2022年度の一般粉じん発生施設数では、愛知県が4,893件で全国1位、鳥取県が334件で最下位となり、約14.7倍の格差が生じています。
上位県は製造業が盛んな工業地域に集中し、下位県は人口規模が小さい地域が多くなっています。この指標は環境保全と産業発展のバランスを測る重要な指標となっています。
概要
一般粉じん発生施設数とは、工場や事業所で粉じんを発生させる設備の届出数を示します。
この指標が重要な理由として、環境負荷の把握により地域の大気環境への影響度を測定できることが挙げられます。また、産業活動の規模を反映し、製造業や建設業の活発さを示す指標としても機能します。さらに、規制対象の管理において環境保全対策の基礎データとして活用される重要な役割を担っています。
全国平均は約1,451件で、上位県と下位県の間に大きな格差が見られます。工業地帯を抱える県ほど施設数が多い傾向があります。
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上位5県の詳細分析
愛知県(1位)
愛知県は4,893件(偏差値80.0)で全国1位を獲得しています。自動車産業を中心とした重厚長大産業が集積しているためです。
トヨタ自動車をはじめとする自動車関連企業が多数立地しており、鉄鋼、化学工業などの基幹産業が発達しています。中部地方の産業中核として機能し、自動車産業の集積により関連企業も多数立地しています。この産業集積が一般粉じん発生施設数の多さに直結しています。
北海道(2位)
北海道は4,740件(偏差値78.6)で2位にランクイン。広大な面積と資源産業が影響しています。
石炭、セメント製造などの資源関連産業が盛んであり、食品加工業や建設業が広域に分散しています。面積の広さが施設数の多さに寄与しており、各地域に産業施設が点在している特徴があります。また、寒冷地での建設需要も施設数の増加に影響しています。
兵庫県(3位)
兵庫県は4,602件(偏差値77.4)で3位を確保。阪神工業地帯の中核として重化学工業が発達しています。
神戸製鋼所など大手鉄鋼メーカーが立地しており、化学工業や機械工業が集積しています。港湾を活用した重工業が盛んであり、阪神工業地帯の歴史的な産業集積が継続しています。また、神戸港を活用した貿易関連産業も施設数の増加に寄与しています。
福岡県(4位)
福岡県は3,335件(偏差値66.2)で4位。北部九州工業地域の中心地として機能しています。
鉄鋼業や化学工業が北九州市周辺に集積しており、自動車産業の進出も活発です。九州地方の工業拠点として発展しており、北部九州工業地域の存在が大きく影響しています。また、アジアとの貿易拠点としての機能も産業集積を促進しています。
大分県(5位)
大分県は3,016件(偏差値63.3)で5位にランクイン。石油化学コンビナートが大きく寄与しています。
大分石油化学コンビナートが稼働しており、鉄鋼業や非鉄金属工業も発達しています。重化学工業の集積度が高く、石油化学産業の集積が施設数の多さに直結しています。また、大分港を活用した重工業の立地も進んでいます。
下位5県の詳細分析
鳥取県(47位)
鳥取県は334件(偏差値39.6)で全国最下位。人口規模が小さく、大規模工業が少ないことが要因です。
全国最少の人口規模であり、農業中心の産業構造となっています。軽工業や食品工業が中心で、大規模な重化学工業の立地は限定的です。また、地理的条件により産業集積が進みにくい環境にあります。
佐賀県(46位)
佐賀県は390件(偏差値40.1)で46位。農業県的性格が強く、重工業の立地は限定的です。
農業・食品加工業が主力産業であり、有田焼などの伝統工業が中心となっています。人口規模に対応した施設数となっており、大規模な工業集積は見られません。また、九州地方の中でも比較的農業県としての性格が強く残っています。
奈良県(45位)
奈良県は391件(偏差値40.1)で45位。大阪のベッドタウン的性格が強く、工業立地は少なめです。
住宅地中心の土地利用となっており、観光・サービス業が中心です。大規模工場の立地は限定的で、大阪のベッドタウンとしての機能が優先されています。また、歴史的遺産の保護も産業立地に影響しています。
滋賀県(44位)
滋賀県は437件(偏差値40.5)で44位。琵琶湖の環境保全を重視し、重工業の立地を抑制しています。
環境配慮型の産業立地となっており、電子部品・精密機械が中心です。琵琶湖の水質保全を優先した産業政策により、重化学工業の立地は抑制されています。また、京都や大阪のベッドタウンとしての機能も産業構造に影響しています。
宮崎県(43位)
宮崎県は546件(偏差値41.5)で43位。農業県的性格が強く、製造業の規模は小さめです。
農畜産業が基幹産業であり、食品加工業が中心となっています。重化学工業の立地は少なく、農業県としての性格が強く残っています。また、温暖な気候を活かした農業関連産業が発達しています。
地域別の特徴分析
関東地方
関東地方では東京都が1,771件(14位)、千葉県が2,155件(10位)と上位にランクイン。京浜工業地帯や京葉工業地域の影響が大きく現れています。
重化学工業と先端技術産業が共存しており、人口集中に伴う建設業も活発です。環境規制の強化により近年は減少傾向にありますが、依然として産業集積度は高い水準を維持しています。また、首都圏としての機能が多様な産業の立地を促進しています。
近畿地方
近畿地方では兵庫県が4,602件で3位、大阪府が1,565件(18位)と健闘。阪神工業地帯の伝統的な工業集積が反映されています。
鉄鋼・化学工業の歴史的集積地であり、機械工業や繊維工業も発達しています。環境対策の先進的な取り組みが進んでおり、産業と環境の調和を目指した政策が実施されています。また、関西圏としての経済的機能も産業集積を支えています。
九州・沖縄地方
九州では福岡県が3,335件で4位、大分県が3,016件で5位と上位を占めています。北部九州工業地域の存在が大きく影響しています。
石油化学コンビナートの集積が見られ、自動車産業の新規立地も活発です。地域格差が比較的大きく、北部九州の工業集積と南部の農業県との対比が顕著です。また、アジアとの経済的結びつきも産業発展に影響しています。
社会的・経済的影響
最上位の愛知県と最下位の鳥取県の間には約14.7倍の格差が存在します。この格差は産業構造の違いを如実に示しています。
地域間格差の要因として、産業立地の歴史的経緯による重化学工業の集積度合いの違いが挙げられます。また、地理的条件として港湾立地や交通アクセスの優位性も影響しています。さらに、政策的誘導として工業団地整備や企業誘致政策の違いも格差の要因となっています。
社会的影響として、雇用機会の地域格差拡大が懸念されています。また、環境負荷の地域的偏在も課題となっており、地域経済の産業依存度格差も生じています。これらの格差は地域の持続可能な発展に影響を与える可能性があります。
対策と今後の展望
環境負荷軽減への取り組みとして、上位県では排ガス処理装置の高度化や、工場の環境管理システム強化を推進しています。愛知県では自動車産業と連携した環境技術開発が進んでいます。また、環境規制の強化により、より効率的で環境負荷の少ない施設への更新も進められています。
地域バランスの改善策として、下位県では環境調和型産業の誘致や、既存産業の高度化による施設効率向上を図っています。鳥取県では再生可能エネルギー関連産業の育成に注力しています。また、地域特性を活かした産業振興策も実施されています。
今後の課題として、カーボンニュートラル実現に向けて、粉じん発生施設の技術革新と規制強化が同時に求められています。地域特性を活かした持続可能な産業発展が重要であり、環境保全と経済発展の両立が求められています。
指標 | 値件 |
---|---|
平均値 | 1,509 |
中央値 | 1,032 |
最大値 | 4,893(愛知県) |
最小値 | 334(鳥取県) |
標準偏差 | 1,129 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
平均値1,451.1件に対し中央値1,096.0件となっており、上位県に引っ張られた右裾の長い分布を示しています。これは一部の工業県が全体の平均値を押し上げていることを意味します。
分布の特徴として、上位5県が全体の約30%を占める集中型分布となっています。標準偏差が大きいことから、都道府県間の格差が顕著であることが統計的にも確認できます。この分布は産業集積の地域格差を明確に示しています。
四分位範囲による分析では、第1四分位(25%値)が655.0件、第3四分位(75%値)が1,983.5件となっており、中位50%の県でも約3倍の格差が存在します。この格差は産業構造の地域差を反映しています。
外れ値の影響として、偏差値80以上の愛知県、北海道、兵庫県は明確な外れ値として、全国平均を大きく押し上げています。これらの県を除いた場合、より均等な分布に近づきます。この外れ値の存在は産業集積の地域的偏在を示しています。
まとめ
主要な発見として、愛知県が4,893件で圧倒的な1位を獲得しており、工業集積の影響が顕著に現れています。上位県は重化学工業地帯に集中しており、歴史的な産業立地が継続しています。下位県は人口規模と強い相関を示しており、農業県ほど施設数が少ない傾向があります。地域格差は約14.7倍と大きく、産業構造の違いを反映しています。また、環境負荷の地域的偏在が課題となっており、対策の地域差も存在しています。
今後の展望として、環境技術の進歩と規制強化により、施設数の適正化と環境負荷軽減の両立が期待されます。継続的なモニタリングにより、持続可能な産業発展と環境保全のバランス確保が重要です。地域特性を活かした産業振興と環境保全の両立が今後の重要な課題となります。
順位↓ | 都道府県 | 値 (件) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 愛知県 | 4,893 | 80.0 | -0.4% |
2 | 北海道 | 4,740 | 78.6 | +0.1% |
3 | 兵庫県 | 4,602 | 77.4 | -1.5% |
4 | 福岡県 | 3,335 | 66.2 | -1.4% |
5 | 大分県 | 3,016 | 63.3 | +0.9% |
6 | 栃木県 | 2,899 | 62.3 | +1.5% |
7 | 茨城県 | 2,559 | 59.3 | +1.2% |
8 | 岡山県 | 2,537 | 59.1 | -0.6% |
9 | 福島県 | 2,177 | 55.9 | -8.0% |
10 | 千葉県 | 2,155 | 55.7 | +2.0% |
11 | 神奈川県 | 2,122 | 55.4 | +1.4% |
12 | 広島県 | 2,113 | 55.3 | -12.9% |
13 | 三重県 | 1,815 | 52.7 | -0.6% |
14 | 東京都 | 1,771 | 52.3 | +2.0% |
15 | 岩手県 | 1,726 | 51.9 | -0.3% |
16 | 山口県 | 1,670 | 51.4 | -0.8% |
17 | 埼玉県 | 1,619 | 51.0 | +2.3% |
18 | 大阪府 | 1,565 | 50.5 | -0.1% |
19 | 和歌山県 | 1,559 | 50.4 | +0.6% |
20 | 青森県 | 1,544 | 50.3 | +0.5% |
21 | 長野県 | 1,347 | 48.6 | -0.1% |
22 | 富山県 | 1,208 | 47.3 | +1.3% |
23 | 静岡県 | 1,118 | 46.5 | +0.1% |
24 | 愛媛県 | 1,032 | 45.8 | +2.3% |
25 | 鹿児島県 | 1,000 | 45.5 | +8.6% |
26 | 岐阜県 | 969 | 45.2 | +3.0% |
27 | 長崎県 | 964 | 45.2 | -0.3% |
28 | 香川県 | 921 | 44.8 | -4.7% |
29 | 熊本県 | 901 | 44.6 | - |
30 | 新潟県 | 892 | 44.5 | +0.7% |
31 | 徳島県 | 844 | 44.1 | +1.9% |
32 | 高知県 | 775 | 43.5 | +0.9% |
33 | 沖縄県 | 725 | 43.1 | +3.7% |
34 | 宮城県 | 717 | 43.0 | -1.4% |
35 | 京都府 | 674 | 42.6 | -0.3% |
36 | 石川県 | 657 | 42.5 | -0.8% |
37 | 山形県 | 652 | 42.4 | -0.3% |
38 | 山梨県 | 648 | 42.4 | -1.2% |
39 | 群馬県 | 639 | 42.3 | +0.8% |
40 | 島根県 | 606 | 42.0 | -0.8% |
41 | 秋田県 | 563 | 41.6 | -0.3% |
42 | 福井県 | 556 | 41.6 | +1.3% |
43 | 宮崎県 | 546 | 41.5 | -0.7% |
44 | 滋賀県 | 437 | 40.5 | +1.2% |
45 | 奈良県 | 391 | 40.1 | -0.5% |
46 | 佐賀県 | 390 | 40.1 | -2.0% |
47 | 鳥取県 | 334 | 39.6 | - |