都道府県別経常収支比率ランキング(2021年度)
概要
経常収支比率は、地方自治体の財政構造の弾力性を測る重要な指標で、経常経費(人件費、扶助費、公債費など)が経常一般財源(地方税、地方交付税など)に占める割合を示します。この比率が高いほど財政の硬直化が進んでいることを意味し、一般的に都道府県では80%程度が適正とされています。
2021年度のデータを見ると、全国平均は88.8%で、最高の兵庫県97.2%から最低の東京都77.8%まで19.4ポイントの格差が存在しています。特に関西圏と地方部で高い値を示す一方、東京都や山陰地方では比較的低い水準となっており、地域の財政構造の違いが顕著に現れています。
この指標は自治体の財政運営の自由度を示すため、将来の政策展開や突発的な財政需要への対応能力を評価する上で極めて重要な意味を持っています。
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上位5県の詳細分析
兵庫県が97.2%(偏差値78.7)で全国1位となっており、財政硬直化が最も進んでいる状況です。阪神・淡路大震災の復興事業に伴う公債費負担や、人口密集地域における高い行政需要が背景にあると考えられます。
京都府は94.4%(偏差値70.0)で2位に位置しています。文化財保護や観光インフラ整備などの特有の財政需要に加え、府内の市町村への支援が財政を圧迫している要因として挙げられます。
福島県の93.8%(偏差値68.1)は3位で、東日本大震災と原発事故からの復興・復旧事業による継続的な財政負担が影響していると推測されます。災害対応に伴う経常的支出の増加が比率を押し上げています。
鹿児島県は92.8%(偏差値65.0)で4位となっており、離島や過疎地域を多く抱える地理的特性から、インフラ維持や住民サービス提供に高いコストが必要な構造的要因があります。
北海道の92.7%(偏差値64.7)は5位で、広大な面積に伴うインフラ維持費用や冬季の特別な行政需要が、経常的な支出を押し上げる要因となっています。
下位5県の詳細分析
東京都が77.8%(偏差値18.1)で全国最下位(47位)となっており、他県と比較して圧倒的に財政の弾力性が保たれています。豊富な税収基盤と効率的な行政運営により、経常収支比率を低く抑えることができています。
鳥取県は82.8%(偏差値33.7)で46位です。人口規模が小さく、効率的な行政運営と地方交付税による財源確保により、比較的良好な財政構造を維持しています。
宮崎県の83.7%(偏差値36.6)は45位で、農業中心の産業構造ながら、適切な財政管理により経常収支比率を抑制できています。
島根県は83.9%(偏差値37.2)で44位となっており、過疎化の進行にも関わらず、計画的な財政運営により健全性を保っています。
山梨県の84.5%(偏差値39.1)は43位で、首都圏近郊の立地条件を活かした財政基盤の安定化が図られています。
地域別の特徴分析
近畿地方では兵庫県、京都府が上位に位置し、大阪府も比較的高い水準にあります。人口密集地域特有の高い行政需要と、インフラ老朽化対応が共通の課題となっています。
東北地方は福島県が3位と高い一方で、他県は中位に分布しています。震災復興の有無による財政構造の違いが顕著に現れています。
九州地方では鹿児島県が4位と高く、離島や火山地域を抱える県で比率が高い傾向があります。一方で宮崎県は下位に位置し、県内でも格差が見られます。
中国・四国地方は全体的に中位から下位に分布しており、比較的安定した財政構造を維持している県が多い特徴があります。
関東地方では東京都が突出して低い一方、他県は全国平均程度となっており、首都圏内での財政力格差が明確です。
北海道は単独で上位5位に入っており、広域自治体特有の構造的課題を抱えています。
格差や課題の考察
最上位の兵庫県97.2%と最下位の東京都77.8%の間には19.4ポイントの大きな格差が存在しています。この格差は単なる財政運営の違いではなく、各地域が抱える構造的な課題や特性の違いを反映しています。
上位県の多くは、災害復旧・復興、人口密集地域の高い行政需要、地理的制約による高コスト構造といった共通要因を抱えています。これらは短期的な改善が困難な構造的課題であり、国の支援制度や財政調整機能の重要性を示しています。
一方で、下位県では効率的な行政運営や適切な財政規律により、健全な財政構造を維持しています。ただし、過度に低い比率は必要な住民サービスの水準確保に影響を与える可能性もあり、バランスの取れた財政運営が重要です。
今後は、高齢化の進展や社会保障費の増加により、全国的に経常収支比率の上昇圧力が高まることが予想され、持続可能な財政構造の構築が各都道府県の共通課題となっています。
統計データの分析から、平均値88.8%と中央値89.2%がほぼ同水準にあることが確認でき、データの分布に大きな歪みはないことが分かります。これは全国的に比較的均等な分布を示していることを意味します。
標準偏差3.9ポイントは、都道府県間のばらつきが中程度であることを示しており、地域特性による差異が存在する一方で、極端な格差は限定的であることが読み取れます。
最大値97.2%(兵庫県)と最小値77.8%(東京都)の差19.4ポイントは、财政構造の地域差を明確に示しています。特に東京都の値は他県と比較して際立って低く、首都圏の特殊性を物語っています。
第1四分位86.4%から第3四分位91.7%の範囲に約半数の都道府県が分布しており、この5.3ポイントの幅が標準的な経常収支比率の変動幅と考えられます。
まとめ
- 兵庫県が97.2%で最も財政硬直化が進んでおり、東京都の77.8%との格差は19.4ポイントに達している
- 近畿地方と東北(福島県)、九州の一部で高い比率を示し、地域特有の財政需要が影響している
- 中国・四国地方は全体的に安定した財政構造を維持している県が多い
- 全国平均88.8%は適正水準の80%を上回っており、多くの都道府県で財政の弾力性に課題がある
- 災害復旧、人口密集地域の行政需要、地理的制約が上位県の共通要因となっている
今後は社会保障費の増加や公共インフラの老朽化対応により、さらなる財政硬直化が懸念されます。各都道府県には事業の見直しや効率化による経常経費の抑制と、持続可能な財政構造の構築が求められています。継続的なモニタリングにより、財政健全化の進捗を注視していく必要があります。