都道府県別第2次産業就業者比率ランキング(2020年度)
概要
第2次産業就業者比率とは、全就業者数に占める製造業、建設業、鉱業などの第2次産業に従事している人の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別第2次産業就業者比率のランキングを紹介します。
第2次産業就業者比率は、地域の産業構造や経済基盤を反映する重要な指標であり、特に製造業が盛んな地域では比率が高くなる傾向があります。富山県や静岡県などの製造業が発達した地域で第2次産業就業者比率が高く、東京都や沖縄県などのサービス業が中心の地域で低くなっています。
上位県と下位県の比較
第2次産業就業者比率が高い上位5県
2020年度の第2次産業就業者比率ランキングでは、富山県が32.5%(偏差値67.0)で全国1位となりました。富山県は医薬品産業やアルミニウム産業などの製造業が発達しており、「くすりの富山」として知られる医薬品産業の集積地です。製薬会社や関連企業が多数立地し、伝統的な製造業の基盤がしっかりしています。
2位は静岡県で32.1%(偏差値66.2)、3位は岐阜県と滋賀県で31.9%(偏差値65.8)、5位は愛知県で31.5%(偏差値65.0)となっています。上位県には製造業が盛んな地域が多く含まれており、自動車産業や電機産業などの集積地が多いことがわかります。
第2次産業就業者比率が低い下位5県
最も第2次産業就業者比率が低かったのは沖縄県で13.7%(偏差値28.7)でした。沖縄県は観光業を中心としたサービス業が発達しており、第3次産業の比率が高くなっています。島嶼県という地理的特性から、大規模な製造業の立地が難しい面もあります。
46位は東京都で14.6%(偏差値30.6)、44位は北海道と高知県で16.5%(偏差値34.4)、43位は千葉県で18.4%(偏差値38.3)となっています。下位県には大都市圏や観光業が盛んな地域、第1次産業や第3次産業が中心となっている地域が多く含まれており、第2次産業の集積が限られていることがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の製造業と建設業
東北地方では、福島県(10位、28.8%)の第2次産業就業者比率が最も高く、山形県(11位、28.1%)がそれに続いています。その他の県は、青森県(38位、19.6%)、岩手県(21位、24.3%)、宮城県(30位、21.9%)、秋田県(23位、23.6%)と、全国的に見ると上位から下位まで幅広く分布しています。東北地方の平均は24.38%です。
東北地方全体として第2次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地域によって産業構造が異なることが挙げられます。特に、福島県や山形県では製造業が比較的発達しており、電子部品・デバイス製造業や自動車関連産業などの集積が見られます。
特に福島県で東北地方の中では第2次産業就業者比率が高い理由としては、電子部品産業や機械産業の集積があることが挙げられます。また、震災復興関連の建設業も一定の割合を占めていると考えられます。
一方、青森県で東北地方の中では第2次産業就業者比率が低い理由としては、第1次産業(特に農業と漁業)の比率が高いことや、観光業などのサービス業も一定の割合を占めていることが挙げられます。
関東地方の産業構造の多様性
関東地方では、栃木県(8位、30.4%)と群馬県(9位、30.3%)の第2次産業就業者比率が特に高く、茨城県(13位、27.9%)がそれに続いています。その他の県は、埼玉県(29位、22.2%)、千葉県(43位、18.4%)、東京都(46位、14.6%)、神奈川県(39位、19.5%)と、全国的に見ると上位から下位まで幅広く分布しています。関東地方の平均は23.33%です。
関東地方全体として第2次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、大都市圏と地方部で産業構造が大きく異なることが挙げられます。特に、東京都や神奈川県では第3次産業(特に金融業やサービス業)の比率が高く、相対的に第2次産業の比率が低くなっています。
特に栃木県で関東地方の中では第2次産業就業者比率が高い理由としては、自動車関連産業や精密機械産業などの製造業が集積していることが挙げられます。日産自動車や本田技研工業の工場があり、関連部品メーカーも多数立地しています。
一方、東京都で関東地方の中では第2次産業就業者比率が低い理由としては、金融業やIT産業、サービス業などの第3次産業が高度に発達していることが挙げられます。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、第3次産業の就業者比率が極めて高くなっています。
中部・北陸地方の製造業の発達
中部・北陸地方では、富山県(1位、32.5%)、静岡県(2位、32.1%)、岐阜県(3位、31.9%)、愛知県(5位、31.5%)の第2次産業就業者比率が特に高くなっています。その他の県は、新潟県(13位、27.9%)、石川県(16位、27.4%)、福井県(6位、30.9%)、山梨県(15位、27.5%)、長野県(11位、28.1%)と、全国的に見ると上位に集中しています。中部・北陸地方の平均は29.98%と全国で最も高くなっています。
中部・北陸地方全体として第2次産業就業者比率が高い理由としては、製造業が高度に発達していることが挙げられます。特に、自動車産業や電機産業、機械産業などの集積が進んでおり、関連部品メーカーも多数立地しています。
特に富山県で第2次産業就業者比率が最も高い理由としては、医薬品産業やアルミニウム産業などの製造業が発達していることが挙げられます。特に、富山県は「くすりの富山」として知られる医薬品産業の集積地であり、製薬会社や関連企業が多数立地しています。
また、静岡県で第2次産業就業者比率が高い理由としては、自動車産業や電機産業などの製造業が発達していることが挙げられます。特に、スズキ、ヤマハ発動機などの大手メーカーの本拠地があり、関連部品メーカーも多数立地しています。
近畿地方の産業構造の変化
近畿地方では、滋賀県(3位、31.9%)の第2次産業就業者比率が特に高く、三重県(7位、30.7%)がそれに続いています。その他の県は、京都府(31位、21.7%)、大阪府(32位、21.6%)、兵庫県(22位、24.1%)、奈良県(34位、21.4%)、和歌山県(33位、21.5%)と、全国的に見ると中位から上位に分布しています。近畿地方の平均は24.70%です。
近畿地方全体として第2次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地域によって産業構造が異なることが挙げられます。特に、大阪府や京都府などの大都市圏では第3次産業の比率が高く、相対的に第2次産業の比率が低くなっています。
特に滋賀県で近畿地方の中では第2次産業就業者比率が高い理由としては、電子部品・デバイス製造業や自動車関連産業などの製造業が集積していることが挙げられます。琵琶湖の豊富な水資源や京阪神地域へのアクセスの良さなどの地理的優位性を活かし、多くの製造業企業が立地しています。
一方、奈良県で近畿地方の中では第2次産業就業者比率が低い理由としては、ベッドタウンとしての性格が強く、第3次産業が中心となっていることが挙げられます。また、歴史的・文化的資源を活かした観光業も発達しており、サービス業の就業者比率が比較的高くなっています。
中国・四国地方の地域特性と製造業
中国・四国地方では、岡山県(17位、26.2%)と広島県(19位、25.3%)の第2次産業就業者比率が比較的高く、その他の県は、鳥取県(35位、21.1%)、島根県(26位、22.9%)、山口県(18位、25.7%)、徳島県(27位、22.7%)、香川県(20位、24.4%)、愛媛県(25位、23.3%)、高知県(44位、16.5%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。中国・四国地方の平均は23.12%です。
中国・四国地方全体として第2次産業就業者比率が中位から下位に位置している理由としては、製造業の集積が限られていることや、第1次産業や第3次産業の比率が比較的高いことが挙げられます。特に、中山間地域や島嶼部が多い地理的特性から、大規模な製造業の立地が難しい面もあります。
特に岡山県で中国・四国地方の中では第2次産業就業者比率が高い理由としては、繊維産業や化学産業などの製造業が発達していることが挙げられます。特に、水島コンビナートを中心とした石油化学工業は、第2次産業就業者比率の高さに大きく寄与しています。
一方、高知県で中国・四国地方の中では第2次産業就業者比率が低い理由としては、第1次産業(特に林業と漁業)の比率が高いことや、観光業などのサービス業も一定の割合を占めていることが挙げられます。また、中山間地域が多い地理的特性から、大規模な製造業の立地が限られています。
九州・沖縄地方の産業構造の特徴
九州・沖縄地方では、佐賀県(24位、23.5%)と大分県(28位、22.6%)の第2次産業就業者比率が比較的高く、その他の県は、福岡県(40位、19.4%)、長崎県(41位、18.8%)、熊本県(36位、20.7%)、宮崎県(37位、20.4%)、鹿児島県(41位、18.8%)、沖縄県(47位、13.7%)と、全国的に見ると下位に集中しています。九州・沖縄地方の平均は19.74%と全国で最も低くなっています。
九州・沖縄地方全体として第2次産業就業者比率が低い理由としては、第1次産業や第3次産業の比率が比較的高いことが挙げられます。特に、観光業が盛んな地域や、農業・漁業が発達している地域では、相対的に第2次産業の比率が低くなっています。
特に佐賀県で九州・沖縄地方の中では第2次産業就業者比率が高い理由としては、窯業・土石製品製造業(有田焼などの陶磁器産業)や食品加工業などの製造業が発達していることが挙げられます。また、自動車関連産業の進出も見られ、製造業の基盤が比較的しっかりしています。
一方、沖縄県で九州・沖縄地方の中では第2次産業就業者比率が最も低い理由としては、観光業を中心としたサービス業が発達していることが挙げられます。沖縄県は日本有数の観光地であり、宿泊業や飲食業、小売業などの第3次産業の比率が極めて高くなっています。また、島嶼県という地理的特性から、大規模な製造業の立地が難しい面もあります。
格差や課題の考察
産業構造と地域経済の関係
第2次産業就業者比率の地域間格差は、産業構造と地域経済の関係にも影響を与えます。第2次産業就業者比率が高い地域では、製造業を中心とした産業集積が形成されており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。一方、第2次産業就業者比率が低い地域では、第3次産業や第1次産業を中心とした産業構造となっており、それぞれの特性に応じた地域経済の発展が求められています。
例えば、富山県(1位、32.5%)では、製造業を中心とした産業構造が形成されており、医薬品産業やアルミニウム産業などの集積により、安定した雇用と所得が確保されています。また、製造業の集積は、研究開発機能の強化や技術革新の促進にも寄与しており、地域経済の持続的な発展に貢献しています。
一方、沖縄県(47位、13.7%)では、観光業を中心とした第3次産業が発達しており、独自の地域経済が形成されています。観光業の発展は、宿泊業や飲食業、小売業などの関連産業の発達にも寄与しており、雇用の創出や所得の向上に貢献しています。しかし、観光業は季節変動や外部環境の変化の影響を受けやすく、経済的な脆弱性も課題となっています。
グローバル化とデジタル化の影響
第2次産業就業者比率の地域間格差は、グローバル化やデジタル化の進展による産業構造の変化とも関連しています。特に、製造業のグローバル化や自動化の進展により、第2次産業の雇用環境は大きく変化しており、地域によって異なる影響が生じています。
例えば、愛知県(5位、31.5%)では、自動車産業を中心に高い国際競争力を維持しており、第2次産業の就業者比率も高い水準を維持しています。しかし、電動化や自動運転などの技術革新により、今後は求められる技能や知識が大きく変化する可能性があり、人材育成や技術開発の面での対応が課題となっています。
一方、東京都(46位、14.6%)では、IT産業やデジタルサービス業などの新たな産業が発達しており、第3次産業を中心とした産業構造の高度化が進んでいます。特に、デジタル技術の発展により、新たなビジネスモデルや雇用形態が生まれており、産業構造の転換が加速しています。
地域間格差と地方創生
第2次産業就業者比率の地域間格差は、地域間格差の拡大や地方創生の課題とも関連しています。特に、産業構造の違いによる所得水準や雇用機会の格差は、若年層の流出や人口減少などの地域課題にも影響を与えています。
例えば、富山県(1位、32.5%)や静岡県(2位、32.1%)などの製造業が集積している地域では、比較的高い賃金水準や安定した雇用機会が確保されており、若年層の定着や人口維持にも寄与しています。特に、製造業の集積地では、関連産業の発達や技術革新の促進などの波及効果も見られ、地域経済の活性化に貢献しています。
一方、沖縄県(47位、13.7%)や東京都(46位、14.6%)などの第2次産業就業者比率が低い地域では、第3次産業を中心とした独自の産業構造が形成されています。特に、観光業やIT産業などの成長産業の発展により、新たな雇用機会や所得源が創出されており、地域経済の多様化に貢献しています。
このような地域間の産業構造の違いを踏まえた地方創生の取り組みが重要であり、各地域の特性を活かした産業振興や、産業間の連携強化などの施策が求められています。特に、第2次産業と第1次産業・第3次産業との連携による新たな価値創出や、デジタル技術を活用した産業の高度化などが、地域経済の持続的な発展の鍵となる可能性があります。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別第2次産業就業者比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約24.14%、中央値は約23.50%とほぼ同じ値を示しており、データが比較的対称的に分布していることを示しています。これは、極端な外れ値が少なく、多くの都道府県が平均値の周辺に分布していることを反映しています。
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分布の歪み:データは全体としてわずかに負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。特に、沖縄県(13.7%)や東京都(14.6%)などの一部の都道府県で第2次産業就業者比率が特に低くなっています。
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外れ値の特定:沖縄県(13.7%)と東京都(14.6%)は下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。これは、これらの都道府県の第3次産業中心の産業構造を反映していると考えられます。一方、富山県(32.5%)や静岡県(32.1%)などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。
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地域別の特徴:中部・北陸地方が平均29.98%と最も高く、九州・沖縄地方が平均19.74%と最も低くなっています。これは、中部・北陸地方に製造業の集積地が多いこと、九州・沖縄地方に第1次産業や観光業が発達している地域が多いことを反映しています。
まとめ
2020年度の都道府県別第2次産業就業者比率ランキングでは、富山県が32.5%で1位、沖縄県が13.7%で47位となりました。上位には富山県、静岡県、岐阜県などの製造業が発達した地域が多く、下位には沖縄県、東京都、北海道などのサービス業が中心の地域や第1次産業が発達している地域が多く見られました。
第2次産業就業者比率の地域差は、産業構造、地理的特性、歴史的背景など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、雇用環境、所得水準など様々な面に影響を与えています。特に、製造業が集積している地域では、関連産業の発達や技術革新の促進などの波及効果も見られ、地域経済の発展に大きく貢献しています。
統計分析からは、都道府県間の第2次産業就業者比率の格差が一定程度存在することがわかります。特に、富山県や静岡県などの上位県と、沖縄県や東京都などの下位県との間には明確な差があります。これは、産業構造や地域特性の違いを反映していると考えられます。
第2次産業は、日本の経済成長を支えてきた重要な産業であり、今後も技術革新や生産性向上を通じて、地域経済の発展に貢献することが期待されています。しかし、グローバル化やデジタル化の進展により、第2次産業を取り巻く環境は大きく変化しており、地域特性を活かした産業振興や人材育成などの取り組みが求められています。