一般病院の1日平均在院患者数(人口10万人当たり)は、地域の医療需要と病床利用状況を示す重要な指標です。この指標は、高齢化の進行度、慢性疾患患者数、在宅医療の普及度の3つの要因が大きく影響します。九州・四国地方が上位、首都圏が下位という明確な地域差が見られ、医療体制の地域格差を反映しています。
概要
一般病院の1日平均在院患者数(人口10万人当たり)は、地域の医療需要と病床利用状況を示す指標です。この指標は、高齢化の進行度、慢性疾患患者数、在宅医療の普及度の3つの要因が大きく影響します。
全国平均は784.3人となっており、九州・四国地方が上位、首都圏が下位という明確な地域差が見られます。この差は医療体制の地域格差を反映しています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
高知県
高知県は1,596.9人(偏差値86.3)で圧倒的な1位です。高齢化率が全国最高水準で、慢性疾患患者が多いことが主因です。高齢化率約35%で全国トップクラスであり、在宅医療体制の整備と病床の効率的運用が課題となっています。
鹿児島県
鹿児島県は1,204.9人(偏差値67.6)で2位です。離島・過疎地域での医療確保が在院患者数増加の要因です。高齢化率の高さも要因であり、医療アクセス改善が課題となっています。
佐賀県
佐賀県は1,174.2人(偏差値66.1)で3位です。人口あたりの病床数が多く、医療機関の集積が在院患者数を押し上げています。医療機関密度の高さが特徴であり、近隣県からの患者流入も影響しています。
山口県
山口県は1,121.5人(偏差値63.6)で4位です。高齢化の進行と慢性疾患患者の増加が背景にあります。人口減少と高齢化の同時進行が進んでおり、慢性疾患管理体制の充実と在宅医療への移行支援が必要です。
熊本県
熊本県は1,103.9人(偏差値62.8)で5位です。地域中核病院の集積と広域医療圏の形成が特徴的です。地域医療支援病院の集積が進んでおり、広域からの患者受け入れ体制が整っています。
下位5県の詳細分析
東京都
東京都は580.2人(偏差値37.8)で43位です。在宅医療の充実と効率的な医療提供体制が在院患者数を抑制しています。在宅医療・訪問診療の普及や医療機関間の連携充実、急性期病床の効率運用が進んでいます。
岐阜県
岐阜県は566.7人(偏差値37.1)で44位です。隣接する愛知県への患者流出と在院日数の短縮が影響しています。名古屋圏への医療依存度が高く、病床利用率の最適化と地域完結型医療の推進が課題です。
愛知県
愛知県は566.4人(偏差値37.1)で45位です。高度医療機関の集積により、在院日数の短縮が実現されています。高度急性期医療の充実、クリティカルパスの活用、地域連携パスの整備が進んでいます。
埼玉県
埼玉県は531.0人(偏差値35.4)で46位です。都市部での効率的な医療提供と在宅医療の推進が特徴です。医療機関の機能分化推進、在宅医療支援体制の充実、病床稼働率の最適化が進んでいます。
神奈川県
神奈川県は512.3人(偏差値34.5)で最下位です。在宅医療の先進的取り組みと効率的な病床運用が実現されています。在宅医療推進の先進県であり、地域包括ケアシステムの充実と医療・介護連携の強化が進んでいます。
地域別の特徴分析
九州・四国地方
九州・四国地方は軒並み上位にランクインしています。鹿児島県(2位)、佐賀県(3位)、熊本県(5位)、高知県(1位)が代表的です。高齢化率の高さと医療機関への依存度が特徴的であり、離島・過疎地域での医療確保も在院患者数増加の要因となっています。
関西地方
関西地方では、大阪府や兵庫県は中位に位置しています。都市部では医療機能の分化が進み、地方では高齢化対応が課題です。地域内での医療格差も顕著に現れています。
首都圏
首都圏では、神奈川県(47位)、埼玉県(46位)、東京都(43位)がいずれも下位です。在宅医療の充実と効率的な病床運用が共通の特徴です。医療機関の機能分化と地域連携が進んでいます。
中部・東海地方
中部・東海地方では、愛知県(45位)、岐阜県(44位)が下位にランクインしています。製造業中心の産業構造で働き世代が多く、在宅医療体制も整備されています。名古屋圏への医療集約化も進んでいます。
社会的・経済的影響
最上位の高知県と最下位の神奈川県では約3倍の格差が存在します。この格差は医療費負担や医療従事者の配置に大きな影響を与えています。地域間格差の主要因は高齢化率の差、在宅医療体制の整備状況、医療機関の機能分化の進展度です。
上位県では医療費増大と医療従事者不足が深刻化しています。下位県では効率的な医療提供により、医療費抑制効果とQOL向上が実現されています。この格差は地域経済にも影響し、医療従事者の地域偏在や医療関連産業の集積差を生み出しています。
対策と今後の展望
在院患者数の地域格差解消には、在宅医療の推進が最も重要です。訪問診療体制の充実と地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。
神奈川県や東京都の成功事例として、医療・介護連携の強化とICT活用が注目されています。病床機能の分化と地域医療連携パスの活用も効果的です。
医療DXの推進により、遠隔医療や在宅モニタリングの普及が期待されます。各地域の特性に応じたオーダーメイド型医療体制の構築が重要な課題となっています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 836.4 |
中央値 | 814.9 |
最大値 | 1,596.9(高知県) |
最小値 | 512.3(神奈川県) |
標準偏差 | 209.3 |
データ数 | 47件 |
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別一般病院の1日平均在院患者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
平均値と中央値の比較では、全国平均784.3人に対し、中央値は757.8人でやや下回っています。これは高知県(1,596.9人)などの外れ値が平均を押し上げているためです。
分布の歪みでは、データの分布は右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い在院患者数を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。
外れ値の特定では、高知県(1,596.9人)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、神奈川県(512.3人)は明らかな下側の外れ値として識別され、地域特有の要因が強く影響していることが統計的にも確認されます。
四分位範囲による分布の特徴では、第1四分位数(Q1)は634.7人、第3四分位数(Q3)は907.3人であり、四分位範囲(IQR)は272.6人です。これは、中央の50%の都道府県の1日平均在院患者数が634.7人から907.3人の間に収まっていることを示しています。
標準偏差によるばらつきの程度では、標準偏差は214.6人と比較的大きく、都道府県間のばらつきは比較的大きいと言えます。これは、地域ごとの医療ニーズや医療提供体制の違いによるものと考えられます。
まとめ
2022年度の一般病院の1日平均在院患者数分析から、高知県が1,596.9人で1位、神奈川県が512.3人で最下位という結果が明らかになりました。
九州・四国地方が上位を独占し、首都圏は軒並み下位という地域差が見られます。高齢化率と在宅医療体制が在院患者数を大きく左右しています。
最大3倍の格差が存在し、医療機能分化の推進が在院日数短縮の鍵となります。
地域包括ケアシステムの充実が格差解消の決め手となります。
医療DXの活用による効率的医療提供体制の構築が今後の課題です。継続的な医療提供体制の見直しと、地域特性に応じた在宅医療推進策の実施が求められます。各都道府県は先進事例を参考に、地域完結型医療体制の構築に取り組むべきです。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 1,596.9 | 86.3 | -2.7% |
2 | 鹿児島県 | 1,204.9 | 67.6 | -0.9% |
3 | 佐賀県 | 1,174.2 | 66.1 | +0.3% |
4 | 山口県 | 1,121.5 | 63.6 | -0.4% |
5 | 熊本県 | 1,103.9 | 62.8 | -1.5% |
6 | 長崎県 | 1,072.0 | 61.3 | -1.3% |
7 | 徳島県 | 1,064.8 | 60.9 | -2.6% |
8 | 北海道 | 1,064.1 | 60.9 | -2.0% |
9 | 鳥取県 | 1,038.7 | 59.7 | -0.3% |
10 | 福岡県 | 1,027.5 | 59.1 | -1.3% |
11 | 大分県 | 978.1 | 56.8 | -1.6% |
12 | 宮崎県 | 945.4 | 55.2 | -1.4% |
13 | 富山県 | 932.2 | 54.6 | -1.4% |
14 | 愛媛県 | 917.3 | 53.9 | -0.8% |
15 | 和歌山県 | 907.3 | 53.4 | -1.0% |
16 | 島根県 | 902.1 | 53.1 | -1.6% |
17 | 石川県 | 892.2 | 52.7 | -1.2% |
18 | 福井県 | 862.1 | 51.2 | -1.1% |
19 | 岡山県 | 849.3 | 50.6 | -0.5% |
20 | 香川県 | 844.9 | 50.4 | -0.4% |
21 | 秋田県 | 840.4 | 50.2 | -1.8% |
22 | 沖縄県 | 818.7 | 49.2 | -2.7% |
23 | 奈良県 | 815.9 | 49.0 | -1.1% |
24 | 広島県 | 814.9 | 49.0 | -1.8% |
25 | 京都府 | 801.1 | 48.3 | -1.6% |
26 | 群馬県 | 797.0 | 48.1 | +0.4% |
27 | 山形県 | 772.0 | 46.9 | +0.6% |
28 | 山梨県 | 770.5 | 46.9 | -0.3% |
29 | 大阪府 | 768.4 | 46.8 | -2.0% |
30 | 長野県 | 762.8 | 46.5 | -0.9% |
31 | 青森県 | 754.6 | 46.1 | -2.9% |
32 | 岩手県 | 747.0 | 45.7 | -0.6% |
33 | 兵庫県 | 735.5 | 45.2 | +0.4% |
34 | 新潟県 | 716.0 | 44.3 | -0.5% |
35 | 栃木県 | 687.4 | 42.9 | -1.1% |
36 | 福島県 | 678.0 | 42.4 | +0.4% |
37 | 三重県 | 666.6 | 41.9 | +0.1% |
38 | 茨城県 | 646.5 | 40.9 | -0.2% |
39 | 滋賀県 | 630.2 | 40.2 | -0.1% |
40 | 静岡県 | 622.9 | 39.8 | +0.1% |
41 | 宮城県 | 610.1 | 39.2 | -0.3% |
42 | 千葉県 | 596.1 | 38.5 | -0.1% |
43 | 東京都 | 580.2 | 37.8 | -1.5% |
44 | 岐阜県 | 566.7 | 37.1 | -0.2% |
45 | 愛知県 | 566.4 | 37.1 | -0.3% |
46 | 埼玉県 | 531.0 | 35.4 | -0.6% |
47 | 神奈川県 | 512.3 | 34.5 | +0.5% |