概要
婚姻件数とは、1年間に届け出られた結婚の件数のことを指します。この記事では、2022年度の都道府県別婚姻件数のランキングを紹介します。
婚姻件数は、地域の人口規模や年齢構成、経済状況、結婚観などを反映しており、少子化対策や家族政策などの基礎データとして重要な指標です。2022年度は、東京都や大阪府などの大都市圏で婚姻件数が多く、鳥取県や島根県などの人口規模の小さい地方県で婚姻件数が少なくなっています。
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
婚姻件数が多い上位5県
2022年度の婚姻件数ランキングでは、東京都が75,179組(偏差値97.6)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、人口が最も多い都道府県です。若年層の人口比率が高く、結婚適齢期の人口が多いことが、婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、地方から上京してきた若者も多く、出会いの機会も豊富であることも要因の一つです。
2位は大阪府で40,362組(偏差値71.9)、3位は神奈川県で40,191組(偏差値71.7)、4位は愛知県で33,434組(偏差値66.8)、5位は埼玉県で28,823組(偏差値63.4)となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、人口規模が大きいことが婚姻件数の多さに直接関係していることがわかります。
婚姻件数が少ない下位5県
最も婚姻件数が少なかったのは鳥取県で1,981組(偏差値43.5)でした。鳥取県は日本で人口が最も少ない県であり、特に若年層の人口比率が低いことが、婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。また、若者の県外流出も多く、結婚適齢期の人口が減少していることも要因の一つです。
46位は島根県で2,167組(偏差値43.7)、45位は高知県で2,189組(偏差値43.7)、44位は徳島県で2,375組(偏差値43.8)、43位は秋田県で2,447組(偏差値43.9)となっています。下位県には人口規模の小さい地方県が多く、人口減少や高齢化が進んでいることが婚姻件数の少なさに影響していることがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の結婚事情
東北地方では、宮城県(14位、8,431組)が最も婚姻件数が多く、秋田県(43位、2,447組)が最も少なくなっています。その他の県は、青森県(34位、3,656組)、岩手県(35位、3,508組)、山形県(39位、3,184組)、福島県(24位、6,088組)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。東北地方の平均婚姻件数は約4,552組で、全国平均(約10,743組)を大きく下回っています。
宮城県で婚姻件数が比較的多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市には多くの大学や企業が集中しており、若年層の人口比率が高いことが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、東北地方の中心都市として、周辺県からの人口流入も多いことが要因の一つです。
一方、秋田県で婚姻件数が少ない理由としては、人口減少と高齢化の進行が挙げられます。秋田県は全国でも特に人口減少率が高く、若年層の県外流出も多いため、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。また、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
関東地方の都市化と婚姻動向
関東地方では、東京都(1位、75,179組)、神奈川県(3位、40,191組)、埼玉県(5位、28,823組)、千葉県(6位、24,824組)と、首都圏の都県が軒並み上位を占めています。一方、茨城県(12位、10,163組)、栃木県(17位、7,154組)、群馬県(19位、6,704組)は中位に位置しています。関東地方の平均婚姻件数は約27,577組で、全国平均の2.5倍以上となっています。
首都圏で婚姻件数が多い理由としては、人口規模の大きさと若年層の集中が挙げられます。東京都や神奈川県には、大学や企業が集中しており、地方から多くの若者が流入しています。これにより、結婚適齢期の人口が多く、出会いの機会も豊富であることが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、経済的な機会も多く、結婚に必要な経済的基盤を確立しやすい環境も整っています。
一方、北関東の県で婚姻件数が比較的少ない理由としては、若年層の首都圏への流出が挙げられます。茨城県、栃木県、群馬県では、高校や大学を卒業した若者が就職や進学のために首都圏に移住するケースが多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。ただし、近年は首都圏からの移住者も増加しており、今後の動向が注目されます。
中部・北陸地方の産業構造と婚姻傾向
中部・北陸地方では、愛知県(4位、33,434組)が最も婚姻件数が多く、上位に位置しています。一方、新潟県(18位、6,823組)、富山県(36位、3,496組)、石川県(30位、4,214組)、福井県(42位、2,815組)、山梨県(41位、2,875組)、長野県(16位、7,288組)、岐阜県(21位、6,525組)、静岡県(10位、13,127組)は中位から下位に位置しています。中部地方の平均婚姻件数は約8,955組と、全国平均を下回っています。
愛知県で婚姻件数が多い理由としては、自動車産業を中心とした製造業の集積と、それに伴う雇用の安定性が挙げられます。愛知県は日本有数の工業地帯であり、若者の雇用機会が豊富であることが、経済的基盤の確立を容易にし、結婚を促進していると考えられます。また、名古屋市を中心とした都市圏では、出会いの機会も多く、婚姻件数の増加につながっています。
一方、福井県や山梨県で婚姻件数が少ない理由としては、人口規模の小ささと若年層の県外流出が挙げられます。これらの県では、高校や大学を卒業した若者が就職や進学のために大都市圏に移住するケースが多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。ただし、地元企業の雇用環境は比較的安定しており、Uターン就職者も一定数存在することから、今後の動向が注目されます。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、大阪府(2位、40,362組)、兵庫県(8位、20,844組)が上位に位置する一方、京都府(13位、9,571組)、滋賀県(25位、5,642組)、奈良県(31位、4,205組)、和歌山県(38位、3,193組)は中位から下位に位置しています。近畿地方の平均婚姻件数は約12,894組と、全国平均を上回っていますが、大阪府と兵庫県の影響が大きいことがわかります。
大阪府で婚姻件数が多い理由としては、人口規模の大きさと経済的な中心性が挙げられます。大阪府は近畿地方の経済的中心であり、多くの企業が集積していることから、雇用機会が豊富で、若年層の人口比率も高いことが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、都市型の生活様式が浸透しており、出会いの機会も多いことが要因の一つです。
一方、和歌山県で婚姻件数が少ない理由としては、人口減少と高齢化の進行が挙げられます。和歌山県は若年層の県外流出が多く、結婚適齢期の人口が減少していることが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。また、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
中国・四国地方の地域性
中国・四国地方では、広島県(11位、10,883組)、岡山県(15位、7,399組)が中位に位置する一方、山口県(27位、4,593組)、鳥取県(47位、1,981組)、島根県(46位、2,167組)、徳島県(44位、2,375組)、香川県(37位、3,435組)、愛媛県(28位、4,477組)、高知県(45位、2,189組)は中位から下位に位置しています。中国・四国地方の平均婚姻件数は約4,389組と、全国平均の半分以下となっており、特に婚姻件数が少ない地域と言えます。
広島県で婚姻件数が比較的多い理由としては、広島市という中国地方最大の都市を有していることが挙げられます。広島市には多くの企業や大学が集中しており、若年層の人口比率が高いことが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、自動車産業などの製造業も盛んであり、雇用の安定性も結婚を促進する要因となっています。
一方、鳥取県や島根県で婚姻件数が少ない理由としては、人口規模の小ささと若年層の県外流出が挙げられます。これらの県は日本で最も人口が少ない県であり、特に若年層の県外流出が顕著であることが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。また、農林水産業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会の制約につながり、結婚の障壁となっている可能性があります。
九州・沖縄地方の地域差
九州・沖縄地方では、福岡県(7位、21,840組)が最も婚姻件数が多く、上位に位置しています。一方、佐賀県(40位、2,951組)、長崎県(29位、4,410組)、熊本県(23位、6,349組)、大分県(32位、4,037組)、宮崎県(33位、3,805組)、鹿児島県(26位、5,619組)、沖縄県(20位、6,546組)は中位から下位に位置しています。九州・沖縄地方の平均婚姻件数は約6,945組と、全国平均を下回っています。
福岡県で婚姻件数が多い理由としては、福岡市という九州地方最大の都市を有していることが挙げられます。福岡市には多くの企業や大学が集中しており、若年層の人口比率が高いことが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、九州地方の経済的・文化的中心として、周辺県からの人口流入も多いことが要因の一つです。
一方、佐賀県で婚姻件数が少ない理由としては、人口規模の小ささと若年層の県外流出が挙げられます。佐賀県は福岡県に隣接しており、若者が就職や進学のために福岡県に流出するケースが多いことが婚姻件数の少なさに影響していると考えられます。ただし、近年は福岡県からの移住者も増加しており、今後の動向が注目されます。
沖縄県は人口規模の割に婚姻件数が多いですが、これは独特の文化的背景や家族観が影響していると考えられます。沖縄県は伝統的に家族の絆を重視する文化があり、結婚に対する肯定的な価値観が根付いていることが婚姻件数の多さに影響していると考えられます。また、観光業を中心とした産業構造も、若者の雇用機会を提供し、地元定着を促進している可能性があります。
婚姻件数の格差がもたらす影響と課題
人口動態への影響
婚姻件数の格差は、地域の人口動態にも大きな影響を与えます。婚姻件数が多い地域では、新たな世帯の形成が活発であり、出生率の上昇や人口の自然増加につながる可能性があります。一方、婚姻件数が少ない地域では、世帯形成が停滞し、出生率の低下や人口の自然減少が加速する傾向があります。
例えば、東京都(1位、75,179組)では、多くの婚姻が行われていますが、住宅費や教育費などの生活コストが高いことから、子どもの数は限られる傾向があります。実際、東京都の合計特殊出生率は全国最低水準であり、婚姻件数の多さが必ずしも出生率の上昇につながっていないという課題があります。
一方、鳥取県(47位、1,981組)では、婚姻件数は少ないものの、結婚したカップルの子どもの数は比較的多い傾向があります。これは、住宅費や教育費などの生活コストが低く、子育て環境が整っていることが影響していると考えられます。しかし、婚姻件数自体が少ないため、全体としての出生数は減少しており、人口減少が進行しているという課題があります。
地域経済への影響
婚姻件数の格差は、地域経済にも大きな影響を与えます。婚姻件数が多い地域では、結婚に関連する消費(結婚式、新居の購入・賃貸、家具・家電の購入など)が活発であり、関連産業の発展につながります。一方、婚姻件数が少ない地域では、こうした消費が停滞し、地域経済の活力低下を招く可能性があります。
例えば、大阪府(2位、40,362組)では、多くの婚姻が行われていることから、結婚式場やブライダル関連産業が発達しています。また、新居の需要も高く、不動産市場や住宅関連産業も活況を呈しています。これにより、雇用創出や経済成長が促進されるという好循環が生まれています。
一方、島根県(46位、2,167組)では、婚姻件数が少ないことから、結婚関連産業の市場規模も小さく、事業者の経営が厳しい状況にあります。また、新居の需要も限られており、不動産市場や住宅関連産業も停滞しています。これにより、雇用機会の減少や経済の縮小という悪循環が生じているという課題があります。
社会保障制度への影響
婚姻件数の格差は、社会保障制度にも大きな影響を与えます。婚姻件数が多い地域では、若年層の世帯形成が活発であり、現役世代の人口比率が高くなる傾向があります。これにより、社会保障制度の支え手が多く、制度の持続可能性が高まります。一方、婚姻件数が少ない地域では、高齢化が進行し、社会保障制度の支え手が減少するため、制度の持続可能性が低下する傾向があります。
例えば、神奈川県(3位、40,191組)では、多くの婚姻が行われていることから、現役世代の人口比率が高く、社会保障制度の支え手が多いという特徴があります。これにより、高齢者福祉や医療保険などの社会保障制度の財政基盤が比較的安定しています。
一方、秋田県(43位、2,447組)では、婚姻件数が少なく、若年層の県外流出も多いことから、高齢化が急速に進行しています。これにより、社会保障制度の支え手が減少し、制度の財政基盤が脆弱化しているという課題があります。特に、医療や介護の需要が増加する一方で、それを支える現役世代が減少しているため、制度の持続可能性が危ぶまれています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別婚姻件数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
-
平均値と中央値の比較:平均値は約10,743組、中央値は約6,088組(福島県の値)と大きく乖離しており、データの分布が右に歪んでいることを示しています。これは、東京都や大阪府などの一部の大都市圏で婚姻件数が突出して多く、多くの地方県では婚姻件数が少ないことを意味します。
-
分布の歪み:データは全体として強い正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。東京都(75,179組)が最も多く、鳥取県(1,981組)が最も少ないですが、その差は約38倍に達しており、極端な格差が存在します。
-
外れ値の特定:東京都(75,179組)、大阪府(40,362組)、神奈川県(40,191組)などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これらの都府県は人口規模も大きく、若年層の人口比率も高いことが特徴です。
-
四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約3,496組(富山県の値)、第3四分位数(Q3)は約10,163組(茨城県の値)で、四分位範囲(IQR)は約6,667組です。これは、中央の50%の都道府県の婚姻件数が3,496組から10,163組の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的少ない婚姻件数であることがわかります。
-
標準偏差によるばらつき:データのばらつきは非常に大きく、特に東京都、大阪府、神奈川県などの大都市圏と地方県との間で顕著な差があります。変動係数(標準偏差÷平均値)は約100%を超えており、相対的なばらつきが非常に大きいことを示しています。
-
地域別の特徴:地域別の平均婚姻件数を見ると、関東地方が約27,577組と最も多く、中国・四国地方が約4,389組と最も少なくなっています。この差は約6.3倍に達しており、地域間の格差が非常に大きいことを示しています。
まとめ
2022年度の都道府県別婚姻件数ランキングでは、東京都が75,179組で1位、鳥取県が1,981組で47位となりました。上位には東京都、大阪府、神奈川県などの大都市を有する都府県が多く、下位には鳥取県、島根県、高知県などの人口規模の小さい地方県が多く見られました。
婚姻件数の地域差は、人口規模、年齢構成、経済状況、結婚観など様々な要素を反映しており、この差は人口動態、地域経済、社会保障制度など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の婚姻件数の格差が非常に大きく、特に大都市圏と地方県の間で顕著な差があることがわかります。これは、若年層の大都市圏への集中と地方からの流出という人口移動の傾向を反映しています。
少子高齢化が進む日本社会において、結婚や家族形成のあり方は重要な課題となっています。特に、地方創生の観点からは、若者が地方でも安心して結婚し、家庭を築けるような環境整備が求められています。具体的には、安定した雇用の創出、子育て支援の充実、ワーク・ライフ・バランスの推進などの政策が重要です。また、結婚を希望する若者が経済的・社会的障壁なく結婚できる環境づくりも重要な課題です。