2025/5/25
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地方債現在高の割合は、都道府県の標準財政規模に対する地方債残高の比率を示す指標で、地方財政の健全性を測る重要な指標の一つです。この比率が高いほど、将来の財政負担が重く、財政運営の自由度が低いことを意味します。
2021年度のデータを見ると、全国平均は約150%となっており、最上位の静岡県と最下位の東京都では約5倍の格差が生じています。特に地方部や人口減少県で高い傾向が見られる一方、首都圏や関西圏の一部では比較的低い水準を維持しています。この格差は、地方財政の構造的な課題を浮き彫りにしており、持続可能な財政運営の観点から重要な政策課題となっています。
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上位5県はいずれも標準財政規模に対して2倍近い地方債残高を抱えており、財政運営上の課題を示しています。
静岡県が204.5%(偏差値67.4)で1位となっています。静岡県は東海地震対策や富士山噴火対策などの防災インフラ整備、東名・新東名高速道路関連の社会資本整備に多額の投資を行ってきた結果、地方債残高が膨らんでいると考えられます。また、人口減少による税収減も影響している可能性があります。
新潟県は198.6%(偏差値65.5)で2位です。新潟県は豪雪地帯としての特殊な事情から、除雪対策や雪害対策などの維持管理費が恒常的に高く、また過疎地域を多く抱えることから社会基盤整備への投資負担が大きいことが要因と考えられます。
秋田県は191.7%(偏差値63.4)で3位となっています。秋田県は人口減少率が全国最高水準にあり、税収の減少と社会保障費の増加により財政構造が悪化しており、過去の投資による地方債残高の重荷が顕著に現れています。
北海道は191.1%(偏差値63.2)で4位です。広大な面積を有する北海道は、社会基盤整備や維持管理に他県と比較して多額の費用を要することから、地方債への依存度が高くなっています。また、札幌圏以外の地域の人口減少も財政負担増の要因となっています。
富山県は189.2%(偏差値62.6)で5位です。富山県は北陸新幹線の延伸や立山黒部アルペンルートなどの観光インフラ整備、さらに高齢化対策への投資などが地方債残高の増加につながっていると考えられます。
下位5県は比較的良好な財政状況を維持しており、特に首都圏の県が目立っています。
栃木県は113.0%(偏差値38.3)で43位です。栃木県は首都圏に位置する利点を活かした企業誘致や人口流入により税収が安定しており、また無駄な公共投資を抑制してきた結果、地方債残高を比較的低水準に抑えています。
大阪府は112.0%(偏差値38.0)で44位となっています。大阪府は関西経済圏の中心として税収基盤が安定しており、また府政改革により歳出削減に取り組んできた成果が現れています。ただし、絶対額では相当な規模の地方債を抱えています。
福島県は106.3%(偏差値36.2)で45位です。東日本大震災後の復興事業は主に国費で賄われたため、県の地方債残高への影響は限定的だったことが要因の一つと考えられます。また、原発事故による特殊な財政措置も影響している可能性があります。
沖縄県は57.8%(偏差値20.7)で46位と、全国平均を大きく下回っています。沖縄県は沖縄振興予算による国庫支出金の比率が極めて高く、県独自の地方債発行の必要性が他県と比較して低いことが主要因です。
東京都は40.9%(偏差値15.3)で47位と圧倒的に低い水準です。東京都は法人住民税や固定資産税などの税収が豊富で、地方債に頼らない財政運営が可能となっています。また、都債の発行も戦略的に行われており、健全な財政運営の模範例となっています。
北海道・東北地域では、北海道、秋田県が上位に位置する一方、福島県が下位となるなど格差が大きくなっています。この地域は人口減少と高齢化が進んでおり、社会基盤の維持費用負担が重い一方で税収基盤が縮小している構造的な問題を抱えています。
関東地域では、栃木県や東京都が下位に位置しており、首都圏の経済力を反映した結果となっています。この地域は税収基盤が安定しており、地方債への依存度を低く保つことができています。
中部地域では、静岡県、新潟県、富山県が上位に位置する一方、愛知県などは中位に位置しています。この地域は製造業が盛んな地域が多いものの、社会基盤整備への投資負担が大きい県で地方債残高が高くなっています。
近畿地域では、大阪府が下位に位置するなど、関西経済圏の中心としての税収基盤の安定性が現れています。
中国・四国地域では、多くの県が中位から上位に位置しており、人口減少と産業基盤の縮小により財政運営が厳しくなっている状況が伺えます。
九州・沖縄地域では、沖縄県が特異的に低い水準を示しており、国の特別な財政措置の効果が顕著に現れています。
最上位の静岡県(204.5%)と最下位の東京都(40.9%)の間には約5倍の格差があり、都道府県間の財政状況の違いが鮮明に現れています。この格差は、税収基盤の違い、人口動態の差、社会基盤整備の必要性の違いなど、構造的な要因に基づいています。
地方債現在高の割合が高い県では、将来世代への負担転嫁が進んでおり、財政の持続可能性に課題があります。特に人口減少が進む地域では、将来の税収減少により返済能力の低下が懸念されます。
一方で、この指標だけでは財政の健全性を完全に判断することはできません。地方債の使途や償還計画、将来の税収見通しなどを総合的に評価する必要があります。また、防災対策や社会基盤整備など、必要な投資を適切に行うことも重要であり、単純に地方債残高を削減すれば良いというものではありません。
統計分析から見ると、平均値が約150%程度となっており、中央値との比較から、一部の県で特に高い値を示していることが分かります。標準偏差は約30ポイントとなっており、都道府県間でのばらつきが相当大きいことを示しています。
分布の特徴として、東京都と沖縄県が明らかな外れ値として位置しており、これらの特殊事情(東京都の豊富な税収、沖縄県の国庫支出金依存)が全体の分布に影響を与えています。
四分位範囲で見ると、第1四分位から第3四分位の間でも約40ポイントの差があり、多くの県で財政状況に大きな違いがあることが確認できます。この分布は、日本の地方財政が抱える構造的な格差問題を数値的に裏付けています。
今後は、地方債残高の適正な管理と併せて、税収基盤の強化や歳出の効率化など、総合的な財政健全化への取り組みが求められます。また、地域間格差の是正に向けた国の財政調整機能の充実も継続的な課題となっています。