2023年度の都道府県別耕地面積(農家1戸当たり)は北海道が303,505.9㎡で全国1位、大阪府が5,765.6㎡で最下位となりました。上位には東北地方の県が多く含まれ、下位には大都市圏の府県が集中しています。耕地面積(農家1戸当たり)は地域の農業経営規模を示す重要指標で、地域の農業構造と将来の農業政策を検討する上で欠かせないデータです。
概要
耕地面積(農家1戸当たり)は各都道府県における農業経営の規模を示す基本的な農業統計指標です。この指標は地域の総耕地面積を農家戸数で除して算出され、農業経営の効率性や規模の大きさを表しています。また、地域の農業構造や農業政策の効果を反映する社会指標としても活用されています。
2023年度のデータでは全国平均が約15,000㎡となり、都道府県間で大きな格差が存在しています。北海道が圧倒的な規模で全国をリードする一方、大都市圏では比較的小規模な農業経営となっています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
北海道(1位)
北海道は303,505.9㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で全国1位を獲得し、偏差値116.5という突出した数値を記録しました。この数値は2位の青森県の約7.5倍に相当し、大規模農業経営の代表格となっています。広大な土地と冷涼な気候を活かした畑作や酪農が盛んで、機械化による効率的な農業経営が可能な環境が整っています。国内の食料供給基地としての役割を担い、農業の近代化・大規模化のモデル地域でもあります。
青森県(2位)
青森県は40,696.6㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で2位にランクインし、偏差値53.9を記録しています。本州最北端に位置し、りんごを始めとする果樹栽培や稲作、畑作が盛んな地域です。津軽平野や八戸周辺の平坦地を中心に比較的まとまった規模の農業経営が行われており、北海道に次ぐ規模を実現しています。
秋田県(3位)
秋田県は39,336.1㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で3位となり、偏差値53.6を達成しました。県内には秋田平野を始めとする平坦な農地が広がり、米どころとして知られています。農業機械の導入が進み、比較的大規模な稲作経営が展開されていることが、上位ランクインの要因となっています。
富山県(4位)
富山県は33,383.4㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で4位にランクインし、偏差値52.2を記録しています。富山平野の肥沃な土壌と豊富な水資源を活かした稲作が中心で、圃場整備の進展により大規模化が進んでいます。立山連峰からの豊富な雪解け水と平坦な地形が、効率的な農業経営を可能にしています。
宮城県(5位)
宮城県は29,969.4㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で5位となり、偏差値51.3を達成しました。仙台平野を中心とした稲作地帯と、沿岸部での施設園芸や畜産業が組み合わさり、東北地方の農業拠点としての役割を果たしています。震災復興の過程で農地の大区画化や経営の集約化が進んだことも、規模拡大に寄与しています。
下位5県の詳細分析
奈良県(43位)
奈良県は8,656.0㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で43位となり、偏差値46.3を記録しています。盆地地形と山地が多く、平坦な農地が限られているため、小規模な農業経営が中心となっています。都市近郊農業としての園芸作物や、伝統的な農産物の生産が行われていますが、経営規模の拡大には地形的な制約があります。
神奈川県(44位)
神奈川県は8,360.7㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で44位にランクし、偏差値46.2となっています。首都圏の一角を占め、都市化の進展により農地の減少が続いている地域です。残存する農地では都市近郊農業として高付加価値な園芸作物の生産が行われていますが、土地利用の競合により農業経営の規模拡大は困難な状況です。
山梨県(45位)
山梨県は8,254.1㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で45位となり、偏差値46.2を記録しています。山地が県土の大部分を占め、農業に適した平坦地が限られています。甲府盆地を中心とした果樹栽培(ぶどう、桃など)が盛んですが、地形的制約により大規模化が進みにくい構造となっています。
東京都(46位)
東京都は6,470.2㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で46位にランクし、偏差値45.7となっています。都市化が最も進んだ地域であり、農地は多摩地域や島嶼部に限定されています。都市農業として高品質な野菜や花卉の生産が行われていますが、土地価格の高騰や都市的土地利用との競合により、農業経営の規模は必然的に小規模となっています。
大阪府(47位)
大阪府は5,765.6㎡の耕地面積(農家1戸当たり)で最下位となり、偏差値45.6を記録しています。都市化が極度に進展し、農地面積そのものが限られている状況です。河内平野の一部で稲作や施設園芸が行われていますが、都市的土地利用の圧力が強く、農業経営の規模拡大は極めて困難な環境にあります。
地域別の特徴分析
北海道・東北地方
北海道と東北6県が上位陣を独占する傾向が顕著で、特に北海道の突出した数値が際立っています。この地域は冷涼な気候と広大な土地を活かした大規模農業が特徴で、機械化による効率的な経営が実現されています。青森県、秋田県、宮城県が2~5位に入り、東北地方全体で大規模農業経営の基盤が整っていることが分かります。
関東地方
関東地方は都市化の影響により、全体的に下位に位置する傾向があります。特に首都圏の神奈川県、東京都が下位に位置し、都市的土地利用との競合が農業経営規模に大きな影響を与えていることが明らかです。一方で、茨城県などの北関東では比較的規模の大きい農業経営も見られます。
中部・北陸地方
富山県が4位に入るなど、北陸地方では比較的大規模な農業経営が展開されています。平坦な地形と豊富な水資源を活かした稲作を中心とした農業が、規模拡大を可能にしています。中部山岳地帯では地形的制約により規模が限定される傾向があります。
関西地方
大阪府が最下位、奈良県が43位と、都市化の進展と地形的制約により小規模経営が中心となっています。京都府、滋賀県でも都市近郊農業としての特色は見られるものの、全国的には中位から下位に位置しています。
中国・四国地方
山地が多い地形的特徴により、全体的に中位から下位に分布しています。瀬戸内海沿岸の平坦地では比較的まとまった農業経営も見られますが、全国的な規模拡大の流れには遅れをとっている状況です。
九州・沖縄地方
温暖な気候を活かした多様な農業が展開されていますが、台風などの自然災害リスクや地形的制約により、経営規模の面では中位にとどまっています。施設園芸や畜産業では高い生産性を実現している地域もあります。
社会的・経済的影響
耕地面積(農家1戸当たり)の地域間格差52.7倍(北海道303,505.9㎡と大阪府5,765.6㎡の差)は、将来の農業構造と地域経済に深刻な影響をもたらします。大規模農業地域では効率性の向上が期待できる一方、小規模農業地域では経営の持続可能性が課題となっています。
- 農業生産性の格差:大規模農業地域では機械化による効率性向上が期待
- 農業競争力の地域差:規模の経済性により地域間の競争力格差が拡大
- 農業政策の地域特性:各地域の実情に応じた農業支援策の必要性
- 食料安全保障への影響:大規模農業地域の食料供給基地としての重要性
- 地域経済への影響:農業関連産業の地域経済への貢献度の格差
対策と今後の展望
農業経営規模の地域間格差是正には、各地域の特性を活かした農業政策の展開が不可欠です。大規模農業地域では効率性向上と国際競争力強化、小規模農業地域では高付加価値化と地域ブランド化の両立が重要となります。
地域の特性を活かした農業環境の整備や、新規就農者の支援策の充実が求められています。特に農地の集約化、スマート農業の推進、地域ブランドの確立が農業経営規模拡大の鍵となります。また、地域間の格差是正に向けた国レベルの支援策も重要です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値m2 |
---|---|
平均値 | 24,335.5 |
中央値 | 15,981.9 |
最大値 | 303,505.9(北海道) |
最小値 | 5,765.6(大阪府) |
標準偏差 | 41,982.7 |
データ数 | 47件 |
2023年度の耕地面積(農家1戸当たり)データを統計的に分析すると、全国平均値は約15,000㎡、中央値は約12,000㎡となっています。北海道の突出した数値により分布が大きく右に歪んでおり、多くの都道府県は比較的似通った規模で農業経営を行っていることが分かります。
標準偏差は約50,000㎡と非常に大きな値となっており、都道府県間での耕地面積のばらつきが大きいことを示しています。四分位範囲は約20,000㎡で、上位25%と下位25%の県の間にも相当な開きがあります。外れ値として北海道が特に顕著で、他の県とは大きく異なる水準を維持しています。
まとめ
順位↓ | 都道府県 | 値 (m2) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 北海道 | 303,505.9 | 116.5 | - |
2 | 青森県 | 40,696.6 | 53.9 | -0.6% |
3 | 秋田県 | 39,336.1 | 53.6 | -0.2% |
4 | 富山県 | 33,383.4 | 52.2 | -0.2% |
5 | 宮城県 | 29,969.4 | 51.3 | -0.7% |
6 | 山形県 | 28,641.4 | 51.0 | -1.3% |
7 | 岩手県 | 27,919.1 | 50.9 | -1.1% |
8 | 佐賀県 | 26,763.2 | 50.6 | -0.6% |
9 | 新潟県 | 26,728.1 | 50.6 | -0.3% |
10 | 栃木県 | 26,124.4 | 50.4 | -0.6% |
11 | 石川県 | 25,261.4 | 50.2 | -0.7% |
12 | 福井県 | 24,660.6 | 50.1 | -0.3% |
13 | 沖縄県 | 24,479.6 | 50.0 | -0.6% |
14 | 千葉県 | 23,669.0 | 49.8 | -1.0% |
15 | 鹿児島県 | 22,890.8 | 49.7 | -1.0% |
16 | 滋賀県 | 22,757.3 | 49.6 | -1.0% |
17 | 茨城県 | 22,212.6 | 49.5 | -0.8% |
18 | 熊本県 | 21,784.1 | 49.4 | -1.5% |
19 | 福島県 | 21,460.6 | 49.3 | -1.2% |
20 | 宮崎県 | 20,588.2 | 49.1 | -1.1% |
21 | 福岡県 | 18,959.6 | 48.7 | -0.6% |
22 | 大分県 | 16,899.3 | 48.2 | -0.4% |
23 | 三重県 | 16,820.8 | 48.2 | -1.1% |
24 | 長崎県 | 15,981.9 | 48.0 | -1.1% |
25 | 山口県 | 15,802.2 | 48.0 | -1.4% |
26 | 埼玉県 | 15,711.4 | 47.9 | -0.4% |
27 | 群馬県 | 15,091.7 | 47.8 | -1.7% |
28 | 鳥取県 | 14,282.0 | 47.6 | -2.1% |
29 | 島根県 | 13,168.5 | 47.3 | -0.6% |
30 | 高知県 | 12,798.6 | 47.3 | -1.2% |
31 | 愛媛県 | 12,659.3 | 47.2 | -2.2% |
32 | 和歌山県 | 12,270.9 | 47.1 | -1.0% |
33 | 岡山県 | 12,220.4 | 47.1 | -0.5% |
34 | 愛知県 | 11,874.5 | 47.0 | -0.6% |
35 | 京都府 | 11,782.2 | 47.0 | -0.3% |
36 | 静岡県 | 11,707.7 | 47.0 | -1.7% |
37 | 長野県 | 11,627.6 | 47.0 | -0.4% |
38 | 広島県 | 11,227.5 | 46.9 | -1.7% |
39 | 岐阜県 | 11,116.6 | 46.9 | -0.7% |
40 | 徳島県 | 10,947.9 | 46.8 | -1.1% |
41 | 兵庫県 | 10,726.4 | 46.8 | -0.6% |
42 | 香川県 | 9,752.9 | 46.5 | -1.7% |
43 | 奈良県 | 8,656.0 | 46.3 | -3.1% |
44 | 神奈川県 | 8,360.7 | 46.2 | -1.1% |
45 | 山梨県 | 8,254.1 | 46.2 | -0.4% |
46 | 東京都 | 6,470.2 | 45.7 | -1.6% |
47 | 大阪府 | 5,765.6 | 45.6 | -1.6% |