2023年度の製造業事業所数は、大阪府が18,604事業所(偏差値82.2)で全国1位、鳥取県が856事業所(偏差値40.9)で最下位となりました。最も高い県と低い県では約21.7倍の格差があり、地域間の産業集積に大きな差が存在しています。製造業事業所数は各都道府県に存在する製造業の事業所(工場や工場に準ずる施設)の数を示す指標で、地域の産業集積や経済活動の活発さを把握する上で重要なデータです。
概要
製造業事業所数は、各都道府県に存在する製造業の事業所(工場や工場に準ずる施設)の数を示す指標です。地域の産業集積や経済活動の活発さを把握する上で重要なデータとなります。日本の製造業は自動車、電子機器、機械、化学など多様な分野で国際競争力を持ち、地域経済と雇用を支える基幹産業となっています。
都市部では人口密度の高さにより産業集積への投資効果が高く、経済活動の活発さが製造業の発展を促進し、交通インフラが整備されているため物流コストが相対的に低いという特徴があります。一方、地方部では広大な面積と人口密度の低さにより、製造業の集積が限られる傾向があります。
製造業事業所の多くは中小企業であり、地域経済や雇用の基盤となっています。特に上位県では、大企業を中心とした関連する中小企業の集積が産業の厚みを生み出しています。
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上位5県の詳細分析
大阪府(1位)
大阪府が18,604事業所(偏差値82.2)で圧倒的な1位を達成しています。伝統的な工業地帯であり、多様な分野の製造業が発展しています。金属製品、電気機器、機械、プラスチック製品など多様な分野が主要産業であり、中小企業が多く特定の産業に偏らない多様性が強みです。伝統的な「町工場」から最先端技術を持つ企業まで幅広く存在し、商業の中心地でありながら製造業も強い「商工業都市」としての特徴を持っています。
愛知県(2位)
愛知県が18,509事業所(偏差値82.0)で2位となっています。自動車産業を中心に多様な製造業が集積し、関連する中小企業も多く立地しています。自動車の完成車メーカーだけでなく、部品メーカーや素材メーカーなど多層的なサプライチェーンが形成されています。製造業が県内総生産の約30%を占め、日本の製造業輸出の中心地となっています。
東京都(3位)
東京都が15,400事業所(偏差値74.8)で3位となっています。都市型の小規模事業所が多く、食品や印刷、機械など幅広い業種が存在します。首都圏の中核として、多様な製造業が集積しており、特に中小企業の集積が特徴的です。都市機能を支える製造業インフラが充実しています。
埼玉県(4位)
埼玉県が13,252事業所(偏差値69.8)で4位となっています。首都圏の工業集積地として、自動車部品や電機、食品など多様な業種が立地しています。大手メーカーの工場と多数の中小企業が共存し、東京に近接しながらも比較的地価が安く、広い工場用地が確保できる立地条件が製造業の集積を促進しています。
静岡県(5位)
静岡県が10,586事業所(偏差値63.6)で5位となっています。自動車や電機、食品など多様な製造業が集積しています。輸送機器(スズキ、ヤマハ発動機など)、電機、食品、製紙が主要産業であり、東西に長い県土に沿って複数の産業集積地が形成されています。中部地方と関東地方の中間に位置する地理的優位性と、豊富な工業用水や交通インフラが製造業の発展を支えています。
下位5県の詳細分析
徳島県(43位)
徳島県が1,300事業所(偏差値42.0)で43位となっています。地域経済の規模や産業構造から製造業の集積が限られています。食品加工、製紙、電子部品が主要産業であり、大規模な産業集積が形成されておらず、企業数・事業所数ともに限られています。LED関連産業など、特定の分野では高い技術力と集積を持っています。
島根県(44位)
島根県が1,216事業所(偏差値41.8)で44位となっています。人口減少や産業構造の変化により、事業所数が少なくなっています。鉄鋼(特殊鋼)、電子部品、機械が主要産業であり、交通アクセスの制約や人口減少が製造業の発展に影響しています。出雲地域を中心に特殊鋼などの特定分野で高い技術力を持つ企業が立地しています。
高知県(45位)
高知県が1,101事業所(偏差値41.5)で45位となっています。人口規模や産業構造の影響で、製造業の事業所数が限られています。食品加工、紙・パルプ、機械が主要産業であり、地理的な隔絶性や交通インフラの制約が製造業の発展を制限しています。第一次産業と連携した食品加工業や、地域資源を活用した特色ある製造業が発展しています。
沖縄県(46位)
沖縄県が983事業所(偏差値41.2)で46位となっています。観光業やサービス業が中心で、製造業の事業所数は少ない水準です。食品加工(泡盛など)、窯業・土石製品(シーサーなど)が主要産業であり、戦後の米国統治や地理的条件から製造業よりもサービス業中心の産業構造が形成されました。地理的に東アジアの中心に位置する利点を活かした製造業の展開が模索されています。
鳥取県(47位)
鳥取県が856事業所(偏差値40.9)で最下位となっています。人口規模が小さく、製造業の事業所数が全国で最も少なくなっています。電子部品・デバイス、食品加工が主要産業であり、人口当たりの製造業事業所数は全国平均に近く、規模は小さいながらも一定の産業基盤があります。電子部品などの分野で大手企業の進出もあり、特定分野での発展が見られます。
地域別の特徴分析
近畿地方
近畿地方は全国でも最高水準の地域です。大阪府18,604事業所が圧倒的な1位で、兵庫県8,622事業所が7位となっています。伝統的な工業地帯が多く存在し、特に大阪府は全国トップの事業所数を持ち、中小製造業が高密度に集積しています。京都府5,320事業所、滋賀県3,123事業所、奈良県1,888事業所、和歌山県1,756事業所も一定の水準を維持しています。
中部地方
中部地方は比較的高い水準を維持しています。愛知県18,509事業所が2位、静岡県10,586事業所が5位、岐阜県6,519事業所が8位となっています。自動車産業を中心とした産業集積が特徴的で、三重県3,879事業所、群馬県5,733事業所も高水準を維持しています。中部地方全体で製造業の集積が進んでおり、日本の製造業の中心地としての地位を確立しています。
関東地方
関東地方は概ね良好な水準を保っています。東京都15,400事業所が3位、埼玉県13,252事業所が4位、神奈川県9,911事業所が6位となっています。首都圏の工業集積地として、多様な産業が集積しており、茨城県5,717事業所、群馬県5,733事業所、千葉県5,956事業所、栃木県4,879事業所も高水準を維持しています。人口密度が高く投資効率が良いことが背景にあります。
九州・沖縄地方
九州地方では地域格差が顕著です。福岡県が比較的事業所数が多いですが、熊本県2,238事業所、鹿児島県2,544事業所、佐賀県1,441事業所、長崎県1,649事業所、宮崎県1,537事業所、大分県1,671事業所など下位に位置する県が多く、沖縄県983事業所は最下位となっています。観光業中心の産業構造が影響しています。
北海道・東北地方
北海道6,423事業所は比較的事業所数が多いですが、青森県1,507事業所、秋田県1,777事業所、岩手県2,126事業所などは中位から下位に位置しています。福島県3,914事業所は東北地方では最も事業所数が多くなっています。東北地方全体では製造業の集積が限定的で、地理的条件と人口減少が影響しています。
中国・四国地方
中国地方では岡山県3,943事業所が19位、広島県5,900事業所が11位となっており、一定の水準を維持しています。四国地方では愛媛県が比較的高水準ですが、徳島県1,300事業所、高知県1,101事業所は低水準となっています。四国内での格差が大きく、地域特性に応じた産業発展が課題となっています。
社会的・経済的影響
最上位の大阪府18,604事業所と最下位の鳥取県856事業所では約21.7倍の格差があります。この格差は地域住民の生活に大きな影響を与えています。製造業事業所数の少ない地域では、安定した雇用機会の不足により若年層の流出が発生しています。地域経済の基盤が脆弱になり、税収の減少により公共サービスの質低下が懸念されています。産業集積の不足により、技術革新やイノベーションの機会が限られています。
逆に製造業事業所数の多い地域では、安定した雇用と比較的高い賃金水準により地域経済の活性化が実現しています。技術革新の促進により産業競争力の向上が達成され、地域の経済基盤として重要な役割を果たしています。製造業の集積により関連産業の発展も促進され、地域全体の経済発展に貢献しています。
対策と今後の展望
下位県では地域特性に応じた製造業振興策の導入が進んでいます。地域資源を活用した特色ある製造業の育成により改善が期待されます。成功事例として大阪府の取り組みが注目されています。多様な中小企業の集積により、産業の厚みを生み出すことを実現しました。この手法は他県でも参考にされています。
今後の課題は人材確保と技術革新への対応です。人口減少社会における製造業の人材確保が重要になり、デジタル化・自動化への対応力も地域間の競争力を左右する要因となります。地域間格差の是正に向けて、各地域の特性を活かした製造業振興策の開発と導入が求められています。
指標 | 値事業所 |
---|---|
平均値 | 4,753 |
中央値 | 3,116 |
最大値 | 18,604(大阪府) |
最小値 | 856(鳥取県) |
標準偏差 | 4,295.4 |
データ数 | 47件 |
統計データの特徴分析
全国平均約4,733事業所と中央値の比較から、全体的に右に歪んだ分布をしていることがわかります。しかし標準偏差から、地域間でのばらつきが存在することも明らかです。分布の特徴として、大阪府と愛知県が統計的に明確な外れ値であり、日本の製造業における特異な位置づけを示しています。
偏差値の分布では、大阪府(82.2)と愛知県(82.0)が突出している一方、鳥取県(40.9)など下位県との格差が顕著で、地理的・社会的要因の影響が数値に明確に反映されています。データの階層構造として、最上位層(大阪府、愛知県)、上位層(東京都、埼玉県、静岡県、神奈川県、兵庫県)、中位層、下位層に大きく分けられ、地域間の産業集積格差が明確に現れています。
まとめ
2023年度の製造業事業所数分析から、大阪府・愛知県を頂点とする産業集積地域、東京都・埼玉県などの多様な製造業が集積する地域、そして製造業の集積が限られる地域との間には大きな格差が存在していることが明らかになりました。この格差は単に数字上の問題だけでなく、地域経済の安定性、技術革新の可能性、若年層の雇用機会、さらには地域のアイデンティティにまで影響を与えています。
一方で、製造業の単純な量的拡大だけが地域発展の唯一の道ではないことも認識すべきです。各地域が持つ固有の強みや資源を活かした特色ある産業発展の道筋も存在します。例えば、高知県や沖縄県のように第一次産業や観光業と連携した高付加価値な食品加工業の発展や、地域資源を活用した特色ある製品開発など、製造業の「質」を重視した発展モデルも考えられます。
今後の日本の製造業が持続的に発展していくためには、単純な地域間競争ではなく、各地域の特性を活かした相互補完的な産業生態系の構築が重要になるでしょう。また、人口減少や国際競争の激化といった課題に対応するためには、生産性向上、人材育成、イノベーション創出など質的な発展への転換も不可欠です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (事業所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大阪府 | 18,604 | 82.2 | +0.1% |
2 | 愛知県 | 18,509 | 82.0 | +0.2% |
3 | 東京都 | 15,400 | 74.8 | -0.1% |
4 | 埼玉県 | 13,252 | 69.8 | +0.3% |
5 | 静岡県 | 10,586 | 63.6 | +0.6% |
6 | 神奈川県 | 9,911 | 62.0 | -0.0% |
7 | 兵庫県 | 8,622 | 59.0 | +0.5% |
8 | 岐阜県 | 6,519 | 54.1 | +0.5% |
9 | 北海道 | 6,423 | 53.9 | -0.0% |
10 | 長野県 | 6,148 | 53.2 | +0.4% |
11 | 福岡県 | 6,044 | 53.0 | +0.3% |
12 | 千葉県 | 5,956 | 52.8 | +0.7% |
13 | 広島県 | 5,900 | 52.7 | +0.1% |
14 | 新潟県 | 5,798 | 52.4 | +0.4% |
15 | 群馬県 | 5,733 | 52.3 | +0.5% |
16 | 茨城県 | 5,717 | 52.2 | +0.4% |
17 | 京都府 | 5,320 | 51.3 | +0.3% |
18 | 栃木県 | 4,879 | 50.3 | +0.8% |
19 | 岡山県 | 3,943 | 48.1 | +0.5% |
20 | 福島県 | 3,914 | 48.0 | +0.3% |
21 | 三重県 | 3,879 | 48.0 | +0.3% |
22 | 石川県 | 3,205 | 46.4 | -0.0% |
23 | 滋賀県 | 3,123 | 46.2 | +0.5% |
24 | 宮城県 | 3,116 | 46.2 | +0.0% |
25 | 富山県 | 2,955 | 45.8 | -0.0% |
26 | 山形県 | 2,702 | 45.2 | +0.0% |
27 | 愛媛県 | 2,603 | 45.0 | +0.3% |
28 | 福井県 | 2,569 | 44.9 | +0.1% |
29 | 鹿児島県 | 2,544 | 44.9 | +0.5% |
30 | 香川県 | 2,362 | 44.4 | +0.1% |
31 | 熊本県 | 2,238 | 44.1 | +0.9% |
32 | 岩手県 | 2,126 | 43.9 | +0.6% |
33 | 山梨県 | 2,116 | 43.9 | +0.9% |
34 | 山口県 | 1,993 | 43.6 | - |
35 | 奈良県 | 1,888 | 43.3 | +0.6% |
36 | 秋田県 | 1,777 | 43.1 | +0.1% |
37 | 和歌山県 | 1,756 | 43.0 | +0.1% |
38 | 大分県 | 1,671 | 42.8 | -0.1% |
39 | 長崎県 | 1,649 | 42.8 | +0.2% |
40 | 宮崎県 | 1,537 | 42.5 | +0.7% |
41 | 青森県 | 1,507 | 42.4 | +0.5% |
42 | 佐賀県 | 1,441 | 42.3 | +0.4% |
43 | 徳島県 | 1,300 | 42.0 | -0.1% |
44 | 島根県 | 1,216 | 41.8 | +0.3% |
45 | 高知県 | 1,101 | 41.5 | +0.2% |
46 | 沖縄県 | 983 | 41.2 | +0.5% |
47 | 鳥取県 | 856 | 40.9 | +1.1% |