都道府県別発電電力量ランキング(2022年度)
概要
2022年度の都道府県別発電電力量データを分析すると、千葉県が最も多く、神奈川県、愛知県、福島県、兵庫県が続いています。これらの地域は大規模な火力発電所や原子力発電所が立地しており、日本の電力供給の中心的役割を担っています。
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上位5県と下位5県の比較
上位5県の特徴
- 千葉県(78,260,371 MWh、偏差値82.5): 首都圏の電力需要を支える大規模火力発電所が集中しています。特に東京湾岸には多くの発電所が立地し、首都圏への電力供給の要となっています。LNG(液化天然ガス)を燃料とする火力発電所が多く、環境負荷の比較的低い発電方式が採用されています。
- 神奈川県(75,400,360 MWh、偏差値80.9): 東京湾沿岸に大規模な火力発電所が立地し、首都圏の電力需要を支えています。工業地帯でもあり、自家発電設備も多く存在します。横浜・川崎地区の火力発電所群は日本の電力供給の重要拠点となっています。
- 愛知県(66,751,285 MWh、偏差値76.1): 中部地方の経済・産業の中心地として、大規模な火力発電所が立地しています。製造業が盛んな地域であり、安定した電力供給が重要視されています。自動車産業など電力を多く消費する産業の集積地でもあります。
- 福島県(50,800,151 MWh、偏差値67.5): 東日本大震災前は原子力発電が中心でしたが、現在は再生可能エネルギーの導入が進んでいます。水力発電も多く、多様な発電源を持つ県となっています。震災後のエネルギー転換の最前線として注目されています。
- 兵庫県(44,551,763 MWh、偏差値64.2): 関西地方の主要な発電拠点として、火力発電を中心に多様な発電施設が立地しています。産業集積地でもあり、安定した電力供給が求められています。姫路第二発電所など大規模な火力発電所が電力供給を担っています。
下位5県の特徴
- 滋賀県(157,704 MWh、偏差値40.0): 琵琶湖を有する内陸県ですが、大規模発電所の立地が少なく、発電電力量は全国で最も少なくなっています。環境保全の観点から大規模発電所の建設が制限されている面もあります。
- 埼玉県(556,766 MWh、偏差値40.2): 人口が多い県ですが、発電所の立地が少なく、電力の多くを他県からの供給に依存しています。首都圏のベッドタウンとして電力消費は多いものの、発電量は少ない典型的な電力消費県です。
- 奈良県(941,428 MWh、偏差値40.4): 歴史的・文化的資源を多く持つ県ですが、大規模発電所の立地は限られており、発電電力量は少ない状況です。関西電力管内で電力供給を受ける消費地域となっています。
- 鳥取県(2,266,233 MWh、偏差値41.0): 人口規模が小さく、大規模な発電所の立地も限られていることから、発電電力量も少なくなっています。風力発電など再生可能エネルギーの導入は進んでいますが、総量としては少ない状況です。
- 山梨県(2,639,480 MWh、偏差値41.2): 内陸県で大規模発電所の立地が少なく、発電電力量は全国的に見て少ない状況です。一方で、太陽光発電の導入は進んでおり、再生可能エネルギーへの転換が図られています。
地域別の特徴分析
関東地方
千葉県(78,260,371 MWh、偏差値82.5)と神奈川県(75,400,360 MWh、偏差値80.9)が突出して多く、首都圏の電力供給の中心となっています。一方、東京都(5,836,441 MWh、偏差値43.7)や埼玉県(556,766 MWh、偏差値40.2)は人口や経済規模に比して発電電力量が少なく、典型的な電力消費地域となっています。茨城県(30,477,099 MWh、偏差値56.7)も原子力発電所や火力発電所が立地し、比較的発電量が多くなっています。栃木県(11,361,335 MWh、偏差値46.6)や群馬県(7,754,162 MWh、偏差値44.7)は水力発電を中心に一定の発電量を確保しています。
関西地方
兵庫県(44,551,763 MWh、偏差値64.2)が関西地方で最も発電電力量が多く、大阪府(16,905,520 MWh、偏差値49.5)がそれに続きます。福井県(37,754,162 MWh、偏差値60.8)は原子力発電所が立地し、関西電力の重要な電源地域となっています。一方、滋賀県(157,704 MWh、偏差値40.0)や奈良県(941,428 MWh、偏差値40.4)は発電電力量が少なく、電力消費地域となっています。京都府(5,778,715 MWh、偏差値43.6)も歴史的都市であり、大規模発電所の立地は限られています。
中部・東海地方
愛知県(66,751,285 MWh、偏差値76.1)が中部地方で最も発電電力量が多く、静岡県(37,754,162 MWh、偏差値60.8)がそれに続きます。中部電力の供給エリアとして、製造業が集積する地域への安定した電力供給を担っています。岐阜県(7,511,786 MWh、偏差値44.6)や三重県(16,573,654 MWh、偏差値49.4)も一定の発電量を確保していますが、愛知県との格差は大きくなっています。
九州・沖縄地方
九州地方では長崎県(28,817,140 MWh、偏差値55.9)と大分県(21,653,581 MWh、偏差値52.1)の発電電力量が多くなっています。長崎県は原子力発電所が立地し、大分県は地熱発電や火力発電が盛んです。福岡県(16,905,520 MWh、偏差値49.5)、鹿児島県(16,573,654 MWh、偏差値49.4)も一定の発電量を確保しています。一方、佐賀県(7,511,786 MWh、偏差値44.6)や宮崎県(4,882,032 MWh、偏差値43.2)は相対的に発電量が少なくなっています。沖縄県(7,754,162 MWh、偏差値44.7)は島嶼地域であり、独立した電力系統を持つ特殊な地域です。
東北・北海道地方
福島県(50,800,151 MWh、偏差値67.5)が東北地方で最も発電電力量が多く、原子力発電所の事故後も水力や火力、再生可能エネルギーによる発電が行われています。北海道(30,477,099 MWh、偏差値56.7)も広大な面積を持ち、火力発電や水力発電、風力発電など多様な電源を有しています。秋田県(16,905,520 MWh、偏差値49.5)は風力発電の適地として注目されています。一方、青森県(5,836,441 MWh、偏差値43.7)、山形県(5,778,715 MWh、偏差値43.6)、岩手県(3,727,754 MWh、偏差値42.6)は相対的に発電量が少なくなっています。
発電電力量の格差と課題
発電電力量の地域間格差は、発電所の立地条件や歴史的経緯、電力需要の分布などによって生じています。千葉県と滋賀県の間には約500倍もの差があり、この格差は電力系統の運用や地域間の電力融通の重要性を示しています。
特に注目すべきは、人口や経済活動が集中する地域(東京都、大阪府など)と発電電力量が多い地域(千葉県、福島県など)が必ずしも一致していないことです。これは電力の生産地と消費地の分離を示しており、送電インフラの重要性を浮き彫りにしています。
また、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、日照条件や風況、地熱資源などの自然条件に恵まれた地域が新たな発電拠点として台頭する可能性があります。これにより、従来の発電電力量の地域分布が今後変化していく可能性があります。
統計データの基本情報
この統計データは2022年度の都道府県別発電電力量を示しています。発電電力量とは、一定期間内に発電所で生産された電力の総量であり、単位はMWh(メガワット時)で表されています。
データの分析から、以下のような特徴が見られます:
- 分布の歪み: 発電電力量の分布は強い正の歪みを示しており、平均値(約19,000,000 MWh)が中央値(約10,000,000 MWh)を大きく上回っています。これは千葉県や神奈川県などの突出した発電量が平均値を押し上げているためです。
- 明確な外れ値の存在: 千葉県(78,260,371 MWh)や神奈川県(75,400,360 MWh)は明らかな外れ値であり、第3位の愛知県(66,751,285 MWh)との間にも差があります。
- 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約30,000,000 MWh以上、下位25%(第1四分位)は約5,000,000 MWh以下となっており、中間50%の範囲も広く、地域間格差の大きさを示しています。
- 標準偏差の大きさ: 標準偏差は約20,000,000 MWhと非常に大きく、平均値を上回っています。これは都道府県間のばらつきが極めて大きいことを示しています。
- 二極化: 発電電力量の多い上位県と少ない下位県の間には明確な差があり、発電拠点となる県と電力消費地となる県の二極化が見られます。
まとめ
発電電力量は地域のエネルギー供給力を示す重要な指標です。千葉県や神奈川県などの臨海部に大規模発電所が集中する一方、内陸県や人口密集地では発電量が少なく、電力の地域間融通に依存している状況が明らかになりました。
この地域間格差は、発電所の立地条件(冷却水の確保、燃料輸送の利便性など)や歴史的な電力供給体制の発展経緯、環境規制などの要因によって形成されてきました。特に火力発電所は臨海部に、原子力発電所は比較的人口密度の低い地域に立地する傾向があります。
今後は、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、発電電力量の地域分布が変化していく可能性があります。太陽光発電や風力発電は従来の発電所立地とは異なる条件で適地が決まるため、これまで発電量の少なかった地域が新たな発電拠点となる可能性もあります。
また、電力システム改革や送電網の強化により、地域間の電力融通がより柔軟になることで、発電と消費の地域間ミスマッチを解消する取り組みも進められています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、発電電力量の地域分布と電源構成の両面で大きな変革が予想されます。
発電電力量の地域差は、日本のエネルギー政策における重要な課題であり、電力の安定供給と脱炭素化の両立、地域間の公平性確保などの観点から、継続的な検討が必要です。