都市を有しており、単身世帯の割合が高いことが大きな要因です。特に、京都府では大学が多く、学生の単身世帯が多いことが平均人員を引き下げています。また、大阪府では高齢者の単身世帯も多く、これも平均人員の少なさに影響しています。
中国・四国地方の高齢化と世帯構成
中国・四国地方では、鳥取県(8位、2.44人)、島根県(13位、2.40人)が上位に位置する一方、山口県(38位、2.17人)、広島県(36位、2.20人)、愛媛県(39位、2.16人)、高知県(43位、2.11人)は下位に位置しています。中国・四国地方全体の平均は2.26人と全国平均を若干下回っています。
鳥取県、島根県が比較的高い平均人員を示している理由としては、三世代同居の割合が比較的高いことが挙げられます。また、これらの県では農業や漁業などの第一次産業が盛んであり、家族で働く形態が残っていることも影響しています。
一方、高知県や山口県は中国・四国地方の中では平均人員が少なくなっています。これは、高齢化が進行しており、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が多いことが影響しています。特に、中山間地域では若年層の流出により、高齢者のみの世帯が増加しており、これが平均人員を引き下げています。
九州・沖縄地方の地域差
九州・沖縄地方では、佐賀県(3位、2.51人)、熊本県(22位、2.34人)、沖縄県(24位、2.33人)が上位から中位に位置する一方、福岡県(40位、2.15人)、長崎県(30位、2.27人)、大分県(35位、2.22人)、宮崎県(37位、2.20人)、鹿児島県(44位、2.11人)は中位から下位に位置しています。九州・沖縄地方全体の平均は2.27人と全国平均をわずかに下回っています。
佐賀県が高い平均人員を示している理由としては、三世代同居の割合が高いことが挙げられます。佐賀県は伝統的に家族の絆を重視する文化があり、親と子と孫が同居する形態が比較的多く残っています。また、佐賀県では農業が盛んであり、家族で農業を営む世帯が多いことも影響しています。
沖縄県は、出生率が高く子どもの数が多いことから、比較的高い平均人員を示しています。沖縄県では子どもを大切にする文化があり、多子世帯が比較的多いことが平均人員の多さに寄与しています。
一方、福岡県、鹿児島県などは、九州・沖縄地方の中では平均人員が少なくなっています。福岡県は福岡市や北九州市という大都市を有しており、単身世帯の割合が高いことが平均人員の少なさに影響しています。鹿児島県は高齢化が進行しており、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が多いことが平均人員を引き下げています。
一般世帯平均人員の格差がもたらす影響と課題
住宅需要への影響
一般世帯平均人員の格差は、住宅需要に大きな影響を与えます。平均人員が多い地域では、広い住宅への需要が高く、一戸建て住宅の割合が高くなる傾向があります。一方、平均人員が少ない地域では、小規模な住宅への需要が高く、マンションやアパートなどの集合住宅の割合が高くなる傾向があります。
例えば、山形県(1位、2.61人)では、三世代同居に対応した広い一戸建て住宅への需要が高く、住宅の平均面積も広くなっています。特に、雪国であることから、雪に強い構造の住宅が求められており、これが住宅コストの上昇要因となっています。一方、東京都(47位、1.92人)では、単身世帯や小規模世帯向けのコンパクトな住宅への需要が高く、ワンルームマンションやコンパクトマンションの供給が増加しています。特に、都心部では土地価格が高いことから、住宅の小型化が進んでいます。
消費行動への影響
一般世帯平均人員の格差は、消費行動にも大きな影響を与えます。平均人員が多い地域では、家族向けの商品やサービスへの需要が高く、大型スーパーやファミリーレストランなどの利用が多くなる傾向があります。一方、平均人員が少ない地域では、個人向けの商品やサービスへの需要が高く、コンビニエンスストアや個食対応の飲食店などの利用が多くなる傾向があります。
例えば、福井県(2位、2.57人)では、家族で利用する大型商業施設やファミリーレストランが人気であり、また家族向けの大容量商品の販売も好調です。特に、休日には家族連れで郊外の大型ショッピングモールに出かける傾向が強く、これが地域経済の活性化につながっています。一方、北海道(46位、2.04人)では、単身世帯や小規模世帯向けの小容量商品や個食対応の商品が人気であり、コンビニエンスストアや個食対応の飲食店の利用が多くなっています。特に、都市部では夜間の一人飲食(おひとりさま)の文化が定着しており、これに対応した飲食店が増加しています。
社会保障制度への影響
一般世帯平均人員の格差は、社会保障制度にも大きな影響を与えます。平均人員が少ない地域では、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が多く、介護サービスや見守りサービスなどの需要が高くなる傾向があります。一方、平均人員が多い地域では、家族内での支え合いが期待できるため、公的サービスへの依存度が比較的低くなる傾向があります。
例えば、京都府(42位、2.12人)では、高齢者の単身世帯が多く、介護サービスや見守りサービスの需要が高くなっています。特に、都市部では高齢者の孤立が問題となっており、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。一方、佐賀県(3位、2.51人)では、三世代同居や近居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが比較的多く見られます。これにより、公的介護サービスへの依存度が比較的低く、介護保険料の負担も比較的軽減されています。
地域コミュニティへの影響
一般世帯平均人員の格差は、地域コミュニティにも大きな影響を与えます。平均人員が多い地域では、家族単位での地域活動への参加が多く、地域の祭りや行事などが活発に行われる傾向があります。一方、平均人員が少ない地域では、個人単位での地域活動への参加が中心となり、新たな形のコミュニティ形成が求められています。
例えば、富山県(4位、2.50人)では、家族単位での地域活動への参加が多く、地域の祭りや行事が活発に行われています。特に、伝統的な祭りや行事では、家族ぐるみの参加が期待されており、これが地域の絆の強化につながっています。一方、鹿児島県(44位、2.11人)では、高齢者の単身世帯が増加しており、従来の家族単位の地域活動が困難になっています。そのため、個人単位での参加が可能な新たな形の地域活動が模索されており、NPOやボランティア団体の活動が活発化しています。
教育環境への影響
一般世帯平均人員の格差は、教育環境にも大きな影響を与えます。平均人員が多い地域では、子どもの数が比較的多く、学校の統廃合が比較的少ない傾向があります。一方、平均人員が少ない地域では、子どもの数が減少し、学校の統廃合が進む傾向があります。
例えば、福島県(9位、2.42人)では、子どもの数が比較的多く、地域の小中学校が維持されています。これにより、子どもたちは地域に根ざした教育を受けることができ、地域への愛着も育まれています。一方、高知県(43位、2.11人)では、子どもの数の減少により、学校の統廃合が進んでいます。特に、中山間地域では小規模校や複式学級が増加しており、教育環境の維持が課題となっています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別一般世帯平均人員データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約2.30人、中央値は約2.33人とほぼ同じ値を示しており、データの分布がほぼ対称的であることがわかります。これは、極端な外れ値が少ないことを示しています。
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分布の歪み:データは全体としてわずかに負の歪み(左に裾を引いた形状)を示しており、東京都(1.92人)などの下側の外れ値が存在しています。
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外れ値の特定:東京都(1.92人)は明らかな下側の外れ値と考えられます。また、山形県(2.61人)や福井県(2.57人)は上側の外れ値と考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約2.20人、第3四分位数(Q3)は約2.39人で、四分位範囲(IQR)は約0.19人です。これは、中央の50%の都道府県の一般世帯平均人員が2.20人から2.39人の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.15人で、多くの都道府県が平均値から±0.15人の範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約6.5%となり、相対的なばらつきは比較的小さいと言えます。最高値と最低値の差は0.69人(2.61人−1.92人)であり、山形県と東京都の間には一定の格差があることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別一般世帯平均人員ランキングでは、山形県が2.61人で1位、東京都が1.92人で47位となりました。上位には山形県、福井県、佐賀県などの地方県が多く、下位には東京都、北海道、大阪府などの大都市圏の都道府県が多く見られました。
一般世帯平均人員の地域差は、三世代同居の割合の差、単身世帯の割合の差、子どもの数の差など様々な要素を反映しており、この差は住宅需要や消費行動、社会保障制度、地域コミュニティ、教育環境など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、データの分布がほぼ対称的であり、極端な外れ値が少ないことがわかります。また、多くの都道府県の一般世帯平均人員が2.20人から2.39人の範囲に収まっており、全国的に見ると比較的均質な分布を示しています。
少子高齢化が進む日本社会において、一般世帯平均人員の変化は今後も続くと予想されます。特に、単身世帯の増加や核家族化の進行により、平均人員の減少傾向が続く可能性が高いと考えられます。これに対応するためには、世帯構成の変化を踏まえた住宅政策や福祉政策の展開、地域コミュニティの再構築など、多角的な取り組みが求められています。