2021年度の都道府県別図書館数(人口100万人当たり)において、山梨県が65.8館(偏差値75.0)で全国1位を獲得し、神奈川県が9.2館(偏差値30.2)で47位となりました。上位県と下位県の間には約7.2倍の格差が存在し、地域の文化・教育環境と住民の学習機会に大きな違いが生じています。この指標は地域住民が等しく図書館サービスにアクセスできる環境の整備状況を表し、住民の学習機会や情報アクセスの平等性を測る重要な基準として機能しています。
概要
図書館数(人口100万人当たり)は、地域住民が等しく図書館サービスにアクセスできる環境の整備状況を表す重要な指標です。この数値が高いほど、住民一人ひとりが図書館を利用しやすい環境が整っていることを意味します。
この指標が重要である理由として、住民の学習機会や情報アクセスの平等性を測る文化・教育機会の均等性があります。また、地域づくりや人材育成の基盤となる地域の知的インフラとしての役割も重要です。さらに、すべての世代の学習・読書活動を支える生涯学習の基盤として、地域社会の発展に不可欠な施設でもあります。
全国平均は32.9館となっており、地方と都市部で明確な差が見られます。人口密度や自治体の施策により大きく異なる実態が明らかになっています。山間地域や地方部では図書館整備に積極的な一方、大都市圏では効率化を重視した運営が主流となっています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
山梨県は65.8館(偏差値75.0)で全国1位を獲得しています。県内27市町村のうち多くの自治体が図書館運営に積極的で、地域密着型のサービスを展開しています。人口規模に対して充実した図書館網を構築し、市町村合併後も既存施設を維持・活用する方針を継続しています。県立図書館を中心とした広域連携システムにより、効率的なサービス提供を実現している地域です。
長野県
長野県は図書館数59.0館(偏差値69.6)で3位です。77市町村という全国最多の基礎自治体数を活かし、きめ細かな図書館サービスを提供しています。市町村単位での図書館整備が充実し、教育県としての伝統的な取り組みが特徴です。県立図書館と市町村図書館の連携強化により、効率的なサービス提供を実現しています。
島根県は61.7館(偏差値71.8)で2位に位置しています。県内19市町村での図書館整備が進んでおり、過疎地域でも図書館サービスを重視する姿勢が特徴的です。中山間地域での図書館サービス維持に注力し、移動図書館車による巡回サービスを充実させています。デジタル化による利便性向上を推進し、地理的制約を克服する取り組みを展開している地域です。
下位5県の詳細分析
長野県は59.0館(偏差値69.6)で3位となっています。77市町村という全国最多の基礎自治体数を活かし、きめ細かな図書館サービスを提供しています。市町村単位での図書館整備が充実し、教育県としての伝統的な取り組みが継続されています。県立図書館と市町村図書館の連携強化により、県域全体での図書館サービス向上を図っている地域です。
宮城県
宮城県は図書館数15.3館(偏差値35.0)で45位です。仙台市への人口集中により、県全体での図書館密度が低水準となっています。震災復興過程での施設再整備が課題となっており、仙台市中心部への機能集約が進んでいます。沿岸部での図書館サービス復旧途上の状況です。
高知県は58.5館(偏差値69.2)で4位に位置しています。県内34市町村での図書館運営により、人口当たりの充実度が高水準を維持しています。地域の知的拠点としての図書館機能強化に取り組み、学校図書館との連携促進を図っています。読書推進活動の積極的な展開により、住民の読書環境向上に努めている地域です。
富山県・鳥取県(5位同率)
富山県と鳥取県はそれぞれ54.6館(偏差値66.1)で同率5位となっています。富山県では県内15市町村すべてに図書館が設置され、バランスの取れた配置を実現しています。市町村合併を契機とした図書館再編により、富山県立図書館を核とした県域サービスを展開しています。ICT活用による利用者サービス向上に取り組んでいる地域です。
下位5県の詳細分析
兵庫県(43位)
兵庫県は19.7館(偏差値38.5)で43位に位置しています。神戸・阪神地域の都市部と但馬・淡路の地方部での格差が影響している状況です。地域間での図書館サービス格差が存在し、神戸市を中心とした都市型運営が主流となっています。過疎地域でのサービス維持が課題となっており、広域的な連携による解決策が求められている地域です。
大阪府(44位)
大阪府は17.6館(偏差値36.9)で44位となっています。人口約880万人の大都市圏で、効率化を重視した運営方針を採用しています。高い人口密度による土地制約により、大型図書館での広域サービス展開が中心となっています。民間委託による運営効率化を推進し、コスト削減と住民サービス向上の両立を図っている地域です。
宮城県(45位)
宮城県は15.3館(偏差値35.0)で45位に位置しています。仙台市への人口集中により、県全体での図書館密度が低水準となっています。震災復興過程での施設再整備が課題となっており、仙台市中心部への機能集約が進んでいます。沿岸部での図書館サービス復旧が途上段階にあり、復興と連携した図書館整備が重要な課題となっている地域です。
愛知県(46位)
愛知県は12.9館(偏差値33.1)で46位となっています。人口約750万人の大県でありながら、図書館密度の低さが課題となっています。名古屋市を中心とした都市部への人口集中により、大規模図書館による効率化が重視されています。市町村間でのサービス格差が存在し、均等なサービス提供が課題となっている地域です。
神奈川県(47位)
神奈川県は9.2館(偏差値30.2)で最下位となっています。人口約920万人に対して図書館数が相対的に少なく、都市部特有の課題が顕著に現れています。高い人口密度による施設不足が深刻で、大型図書館での集約型サービスが中心となっています。土地取得困難による新設の遅れが、住民の図書館アクセス環境に影響を与えている地域です。
地域別の特徴分析
関東地方
神奈川県が最下位、埼玉県(23.7館、39位)、千葉県(22.9館、41位)も下位に位置しています。高い人口密度と土地制約により、大型図書館での効率化が中心となっている地域です。住宅地の拡大に図書館整備が追いついていない状況があり、住民のアクセス改善が重要な課題となっています。都市部特有の制約により、新規整備が困難な状況が続いています。
中部・北陸地方
山梨県、長野県、富山県が上位にランクインし、山間地域での地域密着型図書館運営が特徴的です。市町村単位での図書館整備が進み、住民の利便性を重視した運営が行われています。人口規模に応じたきめ細かなサービス展開により、高い充実度を実現している地域です。教育重視の地域風土が図書館整備にも反映されています。
近畿地方
大阪府、兵庫県が下位にランクインし、都市部への人口集中により効率化を重視した運営が主流となっています。大型図書館での広域サービス展開が進む一方、住民の身近な利用機会の確保が課題となっています。土地制約と高い整備コストが、新規図書館建設の制約要因となっている地域です。
中国・四国地方
島根県、高知県が上位を占める一方、都市部を抱える県では中位から下位に位置しています。過疎化が進む地域ほど図書館の重要性が認識され、積極的な整備が行われています。地域の知的拠点としての機能強化により、人口流出対策の一環としても位置づけられている地域です。
東北・北海道地方
秋田県(51.9館、7位)が上位に位置し、人口減少地域での図書館重視の姿勢が見られます。他県は中位に位置し、地域特性に応じた図書館整備が進行中です。広域な県土を持つ地域では、移動図書館やデジタル化による補完サービスが重要な役割を果たしている状況です。
九州・沖縄地方
佐賀県(38.5館、14位)が上位に位置する一方、福岡県(22.2館、42位)は下位となっており、地域内での格差が見られます。離島や山間部を抱える県では、移動図書館やデジタル化による補完サービスが重要な役割を果たしています。地域特性に応じた多様なサービス形態が展開されている地域です。
社会的・経済的影響
最上位の山梨県(65.8館)と最下位の神奈川県(9.2館)では約7.2倍の格差が存在し、住民の学習・情報アクセス機会に大きな差が生じています。
上位県では住民の学習機会や情報アクセスの充実により、生涯学習環境が向上しています。地域の知的インフラとして図書館が機能し、人材育成や地域づくりに寄与しています。子どもの読書環境や学習支援サービスが充実し、教育機会の均等化が図られています。地域コミュニティの拠点として、住民の交流促進にも貢献している状況です。
下位県では図書館アクセスの制約により、住民の学習機会に格差が生じています。情報アクセス手段の地域間格差が拡大し、デジタルデバイドの要因となっています。成人教育や専門情報提供サービスに差異が生じ、生涯学習機会が制約されている状況です。知的インフラの格差が地域の人材育成や企業誘致に影響を与える可能性があります。
この格差は教育機会の不平等を生み、地域間の知的格差拡大につながる恐れがあります。図書館サービスの充実は地域の文化的発展と密接に関連しており、格差解消が重要な課題となっています。
対策と今後の展望
地域格差解消に向けて、各自治体では多様な取り組みが進められています。成功している地域の事例を参考に、効果的な施策の展開が求められています。
デジタル化の推進により、電子書籍サービスやオンライン予約システムで物理的な制約を補完する取り組みが進んでいます。長野県では県域での電子図書館サービスを展開し、利便性向上を図っています。
広域連携の強化により、自治体間での相互利用や共同運営による効率化が推進されています。富山県では県立図書館を中核とした広域サービス網を構築し、県全体での図書館サービス向上を実現しています。
今後の課題として、都市部での図書館アクセス改善と地方での持続可能な運営体制確立が重要です。人口減少社会に対応した新たな図書館サービスモデルの構築が求められています。民間との協働やPPP手法による運営効率化と住民サービス向上の両立も重要な取り組みとなるでしょう。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値館 |
---|---|
平均値 | 34.2 |
中央値 | 31.8 |
最大値 | 65.8(山梨県) |
最小値 | 9.2(神奈川県) |
標準偏差 | 12.6 |
データ数 | 47件 |
統計データの分析から、全国平均32.9館に対して標準偏差が12.7館となっており、都道府県間のばらつきが大きい状況です。中央値は30.8館で平均値を下回っており、上位県の高い数値により平均が押し上げられています。
分布は右に偏っており、多くの県が平均以下に集中する傾向があります。第1四分位(23.3館)と第3四分位(40.1館)の間に約半数の都道府県が分布しており、中位層でも相当な格差が存在します。
外れ値として上位3県(山梨、島根、長野)が特に高い数値を示しており、これらの県の積極的な取り組みが全体の分布に影響を与えています。これらの統計的特徴は、図書館整備における地域特性の違いを定量的に示しており、地域の文化・教育政策の方向性を反映した結果となっています。
偏差値60以上の都道府県は山梨県(75.0)、島根県(71.8)、長野県(69.6)、高知県(69.2)、富山県(66.1)、鳥取県(66.1)の6県です。これらは全国平均を大きく上回る図書館密度を持っています。
一方、偏差値40未満の都道府県は神奈川県(30.2)、愛知県(33.1)、宮城県(35.0)、大阪府(36.9)、兵庫県(38.5)などであり、これらは図書館密度が全国平均を大きく下回っています。
まとめ
2021年度の都道府県別図書館数(人口100万人当たり)分析により、重要な知見が得られました。山梨県が65.8館で1位となり、地方県が上位を占める傾向が見られます。神奈川県など大都市圏では図書館密度が低く、都市部特有の課題が顕在化しています。地域間格差は約7.2倍と大きく、住民の学習環境に影響を与えています。
地方部では図書館整備に積極的な姿勢が見られ、地域密着型サービスが充実しています。都市部では効率化重視の運営が主流となっており、大型図書館による集約化が進んでいます。デジタル化の推進により物理的制約の克服が図られています。
今後は都市部でのアクセス改善と地方での持続可能性確保が重要課題となります。地域特性に応じた柔軟な運営モデルの構築により、全国どこでも質の高い図書館サービスの提供を目指すことが求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (館) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 山梨県 | 65.8 | 75.0 | +1.9% |
2 | 島根県 | 61.7 | 71.8 | +5.1% |
3 | 長野県 | 59.0 | 69.6 | -3.0% |
4 | 高知県 | 58.5 | 69.2 | +0.9% |
5 | 富山県 | 54.6 | 66.1 | +0.6% |
6 | 鳥取県 | 54.6 | 66.1 | +2.3% |
7 | 秋田県 | 51.9 | 64.0 | +6.6% |
8 | 福井県 | 48.7 | 61.5 | +2.3% |
9 | 山口県 | 41.4 | 55.7 | +3.0% |
10 | 徳島県 | 40.7 | 55.1 | +7.1% |
11 | 鹿児島県 | 40.0 | 54.6 | +2.6% |
12 | 岩手県 | 39.3 | 54.0 | +3.7% |
13 | 福島県 | 39.2 | 53.9 | +7.7% |
14 | 佐賀県 | 38.5 | 53.4 | +5.5% |
15 | 山形県 | 37.9 | 52.9 | +3.5% |
16 | 岡山県 | 37.3 | 52.4 | +1.4% |
17 | 岐阜県 | 36.7 | 52.0 | +3.4% |
18 | 石川県 | 36.4 | 51.7 | +4.3% |
19 | 新潟県 | 36.3 | 51.7 | +3.1% |
20 | 滋賀県 | 36.1 | 51.5 | +2.0% |
21 | 愛媛県 | 33.3 | 49.3 | +0.3% |
22 | 宮崎県 | 32.0 | 48.2 | +8.5% |
23 | 北海道 | 31.8 | 48.1 | +10.8% |
24 | 香川県 | 31.8 | 48.1 | +1.9% |
25 | 広島県 | 30.9 | 47.4 | +4.0% |
26 | 長崎県 | 30.8 | 47.3 | +8.8% |
27 | 熊本県 | 30.1 | 46.7 | +1.7% |
28 | 大分県 | 29.6 | 46.3 | +2.4% |
29 | 和歌山県 | 29.5 | 46.3 | +6.5% |
30 | 群馬県 | 29.1 | 46.0 | - |
31 | 青森県 | 28.7 | 45.6 | +4.0% |
32 | 栃木県 | 28.6 | 45.6 | +1.4% |
33 | 東京都 | 28.6 | 45.6 | -0.3% |
34 | 三重県 | 26.8 | 44.1 | +2.3% |
35 | 静岡県 | 26.6 | 44.0 | +1.5% |
36 | 京都府 | 26.6 | 44.0 | +1.5% |
37 | 沖縄県 | 26.6 | 44.0 | -3.3% |
38 | 奈良県 | 25.1 | 42.8 | +2.0% |
39 | 埼玉県 | 23.7 | 41.7 | +0.8% |
40 | 茨城県 | 23.5 | 41.5 | +6.3% |
41 | 千葉県 | 22.9 | 41.0 | -0.4% |
42 | 福岡県 | 22.2 | 40.5 | - |
43 | 兵庫県 | 19.7 | 38.5 | +1.0% |
44 | 大阪府 | 17.6 | 36.9 | +6.0% |
45 | 宮城県 | 15.3 | 35.0 | +1.3% |
46 | 愛知県 | 12.9 | 33.1 | -0.8% |
47 | 神奈川県 | 9.2 | 30.2 | - |