サマリー
2022年度の悪性新生物による死亡者数(人口10万人当たり)は、都道府県間で大きな格差が存在。秋田県が460.0人で全国1位、沖縄県が239.4人で最下位となった。
主要ポイント:
- 最大格差は約1.9倍:秋田県と沖縄県の間に220.6人の差
- 東北地方が上位を占有:上位5県中3県が東北地方
- 大都市圏は下位傾向:東京、神奈川、愛知が下位5県に含まれる
この指標は、地域の医療体制や生活習慣、高齢化の影響を反映する重要な健康指標である。
概要
悪性新生物による死亡者数(人口10万人当たり)は、がんによる死亡リスクを地域間で比較できる標準化された指標。年齢構成の違いを調整し、地域の真の健康格差を把握できる。
この指標が重要な理由:
- 公衆衛生政策の基礎データ:がん対策の優先地域を特定
- 医療資源配分の指針:検診体制や治療施設の整備計画に活用
- 予防対策の効果測定:生活習慣改善や早期発見の成果を評価
全国平均は329.6人で、最上位と最下位の格差は約1.9倍。地域間の健康格差が鮮明に現れている。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
秋田県(1位)
秋田県は460.0人(偏差値79.6)で全国1位。全国平均を130.4人上回る深刻な状況である。
主な要因:
- 全国最高の高齢化率:40%を超える超高齢社会
- 塩分摂取量の多さ:伝統的な食文化による胃がんリスク
- 医療アクセスの制約:過疎化による早期発見の遅れ
青森県(2位)
青森県は421.6人(偏差値70.3)で2位。東北地方の健康課題が顕著に現れている。
特徴的な課題:
- 短命県の課題:平均寿命の短さと密接に関連
- 喫煙率の高さ:肺がんをはじめとする各種がんリスク
- 野菜摂取不足:食生活の偏りによる影響
北海道(3位)
北海道は399.0人(偏差値64.8)で3位。広大な面積による医療格差が影響している。
地域特性:
- 医療圏の広さ:専門医療機関への距離が課題
- 都市部と地方の格差:札幌圏以外の医療体制不足
- 生活習慣の地域差:地域により大きく異なる健康状況
島根県(4位)
島根県は389.8人(偏差値62.6)で4位。中山間地域の典型的な課題を抱える。
構造的要因:
- 人口減少と医師不足:専門医療の確保困難
- 高齢化の進行:県人口の3分の1が高齢者
- 検診受診率の課題:早期発見体制の整備が急務
高知県(5位)
高知県は388.5人(偏差値62.3)で5位。四国地方で最も高い死亡率を示している。
主な背景:
- アルコール消費量:全国トップクラスの飲酒文化
- 医療従事者不足:がん専門医の確保が困難
- 経済格差の影響:予防・治療への経済的制約
下位5県の詳細分析
沖縄県(47位)
沖縄県は239.4人(偏差値26.3)で全国最下位。若い人口構成と独特の食文化が寄与している。
優位な要因:
- 全国最低の高齢化率:若年人口が多い人口構成
- 伝統的食文化:ゴーヤなど抗酸化作用の高い食材
- 温暖な気候:年間通じた身体活動の維持
東京都(46位)
東京都は258.9人(偏差値31.0)で46位。充実した医療体制が低い死亡率に寄与。
優位性:
- 最先端医療の集積:がん専門病院や研究機関の集中
- 早期発見体制:職域検診の充実と受診率の高さ
- 治療選択肢の豊富さ:多様な治療法へのアクセス
滋賀県(45位)
滋賀県は271.4人(偏差値34.0)で45位。健康意識の高さと医療アクセスの良さが特徴。
成功要因:
- 予防医療の充実:県を挙げた健康づくり推進
- 京阪神圏への近接性:高度医療機関へのアクセス
- 健康寿命の長さ:全国トップクラスの健康指標
神奈川県(44位)
神奈川県は276.4人(偏差値35.2)で44位。都市型の医療環境が整備されている。
特徴:
- 医療機関の充実:人口当たり病院数の多さ
- 検診体制の整備:企業と自治体の連携
- 健康意識の高さ:教育水準と相関した予防行動
愛知県(43位)
愛知県は284.1人(偏差値37.1)で43位。製造業中心の安定した経済基盤が健康投資を支える。
背景要因:
- 企業の健康経営:トヨタをはじめとする大企業の取り組み
- 医療産業の集積:医療機器メーカーとの連携
- 働き盛り世代の多さ:経済活動を支える年齢構成
地域別の特徴分析
東北地方
東北地方は全体的に高い死亡率を示している。上位10位以内に秋田県(1位)、青森県(2位)が含まれる。宮城県(18位)を除き、多くの県が全国平均を上回っている。
共通課題:
- 急速な高齢化:全国を上回るペースでの人口減少
- 医師偏在の深刻化:仙台圏への医療資源集中
- 生活習慣の課題:塩分過多と野菜摂取不足
- 冬季の運動不足:寒冷気候による身体活動の制限
関東地方
関東地方は全国平均を下回る県が多い。東京都(46位)、神奈川県(44位)が下位に位置し、医療の充実度が影響している。
優位な条件:
- 医療機関の集積:がん拠点病院の充実
- 早期発見体制:職域・地域検診の連携
- 治療技術の先進性:最新治療法の導入
- 健康情報のアクセス:予防知識の普及
中部地方
中部地方は比較的安定した数値を示す。愛知県(43位)、静岡県(34位)が下位グループに属している。
地域特性:
- 製造業の健康経営:企業主導の健康管理
- 医療技術の発達:産業と医療の連携
- 食文化の多様性:バランスの取れた食生活
- 交通アクセス:専門医療機関への通院利便性
関西地方
関西地方は中位から下位に分布。奈良県(26位)、大阪府(31位)など、都市部の医療環境が反映されている。
特徴:
- 医療機関の充実:大学病院を中心とした高度医療
- 検診受診率:都市部での受診機会の多さ
- 交通網の発達:医療機関へのアクセス良好
- 健康意識の向上:情報発信と啓発活動の充実
中国・四国地方
中国・四国地方は上位県が多い。島根県(4位)、高知県(5位)が上位5県に含まれ、医療過疎の課題が顕著。
共通する課題:
- 医師不足の深刻化:特に専門医の確保困難
- 人口減少と高齢化:医療需要と供給のミスマッチ
- 離島・中山間地域:医療アクセスの地域格差
- 経済基盤の脆弱性:健康投資への制約
九州・沖縄地方
九州・沖縄地方は地域内格差が大きい。沖縄県(47位)が最下位である一方、鹿児島県(9位)が上位に位置している。
多様な地域性:
- 年齢構成の違い:沖縄の若さと他県の高齢化
- 食文化の特色:地域固有の食習慣の影響
- 医療体制の格差:福岡圏とその他地域の差
- 離島医療の課題:専門医療へのアクセス制限
社会的・経済的影響
秋田県と沖縄県の格差は220.6人と約1.9倍の開きがある。この格差は単なる統計上の数字を超えて、深刻な社会問題を示している。
地域間格差の要因:
- 医療資源の偏在:専門医や高度医療機器の都市部集中
- 経済格差の影響:予防・治療への投資能力の差
- 人口構成の違い:高齢化率と死亡率の強い相関
- 生活環境の差:食文化、気候、社会インフラの影響
社会的影響:
- 医療費負担の地域差:1人当たり医療費の格差拡大
- 労働力への影響:働き盛り世代の健康格差が経済活動に波及
- 家族・地域社会への負担:介護負担と人口流出の悪循環
経済的インパクト:
- 地域経済の縮小:人材流出と消費減少の連鎖
- 自治体財政への圧迫:医療・介護費用の増大
- 企業活動への影響:健康経営への投資格差
対策と今後の展望
国レベルの取り組み: がん対策推進基本計画に基づく総合的な対策を推進。地域がん診療連携拠点病院の整備とがん検診受診率向上に重点を置いている。遠隔医療の活用により、専門医療へのアクセス格差解消を図る。
成功事例の展開: 長野県の取り組みが注目されている。県民総ぐるみの健康づくり