サマリー
2022年度の歯科保健指導延人員(人口千人当たり)で最も高いのは鹿児島県の41.5人、最も低いのは和歌山県の9.2人となった。上位県と下位県の間には4.5倍もの格差が存在。この指標は地域の歯科保健体制と住民の口腔健康への取り組み状況を示す重要な指標だ。
概要
歯科保健指導延人員(人口千人当たり)は、保健所や市町村で実施される歯科健康教育や個別指導を受けた人数を示す指標だ。口腔健康の維持・向上における予防活動の充実度を測る重要な指標となる。
この指標が重要な理由:
- 予防歯科の推進度:地域の予防歯科への取り組み状況
- 健康格差の是正:口腔健康における地域間格差の実態
- 医療費削減効果:予防による将来的な医療費抑制
2022年度の全国平均は22.8人で、都道府県間の格差が顕著に表れている。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
鹿児島県(1位)
鹿児島県は41.5人(偏差値74.4)で全国1位。県をあげた「8020運動」の推進が功を奏している。離島を含む広範囲での歯科保健指導体制を整備し、高い実績を達成。
成功要因:
- 県歯科医師会との連携強化
- 地域密着型の口腔健康教育
- 離島部での巡回指導実施
長野県(2位)
長野県は41.3人(偏差値74.2)で僅差の2位。健康長寿県として予防医療に注力している。市町村レベルでの歯科保健指導が充実。
特徴的な取り組み:
- 住民参加型健康づくり
- 学校歯科保健との連携
- 高齢者向け口腔機能向上プログラム
熊本県(3位)
熊本県は39.9人(偏差値72.5)で3位。震災復興と合わせた健康づくり支援が効果的。地域コミュニティと連携した指導体制を構築している。
新潟県(4位)
新潟県は35.3人(偏差値67.0)で4位。県内の歯科医療機関との連携が充実している。特に中山間地域での取り組みが評価される。
岐阜県(5位)
岐阜県は33.0人(偏差値64.3)で5位。県独自の歯科保健指導マニュアルを策定し、統一された指導体制を整備している。
下位5県の詳細分析
和歌山県(47位)
和歌山県は9.2人(偏差値36.0)で最下位。人口減少と高齢化が進む中、歯科保健指導体制の強化が課題。県内の歯科医療資源の配置見直しが必要。
埼玉県(46位)
埼玉県は10.5人(偏差値37.6)で46位。人口規模に対する指導体制が不十分。都市部への人口集中で効率的な指導実施に課題がある。
宮崎県(45位)
宮崎県は10.6人(偏差値37.7)で45位。離島・山間部での指導機会の確保が課題。歯科医療従事者の確保も重要な要因となっている。
香川県(44位)
香川県は10.7人(偏差値37.8)で44位。県の面積が小さいものの、効率的な指導体制の構築に改善の余地がある。
石川県(43位)
石川県は11.5人(偏差値38.8)で43位。能登地域での指導機会の拡充が課題。地域医療体制の強化と合わせた取り組みが求められる。
地域別の特徴分析
九州・沖縄地方
鹿児島県(41.5人)、熊本県(39.9人)が上位に位置。地域密着型の保健活動が充実している。一方で宮崎県(10.6人)は下位にあり、県内格差が顕著。
中部地方
長野県(41.3人)、岐阜県(33.0人)、新潟県(35.3人)が上位に集中。健康長寿への意識の高さが反映されている。山間部での取り組みが評価される。
近畿地方
全体的に低位にとどまる傾向。和歌山県(9.2人)は最下位で、地域の歯科保健体制強化が急務。
関東地方
都市部の埼玉県(10.5人)が下位に位置。人口密度の高い地域での効率的な指導体制構築が課題となっている。
社会的・経済的影響
最上位の鹿児島県(41.5人)と最下位の和歌山県(9.2人)の格差は32.3ポイントに及ぶ。この格差は将来的な口腔疾患罹患率や医療費に大きな影響を与える可能性がある。
地域間格差の要因:
- 歯科医療従事者の地域偏在
- 保健所機能の地域差
- 住民の健康意識の違い
- 行政の取り組み姿勢の差
社会的影響:
- 口腔健康格差の拡大
- 全身疾患との関連性
- 高齢者のQOL格差
経済的影響:
- 将来的な医療費の地域差拡大
- 介護予防効果の地域格差
- 生産性への影響
対策と今後の展望
効果的な取り組み事例として、鹿児島県の離島巡回指導や長野県の住民参加型プログラムが注目される。ICTを活用した遠隔指導の導入も有効な手段だ。
地域特性に応じた対策:
- 都市部:集団指導の効率化
- 地方部:巡回指導体制の強化
- 離島・山間部:ICT活用の推進
成功事例の横展開:
- 県歯科医師会との連携強化
- 学校・職域との連携拡大
今後の課題:
- 歯科医療従事者の確保・配置
- デジタル技術の活用推進
- 継続的な予算確保
統計データの基本情報と分析
統計分析の結果、全国平均22.8人に対し標準偏差8.2と比較的大きなばらつきを示している。中央値は21.5人で平均値を下回り、上位県の数値が全体を押し上げる構造。
分布の特徴:
- 第3四分位(28.4人)以上の県が積極的取り組み実施
- 第1四分位(17.2人)以下の県は改善が急務
- 鹿児島県と長野県が突出した数値を示す
この分布パターンは、地域の取り組み姿勢により大きな差が生まれることを示している。上位県の成功モデルの分析と横展開が重要だ。
まとめ
2022年度の歯科保健指導延人員(人口千人当たり)分析から明らかになった主要な発見:
- 鹿児島県(41.5人)が和歌山県(9.2人)を4.5倍上回る格差
- 九州・中部地方の上位県に共通する地域密着型アプローチ
- 都市部での効率的指導体制構築が課題
- 歯科医療従事者の地域偏在が影響要因
- ICT活用による指導機会拡大の可能性
- 上位県の成功モデル横展開の重要性
継続的なモニタリングにより地域格差の是正を図り、すべての地域で質の高い歯科保健指導が受けられる体制構築が求められる。各地域の特性を活かした取り組み強化により、国民全体の口腔健康向上を目指すべきだ。