概要
婚姻率とは、人口1,000人あたりの婚姻件数を示す指標で、単位は‰(パーミル)で表されます。この記事では、2022年度の都道府県別婚姻率のランキングを紹介します。
婚姻率は、地域の結婚観や経済状況、年齢構成などを反映しており、少子化対策や家族政策などの基礎データとして重要な指標です。2022年度は、東京都や大阪府などの大都市圏で婚姻率が高く、秋田県や岩手県などの東北地方の県で婚姻率が低くなっています。
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上位県と下位県の比較
婚姻率が高い上位5県
2022年度の婚姻率ランキングでは、東京都が5.36‰(偏差値86.6)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、若年層の人口比率が高いことが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、地方から上京してきた若者も多く、出会いの機会も豊富であることも要因の一つです。さらに、東京都は高学歴者や専門職が多く集まる地域であり、経済的に安定した層が多いことも婚姻率の高さに寄与していると考えられます。
2位は大阪府で4.60‰(偏差値70.1)、3位は同率で愛知県と沖縄県でともに4.46‰(偏差値67.0)、5位は神奈川県で4.35‰(偏差値64.7)となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、若年層の人口比率が高いことが婚姻率の高さに関係していることがわかります。特に沖縄県は、伝統的に家族の絆を重視する文化があり、結婚に対する肯定的な価値観が根付いていることが婚姻率の高さに影響していると考えられます。
婚姻率が低い下位5県
最も婚姻率が低かったのは秋田県で2.63‰(偏差値27.2)でした。秋田県は高齢化率が全国で最も高い県の一つであり、若年層の人口比率が低いことが婚姻率の低さに影響していると考えられます。また、若者の県外流出も多く、結婚適齢期の人口が減少していることも要因の一つです。さらに、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
46位は岩手県で2.97‰(偏差値34.6)、45位は青森県で3.04‰(偏差値36.2)、44位は山形県で3.06‰(偏差値36.6)、43位は新潟県で3.17‰(偏差値39.0)となっています。下位県には東北地方の県が多く、高齢化や若年層の流出が進んでいることが婚姻率の低さに影響していることがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の結婚事情
東北地方では、宮城県(17位、3.70‰)が最も婚姻率が高く、秋田県(47位、2.63‰)が最も低くなっています。その他の県は、青森県(45位、3.04‰)、岩手県(46位、2.97‰)、山形県(44位、3.06‰)、福島県(37位、3.40‰)と、全国的に見ると下位に位置しています。
宮城県で婚姻率が比較的高い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市には多くの大学や企業が集中しており、若年層の人口比率が高いことが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、東北地方の中心都市として、周辺県からの人口流入も多いことが要因の一つです。
一方、秋田県で婚姻率が低い理由としては、高齢化の進行と若年層の県外流出が挙げられます。秋田県は全国でも特に高齢化率が高く、若年層の県外流出も多いため、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。また、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
関東地方の都市化と婚姻動向
関東地方では、東京都(1位、5.36‰)、千葉県(9位、3.96‰)、埼玉県(11位、3.93‰)、神奈川県(5位、4.35‰)と、首都圏の都県が軒並み上位を占めています。一方、茨城県(29位、3.58‰)、栃木県(14位、3.75‰)、群馬県(32位、3.50‰)は中位に位置しています。
首都圏で婚姻率が高い理由としては、若年層の人口比率の高さと経済的機会の豊富さが挙げられます。東京都や神奈川県には、大学や企業が集中しており、地方から多くの若者が流入しています。これにより、結婚適齢期の人口が多く、出会いの機会も豊富であることが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、経済的な機会も多く、結婚に必要な経済的基盤を確立しやすい環境も整っています。
一方、北関東の県で婚姻率が比較的低い理由としては、若年層の首都圏への流出と高齢化の進行が挙げられます。茨城県、栃木県、群馬県では、高校や大学を卒業した若者が就職や進学のために首都圏に移住するケースが多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。ただし、近年は首都圏からの移住者も増加しており、今後の動向が注目されます。
中部・北陸地方の産業構造と婚姻傾向
中部・北陸地方では、愛知県(3位、4.46‰)が最も婚姻率が高く、上位に位置しています。一方、新潟県(43位、3.17‰)、富山県(34位、3.44‰)、石川県(13位、3.77‰)、福井県(16位、3.74‰)、山梨県(29位、3.58‰)、長野県(27位、3.61‰)、岐阜県(39位、3.35‰)、静岡県(22位、3.66‰)は中位から下位に位置しています。
愛知県で婚姻率が高い理由としては、自動車産業を中心とした製造業の集積と、それに伴う雇用の安定性が挙げられます。愛知県は日本有数の工業地帯であり、若者の雇用機会が豊富であることが、経済的基盤の確立を容易にし、結婚を促進していると考えられます。また、名古屋市を中心とした都市圏では、出会いの機会も多く、婚姻率の上昇につながっています。
一方、新潟県や富山県で婚姻率が比較的低い理由としては、若年層の県外流出と高齢化の進行が挙げられます。これらの県では、高校や大学を卒業した若者が就職や進学のために大都市圏に移住するケースが多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。ただし、地元企業の雇用環境は比較的安定しており、Uターン就職者も一定数存在することから、今後の動向が注目されます。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、大阪府(2位、4.60‰)が最も婚姻率が高く、上位に位置しています。一方、京都府(14位、3.75‰)、兵庫県(12位、3.86‰)、滋賀県(7位、4.00‰)、奈良県(42位、3.22‰)、和歌山県(31位、3.54‰)は中位に位置しています。
大阪府で婚姻率が高い理由としては、若年層の人口比率の高さと経済的機会の豊富さが挙げられます。大阪府は近畿地方の経済的中心であり、多くの企業が集積していることから、雇用機会が豊富で、若年層の人口比率も高いことが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、都市型の生活様式が浸透しており、出会いの機会も多いことが要因の一つです。
一方、奈良県で婚姻率が低い理由としては、大阪府のベッドタウンとしての性格が強く、若年層が就職や進学のために県外へ流出していることが考えられます。奈良県は高齢化が進行しており、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。
中国・四国地方の地域性
中国・四国地方では、岡山県(8位、3.97‰)が最も婚姻率が高く、上位に位置しています。一方、広島県(10位、3.94‰)、山口県(32位、3.50‰)、鳥取県(24位、3.64‰)、島根県(40位、3.29‰)、徳島県(38位、3.37‰)、香川県(20位、3.68‰)、愛媛県(36位、3.43‰)、高知県(41位、3.24‰)は中位から下位に位置しています。
岡山県で婚姻率が高い理由としては、岡山市という中国地方の主要都市を有していることと、製造業や医療・教育機関の集積による安定した雇用環境が挙げられます。岡山県は比較的温暖な気候と暮らしやすい環境も魅力であり、若者の定着につながっていると考えられます。
一方、高知県や島根県で婚姻率が低い理由としては、高齢化の進行と若年層の県外流出が挙げられます。これらの県は若年層の県外流出が多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。また、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
九州・沖縄地方の地域差
九州・沖縄地方では、沖縄県(3位、4.46‰)と福岡県(6位、4.27‰)が最も婚姻率が高く、上位に位置しています。一方、佐賀県(20位、3.68‰)、長崎県(34位、3.44‰)、熊本県(17位、3.70‰)、大分県(23位、3.65‰)、宮崎県(26位、3.62‰)、鹿児島県(28位、3.60‰)は中位に位置しています。
沖縄県で婚姻率が高い理由としては、若年層の人口比率の高さと独特の文化的背景が挙げられます。沖縄県は全国でも出生率が高く、若年層の人口比率も高いことが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、伝統的に家族の絆を重視する文化があり、結婚に対する肯定的な価値観が根付いていることも要因の一つです。さらに、観光業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会を提供し、地元定着を促進している可能性があります。
福岡県で婚姻率が高い理由としては、福岡市という九州地方最大の都市を有していることが挙げられます。福岡市には多くの企業や大学が集中しており、若年層の人口比率が高いことが婚姻率の高さに影響していると考えられます。また、九州地方の経済的・文化的中心として、周辺県からの人口流入も多いことが要因の一つです。
一方、長崎県で婚姻率が比較的低い理由としては、高齢化の進行と若年層の県外流出が挙げられます。長崎県は若年層の県外流出が多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻率の低さに影響していると考えられます。また、造船業などの基幹産業の衰退も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
婚姻率の格差がもたらす影響と課題
人口動態への影響
婚姻率の格差は、地域の人口動態にも大きな影響を与えます。婚姻率が高い地域では、新たな世帯の形成が活発であり、出生率の上昇や人口の自然増加につながる可能性があります。一方、婚姻率が低い地域では、世帯形成が停滞し、出生率の低下や人口の自然減少が加速する傾向があります。
例えば、東京都(1位、5.36‰)では、婚姻率は高いものの、住宅費や教育費などの生活コストが高いことから、子どもの数は限られる傾向があります。実際、東京都の合計特殊出生率は全国最低水準であり、婚姻率の高さが必ずしも出生率の上昇につながっていないという課題があります。
一方、秋田県(47位、2.63‰)では、婚姻率が低く、若年層の県外流出も多いことから、出生率も低下しており、人口減少が急速に進行しています。これにより、地域の活力低下や社会保障制度の持続可能性の低下などの課題が生じています。
地域経済への影響
婚姻率の格差は、地域経済にも大きな影響を与えます。婚姻率が高い地域では、結婚に関連する消費(結婚式、新居の購入・賃貸、家具・家電の購入など)が活発であり、関連産業の発展につながります。一方、婚姻率が低い地域では、こうした消費が停滞し、地域経済の活力低下を招く可能性があります。
例えば、大阪府(2位、4.60‰)では、婚姻率が高いことから、結婚式場やブライダル関連産業が発達しています。また、新居の需要も高く、不動産市場や住宅関連産業も活況を呈しています。これにより、雇用創出や経済成長が促進されるという好循環が生まれています。
一方、岩手県(46位、2.97‰)では、婚姻率が低いことから、結婚関連産業の市場規模も小さく、事業者の経営が厳しい状況にあります。また、新居の需要も限られており、不動産市場や住宅関連産業も停滞しています。これにより、雇用機会の減少や経済の縮小という悪循環が生じているという課題があります。
社会保障制度への影響
婚姻率の格差は、社会保障制度にも大きな影響を与えます。婚姻率が高い地域では、若年層の世帯形成が活発であり、現役世代の人口比率が高くなる傾向があります。これにより、社会保障制度の支え手が多く、制度の持続可能性が高まります。一方、婚姻率が低い地域では、高齢化が進行し、社会保障制度の支え手が減少するため、制度の持続可能性が低下する傾向があります。
例えば、愛知県(3位、4.46‰)では、婚姻率が高く、若年層の人口比率も高いことから、社会保障制度の支え手が多いという特徴があります。これにより、高齢者福祉や医療保険などの社会保障制度の財政基盤が比較的安定しています。
一方、秋田県(47位、2.63‰)では、婚姻率が低く、若年層の県外流出も多いことから、高齢化が急速に進行しています。これにより、社会保障制度の支え手が減少し、制度の財政基盤が脆弱化しているという課題があります。特に、医療や介護の需要が増加する一方で、それを支える現役世代が減少しているため、制度の持続可能性が危ぶまれています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別婚姻率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約3.65‰、中央値は約3.62‰とほぼ一致しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、東京都(5.36‰)や大阪府(4.60‰)などの一部の都府県で婚姻率が突出して高いため、わずかに右に歪んだ分布となっています。
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分布の歪み:データは全体としてやや正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。東京都(5.36‰)が最も高く、秋田県(2.63‰)が最も低いですが、その差は2.73‰と比較的大きく、地域間の格差が存在します。
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外れ値の特定:東京都(5.36‰)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、東京都が若年層の人口比率が高く、経済的機会も豊富であることを反映しています。一方、秋田県(2.63‰)は下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。これは、秋田県が高齢化率が高く、若年層の県外流出も多いことを反映しています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約3.40‰、第3四分位数(Q3)は約3.85‰で、四分位範囲(IQR)は約0.45‰です。これは、中央の50%の都道府県の婚姻率が3.40‰から3.85‰の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い婚姻率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.50‰で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約13.7%となり、相対的なばらつきはそれほど大きくないことを示しています。ただし、最高値と最低値の差は2.73‰(5.36‰−2.63‰)であり、都道府県間の格差は無視できない水準にあります。
まとめ
2022年度の都道府県別婚姻率ランキングでは、東京都が5.36‰で1位、秋田県が2.63‰で47位となりました。上位には東京都、大阪府、愛知県、沖縄県などの大都市を有する都府県や若年層の人口比率が高い県が多く、下位には秋田県、岩手県、青森県などの高齢化が進行している地方県が多く見られました。
婚姻率の地域差は、年齢構成、経済状況、結婚観など様々な要素を反映しており、この差は人口動態、地域経済、社会保障制度など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の婚姻率の格差が存在し、特に大都市圏と地方県の間で顕著な差があることがわかります。これは、若年層の大都市圏への集中と地方からの流出という人口移動の傾向を反映しています。
少子高齢化が進む日本社会において、結婚や家族形成のあり方は重要な課題となっています。特に、地方創生の観点からは、若者が地方でも安心して結婚し、家庭を築けるような環境整備が求められています。具体的には、安定した雇用の創出、子育て支援の充実、ワーク・ライフ・バランスの推進などの政策が重要です。また、結婚を希望する若者が経済的・社会的障壁なく結婚できる環境づくりも重要な課題です。