サマリー
和歌山県が114.1施設で全国1位となり、最下位の埼玉県(61.3施設)との間に約1.9倍の格差が存在。上位県は西日本の地方県が中心を占める一方、首都圏近郊県が下位に集中する傾向が顕著。一般診療所の充実度は住民の医療アクセスと健康維持に直結する重要指標です。
概要
一般診療所数(人口10万人当たり)は、地域の医療体制の基盤を示す重要指標です。住民の医療アクセスの良さ、予防医療の充実度、地域医療の持続可能性を評価する上で欠かせません。
2022年度データでは、全国平均82.8施設に対し、上位県は100施設を超える充実した体制を構築。一方で下位県は65施設以下となり、地域間で大きな格差が生じています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
和歌山県(1位)
和歌山県は114.1施設(偏差値74.4)で堂々の全国1位を獲得。県内の人口密度が適度に分散していることで、各地域に診療所が適切に配置されています。
- 高齢化率の高さに対応した地域密着型医療の充実
- 和歌山市を中心とした医療圏の効率的な形成
- 地域医師会による連携体制の強化
島根県(2位)
島根県は107.4施設(偏差値68.8)で2位にランクイン。過疎化が進む中でも診療所密度を維持する地方医療のモデルケース。
- 離島・中山間地域への診療所設置推進
- 県立病院との役割分担の明確化
- 地域包括ケアシステムの先進的取り組み
東京都(3位)
東京都は104.6施設(偏差値66.5)で3位の高水準を達成。人口密度の高さに対応した効率的な医療提供体制を構築。
- 23区部での診療所密度の高さ
- 専門診療所と一般診療所の適切な配置
- 交通アクセスの良さによる患者利便性向上
長崎県(4位)
長崎県は104.1施設(偏差値66.1)で4位に位置。離島が多い地理的特徴に対応した診療所配置が特徴的。
- 離島医療対策の充実
- 大学病院を中心とした医療ネットワーク
- 地域医療従事者の確保・定着支援
大阪府(5位)
大阪府は100.4施設(偏差値63.0)で5位をキープ。都市部における効率的な医療提供体制の構築に成功。
- 大阪市内の高密度診療所配置
- 医療機関間の連携強化
- 24時間医療体制の充実
下位5県の詳細分析
北海道(43位)
北海道は66.8施設(偏差値35.0)で下位に位置。広大な面積に対する人口分散が課題となっています。
- 医療過疎地域への対策が急務
- 札幌圏以外での診療所不足
- 冬季の交通アクセス制約
沖縄県(44位)
沖縄県は63.2施設(偏差値32.0)で44位。離島県特有の課題と人口増加への対応が必要。
- 本島以外の離島医療体制強化
- 若年人口の多さに対応した体制整備
- 医師確保対策の推進
千葉県(45位)
千葉県は62.9施設(偏差値31.7)で45位。東京のベッドタウン化による医療需要への対応が課題。
- 都市部と農村部の格差拡大
- 高齢化進展への対応遅れ
- 東京都への患者流出問題
茨城県(46位)
茨城県は62.5施設(偏差値31.4)で46位。県北地域を中心とした医療過疎対策が急務。
- 地域間での診療所分布の偏り
- 医師の高齢化と後継者不足
- 公共交通機関の制約による受診困難
埼玉県(47位)
埼玉県は61.3施設(偏差値30.4)で最下位。人口増加に医療インフラ整備が追いついていない状況。
- 急激な人口増加への対応不足
- 東京都への依存度の高さ
- 医療従事者確保の困難
地域別の特徴分析
関西地方
関西地方は上位県が多数を占める傾向が顕著。大阪府(5位)、和歌山県(1位)が特に優秀な成績を記録。都市部の効率的な医療配置と地方部の地域密着型医療がバランス良く発達。医療圏域の連携強化により、質の高い医療サービスを提供しています。
中国地方
島根県(2位)をはじめ、中国地方は地方医療のモデル地域として注目。過疎化・高齢化が進む中でも診療所密度を維持する取り組みが評価されています。県立病院と診療所の役割分担、地域包括ケアシステムの充実が特徴的。
首都圏
首都圏は東京都(3位)が上位に位置する一方、周辺県は軒並み下位に。埼玉県(47位)、千葉県(45位)、茨城県(46位)の低迷が目立ちます。人口急増に医療インフラ整備が追いついていない構造的課題が浮き彫り。
九州・沖縄地方
長崎県(4位)は離島医療対策で高評価を獲得。一方で沖縄県(44位)は人口増加と離島医療の両面で課題を抱えています。地理的特性を活かした医療体制整備が求められます。
社会的・経済的影響
最上位の和歌山県(114.1施設)と最下位の埼玉県(61.3施設)の間には52.8施設の大きな格差が存在。この格差は以下の深刻な影響をもたらします。
診療所数の不足は住民の医療アクセス悪化を招き、早期発見・早期治療の機会損失、慢性疾患の重症化リスク増大、健康格差の拡大につながります。
経済面では、医療費負担の地域格差、労働力の健康維持への影響、地域経済の活力低下が懸念されます。特に高齢化が進む地域では、診療所の充実度が住み続けられる街づくりの重要な要素となっています。
対策と今後の展望
下位県では診療所数増加に向けた積極的な取り組みが始まっています。埼玉県では医師確保対策と診療所開設支援を強化中。千葉県は地域医療連携ネットワークの構築を推進しています。
成功事例として、島根県の離島医療支援システムと和歌山県の地域密着型医療推進が注目。これらの取り組みを他県でも参考にした展開が期待されます。
今後の課題は医師の地域偏在解消、診療所の機能分化、デジタル技術活用による効率化。国と自治体の連携強化により、全国的な医療格差縮小を目指す必要があります。
統計データの基本情報と分析
データ分析では、平均値82.8施設に対し標準偏差12.8となり、比較的大きなばらつきを示しています。上位25%(第3四分位点)は90.9施設、下位25%(第1四分位点)は75.0施設で、四分位範囲は15.9施設。
分布の特徴として、和歌山県、島根県、東京都が上位グループを形成する一方、首都圏近郊県が下位に集中する二極化傾向が明確。中央値82.0施設と平均値82.8施設がほぼ一致し、正規分布に近い形状を示しています。
まとめ
2022年度の一般診療所数(人口10万人当たり)分析から、以下の重要な知見が得られました。
- 和歌山県(114.1施設)が全国1位、地域密着型医療の成功モデル
- 首都圏近郊県の診療所不足が深刻、特に埼玉県は最下位
- 西日本の地方県が上位を占める傾向が顕著
- 最大格差は52.8施設、地域医療の不平等が拡大
- 地理的特性に応じた医療体制整備の重要性が浮き彫り
今後は医師確保対策の強化と地域医療連携の推進が急務。継続的なデータ分析により、全国の医療格差縮小に向けた効果的な政策立案が求められます。