2022年度の自然増減率において、沖縄県が-0.5‰で全国1位、秋田県が-13.1‰で最下位となり、大きな地域格差が存在しています。上位県では東京都(-2.6‰)、滋賀県(-3.2‰)が続き、全ての都道府県で自然減少が進行していることが明らかになりました。
概要
自然増減率とは、出生数から死亡数を引いた自然増減数の人口に対する割合を示す指標です。自然増減率は、地域の人口動態の基本的な要素であり、少子高齢化の進行度合いを反映しています。
プラスの値は自然増加(出生数が死亡数を上回る状態)を、マイナスの値は自然減少(死亡数が出生数を上回る状態)を示しています。2022年度は全ての都道府県でマイナスの値となっており、日本全体で自然減少が進行していることがわかります。
地図データを読み込み中...
上位5県の詳細分析
沖縄県(1位)
沖縄県は-0.5‰(偏差値78.8)で全国1位となりました。合計特殊出生率が1.70と全国で最も高く、若い世代の割合も多いことが、相対的に高い自然増減率の要因と考えられます。
県面積が全国44位と小規模ですが、高い出生率と若年層の多さが特徴です。高齢化率が22.9%と全国で最も低く、これが自然減少率の低さにつながっています。独特の文化と気候が子育て環境に良い影響を与えています。
東京都(2位)
東京都は-3.0‰(偏差値67.9)で2位となりました。20代から30代の若年層が多く居住しており、これが出生数の増加につながっています。また、医療環境の充実も死亡率の低下に寄与していると考えられます。
都面積が全国45位と小規模ですが、人口密度が最も高いです。若年層の流入による年齢構成の若さが特徴で、経済的機会の豊富さが背景にあります。
滋賀県(3位)
滋賀県は-3.1‰(偏差値67.5)で3位となりました。京阪神への通勤圏としての特性から比較的若い世代が多いことが挙げられます。
県面積が全国38位と小規模で、京阪神への通勤圏として発展しています。住宅環境が良好で子育て世代に人気があり、ベッドタウンとしての性格が自然減少率を抑制しています。
愛知県(4位)
愛知県は-3.5‰(偏差値65.8)で4位となりました。名古屋市を中心とした経済圏の存在や、自動車産業をはじめとする製造業の集積による雇用創出が挙げられます。これにより若年層の流入があり、年齢構成が若くなっています。
県面積が全国28位と中規模で、製造業の集積が特徴です。安定した雇用環境が若年層の定着を促進し、出生率の維持に寄与しています。
神奈川県(5位)
神奈川県は-4.0‰(偏差値63.6)で5位となりました。東京都への通勤圏として若年層の流入があり、首都圏の一角として経済的機会が豊富です。
県面積が全国43位と小規模ですが、人口密度が高いです。東京都のベッドタウンとしての性格があり、子育て環境の整備が進んでいます。
下位5県の詳細分析
秋田県(47位)
秋田県は-13.1‰(偏差値24.2)で最下位となりました。高齢化率が39.5%と全国で最も高く、また合計特殊出生率も1.18と低いことが、低い自然増減率の要因と考えられます。
県面積が全国6位と広大ですが、人口密度が低いです。若年層の県外流出が深刻で、高齢化の進行が自然減少を加速させています。
青森県(46位)
青森県は-10.9‰(偏差値33.7)で46位となりました。高齢化率が34.9%と高く、若年層の大都市圏への流出による高齢化の進行が背景にあります。
県面積が全国8位と広大で、中山間地域が多いです。過疎化の進行により地域コミュニティの維持が困難になっています。
岩手県(44位)
岩手県は-10.4‰(偏差値35.9)で44位となりました。東北地方の中でも特に若年層の流出が深刻で、高齢化が進行しています。
県面積が全国2位と広大で、中山間地域が多いです。震災復興の過程で人口減少が加速し、自然減少率が高くなっています。
山形県(43位)
山形県は-10.0‰(偏差値37.6)で43位となりました。農業県としての特性から若年層の流出が多く、高齢化が進行しています。
県面積が全国9位と広大で、農業従事者の高齢化が課題です。地域の担い手不足が深刻化しています。
福島県(41位)
福島県は-9.2‰(偏差値39.7)で41位となりました。東日本大震災の影響による人口流出と高齢化の進行が要因です。
県面積が全国3位と広大で、震災の影響が長期化しています。復興過程での人口減少が自然減少率を押し上げています。
地域別の特徴分析
東北地方
秋田県(47位、-13.1‰)、青森県(46位、-10.9‰)、岩手県(44位、-10.4‰)、山形県(43位、-10.0‰)、福島県(41位、-9.2‰)と、5県が全国ワースト10に入る深刻な自然減少を示しています。一方、宮城県(12位、-6.0‰)は東北地方では比較的自然減少率が低くなっています。
東北地方の深刻な自然減少の背景には、若年層の大都市圏への流出による高齢化の進行と、それに伴う出生数の減少があります。特に、秋田県は高齢化率が39.5%と全国で最も高く、また合計特殊出生率も1.18と低いことが、深刻な自然減少につながっています。
宮城県が比較的自然減少率が低い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として若年層の流入があり、これが県全体の年齢構成を若くし、自然減少率を抑える要因となっています。
関東地方
東京都(2位、-3.0‰)、神奈川県(5位、-4.0‰)、埼玉県(7位、-4.7‰)、千葉県(8位、-5.0‰)と首都圏の都県が上位を占めています。若年層の流入による年齢構成の若さが、相対的に高い自然増減率につながっています。
首都圏では経済的機会が豊富で、20代から30代の若年層が多く居住しています。医療環境の充実も死亡率の低下に寄与しています。
中部地方
愛知県(4位、-3.5‰)が比較的自然減少率が低い一方、他の県は中位から下位に位置しています。愛知県は名古屋市を中心とした経済圏と自動車産業の集積により、若年層の流入があります。
近畿地方
滋賀県(3位、-3.1‰)、大阪府(9位、-5.2‰)が上位に位置する一方、和歌山県は下位に位置しています。滋賀県は京阪神への通勤圏として若い世代が多いことが特徴です。
九州・沖縄地方
沖縄県(1位、-0.5‰)が突出して高い自然増減率を示しています。高い出生率(合計特殊出生率1.70)と若い世代の割合の高さが要因です。福岡県も九州経済の中心地として比較的良好な数値を示しています。
社会的・経済的影響
自然減少の進行は、人口構造の高齢化をさらに加速させ、地域社会に様々な影響を与えます。自然減少率が高い地域では、生産年齢人口の減少により労働力不足が深刻化し、地域経済の縮小や税収減少につながる可能性があります。
沖縄県(-0.5‰)と秋田県(-13.1‰)の差は12.6‰に達し、地域間の人口動態格差を浮き彫りにしています。この格差は出生率の差、高齢化の進行度合いの差、若年層の流入・流出の差など様々な要素を反映しています。
医療・介護需要の地域差も深刻で、自然減少率が高い地域では高齢者人口の割合が高く、医療・介護需要が増大する傾向があります。一方、医療・介護の担い手となる生産年齢人口は減少しており、人材確保が課題となっています。
対策と今後の展望
自然減少に対応するためには、少子化対策と高齢者支援の両面からのアプローチが重要です。少子化対策としては、子育て支援の充実、仕事と家庭の両立支援、若者の雇用安定化などが挙げられます。
沖縄県では「黄金っ子応援プラン」を策定し、子育て支援の充実や仕事と家庭の両立支援などに取り組んでいます。東京都では高齢者の健康づくりや社会参加促進などに取り組んでいます。
今後は地域の特性に応じた人口政策の展開と、成功事例の共有が重要となります。
指標 | 値‰ |
---|---|
平均値 | -7.1 |
中央値 | -7 |
最大値 | -0.5(沖縄県) |
最小値 | -13.1(秋田県) |
標準偏差 | 2.3 |
データ数 | 47件 |
統計データの分析
2022年度の都道府県別自然増減率データを統計的に分析すると、平均値は約-7.6‰、中央値は約-7.5‰とほぼ同じ値を示しています。秋田県(-13.1‰)や青森県(-10.9‰)という極端に低い値と沖縄県(-0.5‰)や東京都(-3.0‰)という極端に高い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。
秋田県(-13.1‰)は明らかな下側の外れ値と考えられます。また、沖縄県(-0.5‰)も上側の外れ値と考えられます。第1四分位数(Q1)は約-9.4‰、第3四分位数(Q3)は約-6.3‰で、四分位範囲(IQR)は約3.1‰です。
標準偏差は約2.5‰で、多くの都道府県が平均値から±2.5‰の範囲内に分布していることを示しています。最高値と最低値の差は12.6‰(-0.5‰−(-13.1‰))に達し、沖縄県と秋田県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2022年度の都道府県別自然増減率ランキングでは、沖縄県が-0.5‰で1位、秋田県が-13.1‰で47位となりました。上位には沖縄県、東京都、滋賀県などの出生率が比較的高い地域や若年層の流入がある地域が多く、下位には秋田県、青森県、岩手県などの高齢化が進行している地域が多く見られました。
自然増減率の地域差は、出生率の差、高齢化の進行度合いの差、若年層の流入・流出の差など様々な要素を反映しており、この差は人口構造や地域社会の持続可能性に大きな影響を与えています。
統計分析からは、秋田県が突出して低い自然増減率を示す一方、沖縄県が特に高い自然増減率を示していることがわかります。また、多くの都道府県は-9.4‰から-6.3‰の範囲に集中しており、中程度の自然減少率を示しています。
自然減少社会に対応するためには、少子化対策の推進、高齢者支援の充実、地域コミュニティの活性化など、多角的な取り組みが求められています。特に、沖縄県や東京都などの成功事例に学び、地域の特性に応じた人口政策を展開することが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‰) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 沖縄県 | -0.5 | 78.8 | -155.6% |
2 | 東京都 | -3.0 | 67.9 | +42.9% |
3 | 滋賀県 | -3.1 | 67.5 | +29.2% |
4 | 愛知県 | -3.5 | 65.8 | +52.2% |
5 | 神奈川県 | -4.0 | 63.6 | +25.0% |
6 | 福岡県 | -4.6 | 61.0 | +31.4% |
7 | 埼玉県 | -4.7 | 60.6 | +23.7% |
8 | 千葉県 | -5.0 | 59.3 | +21.9% |
9 | 大阪府 | -5.2 | 58.4 | +20.9% |
10 | 広島県 | -5.6 | 56.7 | +27.3% |
11 | 兵庫県 | -5.7 | 56.2 | +16.3% |
12 | 宮城県 | -6.0 | 54.9 | +17.6% |
13 | 石川県 | -6.0 | 54.9 | +17.6% |
14 | 京都府 | -6.1 | 54.5 | +29.8% |
15 | 岡山県 | -6.1 | 54.5 | +22.0% |
16 | 佐賀県 | -6.4 | 53.2 | +23.1% |
17 | 静岡県 | -6.7 | 51.9 | +15.5% |
18 | 三重県 | -6.7 | 51.9 | +15.5% |
19 | 熊本県 | -6.7 | 51.9 | +28.9% |
20 | 福井県 | -6.8 | 51.5 | +17.2% |
21 | 茨城県 | -6.9 | 51.0 | +19.0% |
22 | 栃木県 | -6.9 | 51.0 | +23.2% |
23 | 岐阜県 | -7.0 | 50.6 | +16.7% |
24 | 奈良県 | -7.0 | 50.6 | +20.7% |
25 | 山梨県 | -7.2 | 49.7 | +18.0% |
26 | 長野県 | -7.3 | 49.3 | +10.6% |
27 | 群馬県 | -7.4 | 48.9 | +13.8% |
28 | 鳥取県 | -7.6 | 48.0 | +11.8% |
29 | 香川県 | -7.6 | 48.0 | +18.8% |
30 | 大分県 | -7.9 | 46.7 | +14.5% |
31 | 宮崎県 | -7.9 | 46.7 | +23.4% |
32 | 富山県 | -8.1 | 45.8 | +12.5% |
33 | 鹿児島県 | -8.1 | 45.8 | +22.7% |
34 | 長崎県 | -8.2 | 45.4 | +17.1% |
35 | 北海道 | -8.5 | 44.1 | +10.4% |
36 | 島根県 | -8.8 | 42.8 | +11.4% |
37 | 新潟県 | -9.0 | 41.9 | +9.8% |
38 | 愛媛県 | -9.0 | 41.9 | +12.5% |
39 | 福島県 | -9.2 | 41.1 | +15.0% |
40 | 徳島県 | -9.3 | 40.6 | +13.4% |
41 | 和歌山県 | -9.5 | 39.8 | +21.8% |
42 | 山口県 | -9.5 | 39.8 | +14.5% |
43 | 山形県 | -10.0 | 37.6 | +6.4% |
44 | 岩手県 | -10.4 | 35.9 | +13.0% |
45 | 高知県 | -10.8 | 34.1 | +21.4% |
46 | 青森県 | -10.9 | 33.7 | +10.1% |
47 | 秋田県 | -13.1 | 24.2 | +8.3% |