2022年度の一般診療所数(人口10万人当たり)で、和歌山県が114.1施設で全国1位、埼玉県が61.3施設で最下位となりました。最大格差は1.9倍に達し、地域の医療アクセスに大きな差があることが判明しました。この指標は、住民の医療アクセスと健康維持に直結する重要指標です。
概要
一般診療所数(人口10万人当たり)は、地域の医療体制の基盤を示す重要指標です。住民の医療アクセスの良さ、予防医療の充実度、地域医療の持続可能性を評価する上で欠かせません。
この指標が重要な理由として、地域経済の活力指標があります。診療所数の多い地域ほど、住民の健康維持と医療アクセスが確保され、地域の持続可能性が高まります。和歌山県の114.1施設という数字は、地域密着型医療の成功モデルを物語っています。
人口流動と生活利便性の指標としても重要です。診療所数の少ない地域では、医療アクセスの悪化や健康格差の拡大リスクが高まります。埼玉県の61.3施設という数字の背景には、人口急増に医療インフラ整備が追いついていない現実があります。
将来の地域格差拡大の前兆としても注目されます。この格差は今後さらに拡大する可能性が高く、地方の医療過疎化や都市部への医療集中を加速させる要因となります。
全国平均は約82.8施設となっており、西日本の地方県が上位を占める一方、首都圏近郊県が下位に集中する傾向が顕著に表れています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
和歌山県(1位)
和歌山県は114.1施設(偏差値74.4)で堂々の全国1位を獲得しました。県内の人口密度が適度に分散していることで、各地域に診療所が適切に配置されています。
高齢化率の高さに対応した地域密着型医療の充実が特徴です。和歌山市を中心とした医療圏の効率的な形成があり、地域医師会による連携体制の強化が実現されています。
地域の特徴を活かした医療体制整備により、住民の医療アクセスが確保されています。
島根県(2位)
島根県は107.4施設(偏差値68.8)で2位にランクインしました。過疎化が進む中でも診療所密度を維持する地方医療のモデルケースです。
離島・中山間地域への診療所設置推進が特徴です。県立病院との役割分担の明確化があり、地域包括ケアシステムの先進的取り組みが実現されています。
地方医療の成功モデルとして、他の地域でも参考にされる取り組みが進んでいます。
東京都(3位)
東京都は104.6施設(偏差値66.5)で3位の高水準を達成しました。人口密度の高さに対応した効率的な医療提供体制を構築しています。
23区部での診療所密度の高さが特徴です。専門診療所と一般診療所の適切な配置があり、交通アクセスの良さによる患者利便性向上が実現されています。
首都圏の中心部として、効率的な医療供給体制が整備されています。
長崎県(4位)
長崎県は104.1施設(偏差値66.1)で4位に位置しました。離島が多い地理的特徴に対応した診療所配置が特徴的です。
離島医療対策の充実が特徴です。大学病院を中心とした医療ネットワークがあり、地域医療従事者の確保・定着支援が実現されています。
地理的条件を活かした医療体制整備により、住民の医療アクセスが確保されています。
大阪府(5位)
大阪府は100.4施設(偏差値63.0)で5位をキープしました。都市部における効率的な医療提供体制の構築に成功しています。
大阪市内の高密度診療所配置が特徴です。医療機関間の連携強化があり、24時間医療体制の充実が実現されています。
関西圏の中心地として、効率的な医療供給体制が整備されています。
下位5県の詳細分析
埼玉県(47位)
埼玉県は61.3施設(偏差値30.4)で最下位となりました。人口急増に医療インフラ整備が追いついていない状況です。
急激な人口増加への対応不足が課題です。東京都への依存度の高さがあり、医療従事者確保の困難が問題となっています。
首都圏近郊の郊外化が影響し、医療インフラ整備の遅れが顕著に表れています。
茨城県(46位)
茨城県は62.5施設(偏差値31.4)で46位となりました。県北地域を中心とした医療過疎対策が急務です。
地域間での診療所分布の偏りが課題です。医師の高齢化と後継者不足があり、公共交通機関の制約による受診困難が問題となっています。
広域分散型の市街地形成が影響し、医療アクセスの格差が拡大しています。
千葉県(45位)
千葉県は62.9施設(偏差値31.7)で45位となりました。東京のベッドタウン化による医療需要への対応が課題です。
都市部と農村部の格差拡大が課題です。高齢化進展への対応遅れがあり、東京都への患者流出問題が深刻です。
首都圏近郊の郊外化が影響し、医療インフラ整備の遅れが顕著に表れています。
沖縄県(44位)
沖縄県は63.2施設(偏差値32.0)で44位となりました。離島県特有の課題と人口増加への対応が必要です。
本島以外の離島医療体制強化が課題です。若年人口の多さに対応した体制整備があり、医師確保対策の推進が求められています。
島嶼県の特殊性が影響し、医療アクセスの格差が拡大しています。
北海道(43位)
北海道は66.8施設(偏差値35.0)で43位となりました。広大な面積に対する人口分散が課題となっています。
医療過疎地域への対策が急務です。札幌圏以外での診療所不足があり、冬季の交通アクセス制約が問題となっています。
広大な県土と人口分散が影響し、医療アクセスの格差が拡大しています。
地域別の特徴分析
関西地方
関西地方は上位県が多数を占める傾向が顕著です。大阪府(5位)、和歌山県(1位)が特に優秀な成績を記録しています。都市部の効率的な医療配置と地方部の地域密着型医療がバランス良く発達しています。
医療圏域の連携強化により、質の高い医療サービスを提供しています。関西圏の医療網の充実が配置に反映されています。
中国地方
島根県(2位)をはじめ、中国地方は地方医療のモデル地域として注目されています。過疎化・高齢化が進む中でも診療所密度を維持する取り組みが評価されています。
県立病院と診療所の役割分担、地域包括ケアシステムの充実が特徴的です。地方医療の成功モデルとして、他の地域でも参考にされる取り組みが進んでいます。
首都圏
首都圏は東京都(3位)が上位に位置する一方、周辺県は軒並み下位です。埼玉県(47位)、千葉県(45位)、茨城県(46位)の低迷が目立ちます。
人口急増に医療インフラ整備が追いついていない構造的課題が浮き彫りです。首都圏一極集中の深刻さが数値で明確化されています。
九州・沖縄地方
長崎県(4位)は離島医療対策で高評価を獲得しています。一方で沖縄県(44位)は人口増加と離島医療の両面で課題を抱えています。
地理的特性を活かした医療体制整備が求められています。九州各県は中位から上位に分散し、地域の特徴を活かした医療体制が整備されています。
東北・北海道地方
北海道(43位)が下位に位置する一方、東北各県は中位から上位に分散しています。広大な県土と人口分散が影響し、医療アクセスの格差が拡大しています。
東北・北海道の特徴的な分布が特徴です。地域の地理的条件が医療体制に大きく影響し、医療過疎地域への対策が重要です。
社会的・経済的影響
最上位の和歌山県(114.1施設)と最下位の埼玉県(61.3施設)の間には52.8施設の大きな格差が存在します。この格差は以下の深刻な影響をもたらします。
地域間格差の要因
人口密度の差が重要な要因です。都市部では高い医療需要により経営の安定性が確保される一方、地方では需要不足により事業継続が困難になっています。
地理的条件も影響しています。山間部や過疎地域では、診療所までの距離が長くなり、住民の医療アクセスが制限されています。
経済的持続性も課題です。医療需要の減少により、地方の診療所では経営継続が困難な状況が続いています。
社会的影響
医療アクセスの悪化が懸念されています。診療所数の不足により、早期発見・早期治療の機会損失や慢性疾患の重症化リスク増大につながります。
健康格差の拡大も重要です。医療アクセスの悪い地域では、健康維持が困難となり、地域の持続可能性が低下します。
地域経済への打撃も深刻です。医療従事者の不足は、地域の雇用機会減少と経済活動の低下を招いています。
対策と今後の展望
効率的配置の推進
需要予測に基づく配置計画が重要です。人口動態や医療需要データを活用した戦略的な診療所配置が求められています。過剰競争地域での調整と不足地域での新設を推進する必要があります。
多機能化の促進
複合サービスの展開が進んでいます。診療所に地域包括ケア機能や予防医療機能を付加することで、経営の安定化を図る取り組みが進んでいます。
島根県の離島医療支援システムや和歌山県の地域密着型医療推進が成功事例として注目されています。
新技術の活用
デジタル技術の活用が重要です。遠隔医療やテレヘルスの導入により、医療アクセスの改善を進めています。AI診断支援システムの導入も検討されています。
政策的支援
医師確保対策の強化が求められています。地域医療従事者の確保・定着支援に向けた補助制度の充実が重要です。地域住民の医療アクセス確保は重要な政策課題です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値施設 |
---|---|
平均値 | 84.8 |
中央値 | 86.4 |
最大値 | 114.1(和歌山県) |
最小値 | 61.3(埼玉県) |
標準偏差 | 12 |
データ数 | 47件 |
統計分析
平均値(約82.8施設)と中央値の比較から、都市部での高密度配置が全体平均を押し上げていることが分かります。標準偏差の大きさは、都道府県間での格差の大きさを示しています。
分布の特徴として、上位県は西日本の地方県や都市部に集中しています。下位県は主に首都圏近郊県や広域県となっており、人口密度と地理的条件の影響が顕著に表れています。
四分位範囲による分析では、上位25%と下位25%の格差が大きく、二極化傾向が確認されます。この傾向は、医療供給体制の地域格差拡大を示唆しています。
外れ値として、和歌山県と島根県の数値が特に高くなっています。これは地域密着型医療の成功モデルと地方医療の先進的取り組みを反映しています。
まとめ
一般診療所数(人口10万人当たり)の地域格差は、都市部と地方の医療供給体制の違いを明確に示しています。和歌山県の114.1施設から埼玉県の61.3施設まで、1.9倍の格差が存在します。
この格差の背景には、人口密度の差、地理的条件、経済的持続性の課題があります。都市部では高い医療需要により経営の安定性が確保される一方、地方では需要不足により事業継続が困難な状況が続いています。
今後の課題として、効率的配置の推進、多機能化の促進、新技術の活用、政策的支援が重要です。地域住民の医療アクセス確保と地域医療の持続性向上に向けた取り組みが求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (施設) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 和歌山県 | 114.1 | 74.4 | +2.1% |
2 | 島根県 | 107.4 | 68.8 | +0.8% |
3 | 東京都 | 104.6 | 66.5 | +2.3% |
4 | 長崎県 | 104.1 | 66.1 | +0.2% |
5 | 大阪府 | 100.4 | 63.0 | +1.8% |
6 | 徳島県 | 99.9 | 62.6 | +1.4% |
7 | 京都府 | 97.9 | 60.9 | +1.0% |
8 | 兵庫県 | 96.6 | 59.8 | +1.1% |
9 | 山梨県 | 93.8 | 57.5 | +0.6% |
10 | 奈良県 | 93.8 | 57.5 | +0.9% |
11 | 福岡県 | 93.8 | 57.5 | +0.5% |
12 | 山口県 | 93.2 | 57.0 | -1.0% |
13 | 広島県 | 91.9 | 55.9 | +0.8% |
14 | 香川県 | 91.3 | 55.4 | +1.2% |
15 | 愛媛県 | 91.3 | 55.4 | -0.1% |
16 | 鳥取県 | 89.2 | 53.7 | -0.2% |
17 | 鹿児島県 | 88.6 | 53.2 | +1.1% |
18 | 秋田県 | 87.8 | 52.5 | +0.9% |
19 | 三重県 | 87.6 | 52.3 | +0.6% |
20 | 佐賀県 | 87.6 | 52.3 | +0.5% |
21 | 宮崎県 | 87.3 | 52.1 | +1.4% |
22 | 大分県 | 86.9 | 51.7 | +0.8% |
23 | 山形県 | 86.7 | 51.6 | +0.2% |
24 | 岡山県 | 86.4 | 51.3 | -0.9% |
25 | 熊本県 | 86.2 | 51.2 | +0.9% |
26 | 岐阜県 | 84.1 | 49.4 | +1.2% |
27 | 群馬県 | 82.7 | 48.2 | +0.4% |
28 | 滋賀県 | 81.3 | 47.1 | +1.4% |
29 | 長野県 | 79.5 | 45.6 | +0.8% |
30 | 石川県 | 79.2 | 45.3 | +0.8% |
31 | 新潟県 | 78.3 | 44.6 | +1.6% |
32 | 高知県 | 78.1 | 44.4 | +0.4% |
33 | 福島県 | 77.7 | 44.1 | +2.6% |
34 | 栃木県 | 77.5 | 43.9 | +0.7% |
35 | 静岡県 | 77.1 | 43.6 | +1.2% |
36 | 神奈川県 | 76.8 | 43.3 | +1.4% |
37 | 宮城県 | 76.7 | 43.2 | +2.5% |
38 | 福井県 | 76.1 | 42.7 | - |
39 | 岩手県 | 75.3 | 42.1 | +1.5% |
40 | 愛知県 | 74.9 | 41.7 | +1.4% |
41 | 富山県 | 74.5 | 41.4 | +0.1% |
42 | 青森県 | 71.3 | 38.7 | - |
43 | 北海道 | 66.8 | 35.0 | +1.8% |
44 | 沖縄県 | 63.2 | 32.0 | +1.8% |
45 | 千葉県 | 62.9 | 31.7 | +2.8% |
46 | 茨城県 | 62.5 | 31.4 | +0.2% |
47 | 埼玉県 | 61.3 | 30.4 | +0.7% |