都道府県別救急出動件数ランキング(2022年度)

2022年度の都道府県別救急出動件数データから見える、各地域の救急医療体制と都市規模の関係性について分析します。人口規模や高齢化率、都市化の進展などが救急出動件数にどのような影響を与えているかを詳しく見ていきます。

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上位県と下位県の比較

上位5県の詳細分析

1位:東京都

東京都877,872件(偏差値91.1)で全国1位となっています。首都圏の人口集中と都市機能の複雑さが、圧倒的な救急出動件数につながっています。約1,400万人の人口を抱える東京都では、交通事故、急病、労働災害など多様な救急事案が日常的に発生しており、24時間体制での救急対応が求められています。

2位:大阪府

大阪府653,054件(偏差値78.4)で2位に位置しています。関西圏の中心都市として、約880万人の人口と高い都市密度が救急需要の増加要因となっています。商業・工業地域が混在する都市構造により、多様な救急事案への対応が必要となっています。

3位:神奈川県

神奈川県568,185件(偏差値73.5)で3位となっています。東京都に隣接する立地から人口が約920万人と多く、横浜市、川崎市などの大都市圏を抱えています。首都圏のベッドタウンとしての機能と産業集積が救急需要を押し上げています。

4位:埼玉県

埼玉県415,583件(偏差値64.9)で4位に位置しています。約730万人の人口を有し、東京都への通勤・通学者が多い特徴があります。住宅地域が広範囲に展開する地域特性により、高齢者の救急搬送や生活関連の救急事案が多く発生しています。

5位:愛知県

愛知県396,163件(偏差値63.8)で5位となっています。約750万人の人口と製造業の集積地である特徴が、労働災害や交通事故などの救急事案増加の要因となっています。名古屋市を中心とした都市圏の拡大も救急需要に影響しています。

下位5県の詳細分析

47位:鳥取県

鳥取県29,273件(偏差値42.9)で最下位となっています。約56万人という全国最少の人口が救急出動件数の少なさの主要因です。過疎化が進む地域では救急搬送距離が長くなる課題があるものの、絶対的な救急件数は少ない状況です。

46位:福井県

福井県32,231件(偏差値43.1)で46位に位置しています。約77万人の人口と比較的安定した地域コミュニティが、救急事案の抑制に寄与していると考えられます。三世代同居率が高く、家族による見守り体制が整っている地域特性があります。

45位:島根県

島根県34,112件(偏差値43.2)で45位となっています。約67万人の人口と中山間地域が多い地理的特徴により、救急搬送体制に課題がある一方で、絶対的な救急件数は少ない状況です。

44位:徳島県

徳島県38,019件(偏差値43.4)で44位に位置しています。約72万人の人口規模と四国地方の地域特性が反映された結果となっています。高齢化率が高い地域でありながら、比較的少ない救急出動件数となっています。

43位:佐賀県

佐賀県41,878件(偏差値43.6)で43位となっています。約81万人の人口と農業地域が多い特徴により、都市部と比較して救急事案の発生頻度が低い傾向があります。

地域別の特徴分析

首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)

首都圏4都県がすべて上位10位以内にランクインしており、人口集中と都市機能の複雑さが救急需要を押し上げています。特に東京都は他県を大きく引き離す圧倒的な件数となっており、首都機能の集中による影響が顕著に現れています。

関西圏(大阪、兵庫、京都)

関西圏も軒並み上位にランクインしており、大阪府が2位、兵庫県が7位、京都府が11位となっています。人口密度の高い都市圏として、継続的な救急需要があることが示されています。

中部地方

愛知県が5位、静岡県が10位と上位に位置する一方で、長野県は17位、新潟県は15位と中位に位置しています。製造業の集積と都市化の程度が救急出動件数に影響していることがうかがえます。

九州地方

福岡県が9位と上位に位置する一方で、鹿児島県は22位、熊本県は21位、沖縄県は23位と中位に分布しています。九州最大の都市圏である福岡県と他県との格差が明確に現れています。

四国・中国地方

四国4県はいずれも下位に位置しており、特に徳島県(44位)、香川県(37位)、愛媛県(27位)、高知県(41位)となっています。人口規模と地域特性が救急出動件数に大きく影響していることが分かります。

格差と課題の考察

都市部と地方部の格差

最上位の東京都(877,872件)と最下位の鳥取県(29,273件)では約30倍の格差があります。これは人口規模の違いによるものですが、人口1人当たりで見ても都市部の方が救急出動率が高い傾向があります。都市部では交通事故、労働災害、ストレス関連疾患などの発生リスクが高く、24時間社会の影響も大きいと考えられます。

高齢化社会への対応

高齢化が進む地方部では、絶対的な救急件数は少ないものの、高齢者の救急搬送が占める割合が高くなっています。過疎化により救急搬送距離が長期化し、医療機関までの到達時間が延長する課題があります。

救急医療体制の地域格差

都市部では救急件数の増加により救急隊の出動回数が増加し、現場到着時間の延長や医療機関の受け入れ困難事例の増加が課題となっています。一方、地方部では救急隊の配置数や医療機関の数が限られ、広域からの救急搬送に対応する必要があります。

統計データの基本情報と分析

分布の特徴

救急出動件数の分布は著しく右に歪んでおり、少数の大都市圏に救急需要が集中していることが統計的に確認できます。平均値と中央値の差が大きく、東京都、大阪府、神奈川県などの大都市圏が全体の分布を押し上げています。

外れ値の影響

東京都の877,872件は明らかな外れ値として機能しており、首都機能の集中による特異な値となっています。この外れ値を除いても、大阪府、神奈川県、埼玉県などの都市圏が上位を占める構造は変わりません。

地域間格差の数値化

標準偏差の大きさは地域間格差の深刻さを示しており、救急医療体制の整備において地域の実情に応じた柔軟な対応が必要であることを統計的に裏付けています。偏差値が42.9から91.1まで大きく分布していることも、この格差の大きさを物語っています。

四分位による分析

第1四分位から第3四分位までの範囲を見ると、多くの県が比較的近い値に集中している一方で、上位数県が突出して高い値を示している構造が明確になります。これは人口規模と都市化の程度が救急需要に与える影響の大きさを示しています。

まとめ

2022年度の都道府県別救急出動件数ランキングは、人口規模と都市化の程度が救急需要に決定的な影響を与えることを明確に示しています。首都圏と関西圏の大都市圏が上位を独占する一方で、四国や山陰地方などの人口が少ない県が下位に集中しています。

この格差は単純な人口比例を超えており、都市部特有の生活環境やリスク要因が救急需要を押し上げていることがうかがえます。今後の超高齢社会の進展を考慮すると、都市部では救急件数のさらなる増加への対応が、地方部では限られた資源での効率的な救急医療体制の構築が重要な課題となるでしょう。

各地域の実情に応じた救急医療体制の整備と、広域連携による効率的な救急搬送システムの構築が、全国的な救急医療の質向上に不可欠です。

出典