都道府県別転出率ランキング(2023年度)

概要

転出率とは、その地域の総人口に対する他地域への転出者数の割合を示す指標です。この記事では、2023年度の都道府県別転出率のランキングを紹介します。

転出率は、その地域からどれだけの人口が流出しているかを示す重要な指標であり、地域の人口動態や社会経済状況を反映しています。この値が高いほど、その地域から他地域へ移動する人の割合が高いことを意味します。

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上位県と下位県の比較

転出率が高い上位5都府県

2023年度の転出率ランキングでは、東京都2.47%(偏差値81.1)で全国1位となりました。東京都は多くの人が転入する一方で、転出者も多く、人口の流動性が非常に高い地域です。住宅事情や生活コストの高さ、ライフステージの変化などが転出の要因として考えられます。

2位は京都府2.20%(偏差値70.2)、3位は長崎県2.08%(偏差値65.3)、4位は神奈川県2.05%(偏差値64.1)、5位は佐賀県2.01%(偏差値62.5)となっています。上位には大都市圏の中心都市や地方の中枢都市を持つ都府県が多く、人口の流動性が高いことが特徴です。

転出率が低い下位5県

最も転出率が低かったのは北海道1.04%(偏差値23.1)でした。北海道は面積が広大で、道内での移動が多く、道外への転出が比較的少ないことが要因と考えられます。

46位は新潟県1.23%(偏差値30.8)、45位は富山県1.35%(偏差値35.7)、44位は長野県1.42%(偏差値38.5)、43位は愛知県1.43%(偏差値38.9)となっています。下位県には北陸地方の県が多く、地域コミュニティの結びつきの強さや地域産業の安定性などが転出率の低さに影響していると考えられます。特筆すべきは、愛知県のような製造業を中心とした経済基盤が強い県も転出率が低いことです。

地域別の特徴分析

大都市圏の高い転出率

大都市圏では、東京都(1位、2.47%)を筆頭に、京都府(2位、2.20%)、神奈川県(4位、2.05%)、千葉県(6位、1.98%)、埼玉県(7位、1.95%)など、中心都市を持つ都府県で高い転出率を示しています。これらの地域は、転入率も高く、人口の流動性が非常に高いことが特徴です。特に東京都は、若年層の転入が多い一方で、30代以降のファミリー層の転出も多く、ライフステージに応じた人口移動が活発に行われています。

興味深いのは、大阪府(27位、1.67%)が大都市でありながら比較的低い転出率を示していることで、関西圏では京都府(2位、2.20%)や奈良県(11位、1.85%)の方が高い転出率となっています。

九州地方の高い転出率

九州地方では、長崎県(3位、2.08%)、佐賀県(5位、2.01%)、鹿児島県(14位、1.79%)、宮崎県(15位、1.78%)、大分県(16位タイ、1.76%)など、多くの県が高い転出率を示しています。これらの地域では、福岡県への一極集中や、首都圏・関西圏への若年層の流出が活発であることが要因と考えられます。ただし、福岡県自体は20位(1.74%)と、九州の他県と比べて転出率が低めです。

東北地方の多様な状況

東北地方では、宮城県(8位、1.94%)が高い転出率を示す一方、秋田県(41位タイ、1.44%)や山形県(39位、1.52%)は低い転出率となっています。宮城県は仙台市という地方中枢都市を持ち、若年層の流入と流出が活発である一方、秋田県や山形県は若年層の流出が一巡し、人口移動そのものが少なくなっている可能性があります。青森県(16位タイ、1.76%)や岩手県(25位タイ、1.69%)は中位の転出率を示しています。

北陸地方と中部地方の低い転出率

北陸地方では、石川県(30位、1.65%)を除いて、新潟県(46位、1.23%)、富山県(45位、1.35%)、福井県(41位タイ、1.44%)と、いずれも低い転出率を示しています。

中部地方でも、愛知県(43位、1.43%)、長野県(44位、1.42%)、岐阜県(37位、1.54%)、静岡県(34位タイ、1.55%)と全体的に転出率が低くなっています。これらの地域は、地域産業の安定性や地域コミュニティの結びつきの強さ、生活環境の良さなどが人口の定着に寄与していると考えられます。

中国・四国地方の状況

中国・四国地方では、山口県(9位、1.88%)や香川県(13位、1.81%)が比較的高い転出率を示す一方、和歌山県(40位、1.49%)や徳島県・高知県(34位タイ、1.55%)などは低めの転出率となっています。これらの地域間格差は、雇用機会や生活環境の差を反映していると考えられます。

転出率の格差がもたらす影響と課題

人口構造への影響

転出率の高い地域では、特に若年層や生産年齢人口の流出が顕著であり、人口の高齢化が加速する傾向があります。一方、転出率の低い地域でも、若年層の流出が一巡した結果として人口移動が少なくなっている場合、すでに高齢化が進行している可能性があります。この人口構造の変化は、地域の経済力や社会保障制度の持続可能性に大きな影響を与えます。

地域経済への影響

転出率の高い地域では、人材の流出による労働力不足や消費市場の縮小が地域経済に影響を与える可能性があります。特に若年層や高度な技術・知識を持つ人材の流出は、地域の産業競争力や革新力の低下につながる恐れがあります。一方、転出率の低い地域では、新たな人材や知識の流入が少なく、地域経済の停滞を招く可能性もあります。

地域コミュニティへの影響

転出率の高い地域では、地域コミュニティの維持や伝統文化の継承が困難になる可能性があります。特に過疎地域では、転出による人口減少が地域の存続自体を脅かす恐れがあります。一方、転出率の低い地域では、地域コミュニティの結びつきが強く、相互扶助や社会関係資本が豊かである可能性がありますが、新たな価値観や多様性の受容に課題がある場合もあります。

地方創生と人口維持の必要性

転出率の地域間格差は、地方創生や人口維持の課題と密接に関連しています。特に若年層の流出が続く地方では、雇用創出や生活環境の整備、教育機会の充実など、人口定着のための総合的な取り組みが求められています。また、大都市圏では、住宅の確保や子育て環境の整備など、ファミリー層の定着を促す政策が重要です。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2023年度の都道府県別転出率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約1.71%、中央値は約1.69%とほぼ同じ値を示していますが、東京都(2.47%)という極端に高い値と北海道(1.04%)という極端に低い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。

  2. 分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、東京都(2.47%)という上側の外れ値と北海道(1.04%)という下側の外れ値があるため、わずかに二峰性の分布を示しています。

  3. 外れ値の特定:東京都(2.47%)は明らかな上側の外れ値と考えられます。2位の京都府(2.20%)との差は小さいですが、全体の分布から見ると特異な値を示しています。また、北海道(1.04%)も下側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約1.49%、第3四分位数(Q3)は約1.85%で、四分位範囲(IQR)は約0.36%ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の転出率が1.49%から1.85%の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.28%ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.28%ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約16.4%となり、相対的なばらつきは小さいと言えます。最高値と最低値の差は1.43%ポイント(2.47%−1.04%)であり、東京都と北海道の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2023年度の都道府県別転出率ランキングでは、東京都が2.47%で1位、北海道が1.04%で47位となりました。上位には大都市圏の中心都市や九州地方の県が多く、下位には北陸地方や中部地方の県が多く見られました。

転出率の地域差は、雇用機会や生活環境、地域コミュニティの結びつきなどの地域特性を反映しており、この差は人口構造、地域経済、地域コミュニティなど多方面に影響を与えています。

統計分析からは、多くの都道府県の転出率が1.49%から1.85%の範囲に集中しており、相対的なばらつきは小さいことがわかります。しかし、東京都と北海道のような外れ値も存在し、地域によって特徴的な人口移動パターンが見られます。

持続可能な地域社会の形成のためには、各地域の特性に応じた人口維持・定着策が重要です。転出率の高い地域では、若年層やファミリー層の定着を促す雇用創出や生活環境の整備が、転出率の低い地域では、新たな人材や知識の流入を促す開放的な地域づくりが求められています。

出典