サマリー
2022年度の一般病院の1日平均在院患者数は、地域間で大きな格差が存在しています。高知県が1596.9人で全国1位、神奈川県が512.3人で最下位となり、最大で約3倍の差が生じています。この指標は地域の医療ニーズと医療提供体制のバランスを示す重要な指標です。
概要
一般病院の1日平均在院患者数(人口10万人当たり)は、地域の医療需要と病床利用状況を示す指標です。高齢化の進行度、慢性疾患患者数、在宅医療の普及度の3つの要因が大きく影響します。
全国平均は784.3人となっており、九州・四国地方が上位、首都圏が下位という明確な地域差が見られます。この差は医療体制の地域格差を反映しています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
高知県(1位)
高知県は1596.9人(偏差値86.3)で圧倒的な1位です。高齢化率が全国最高水準で、慢性疾患患者が多いことが主因です。
- 高齢化率約35%で全国トップクラス
- 在宅医療体制の整備が課題
- 病床の効率的運用が重要
鹿児島県(2位)
鹿児島県は1204.9人(偏差値67.6)で2位にランクイン。離島・過疎地域での医療確保が在院患者数増加の要因です。
- 離島医療の特殊事情が影響
- 高齢化率の高さも要因
- 医療アクセス改善が課題
佐賀県(3位)
佐賀県は1174.2人(偏差値66.1)で3位です。人口あたりの病床数が多く、医療機関の集積が在院患者数を押し上げています。
- 医療機関密度の高さが特徴
- 近隣県からの患者流入も影響
- 効率的な医療連携が重要
山口県(4位)
山口県は1121.5人(偏差値63.6)で4位。高齢化の進行と慢性疾患患者の増加が背景にあります。
- 人口減少と高齢化の同時進行
- 慢性疾患管理体制の充実
- 在宅医療への移行支援が必要
熊本県(5位)
熊本県は1103.9人(偏差値62.8)で5位です。地域中核病院の集積と広域医療圏の形成が特徴的です。
- 地域医療支援病院の集積
- 広域からの患者受け入れ体制
- 医療機能分化の推進が課題
下位5県の詳細分析
東京都(43位)
東京都は580.2人(偏差値37.8)で43位。在宅医療の充実と効率的な医療提供体制が在院患者数を抑制しています。
- 在宅医療・訪問診療の普及
- 医療機関間の連携充実
- 急性期病床の効率運用
岐阜県(44位)
岐阜県は566.7人(偏差値37.1)で44位。隣接する愛知県への患者流出と在院日数の短縮が影響しています。
- 名古屋圏への医療依存
- 病床利用率の最適化
- 地域完結型医療の推進が課題
愛知県(45位)
愛知県は566.4人(偏差値37.1)で45位。高度医療機関の集積により、在院日数の短縮が実現されています。
- 高度急性期医療の充実
- クリティカルパスの活用
- 地域連携パスの整備
埼玉県(46位)
埼玉県は531.0人(偏差値35.4)で46位。都市部での効率的な医療提供と在宅医療の推進が特徴です。
- 医療機関の機能分化推進
- 在宅医療支援体制の充実
- 病床稼働率の最適化
神奈川県(47位)
神奈川県は512.3人(偏差値34.5)で最下位。在宅医療の先進的取り組みと効率的な病床運用が実現されています。
- 在宅医療推進の先進県
- 地域包括ケアシステムの充実
- 医療・介護連携の強化
地域別の特徴分析
九州・四国地方
九州・四国地方は軒並み上位にランクイン。鹿児島県(2位)、佐賀県(3位)、熊本県(5位)、高知県(1位)が代表的です。高齢化率の高さと医療機関への依存度が特徴的。離島・過疎地域での医療確保も在院患者数増加の要因となっています。
中国・近畿地方
山口県(4位)が上位にランクインする一方、兵庫県や大阪府は中位に位置。都市部では医療機能の分化が進み、地方では高齢化対応が課題。地域内での医療格差も顕著に現れています。
首都圏
神奈川県(47位)、埼玉県(46位)、東京都(43位)がいずれも下位。在宅医療の充実と効率的な病床運用が共通の特徴です。医療機関の機能分化と地域連携が進んでいます。医療資源の集積効果も在院日数短縮に寄与しています。
中部・東海地方
愛知県(45位)、岐阜県(44位)が下位にランクイン。製造業中心の産業構造で働き世代が多く、在宅医療体制も整備されています。名古屋圏への医療集約化も進んでいます。
社会的・経済的影響
最上位の高知県と最下位の神奈川県では約3倍の格差が存在します。この格差は医療費負担や医療従事者の配置に大きな影響を与えています。
地域間格差の主要因は高齢化率の差、在宅医療体制の整備状況、医療機関の機能分化の進展度です。上位県では医療費増大と医療従事者不足が深刻化。下位県では効率的な医療提供により、医療費抑制効果とQOL向上が実現されています。
この格差は地域経済にも影響し、医療従事者の地域偏在や医療関連産業の集積差を生み出しています。
対策と今後の展望
在院患者数の地域格差解消には、在宅医療の推進が最も重要です。訪問診療体制の充実と地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。
神奈川県や東京都の成功事例として、医療・介護連携の強化と ICT 活用が注目されています。病床機能の分化と 地域医療連携パス の活用も効果的です。
今後は医療 DX の推進により、遠隔医療や在宅モニタリングの普及が期待されます。各地域の特性に応じたオーダーメイド型医療体制の構築が重要な課題となっています。
統計データの基本情報と分析
全国平均784.3人に対し、中央値は757.8人でやや下回っています。これは高知県(1596.9人)などの外れ値が平均を押し上げているためです。
標準偏差は214.6人で、比較的大きなばらつきを示しています。第1四分位634.7人、第3四分位907.3人の範囲に半数の都道府県が分布。
最大値と最小値の差は1084.6人に達し、地域間格差の大きさを物語っています。この分布は医療政策の地域差を反映した結果といえます。
まとめ
• 高知県が1596.9人で1位、神奈川県が512.3人で最下位の3倍格差 • 九州・四国地方が上位独占、首都圏は軒並み下位という地域差 • 高齢化率と在宅医療体制が在院患者数を大きく左右 • 医療機能分化の推進が在院日数短縮の鍵 • 地域包括ケアシステムの充実が格差解消の決め手 • 医療DXの活用による効率的医療提供体制の構築が今後の課題
継続的な医療提供体制の見直しと、地域特性に応じた在宅医療推進策の実施が求められます。各都道府県は先進事例を参考に、地域完結型医療体制の構築に取り組むべきです。