2020年度の都道府県別男性労働力人口比率ランキングでは、福井県が69.4%で全国最高位、沖縄県が56.9%で全国最下位を記録しました。両県の差は12.5ポイントにも達し、地域の産業構造や雇用環境の違いを如実に表しています。男性労働力人口比率は地域の経済活動の活発さや雇用状況を反映する重要な指標です。
概要
労働力人口比率(男性)とは、15歳以上の男性人口に占める労働力人口(就業者と完全失業者の合計)の割合を指します。この統計は地域の経済活動の活発さや雇用状況を反映しており、地域経済政策や雇用政策の基礎データとして重要な指標です。
2020年度のデータを基に、全国47都道府県の状況を詳しく分析します。労働力人口比率は、地域の産業構造、年齢構成、教育水準などによって大きく異なり、製造業が盛んな地域では比較的高く、大都市圏や観光業が中心の地域では相対的に低くなる傾向があります。
全国的な傾向を見ると、製造業が盛んな北陸地方や中部地方の県で高い数値を示しており、大都市圏や観光業が中心の地域では相対的に低くなっています。また、地域の伝統的な勤労意欲や雇用環境の違いも影響していると考えられます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
福井県(69.4%、偏差値65.3)
福井県が全国で最も高い69.4%(偏差値65.3)を記録しています。福井県は繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、原子力発電所関連の雇用も多いことが高い労働力人口比率につながっていると考えられます。また、伝統的に勤労意欲が高い地域性も影響していると考えられます。福井県では製造業の集積により安定した雇用機会が創出されており、地域の産業基盤が労働力人口比率の高さに寄与しています。
長野県(68.8%、偏差値63.3)
長野県は68.8%(偏差値63.3)で2位となっています。精密機械や電子部品などの製造業が発達していることに加え、農業も盛んであり、多様な就業機会が存在することが挙げられます。また、健康長寿県として知られ、高齢者の就業率も高いことも影響していると考えられます。長野県では地域の産業多様性が労働力人口比率の高さに寄与しており、製造業と農業の両立が特徴的です。
富山県(68.7%、偏差値62.9)
富山県は68.7%(偏差値62.9)で3位です。製造業が盛んであることが挙げられ、特に機械産業などの製造業が地域経済の中心となっており、男性の就業機会が比較的多いことが高い労働力人口比率につながっています。富山県では伝統的な製造業の集積により安定した雇用環境が整っており、地域の産業構造が労働力人口比率の高さに影響しています。
佐賀県(68.4%、偏差値62.0)
佐賀県は68.4%(偏差値62.0)で4位となっています。製造業や農業が盛んであることが挙げられ、佐賀県は陶磁器産業や農業が地域経済の中心となっており、これらの産業が男性の就業機会を提供しています。佐賀県では地域の伝統産業と農業の両立により、多様な雇用機会が創出されており、地域の産業特性が労働力人口比率の高さに寄与しています。
岩手県(68.3%、偏差値61.6)
岩手県は68.3%(偏差値61.6)で5位です。製造業や農林水産業が盛んであることに加え、公共事業などによる建設業の雇用も多いことが挙げられます。また、東日本大震災からの復興需要も雇用創出に寄与していると考えられます。岩手県では第一次産業と第二次産業の両立により、地域の雇用環境が整っており、復興需要も労働力人口比率の高さに影響しています。
下位5県の詳細分析
沖縄県(56.9%、偏差値24.1)
沖縄県が最も低い56.9%(偏差値24.1)となっています。観光業が主要産業であり、季節変動や非正規雇用が多いことが低い労働力人口比率の一因と考えられます。また、若年層の失業率が高いことも特徴です。沖縄県では観光業の季節性や非正規雇用の多さが労働力人口比率の低さに影響しており、地域の産業構造が雇用環境に影響しています。
東京都(57.2%、偏差値25.0)
東京都は57.2%(偏差値25.0)で46位です。大学生や専門学校生など非労働力人口の割合が高いことが挙げられます。また、高齢化の進行も影響していると考えられます。東京都では金融業やIT産業など高度なスキルを要する産業が集中しており、これらの産業にマッチしない労働者が労働市場から退出している可能性もあります。
大阪府(57.5%、偏差値26.0)
大阪府は57.5%(偏差値26.0)で45位となっています。高齢化の進行や若年層の失業率の高さが挙げられます。また、製造業の衰退により、かつての主要な雇用先が減少していることも影響していると考えられます。大阪府では産業構造の変化により雇用環境が変化しており、地域の経済状況が労働力人口比率の低さに影響しています。
京都府(58.8%、偏差値30.3)
京都府は58.8%(偏差値30.3)で44位です。大都市圏特有の産業構造や人口構成が挙げられ、サービス業など第三次産業の比重が高く、また大学生など非労働力人口の割合も高いことが低い労働力人口比率につながっています。京都府では観光業や教育機関の集積により、非労働力人口の割合が高くなっています。
高知県(60.0%、偏差値34.3)
高知県は60.0%(偏差値34.3)で43位となっています。中山間地域が多く、過疎高齢化が進んでいることが挙げられます。また、第一次産業の比重が高い一方で、若年層の県外流出が進んでいることも影響していると考えられます。高知県では地域の地理的条件や人口動態が労働力人口比率の低さに影響しており、地域の課題が雇用環境に反映されています。
地域別の特徴分析
東北地方
東北地方では岩手県(5位、68.3%)が最も男性労働力人口比率が高く、青森県(10位、67.3%)、山形県(7位、67.9%)と続き、秋田県(17位、66.0%)、福島県(20位、65.9%)、宮城県(21位、65.7%)も全国的に見ると上位から中位に位置しています。東北地方全体として男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業や農林水産業などの第一次・第二次産業が盛んであることが挙げられます。特に岩手県や山形県では、これらの産業が地域経済の中心となっており、男性の就業機会が比較的多いことが高い労働力人口比率につながっています。
関東地方
関東地方では群馬県(11位、67.1%)が最も男性労働力人口比率が高く、栃木県(17位、66.0%)、茨城県(24位、65.5%)、埼玉県(32位、64.2%)、千葉県(38位、62.6%)、神奈川県(40位、62.0%)、東京都(46位、57.2%)と続きます。関東地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きな地域差があります。これは、東京都や神奈川県などの大都市圏と、群馬県や栃木県などの製造業や農業が盛んな県との産業構造の違いを反映しています。
中部地方
中部地方では福井県(1位、69.4%)が最も男性労働力人口比率が高く、長野県(2位、68.8%)、富山県(3位、68.7%)と続き、山梨県(8位、67.5%)、岐阜県(9位、67.4%)、静岡県(6位、68.0%)、石川県(12位、66.8%)、新潟県(14位、66.6%)、愛知県(15位、66.5%)、三重県(23位、65.6%)と、全国的に見ると上位から中位に集中しています。中部地方全体として男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業が盛んであることが挙げられます。
近畿地方
近畿地方では滋賀県(17位、66.0%)が最も男性労働力人口比率が高く、和歌山県(32位、64.2%)、兵庫県(39位、62.3%)、奈良県(42位、60.9%)、京都府(44位、58.8%)、大阪府(45位、57.5%)と続きます。近畿地方全体として男性労働力人口比率が低い理由としては、大都市圏特有の産業構造や人口構成が挙げられます。特に大阪府や京都府では、サービス業など第三次産業の比重が高く、また大学生など非労働力人口の割合も高いことが低い労働力人口比率につながっています。
中国・四国地方
中国・四国地方では島根県(12位、66.8%)が最も男性労働力人口比率が高く、鳥取県(16位、66.1%)、鹿児島県(21位、65.7%)、広島県(24位、65.5%)、岡山県(28位、64.9%)、香川県(30位、64.3%)、山口県(34位、64.0%)、徳島県(35位、63.9%)、愛媛県(36位、63.0%)、高知県(43位、60.0%)と続きます。中国・四国地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きなばらつきがあります。これは、島根県や鳥取県などの第一次産業や製造業が盛んな県と、高知県などの観光業や第三次産業が中心の県との産業構造の違いを反映しています。
九州・沖縄地方
九州・沖縄地方では佐賀県(4位、68.4%)が最も男性労働力人口比率が高く、長崎県(26位、65.2%)、熊本県(27位、65.0%)、大分県(28位、64.9%)、宮崎県(30位、64.3%)、福岡県(37位、62.7%)、沖縄県(47位、56.9%)と続きます。九州・沖縄地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きな地域差があります。これは、佐賀県などの製造業や農業が盛んな県と、福岡県や沖縄県などのサービス業が中心の県との産業構造の違いを反映しています。
社会的・経済的影響
最上位の福井県(69.4%)と最下位の沖縄県(56.9%)の間には12.5ポイントの格差があります。この格差は、地域経済、社会保障制度、地域社会など様々な面に影響を与えています。
男性労働力人口比率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。男性労働力人口比率が高い地域では、労働力の供給が豊富であり、企業誘致や産業発展に有利に働く可能性があります。一方、男性労働力人口比率が低い地域では、労働力不足が経済成長の制約となる可能性があります。
社会保障制度への影響も重要です。男性労働力人口比率が高い地域では、税収や社会保険料の収入が多く、社会保障制度の財政基盤が安定する傾向があります。一方、男性労働力人口比率が低い地域では、税収や社会保険料の収入が少なく、社会保障制度の財政が厳しくなる可能性があります。
対策と今後の展望
男性労働力人口比率の地域間格差を縮小するためには、地域特性を踏まえたアプローチが重要です。製造業が盛んな地域では、産業の高度化や新技術の導入により、より質の高い雇用機会を創出することが求められています。
大都市圏では、高齢者の労働参加促進や、女性の労働参加を促進することで、労働力人口比率の向上を図ることが重要です。また、教育機関との連携により、学生の就業意識向上やキャリア教育の充実も求められています。
地方県では、地域の特性を活かした産業振興や、若年層の定着を促進する施策が重要です。また、テレワークの普及により、地方でも都市部の企業に勤務できる可能性が広がっており、地域間格差の縮小が期待されています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 64.8 |
中央値 | 65.5 |
最大値 | 69.4(福井県) |
最小値 | 56.9(沖縄県) |
標準偏差 | 3 |
データ数 | 47件 |
2020年度の都道府県別男性労働力人口比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます。平均値は約64.6%、中央値は約65.2%とほぼ一致しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、沖縄県(56.9%)や東京都(57.2%)、大阪府(57.5%)が特に低い値を示しており、これらを除くとさらに対称性が高まります。
平均値と中央値を比較すると、平均値が中央値を下回っており、下位県の影響で分布が左に歪んでいることが分かります。これは沖縄県や東京都などの下位県が平均値を引き下げていることを反映しています。
データは全体としてわずかに負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。福井県(69.4%)が最も高く、沖縄県(56.9%)が最も低いですが、その差は12.5ポイントであり、極端な格差は見られません。
四分位範囲を分析すると、第1四分位数(Q1)は約62.6%、第3四分位数(Q3)は約67.3%で、四分位範囲(IQR)は約4.7ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の男性労働力人口比率が62.6%から67.3%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い値を示していることがわかります。
標準偏差は約3.5ポイントで、変動係数(標準偏差÷平均値)は約5.4%となり、相対的なばらつきは小さいことを示しています。これは、都道府県間の男性労働力人口比率の格差が比較的小さいことを意味します。
まとめ
2020年度の都道府県別男性労働力人口比率ランキングでは、福井県が69.4%で1位、沖縄県が56.9%で47位となりました。上位には福井県、長野県、富山県などの製造業が盛んな県が多く、下位には沖縄県、東京都、大阪府などの大都市を有する都府県や観光業が中心の県が多く見られました。
男性労働力人口比率の地域差は、産業構造、年齢構成、教育水準など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、地域社会など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の男性労働力人口比率の格差は比較的小さく、多くの県が63%から67%の間に収まっていることがわかります。ただし、沖縄県、東京都、大阪府は特に低い値を示しており、特殊な状況にあることが伺えます。
少子高齢化が進む日本社会において、労働力人口の確保は重要な課題となっています。特に、男性労働力人口比率が低い地域では、女性や高齢者の労働参加を促進するとともに、産業構造の転換や雇用環境の改善を通じて、労働力人口比率の向上を図ることが求められています。また、地域の特性に応じた雇用創出や人材育成も重要な政策課題です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 福井県 | 69.4 | 65.3 | -1.1% |
2 | 長野県 | 68.8 | 63.3 | -3.0% |
3 | 富山県 | 68.7 | 62.9 | -0.9% |
4 | 佐賀県 | 68.4 | 62.0 | -2.1% |
5 | 岩手県 | 68.3 | 61.6 | -1.9% |
6 | 静岡県 | 68.0 | 60.6 | -4.1% |
7 | 山形県 | 67.9 | 60.3 | -1.4% |
8 | 山梨県 | 67.5 | 59.0 | -1.9% |
9 | 岐阜県 | 67.4 | 58.7 | -3.4% |
10 | 青森県 | 67.3 | 58.3 | -0.9% |
11 | 群馬県 | 67.1 | 57.7 | -2.6% |
12 | 石川県 | 66.8 | 56.7 | -2.6% |
13 | 島根県 | 66.8 | 56.7 | -2.0% |
14 | 新潟県 | 66.6 | 56.0 | -2.5% |
15 | 愛知県 | 66.5 | 55.7 | -4.3% |
16 | 鳥取県 | 66.1 | 54.4 | -2.5% |
17 | 秋田県 | 66.0 | 54.0 | -0.6% |
18 | 栃木県 | 66.0 | 54.0 | -4.2% |
19 | 滋賀県 | 66.0 | 54.0 | -4.2% |
20 | 福島県 | 65.9 | 53.7 | -3.8% |
21 | 宮城県 | 65.7 | 53.1 | -2.5% |
22 | 鹿児島県 | 65.7 | 53.1 | -0.3% |
23 | 三重県 | 65.6 | 52.7 | -3.1% |
24 | 茨城県 | 65.5 | 52.4 | -4.4% |
25 | 広島県 | 65.5 | 52.4 | -2.4% |
26 | 長崎県 | 65.2 | 51.4 | -2.8% |
27 | 熊本県 | 65.0 | 50.8 | -1.2% |
28 | 岡山県 | 64.9 | 50.4 | -3.7% |
29 | 大分県 | 64.9 | 50.4 | -3.4% |
30 | 香川県 | 64.3 | 48.4 | -2.7% |
31 | 宮崎県 | 64.3 | 48.4 | -3.3% |
32 | 埼玉県 | 64.2 | 48.1 | -5.6% |
33 | 和歌山県 | 64.2 | 48.1 | -2.9% |
34 | 山口県 | 64.0 | 47.5 | -2.1% |
35 | 徳島県 | 63.9 | 47.1 | -0.2% |
36 | 愛媛県 | 63.0 | 44.2 | -5.8% |
37 | 福岡県 | 62.7 | 43.2 | -2.3% |
38 | 千葉県 | 62.6 | 42.8 | -4.9% |
39 | 兵庫県 | 62.3 | 41.9 | -3.3% |
40 | 北海道 | 62.0 | 40.9 | -3.4% |
41 | 神奈川県 | 62.0 | 40.9 | -2.8% |
42 | 奈良県 | 60.9 | 37.2 | -4.4% |
43 | 高知県 | 60.0 | 34.3 | -1.8% |
44 | 京都府 | 58.8 | 30.3 | -9.9% |
45 | 大阪府 | 57.5 | 26.0 | -7.1% |
46 | 東京都 | 57.2 | 25.0 | -4.3% |
47 | 沖縄県 | 56.9 | 24.1 | -7.6% |