精神科病院の1日平均外来患者数(人口10万人当たり)は、その地域の精神保健医療ニーズと医療提供体制を反映する重要な指標です。人口10万人当たりで標準化することで、地域間の公平な比較が可能になり、九州・四国地域に高い県が集中し、首都圏・近畿圏は低い傾向にあります。
概要
精神科病院の1日平均外来患者数は、その地域の精神保健医療ニーズと医療提供体制を反映する重要な指標です。人口10万人当たりで標準化することで、地域間の公平な比較が可能になります。
この指標が重要な理由は、医療アクセスの実態把握、地域格差の可視化、そして政策立案の基礎資料となるためです。2022年度の全国平均は56.4人で、地域間で大きな格差があることが確認されています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
熊本県
熊本県は104.8人(偏差値68.9)で全国1位です。全国平均を大幅に上回る高い数値を示しています。精神科医療機関の充実した配置、地域密着型の医療提供体制、継続的な通院治療の普及が特徴です。
山形県
山形県は102.6人(偏差値68.0)で2位です。1位との差はわずか2.2人です。県内の医療機関連携の強化、精神保健福祉の充実、アクセスしやすい医療環境が特徴です。
香川県
香川県は97.8人(偏差値66.0)で3位です。四国地方の精神科医療をリードしています。県全体での医療資源の効率配置、専門医療機関の集約化、地域医療連携の推進が特徴です。
大分県
大分県は97.1人(偏差値65.7)で4位です。九州地方で2県目の上位ランクインです。精神科病院の地域密着型運営、外来医療の充実化、継続治療の重視が特徴です。
鹿児島県
鹿児島県は94.4人(偏差値64.6)で5位です。離島を含む地域での医療提供に特徴があります。島嶼部を含む医療ネットワーク、移動困難者への配慮、遠隔医療の活用が特徴です。
下位5県の詳細分析
奈良県
奈良県は10.9人(偏差値30.1)で最下位です。全国平均を大幅に下回る結果です。近隣府県への患者流出の可能性、精神科医療機関の不足、アクセス改善の必要性が課題です。
東京都
東京都は20.1人(偏差値33.9)で46位です。人口規模に対して相対的に低い数値です。クリニック中心の医療提供体制、病院外来以外の選択肢の充実、医療機関の機能分化が課題です。
京都府
京都府は20.7人(偏差値34.1)で45位です。関西圏での特徴的な位置づけです。大学病院中心の医療体制、専門性の高い医療の集約化、近隣府県との医療連携が課題です。
神奈川県
神奈川県は23.5人(偏差値35.3)で44位です。首都圏の中でも低位にあります。民間クリニックの充実、病院外来の相対的少なさ、多様な医療選択肢の存在が課題です。
千葉県
千葉県は26.3人(偏差値36.4)で43位です。都市部特有の傾向を示しています。東京都への患者流出、地域医療機関の分散、医療アクセスの多様化が課題です。
地域別の特徴分析
九州・沖縄地方
九州・沖縄地方では、全体的に高い数値を示しています。熊本県(1位)、大分県(4位)、鹿児島県(5位)が上位にランクイン。地域密着型の精神科医療が発達していることが特徴です。
中国・四国地方
中国・四国地方では、香川県(3位)が突出して高い数値を示しています。四国の小さな県域での効率的な医療提供体制が確立されています。
東北地方
東北地方では、山形県(2位)が全国2位の高順位を獲得。東北地方の精神科医療の充実ぶりを示しています。地方部でも質の高い医療アクセスが実現されています。
関東地方
関東地方では、首都圏は全体的に低位にあります。東京都(46位)、神奈川県(44位)、千葉県(43位)が下位に集中。病院外来以外の医療選択肢の充実が影響している可能性があります。
近畿地方
近畿地方では、奈良県(47位)、京都府(45位)が下位に位置しています。都市部での医療機能の分化と近隣府県への医療圏拡大が要因と考えられます。
社会的・経済的影響
最上位の熊本県と最下位の奈良県の格差は約9.6倍に達しています。これは精神保健医療における深刻な地域格差を示しています。主な要因は、医療機関の地域分布、医療提供体制、人口流動、医療政策です。
長期入院の社会的コストは極めて大きく、1人当たり年間約300万円の医療費が発生し、社会参加機会の喪失による経済損失も深刻です。
医療費だけでなく、労働力の社会参加阻害による機会費用も含むため、地域経済活性化の観点からも改善が急務です。
対策と今後の展望
地域格差解消への取り組みとして、熊本県や山形県の成功事例を参考に、各地域の特性に応じた対策が求められています。
デジタル技術の活用として、遠隔診療システムの導入拡大、AIを活用した診断支援システムが有効です。
医療連携の強化として、地域医療連携ネットワークの構築、病院とクリニックの機能分担最適化が重要です。
人材育成の促進として、精神科医の地域偏在解消、多職種連携チームの強化が求められます。
継続的な改善により、全国どこでも質の高い精神科医療が受けられる環境整備が期待されます。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 59.1 |
中央値 | 59.3 |
最大値 | 104.8(熊本県) |
最小値 | 10.9(奈良県) |
標準偏差 | 24.2 |
データ数 | 47件 |
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別精神科病院の1日平均外来患者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
平均値と中央値の比較では、全国平均56.4人に対し、中央値が50.0人とやや低く、上位県の数値が全体を押し上げていることがわかります。
分布の歪みでは、データの分布は右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い外来患者数を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。
外れ値の特定では、熊本県(104.8人)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、奈良県(10.9人)は明らかな下側の外れ値として識別され、地域特有の要因が強く影響していることが統計的にも確認されます。
四分位範囲による分布の特徴では、第1四分位数(Q1)は30.0人、第3四分位数(Q3)は70.0人であり、四分位範囲(IQR)は40.0人です。これは、中央の50%の都道府県の1日平均外来患者数が30.0人から70.0人の間に収まっていることを示しています。
標準偏差によるばらつきの程度では、標準偏差は25.0人と大きく、都道府県間の格差が相当に大きいことを示しています。この格差は単なる統計上の差異ではなく、実際の医療アクセスに大きな影響を与える重要な問題です。
まとめ
2022年度の精神科病院外来患者数分析から、熊本県が104.8人で1位、奈良県が10.9人で最下位という結果が明らかになりました。
地域格差の深刻性(最大約9.6倍の格差)は、医療アクセスに大きな不平等をもたらしています。九州・東北地方で高く、首都圏で低い明確な地域パターンが見られます。
医療提供体制の違いが数値に大きく影響し、デジタル技術活用による格差解消の可能性が示唆されます。
継続的な政策改善と地域連携強化が急務です。成功地域の取り組みを全国展開し、どの地域でも適切な精神科医療が受けられる環境整備が重要です。定期的なデータモニタリングにより、改善効果を継続的に検証していく必要があります。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 熊本県 | 104.8 | 68.9 | +0.1% |
2 | 山形県 | 102.6 | 68.0 | +1.2% |
3 | 香川県 | 97.8 | 66.0 | +5.7% |
4 | 大分県 | 97.1 | 65.7 | -3.0% |
5 | 鹿児島県 | 94.4 | 64.6 | -2.0% |
6 | 佐賀県 | 89.2 | 62.5 | -1.4% |
7 | 長崎県 | 85.4 | 60.9 | +2.5% |
8 | 宮崎県 | 84.7 | 60.6 | -0.9% |
9 | 青森県 | 82.6 | 59.7 | -1.6% |
10 | 岩手県 | 81.5 | 59.3 | -1.8% |
11 | 徳島県 | 81.2 | 59.1 | +0.9% |
12 | 山口県 | 79.5 | 58.4 | -4.0% |
13 | 沖縄県 | 75.1 | 56.6 | +1.5% |
14 | 北海道 | 73.8 | 56.1 | +1.8% |
15 | 高知県 | 71.9 | 55.3 | +6.5% |
16 | 福井県 | 70.6 | 54.8 | -2.4% |
17 | 富山県 | 69.0 | 54.1 | +1.2% |
18 | 広島県 | 68.2 | 53.8 | - |
19 | 山梨県 | 68.1 | 53.7 | -0.4% |
20 | 福島県 | 67.8 | 53.6 | +4.0% |
21 | 島根県 | 65.4 | 52.6 | -0.1% |
22 | 福岡県 | 64.7 | 52.3 | +0.1% |
23 | 岡山県 | 61.5 | 51.0 | -2.1% |
24 | 栃木県 | 59.3 | 50.1 | +4.2% |
25 | 宮城県 | 58.4 | 49.7 | -1.0% |
26 | 石川県 | 55.1 | 48.3 | -0.5% |
27 | 三重県 | 55.1 | 48.3 | +1.1% |
28 | 愛媛県 | 55.0 | 48.3 | +0.9% |
29 | 秋田県 | 54.7 | 48.2 | +0.4% |
30 | 新潟県 | 52.0 | 47.1 | -0.8% |
31 | 群馬県 | 49.0 | 45.8 | +2.9% |
32 | 鳥取県 | 45.3 | 44.3 | +8.6% |
33 | 茨城県 | 41.7 | 42.8 | +3.0% |
34 | 和歌山県 | 41.4 | 42.7 | +3.2% |
35 | 静岡県 | 41.0 | 42.5 | +1.5% |
36 | 岐阜県 | 37.9 | 41.2 | -3.3% |
37 | 埼玉県 | 37.6 | 41.1 | +3.3% |
38 | 長野県 | 34.9 | 40.0 | -0.6% |
39 | 愛知県 | 32.8 | 39.1 | -5.2% |
40 | 兵庫県 | 29.8 | 37.9 | +0.3% |
41 | 大阪府 | 29.2 | 37.6 | -0.3% |
42 | 滋賀県 | 28.7 | 37.4 | +4.4% |
43 | 千葉県 | 26.3 | 36.4 | +4.4% |
44 | 神奈川県 | 23.5 | 35.3 | -4.1% |
45 | 京都府 | 20.7 | 34.1 | +4.0% |
46 | 東京都 | 20.1 | 33.9 | +1.0% |
47 | 奈良県 | 10.9 | 30.1 | -2.7% |