概要
2022年度の都道府県別製造品出荷額等を比較すると、愛知県が全国1位で約52.4兆円、大阪府が2位で約20.2兆円、静岡県が3位で約19.0兆円となっています。製造品出荷額等は地域の産業構造や企業の集積状況、主要産業の特性などによって大きく異なり、自動車産業や石油化学産業などの大規模製造業が立地する地域で高い傾向があります。
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上位5県と下位5県の比較
上位5県の特徴
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愛知県(約52.4兆円、偏差値102.6): トヨタ自動車を中心とした自動車産業の一大集積地であり、関連部品メーカーも多数立地しています。自動車以外にも航空機部品、工作機械など幅広い製造業が発達し、全国平均を大きく上回る偏差値102.6を記録しています。
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大阪府(約20.2兆円、偏差値64.8): 関西の中心として、中小製造業を中心に多様な業種が集積しています。特に金属製品、機械、化学などの分野で高い技術力を持つ企業が多く存在し、伝統的な製造業の集積地となっています。
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静岡県(約19.0兆円、偏差値63.3): 自動車・二輪車産業を中心に、電機、食品、紙・パルプなど多様な製造業が発達しています。特に浜松地域の輸送機器産業の集積が特徴的で、ホンダやスズキなどの大手メーカーが立地しています。
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兵庫県(約18.3兆円、偏差値62.5): 阪神工業地帯の中核として、鉄鋼業や造船業などの重工業から精密機械まで幅広い製造業が発達しています。特に播磨地域には鉄鋼業が集積しており、高い出荷額を生み出しています。
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神奈川県(約18.2兆円、偏差値62.4): 京浜工業地帯の中核として、石油化学、自動車、電機など多様な製造業が集積しています。特に川崎・横浜の臨海部には大規模な製造拠点が立地し、高い出荷額を支えています。
下位5県の特徴
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沖縄県(約0.47兆円、偏差値41.5): 観光業が主要産業であり、製造業の集積が少なくなっています。食品加工や伝統工芸品などの地場産業が中心で、全国最下位の製造品出荷額となっています。
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高知県(約0.65兆円、偏差値41.7): 中山間地域が多く、大規模製造業の立地が少なくなっています。紙・パルプ、食品加工などの地域資源を活かした産業が中心で、製造業よりも第一次産業や観光業の比重が高くなっています。
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鳥取県(約0.89兆円、偏差値42.0): 人口が最も少ない県であり、製造業の規模も小さくなっています。電子部品や食品加工などの分野で特色ある企業が立地していますが、大規模な製造業集積には至っていません。
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島根県(約1.38兆円、偏差値42.6): 人口規模が小さく、大規模製造業の立地が限られています。特殊鋼や電子部品などの特定分野で特色ある企業が存在しますが、全体的な製造業の規模は小さくなっています。
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長崎県(約1.57兆円、偏差値42.8): 造船業の歴史がある一方で、近年は製造業の集積が進んでいません。半島や離島が多い地理的条件も製造業立地の制約となっており、製造品出荷額は下位にとどまっています。
地域別の特徴分析
中部・東海地方
愛知県(約52.4兆円、偏差値102.6)が全国1位、静岡県(約19.0兆円、偏差値63.3)が3位と製造品出荷額等が多くなっています。自動車産業を中心とした製造業の集積が特徴的で、トヨタ自動車やホンダ、スズキなどの大手メーカーとその関連企業が多数立地しています。三重県(約11.9兆円、偏差値54.9)も9位と上位に位置し、岐阜県(約6.5兆円、偏差値48.6)と合わせて、中部地方全体で製造業が盛んな地域となっています。
関東地方
神奈川県(約18.2兆円、偏差値62.4)が全国5位、千葉県(約15.9兆円、偏差値59.6)が6位、茨城県(約14.9兆円、偏差値58.4)、埼玉県(約14.8兆円、偏差値58.4)が7位・8位と製造品出荷額等が多くなっています。京浜工業地帯や北関東の工業集積地を中心に、多様な製造業が発達しています。特に神奈川県と千葉県の臨海部には石油化学コンビナートが形成されており、高い出荷額を支えています。栃木県(約9.5兆円、偏差値52.1)や群馬県(約9.6兆円、偏差値52.2)も製造業が盛んで、首都圏全体で高い製造品出荷額を誇っています。
関西地方
大阪府(約20.2兆円、偏差値64.8)が全国2位、兵庫県(約18.3兆円、偏差値62.5)が4位と製造品出荷額等が多くなっています。伝統的な製造業の集積地として、中小企業を中心とした多様な業種が存在します。特に兵庫県の播磨地域には鉄鋼業が集積しており、高い出荷額を生み出しています。滋賀県(約8.9兆円、偏差値51.5)は15位、京都府(約6.3兆円、偏差値48.3)は21位と続き、近畿地方全体として製造業の集積が見られます。
中国・四国地方
広島県(約10.7兆円、偏差値53.5)が10位、岡山県(約9.7兆円、偏差値52.4)が12位と比較的製造品出荷額等が多くなっています。特に広島県はマツダを中心とした自動車産業の集積地として、高い出荷額を誇っています。一方で、鳥取県(約0.89兆円、偏差値42.0)、島根県(約1.38兆円、偏差値42.6)、高知県(約0.65兆円、偏差値41.7)は全国の下位に位置しており、中国・四国地方の中でも格差が見られます。
九州・沖縄地方
福岡県(約10.3兆円、偏差値53.1)が11位と九州では最も製造品出荷額等が多くなっています。北九州・筑豊地域の鉄鋼業や自動車産業の集積が特徴的です。大分県(約5.6兆円、偏差値47.5)は22位で、石油化学コンビナートの立地により九州内では比較的高い出荷額を記録しています。一方で、沖縄県(約0.47兆円、偏差値41.5)は全国最下位となっており、製造業よりも観光業などのサービス産業が中心となっています。
東北・北海道地方
宮城県(約5.5兆円、偏差値47.4)や福島県(約5.5兆円、偏差値47.4)が東北地方では製造品出荷額等が多くなっています。近年は自動車関連産業や電子部品産業の誘致が進んでおり、製造業の基盤が形成されつつあります。北海道(約6.6兆円、偏差値48.8)は19位と中位に位置し、食品加工業や紙・パルプ業などが中心となっています。
製造品出荷額等の格差と課題
製造品出荷額等の地域間格差は、産業構造の違いや歴史的な工業発展の経緯、交通インフラの整備状況などによって生じています。特に地方では若年層の流出や高齢化により、製造業の人材確保が課題となっています。
最も出荷額の多い愛知県(約52.4兆円)と最も少ない沖縄県(約0.47兆円)では約110.5倍もの差があり、地域経済の基盤としての製造業の位置づけに大きな違いがあります。また、偏差値分布を見ると、偏差値60以上の都道府県は5県程度にとどまり、多くの県が全国平均を下回っています。
また、単純な出荷額の多寡だけでなく、付加価値率や生産性、技術力などの質的な側面も重要です。特に中小企業が多い地域では、高付加価値化や生産性向上が課題となっています。
統計データの基本情報
この統計データは2022年度の都道府県別製造品出荷額等を示しています。製造品出荷額等とは、1年間の製造品出荷額、加工賃収入額、修理料収入額、製造工程から生じたくず・廃物の売却額およびその他の収入額の合計であり、消費税等を含んだ額です。
データの分析から、以下のような特徴が見られます:
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産業集積による地域差: 自動車産業や石油化学産業などの大規模製造業が集積する地域で出荷額が高くなっています。特に愛知県は突出した数値を示しており、日本の製造業における自動車産業の重要性を表しています。
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大都市圏への集中: 三大都市圏(首都圏、中京圏、関西圏)に製造品出荷額が集中しており、地方との格差が顕著です。上位10県で全国の約60%の出荷額を占めています。
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特定産業への依存: 上位県では特定の基幹産業(自動車、石油化学など)への依存度が高く、産業構造の多様性に違いがあります。これは経済的なリスク要因ともなりえます。
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分布の歪み: 製造品出荷額の分布は強い正の歪みを示しており、平均値(約7.7兆円)が中央値(約5.5兆円)を大きく上回っています。これは愛知県が極めて高い出荷額を持つことによるものです。
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外れ値の存在: 愛知県(約52.4兆円)は明らかな外れ値であり、第2位の大阪府(約20.2兆円)との間にも大きな差があります。愛知県を除外すると、データの分布はより均一になります。
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四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約9.5兆円以上、下位25%(第1四分位)は約1.9兆円以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
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標準偏差の大きさ: 標準偏差は非常に大きく、平均値に対して約100%に相当します。これは都道府県間のばらつきが非常に大きいことを示しています。
まとめ
製造品出荷額等は地域の製造業の規模と活力を示す重要な指標です。愛知県を筆頭に、大阪府、静岡県などの大都市圏や工業集積地で高い出荷額を記録している一方、沖縄県や高知県などの地方では相対的に低い水準にとどまっています。
この地域間格差は、歴史的な産業集積の形成過程や地理的条件、交通インフラの整備状況など様々な要因によって形成されてきました。今後は、デジタル化やグリーン化などの産業構造の変化に対応しながら、各地域の特性を活かした製造業の発展が求められています。
特に地方においては、地域資源を活用した特色ある製造業の育成や、デジタル技術を活用した生産性向上、高付加価値化などの取り組みが重要です。また、製造業のサービス化やDX推進など、従来の製造業の枠を超えた新たな価値創造も課題となっています。
製造業は地域経済の基盤であり、雇用創出や技術革新の源泉となっています。各地域がそれぞれの強みを活かした製造業振興策を展開することで、持続可能な地域経済の発展につながることが期待されます。