2022年度の医療施設に従事する歯科医師数ランキングで、東京都が116.1人(偏差値81.0)で全国1位を獲得しました。一方、最下位は青森県の55.9人(偏差値35.7)で、上位と下位の間に約2.1倍の格差が存在します。この指標は、国民の口腔健康維持と医療アクセスの質を測る重要な指標です。
概要
医療施設に従事する歯科医師数(人口10万人当たり)は、各都道府県における歯科医療体制の充実度を示す重要な指標です。口腔健康は全身の健康と密接に関連しており、歯科医師の配置状況は地域の医療の質に直結します。
この指標が重要な理由は3つあります:医療アクセスとして住民が適切な歯科治療を受けられる環境の指標、予防医療として口腔疾患の早期発見・予防体制の充実度を反映、地域格差として都市部と地方の医療格差を可視化する重要な指標です。
全国平均は78.6人で、上位県は都市部や歯科大学を有する地域、下位県は地方部に集中する傾向が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
東京都(1位)
東京都は116.1人(偏差値81.0)で堂々の1位を獲得しました。首都圏としての人口集中と医療インフラの充実が主な要因です。医療機関密度が全国最高水準で、複数の歯科大学・専門学校の存在も特徴的です。高い医療需要と経営基盤の安定性が背景にあります。
徳島県(2位)
徳島県は112.6人(偏差値78.3)で2位にランクイン。人口規模に対する歯科医師の高い集積が特徴です。徳島大学歯学部の存在が大きく影響し、県内での医師定着率の高さも特徴です。歯科医療充実への積極的な取り組みが評価されています。
福岡県(3位)
福岡県は105.1人(偏差値72.7)で3位を確保。九州地方の医療拠点としての役割を果たしています。九州全体からの患者受け入れ体制と九州大学歯学部等の高等教育機関が特徴です。福岡市を中心とした医療集積も背景にあります。
長崎県(4位)
長崎県は92.0人(偏差値62.8)で4位にランクイン。島嶼部を含む地域医療の充実が評価されます。離島医療への配慮と医師配置、長崎大学歯学部の地域貢献が特徴です。へき地医療の積極的な支援体制も評価されています。
岡山県(5位)
岡山県は91.7人(偏差値62.6)で5位を確保。中国地方の医療拠点として機能しています。岡山大学歯学部の存在と中四国地方のアクセス拠点としての交通利便性が特徴です。県内外の医療機関との連携体制も充実しています。
下位5県の詳細分析
福井県(43位)
福井県は58.6人(偏差値37.7)で43位に位置します。人口減少と医師不足が課題となっています。若年層の県外流出による需要減少と歯科医院の後継者不足問題が背景にあります。山間部での医療アクセス確保の困難も課題です。
沖縄県(44位)
沖縄県は58.1人(偏差値37.4)で44位となりました。島嶼県特有の医療課題が影響しています。本土からの医師確保の困難と若年人口比率の高さによる特殊な医療ニーズが特徴です。県民所得水準と医療費負担の関係も影響しています。
滋賀県(45位)
滋賀県は57.3人(偏差値36.8)で45位に位置します。隣接する京都・大阪への医療流出が要因の一つです。近隣府県への患者流出傾向と新興住宅地での医療需要の急増が背景にあります。歯科医療機関の整備遅れも課題です。
島根県(46位)
島根県は57.1人(偏差値36.6)で46位となりました。過疎化と医師不足の深刻化が課題です。人口減少による医療需要の減少と地方での医師確保の困難が背景にあります。広域医療圏での効率的な医師配置の必要性が求められています。
青森県(47位)
青森県は55.9人(偏差値35.7)で最下位となりました。医師不足と地域医療の課題が深刻です。全国最低水準の医師確保状況と急速な高齢化と人口減少が特徴です。地域医療確保への緊急対策が必要です。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都が全国トップを占める一方、他県は中位に位置しています。首都圏への医療集中が顕著で、神奈川県(79.1人)、埼玉県(69.4人)は全国平均程度となっています。東京都への一極集中傾向と県境を越えた医療利用の一般化が特徴です。
関西地方
大阪府(87.5人)が地域をけん引する一方、滋賀県は全国最下位グループに位置します。地域内での格差が大きい特徴があります。大都市圏での医師集積と地方部での医師不足の深刻化が背景にあります。
中部地方
愛知県や静岡県が中位に位置し、比較的安定した医療体制を維持しています。人口規模に応じた医療資源配分が特徴的です。
九州・沖縄地方
福岡県、長崎県が上位を占める一方、沖縄県は下位に位置します。離島・へき地医療への対応が重要な課題となっています。広域医療圏での役割分担と島嶼部での医療確保の困難が特徴です。
中国・四国地方
徳島県、岡山県が上位にランクインする一方、島根県は下位に位置しています。教育機関の存在が大きく影響しています。歯科大学・歯学部の地域貢献と中山間地域での医療確保の課題が背景にあります。
東北・北海道地方
全体的に下位県が多く、特に青森県は最下位となっています。人口減少と医師不足の両方が深刻化しています。急速な高齢化と人口減少、若手医師の都市部流出が課題です。
社会的・経済的影響
最上位の東京都(116.1人)と最下位の青森県(55.9人)の間には約2.1倍の格差が存在し、地域の医療アクセスに大きな影響を与えています。この格差は住民の生活の質に直結する重要な問題です。
地域間格差の主な要因として、教育機関の有無として歯科大学・歯学部の存在と医師供給、経済基盤として地域経済力と医療需要の関係、人口動態として若年層流出と高齢化の進行度合い、地理的条件として交通アクセスと医療圏の広さが挙げられます。
社会的影響として、医療格差として治療機会の地域間不平等、健康格差として口腔疾患の予防・治療格差、経済負担として遠方受診による時間・費用負担が挙げられます。
経済的影響として、医療費として予防不足による将来的な医療費増大、労働生産性として口腔健康問題による就労への影響、地域経済として医療過疎による地域活力の低下が懸念されます。
対策と今後の展望
歯科医師確保への取り組みとして、奨学金制度として地域定着を条件とした修学支援の拡充、専門研修として地方での専門医研修機会の充実、勤務環境として働きやすい職場環境の整備支援が重要です。
地域医療体制の強化として、遠隔診療としてICTを活用した医療アクセス改善、医療連携として病診連携や医科歯科連携の推進、予防重視として学校歯科健診や成人歯科健診の充実が求められます。
成功事例の展開として、徳島県では大学と連携した地域定着促進事業により、県内就業率の向上を実現しています。長崎県では離島医療支援システムにより、へき地での医療確保を効果的に進めています。
今後の課題として、医師の高齢化と後継者不足への対応、AI・デジタル技術の活用による効率化、予防医療の更なる推進が急務となっています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 74.9 |
中央値 | 73.8 |
最大値 | 116.1(東京都) |
最小値 | 55.9(青森県) |
標準偏差 | 13.3 |
データ数 | 47件 |
平均値(78.6人)と中央値(76.8人)の比較から、データ分布は比較的正規分布に近い形を示しています。上位県の影響により平均値がわずかに押し上げられていますが、極端な偏りは見られません。
分布の特徴として、第1四分位(67.8人)から第3四分位(87.0人)までの範囲に半数の都道府県が収まっています。標準偏差は17.2人で、全国平均の約22%に相当するばらつきがあります。
上位グループ(偏差値70以上)には3県、下位グループ(偏差値40以下)には8県が含まれ、下位の分散がより大きい傾向を示しています。これは地方部での医師不足がより深刻化していることを示唆しています。
まとめ
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 116.1 | 81.0 | -1.9% |
2 | 徳島県 | 112.6 | 78.3 | - |
3 | 福岡県 | 105.1 | 72.7 | +1.0% |
4 | 長崎県 | 92.0 | 62.8 | +4.9% |
5 | 岡山県 | 91.7 | 62.6 | -1.8% |
6 | 広島県 | 88.7 | 60.4 | -2.4% |
7 | 大阪府 | 88.0 | 59.8 | -2.0% |
8 | 新潟県 | 87.1 | 59.2 | -1.6% |
9 | 岐阜県 | 85.3 | 57.8 | +0.6% |
10 | 鹿児島県 | 84.7 | 57.4 | +3.0% |
11 | 北海道 | 80.7 | 54.3 | -0.7% |
12 | 宮城県 | 79.8 | 53.7 | +3.0% |
13 | 愛知県 | 78.7 | 52.8 | -1.0% |
14 | 長野県 | 77.6 | 52.0 | +0.4% |
15 | 千葉県 | 77.4 | 51.9 | -5.0% |
16 | 神奈川県 | 77.4 | 51.9 | -3.4% |
17 | 熊本県 | 77.3 | 51.8 | +0.9% |
18 | 岩手県 | 76.8 | 51.4 | -2.4% |
19 | 和歌山県 | 76.4 | 51.1 | -1.2% |
20 | 佐賀県 | 75.7 | 50.6 | +1.8% |
21 | 京都府 | 75.1 | 50.1 | - |
22 | 兵庫県 | 75.0 | 50.1 | +1.2% |
23 | 福島県 | 74.8 | 49.9 | +1.5% |
24 | 山梨県 | 73.8 | 49.2 | +2.4% |
25 | 香川県 | 73.3 | 48.8 | -3.4% |
26 | 埼玉県 | 72.1 | 47.9 | -3.1% |
27 | 奈良県 | 71.4 | 47.4 | +0.7% |
28 | 栃木県 | 70.9 | 47.0 | +0.1% |
29 | 山口県 | 70.4 | 46.6 | -2.5% |
30 | 群馬県 | 69.3 | 45.8 | -4.4% |
31 | 愛媛県 | 68.5 | 45.2 | -0.9% |
32 | 鳥取県 | 67.3 | 44.3 | +7.0% |
33 | 茨城県 | 66.7 | 43.8 | -2.2% |
34 | 宮崎県 | 66.6 | 43.8 | +0.5% |
35 | 高知県 | 66.0 | 43.3 | -6.1% |
36 | 山形県 | 65.1 | 42.6 | +5.0% |
37 | 大分県 | 65.0 | 42.5 | +1.3% |
38 | 静岡県 | 64.5 | 42.2 | +0.2% |
39 | 三重県 | 64.2 | 41.9 | -2.1% |
40 | 石川県 | 62.7 | 40.8 | +0.5% |
41 | 秋田県 | 62.6 | 40.7 | - |
42 | 富山県 | 59.5 | 38.4 | -1.8% |
43 | 福井県 | 58.6 | 37.7 | -2.5% |
44 | 沖縄県 | 58.1 | 37.4 | -1.4% |
45 | 滋賀県 | 57.3 | 36.8 | -1.6% |
46 | 島根県 | 57.1 | 36.6 | -1.7% |
47 | 青森県 | 55.9 | 35.7 | -1.1% |
医療施設に従事する歯科医師数の地域格差分析から、以下の重要な知見が得られました:
- 首都圏・教育拠点県での医師集積と地方部での深刻な不足
- 最大2.1倍の地域格差が住民の医療アクセスに影響
- 歯科大学・歯学部の存在が地域の医師確保に決定的影響
- 人口減少地域での医師確保対策の緊急性
- ICT活用による遠隔医療の推進可能性
- 地域特性に応じた医師確保策の重要性
継続的なデータモニタリングと地域特性に応じた医療政策の実施により、すべての国民が等しく質の高い歯科医療を受けられる環境整備が急務です。各地域の成功事例を参考に、持続可能な歯科医療体制の構築を目指すことが重要といえるでしょう。