一般病院の1日平均外来患者数(人口10万人当たり)は、地域の医療利用状況を表す基本的指標です。病院の外来診療を受ける患者数を人口比で標準化したもので、四国地方が圧倒的優位を占め、都市部は受診率が低い傾向が見られます。
概要
一般病院の1日平均外来患者数(人口10万人当たり)は、地域の医療利用状況を表す基本的指標です。病院の外来診療を受ける患者数を人口比で標準化したものです。
この指標が重要な理由は、医療アクセスの実態把握、地域医療格差の可視化、医療政策立案の基礎データ提供です。2022年度の全国平均は1,062.3人で、最上位の高知県と最下位の神奈川県には2.2倍の格差があります。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
高知県
高知県は1,610.6人(偏差値81.6)で圧倒的な1位です。2位の徳島県を173.5人も上回っています。高齢化率が全国最高水準で、慢性疾患患者が多いことが主因です。高齢化率約37.4%(全国1位)であり、人口密度が低く、病院への依存度が高いです。
徳島県
徳島県は1,437.1人(偏差値71.9)で2位です。四国地方の医療特性を共有しています。高齢化と過疎化により、病院外来への依存が高まっています。高齢化率約34.8%(全国5位)であり、診療所不足により病院外来に集中する傾向が見られます。
香川県
香川県は1,318.9人(偏差値65.2)で3位です。人口規模は小さいものの、医療機関への受診率が高い地域です。生活習慣病の有病率が高いことも影響しています。
福井県
福井県は1,311.2人(偏差値64.8)で4位です。四国以外で唯一上位5位に入りました。高齢化と冬季の受診行動が特徴的です。豪雪地帯で冬季医療需要が増加し、三世代同居率が高く、高齢者医療が充実しています。
愛媛県
愛媛県は1,287.6人(偏差値63.4)で5位です。四国4県すべてが上位に位置する結果となりました。みかんなど農業県の特性と高齢化が影響しています。農業従事者の高齢化が深刻であり、離島や山間部の医療アクセス確保が課題です。
下位5県の詳細分析
神奈川県
神奈川県は739.6人(偏差値32.6)で最下位です。首都圏の特性を反映した結果となりました。診療所の充実と予防医療の普及が要因です。診療所数が人口当たり全国上位であり、若年層比率が高く、健康意識も高いです。
静岡県
静岡県は811.7人(偏差値36.6)で46位です。温暖な気候と健康長寿県の特性が表れています。予防医療の充実が受診数抑制に寄与しています。健康寿命が全国トップクラスであり、温暖な気候で疾病リスクが低い傾向が見られます。
埼玉県
埼玉県は816.4人(偏差値36.9)で45位です。首都圏のベッドタウンとして診療所利用が多い地域です。通勤者の多さも影響しています。東京都心への通勤者が多数であり、診療所での初期診療が充実しています。
愛知県
愛知県は829.7人(偏差値37.6)で44位です。産業県として働き盛り世代が多く、病院受診率が低い傾向です。企業の健康管理も充実しています。製造業中心で労働人口が多く、企業内健康管理が発達しています。
宮城県
宮城県は846.3人(偏差値38.6)で43位です。東北地方では珍しく下位に位置しています。仙台市への医療集約と効率化が要因です。仙台市への医療機関集中が進んでおり、東北の医療拠点としての機能も果たしています。
地域別の特徴分析
四国地方
四国地方では、四国4県すべてが上位10位以内に位置する特異な結果です。高知県(1位)、徳島県(2位)、香川県(3位)、愛媛県(5位)となっています。高齢化率の高さと医療機関への依存度が共通要因です。
関東地方
関東地方では、首都圏を中心に下位が目立ちます。神奈川県(47位)、埼玉県(45位)が最下位グループです。診療所の充実と医療の機能分化が進んでいます。
中部地方
中部地方では、福井県(4位)が上位の一方、愛知県(44位)、静岡県(46位)が下位です。地域内での格差が大きい特徴があります。
東北地方
東北地方では、宮城県(43位)以外は中位に集中しています。地方部の特性を示す結果となりました。
社会的・経済的影響
最上位の高知県(1,610.6人)と最下位の神奈川県(739.6人)の格差は2.2倍に達します。この格差は医療費負担や医療従事者の配置に大きな影響を与えています。地域間格差の主要因は高齢化率の地域差、医療機関の立地偏在、診療所と病院の機能分化の差です。
高受診率地域では医療費増大が懸念されます。一方で、低受診率地域では重篤化リスクの増大も危惧されます。経済的影響では、医療関連産業の地域集積度に差が生じています。医療従事者の地域偏在も深刻な問題となっています。
対策と今後の展望
地域格差の是正として、遠隔医療の活用拡大により、地方部の医療アクセス改善を図ることができます。診療所機能の強化により、病院外来の負担軽減が期待されます。
成功事例として、長野県の予防医療モデルや沖縄県の離島医療システムが参考になります。
今後の課題として、医療DXの推進と地域医療連携の強化です。効率的で質の高い医療提供体制の構築が急務となっています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 1,049 |
中央値 | 1,001.3 |
最大値 | 1,610.6(高知県) |
最小値 | 739.6(神奈川県) |
標準偏差 | 177.5 |
データ数 | 47件 |
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別一般病院の1日平均外来患者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
平均値と中央値の比較では、全国平均1,062.3人に対し、中央値は1,041.5人でやや下回っています。これは高知県(1,610.6人)などの外れ値が平均を押し上げているためです。
分布の歪みでは、データの分布は右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い外来患者数を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。
外れ値の特定では、高知県(1,610.6人)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、神奈川県(739.6人)は明らかな下側の外れ値として識別され、地域特有の要因が強く影響していることが統計的にも確認されます。
四分位範囲による分布の特徴では、第1四分位数(Q1)は963.3人、第3四分位数(Q3)は1,156.8人であり、四分位範囲(IQR)は193.5人です。これは、中央の50%の都道府県の1日平均外来患者数が963.3人から1,156.8人の間に収まっていることを示しています。
標準偏差によるばらつきの程度では、標準偏差は154.8人と比較的大きく、都道府県間のばらつきは比較的大きいと言えます。これは、地域ごとの医療ニーズや医療提供体制の違いによるものと考えられます。
まとめ
2022年度の一般病院の1日平均外来患者数分析から、高知県が1,610.6人で1位、神奈川県が739.6人で最下位という結果が明らかになりました。
四国地方の突出した高受診率と、首都圏の低受診率が特徴です。高齢化と受診率の強い関連性、医療機関の機能分化が影響しています。
最大2.2倍の地域格差が存在し、医療政策上の重要課題となっています。
医療費負担や地域経済に大きな影響を与え、医療従事者の地域偏在も深刻な問題となっています。
医療DXの活用と地域医療連携の強化が必要です。継続的なデータ収集と分析により、効果的な医療政策の立案が期待されます。地域特性を活かした医療提供体制の最適化が急務です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 1,610.6 | 81.6 | +0.1% |
2 | 徳島県 | 1,437.1 | 71.9 | +3.9% |
3 | 香川県 | 1,318.9 | 65.2 | +0.2% |
4 | 福井県 | 1,311.2 | 64.8 | +2.5% |
5 | 愛媛県 | 1,287.6 | 63.4 | +0.4% |
6 | 北海道 | 1,255.8 | 61.7 | +1.1% |
7 | 富山県 | 1,241.6 | 60.9 | +2.2% |
8 | 石川県 | 1,241.4 | 60.8 | +0.5% |
9 | 岡山県 | 1,237.5 | 60.6 | +2.3% |
10 | 長野県 | 1,183.8 | 57.6 | +3.1% |
11 | 大分県 | 1,182.6 | 57.5 | +1.8% |
12 | 鹿児島県 | 1,172.9 | 57.0 | +2.1% |
13 | 和歌山県 | 1,170.6 | 56.9 | +1.5% |
14 | 秋田県 | 1,154.0 | 55.9 | +0.9% |
15 | 鳥取県 | 1,123.5 | 54.2 | +2.4% |
16 | 奈良県 | 1,121.8 | 54.1 | +3.1% |
17 | 長崎県 | 1,090.4 | 52.3 | +1.7% |
18 | 佐賀県 | 1,088.8 | 52.2 | +2.2% |
19 | 京都府 | 1,083.7 | 52.0 | +1.4% |
20 | 山梨県 | 1,049.4 | 50.0 | +1.3% |
21 | 宮崎県 | 1,041.4 | 49.6 | +1.2% |
22 | 青森県 | 1,023.8 | 48.6 | +0.8% |
23 | 山口県 | 1,020.7 | 48.4 | +2.2% |
24 | 新潟県 | 1,001.3 | 47.3 | -1.3% |
25 | 熊本県 | 1,000.7 | 47.3 | +0.3% |
26 | 島根県 | 992.9 | 46.8 | +2.1% |
27 | 山形県 | 984.6 | 46.4 | +3.4% |
28 | 茨城県 | 970.2 | 45.6 | +3.1% |
29 | 広島県 | 964.4 | 45.2 | +1.1% |
30 | 福島県 | 961.6 | 45.1 | +3.1% |
31 | 福岡県 | 956.4 | 44.8 | +1.0% |
32 | 栃木県 | 954.2 | 44.7 | +1.9% |
33 | 大阪府 | 948.2 | 44.3 | +1.1% |
34 | 群馬県 | 931.1 | 43.4 | +2.2% |
35 | 岐阜県 | 930.7 | 43.3 | +2.0% |
36 | 兵庫県 | 922.8 | 42.9 | +2.2% |
37 | 千葉県 | 905.2 | 41.9 | +2.6% |
38 | 岩手県 | 900.6 | 41.6 | +4.0% |
39 | 滋賀県 | 889.2 | 41.0 | +2.4% |
40 | 東京都 | 887.1 | 40.9 | +1.3% |
41 | 沖縄県 | 858.1 | 39.2 | +2.7% |
42 | 三重県 | 852.1 | 38.9 | +1.6% |
43 | 宮城県 | 846.3 | 38.6 | +1.2% |
44 | 愛知県 | 829.7 | 37.6 | +2.1% |
45 | 埼玉県 | 816.4 | 36.9 | +2.3% |
46 | 静岡県 | 811.7 | 36.6 | +2.7% |
47 | 神奈川県 | 739.6 | 32.6 | +1.9% |