防火水槽は火災発生時の消防活動において重要な水源となる施設で、各都道府県の防災体制を示す指標の一つです。2022年度の都道府県別防火水槽数を分析すると、地域の面積や人口密度、地理的特性により大きな差が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の特徴
1位 埼玉県は44,659所(偏差値89.7)で全国1位となっています。人口密度が高い首都圏でありながら、住宅地が広範囲に分布しているため、きめ細かな防火水槽の整備が進んでいます。
2位 東京都は36,419所(偏差値79.8)で続いています。都市部でありながら多摩地区を中心に防火水槽の設置が進んでおり、高密度な都市防災体制を構築しています。
3位 千葉県は27,222所(偏差値68.8)となっています。県内に広がる住宅地や工業地帯での防火対策として、防火水槽の整備が積極的に行われています。
4位 茨城県は24,437所(偏差値65.5)です。県土が広く、農村部から都市部まで幅広い地域で防火水槽が整備されており、総数では全国上位となっています。
5位 神奈川県は22,063所(偏差値62.6)で上位5位に入っています。人口密度の高い地域でありながら、効果的な防火水槽配置により防災体制を強化しています。
下位5県の特徴
47位 沖縄県は1,297所(偏差値37.7)で最下位となっています。島嶼県という地理的特性や、比較的新しい都市計画により防火水槽以外の消防水利に依存している傾向があります。
46位 鳥取県は2,504所(偏差値39.2)です。人口規模が小さく、自然水利が豊富な地域特性により、防火水槽の総数は少なくなっています。
45位 香川県は2,921所(偏差値39.7)となっています。県土面積が最も小さいことが影響し、防火水槽の絶対数は少ない状況です。
44位 高知県は4,500所(偏差値41.6)です。山間部が多く人口密度が低いため、防火水槽よりも自然水利を活用した消防体制となっています。
43位 佐賀県は4,528所(偏差値41.6)で下位に位置しています。平野部が多く河川などの自然水利が豊富なため、防火水槽への依存度が相対的に低くなっています。
地域別の特徴
関東地方では埼玉県、東京都、千葉県、茨城県、神奈川県が上位5位を占めており、首都圏の高密度な都市化に対応した防火水槽整備が特徴的です。群馬県、栃木県も中位に位置し、関東全体で防火水槽の充実が図られています。
中部地方では愛知県、静岡県、長野県が上位にランクインしており、工業地帯や住宅地の防火対策が進んでいます。一方、北陸三県は中位から下位に位置し、雪国特有の消防事情が影響しています。
近畿地方では兵庫県、大阪府、京都府が上位に入っていますが、奈良県、和歌山県は中位となっており、地域内での格差が見られます。
中国・四国地方では広島県が中位に位置する一方、多くの県が下位に集中しており、自然水利への依存や人口密度の低さが影響しています。
九州地方では福岡県、鹿児島県、熊本県が中位に位置していますが、島嶼部を抱える県では防火水槽数が少ない傾向があります。
防火水槽整備の地域格差と課題
防火水槽数には最大34倍以上の地域格差があり、これは各地域の地理的条件、人口分布、都市計画の違いを反映しています。首都圏では高密度な住宅地に対応するため防火水槽が重要な役割を果たす一方、自然水利が豊富な地域や島嶼部では異なる消防戦略が採用されています。
人口密度の高い都市部では防火水槽による確実な水源確保が不可欠ですが、農村部や山間部では自然水利の活用や消防体制の効率化が重要となります。また、近年の気候変動による渇水リスクや、大規模災害時の消防水利確保の重要性が高まる中、各地域の特性に応じた適切な防火水槽整備が求められています。
統計データの基本情報
2022年度の防火水槽数は、平均値が11,668所、中央値が9,547所となっており、平均値が中央値を上回っていることから、上位県が平均を押し上げる右に歪んだ分布を示しています。
標準偏差は9,176所と大きく、都道府県間のばらつきが非常に大きいことが分かります。最大値の埼玉県44,659所と最小値の沖縄県1,297所の差は43,362所に達し、地域による整備状況の大きな違いが明確です。
四分位範囲を見ると、第1四分位(下位25%)が5,649所、第3四分位(上位25%)が15,347所となっており、多くの都道府県が比較的狭い範囲に集中している一方で、上位県が大きく突出していることが特徴的です。
まとめ
2022年度の都道府県別防火水槽数ランキングでは、埼玉県が44,659所で圧倒的な1位となり、首都圏の県が上位を占める結果となりました。これは高密度な都市化と住宅地の広範囲な分布に対応した防災体制の現れです。
一方、沖縄県、鳥取県、香川県などは防火水槽数が少なく、地理的特性や自然水利の活用により異なる消防戦略を採用していることが分かります。各地域の特性に応じた効果的な消防水利体制の構築が、今後の防災力向上の鍵となるでしょう。