都道府県別昼間人口比率ランキング(2020年度)
概要
昼間人口比率とは、常住人口(夜間人口)に対する昼間人口の割合を示す指標です。この記事では、2020年度の都道府県別昼間人口比率のランキングを紹介します。
昼間人口比率は、その地域の通勤・通学による人口流出入の状況を示す重要な指標であり、100%を超える地域は流入超過、100%未満の地域は流出超過を意味します。この値が高いほど、その地域が周辺地域からの通勤・通学者を多く集める雇用や教育の中心地であることを示しています。
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上位県と下位県の比較
昼間人口比率が高い上位5都府県
2020年度の昼間人口比率ランキングでは、東京都が116.1%(偏差値95.1)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多くの企業や教育機関が集中していることから、周辺県からの通勤・通学者が多く、昼間人口比率が極めて高くなっています。
2位は大阪府で103.9%(偏差値62.4)、3位は京都府で101.7%(偏差値56.5)、4位は愛知県で101.2%(偏差値55.1)、5位は佐賀県で100.4%(偏差値53.0)となっています。上位には大都市圏の中心都府県や地方の中枢都市を持つ県が占めており、周辺地域からの通勤・通学者を多く集めていることが特徴です。
昼間人口比率が低い下位5県
最も昼間人口比率が低かったのは埼玉県で89.6%(偏差値24.0)でした。埼玉県は東京都のベッドタウンとしての性格が強く、多くの住民が東京都へ通勤・通学しているため、昼間人口比率が低くなっています。
46位は千葉県で90.3%(偏差値25.9)、45位は奈良県で91.1%(偏差値28.0)、44位は神奈川県で91.7%(偏差値29.7)、43位は兵庫県で96.1%(偏差値41.5)となっています。下位県には三大都市圏の周辺県が多く、大都市圏の中心都市へ通勤・通学する住民が多いことが特徴です。
地域別の特徴分析
三大都市圏の中心と周辺の対照的な状況
三大都市圏では、中心都市と周辺都市の昼間人口比率に明確な差が見られます。東京都(1位、116.1%)、大阪府(2位、103.9%)、京都府(3位、101.7%)、愛知県(4位、101.2%)などの中心都府県は100%を超える高い比率を示す一方、埼玉県(47位、89.6%)、千葉県(46位、90.3%)、奈良県(45位、91.1%)、神奈川県(44位、91.7%)、兵庫県(43位、96.1%)などの周辺県は低い比率となっています。これは、中心都市への通勤・通学による人口流動の実態を反映しています。
地方中枢都市を持つ県の状況
佐賀県(5位、100.4%)、石川県(6位、100.2%)、広島県(7位、100.2%)、宮城県(8位、100.1%)など、地方中枢都市を持つ県も比較的高い昼間人口比率を示しています。これらの地域は、地方における経済・行政・教育の中心地としての役割を担っており、周辺地域からの通勤・通学者を集めています。
地方県の多様な状況
地方県の昼間人口比率は、その県の産業構造や都市機能の集積度によって多様です。例えば、福井県(14位、100.1%)や島根県(13位、100.1%)は製造業が盛んで雇用機会が多いため比較的高い比率を示す一方、和歌山県(39位、98.5%)や山梨県(36位、99.3%)は隣接する大都市圏への通勤・通学者が多いため低い比率となっています。
北海道・東北地方の状況
北海道(15位、100.0%)や宮城県(8位、100.1%)は地方中心都市を持ち、周辺地域からの人口流入があるため比較的高い昼間人口比率を示しています。一方、青森県(23位、99.9%)、岩手県(26位、99.8%)、秋田県(27位、99.8%)などの東北各県は、県内での人口移動が中心で、昼間人口比率は100%前後となっています。
中国・四国・九州地方の状況
中国・四国・九州地方では、広島県(7位、100.2%)や福岡県(9位、100.1%)などの地方中枢都市を持つ県が高い昼間人口比率を示す一方、徳島県(34位、99.6%)や高知県(24位、99.9%)などの地方小規模県は中位の比率となっています。特に佐賀県(5位、100.4%)は、福岡県への近接性と独自の産業基盤により、高い昼間人口比率を示しています。
昼間人口比率の格差がもたらす影響と課題
通勤・通学環境への影響
昼間人口比率の低い地域では、多くの住民が他地域へ通勤・通学しており、長時間の移動による身体的・精神的負担や交通費の増加などの課題があります。特に埼玉県や千葉県などの東京都のベッドタウンでは、通勤ラッシュによる混雑や長時間通勤が社会問題となっています。
地域経済への影響
昼間人口比率の低い地域では、昼間に地域内で消費活動を行う人口が減少するため、小売業やサービス業などの地域経済への影響が懸念されます。一方、昼間人口比率の高い地域では、昼間の消費活動が活発になり、地域経済の活性化につながる可能性があります。
地域コミュニティへの影響
昼間人口比率の低い地域では、昼間に地域内にいる人口が減少するため、地域コミュニティの活動や防災・防犯体制に影響を与える可能性があります。特に高齢化が進む地域では、昼間の地域活動の担い手不足が課題となっています。
都市計画と地域政策への示唆
昼間人口比率の地域差は、職住近接や地域内での雇用創出の必要性を示唆しています。昼間人口比率の低い地域では、地域内での雇用機会の創出や在宅勤務の推進などにより、通勤・通学による人口流出を抑制する取り組みが求められています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別昼間人口比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約99.1%、中央値は約99.8%とほぼ同じ値を示していますが、東京都(116.1%)という極端に高い値があるため、平均値がやや低くなっています。
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分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、東京都(116.1%)という極端に高い値があるため、わずかに正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。
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外れ値の特定:東京都(116.1%)は明らかな上側の外れ値と考えられます。2位の大阪府(103.9%)との差が大きく、統計的に見ても特異な値を示しています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約97.5%、第3四分位数(Q3)は約100.1%で、四分位範囲(IQR)は約2.6%ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の昼間人口比率が97.5%から100.1%の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約3.5%ポイントで、多くの都道府県が平均値から±3.5%ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約3.5%となり、相対的なばらつきは小さいと言えます。ただし、最高値と最低値の差は26.5%ポイント(116.1%−89.6%)に達し、東京都と埼玉県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別昼間人口比率ランキングでは、東京都が116.1%で1位、埼玉県が89.6%で47位となりました。上位には三大都市圏の中心都府県や地方中枢都市を持つ県が多く、下位には三大都市圏の周辺県が多く見られました。
昼間人口比率の地域差は、通勤・通学による人口流動の実態を反映しており、この差は通勤・通学環境、地域経済、地域コミュニティなど多方面に影響を与えています。
統計分析からは、東京都が突出して高い昼間人口比率を示す一方、多くの都道府県は100%前後の値に集中していることがわかります。この地域差は、日本の都市構造や産業構造の特徴を示すとともに、職住近接や地域内での雇用創出の必要性を物語っています。
持続可能な地域社会の形成のためには、過度な通勤・通学による人口流動を抑制し、地域内での雇用機会の創出や在宅勤務の推進など、バランスの取れた地域発展を目指す取り組みが重要です。また、昼間人口比率の低い地域では、昼間の地域活動の活性化や防災・防犯体制の強化が、昼間人口比率の高い地域では、通勤・通学者を含めた都市機能の整備や災害対策の充実が求められています。