2023年度の着工新設貸家比率において、宮城県が55.8%で全国1位、群馬県が23.0%で最下位となり、32.8ポイントという大きな格差が存在しています。この指標は新設住宅着工戸数に占める貸家の割合を示し、地域の賃貸住宅市場の活況度や住宅需給バランスを測る重要な指標です。東北地方の躍進と北関東の低迷が際立ち、復興需要や人口集積が賃貸住宅建設に大きな影響を与えています。
概要
着工新設貸家比率は新設住宅着工戸数に占める貸家の割合を示し、地域の賃貸住宅市場の活況度や住宅政策の成果を測る重要な指標です。この数値が高い地域では賃貸住宅の供給が活発で、住宅選択肢の多様化や家賃相場の安定化につながります。
この指標が重要な理由として、賃貸住宅市場の活況度を測定できることがあります。新築賃貸住宅の供給は住環境の向上に直結します。地域の人口動態では、若年層や転勤族の住宅需要を反映します。住宅政策の効果測定として、各自治体の賃貸住宅促進策の成果を客観的に評価できます。
2023年度の全国平均は38.6%となっています。東北地方の復興需要や大都市圏の人口集積が高い数値を示す一方、北関東や地方部では低水準にとどまっており、地域間格差が顕著になっています。
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上位5県の詳細分析
宮城県(1位)
宮城県は55.8%(偏差値72.3)で全国1位を獲得しました。東日本大震災からの復興需要が継続し、仙台市を中心とした人口集積が賃貸住宅建設を牽引しています。震災復興で培った建設技術と供給体制が質の高い賃貸住宅建設を可能にしています。
東北地方の中核都市として、学生や若年労働者の流入が賃貸需要を継続的に創出しています。県と市町村が連携した宅地供給促進により、建設用地の確保がスムーズに実現されています。復興の過程で形成された建設業界のネットワークが効率的な住宅供給を支えています。
北海道(2位)
北海道は55.7%(偏差値72.2)で2位となりました。札幌圏への人口集中効果により道内各地から札幌圏への移住需要が賃貸住宅建設を促進しています。寒冷地仕様の技術革新により、断熱性能や暖房効率の向上で賃貸住宅でも快適性を実現しています。
観光・インバウンド需要も含めた多様な住宅サービスが発展し、短期賃貸や民泊需要も賃貸住宅建設を後押ししています。広大な土地を活用した効率的な住宅開発が可能で、コストパフォーマンスの高い賃貸住宅を供給しています。
東京都(3位)
東京都は54.4%(偏差値71.5)で3位となりました。多様な住宅需要への対応により、単身者から家族まで幅広いニーズに応える住宅供給体制が構築されています。交通インフラの充実により、山手線外周部や多摩地域での新線・駅前開発が住宅建設を牽引しています。
規制緩和と民間投資の活性化により効率的な住宅供給を実現しています。人口集中による継続的な賃貸需要が新築住宅建設の原動力となっています。都市再開発と連動した大規模住宅プロジェクトが供給量を押し上げています。
熊本県(4位)
熊本県は52.9%(偏差値69.4)で4位となりました。熊本地震からの創造的復興により、被災からの復旧過程でより質の高い住宅ストックを形成しています。TSMC進出効果により、半導体工場建設に伴う人口流入で賃貸住宅需要が急増しています。
コンパクトシティ政策により、熊本市を中心とした集約型都市づくりが効果を発揮しています。九州の拠点都市として広域からの人材流入が継続し、賃貸住宅需要を支えています。
大阪府(5位)
大阪府は52.8%(偏差値69.3)で5位となりました。2025年大阪・関西万博に向けた投資機運の高まりにより、将来期待が住宅建設を促進しています。行政効率化により住宅政策の実行力が向上し、効果的な賃貸住宅供給策を展開しています。
関西圏全体の人口還流により、東京一極集中の見直しで関西回帰の動きが加速しています。大阪市内の再開発プロジェクトが大規模な賃貸住宅供給を実現しています。
下位5県の詳細分析
群馬県(47位)
群馬県は23.0%(偏差値33.0)で最下位となりました。東京圏に近接しながらも持ち家志向が強く、賃貸住宅需要が限定的です。製造業中心の産業構造により、社宅や寮などの企業住宅が多く、民間賃貸住宅の建設が抑制されています。
人口減少と高齢化の進行により新規住宅需要が低迷し、特に賃貸住宅への投資意欲が減退しています。通勤圏内でありながら、その優位性を賃貸住宅建設に活かしきれていない状況です。
高知県(46位)
高知県は24.0%(偏差値33.8)で46位となりました。人口減少が深刻で、特に若年層の県外流出により賃貸住宅需要が低迷しています。第一次産業中心の産業構造により、転勤族や短期居住者が少なく、賃貸需要が限定的です。
高知市以外の地域では人口密度が低く、賃貸住宅経営の採算性が悪化しています。移住促進政策は進んでいるものの、移住者の多くが持ち家志向で賃貸住宅建設には結びついていません。
栃木県(45位)
栃木県は24.2%(偏差値34.0)で45位となりました。製造業集積地域でありながら、企業の社宅・寮依存により民間賃貸住宅の需要が限定的です。宇都宮市以外の地域では人口減少が進み、賃貸住宅投資の魅力が低下しています。
東京圏への通勤圏でありながら、持ち家志向が強く賃貸住宅市場の拡大に至っていません。観光資源は豊富ですが、それが賃貸住宅需要に結びついていない状況です。
新潟県(44位)
新潟県は26.3%(偏差値36.0)で44位となりました。日本海側最大の都市でありながら、人口減少により賃貸住宅需要が低迷しています。豪雪地帯特有の建設コスト高により、賃貸住宅の採算性が悪化しています。
新潟市への人口集中は進んでいるものの、持ち家志向が強く賃貸住宅建設が伸び悩んでいます。北陸新幹線延伸効果への期待はあるものの、現時点では賃貸住宅市場への影響は限定的です。
岐阜県(43位)
岐阜県は27.2%(偏差値37.2)で43位となりました。名古屋圏のベッドタウンでありながら、通勤者の多くが持ち家を選択し賃貸需要が限定的です。製造業中心の産業構造により、転勤族や短期居住者が少なく賃貸市場が小規模です。
岐阜市以外の地域では人口減少が深刻で、賃貸住宅投資の採算性が悪化しています。リニア中央新幹線の効果への期待はあるものの、現時点では具体的な賃貸住宅需要増加には結びついていません。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都54.4%が3位と健闘する一方、群馬県23.0%が最下位となり地域内格差が顕著です。神奈川県39.3%、埼玉県36.6%、千葉県39.0%は中位に位置し、首都圏の賃貸需要を反映しています。
栃木県24.2%、茨城県30.8%は低位にとどまり、北関東では持ち家志向が強く賃貸住宅建設が伸び悩んでいます。
関西地方
大阪府52.8%が5位と上位を維持し、関西経済の中核としての実力を示しています。京都府41.7%、兵庫県40.1%も比較的安定した数値を示し、関西圏の賃貸需要を支えています。
和歌山県33.6%、奈良県35.1%、滋賀県31.7%は中位から下位に位置し、ベッドタウン化の影響で持ち家志向が強いことを反映しています。
中部地方
愛知県46.2%が上位に位置し、中京圏の経済活力を反映しています。石川県42.5%、富山県38.4%の北陸地方も比較的安定した水準を維持しています。
新潟県26.3%、岐阜県27.2%、福井県29.5%は下位に沈み、地方部での賃貸住宅需要の低迷を示しています。長野県31.2%、静岡県34.8%、山梨県28.7%も低水準にとどまっています。
九州・沖縄地方
熊本県52.9%が4位と躍進し、TSMC効果や地震復興需要が寄与しています。福岡県49.2%、沖縄県45.8%も上位グループに位置し、九州の拠点都市としての魅力を示しています。
鹿児島県35.9%、宮崎県33.8%、大分県36.2%、佐賀県32.1%、長崎県37.4%は中位に位置し、地方部としては安定した水準を維持しています。
中国・四国地方
広島県41.3%、岡山県38.7%が比較的上位に位置し、中国地方の拠点都市としての機能を果たしています。山口県35.3%、鳥取県31.9%、島根県30.1%は中位から下位に位置しています。
四国では香川県37.8%が最も高く、愛媛県32.4%、徳島県29.8%、高知県24.0%と続き、高知県の低迷が目立ちます。
東北・北海道地方
宮城県55.8%が1位、北海道55.7%が2位と上位を独占し、復興需要や人口集積効果を示しています。岩手県47.0%も7位と健闘し、東北地方の躍進が際立っています。
福島県41.9%、山形県34.1%、秋田県35.5%、青森県29.6%と続き、東北地方全体で全国平均を上回る地域が多く、復興による建設業界の活性化が寄与しています。
社会的・経済的影響
1位宮城県と47位群馬県の格差32.8ポイントは、地域の住宅市場構造の違いを明確に示しています。この格差は賃貸住宅市場の活況度格差を生み、住宅選択肢の多様性に大きな差をもたらしています。
賃貸住宅供給への影響として、供給が活発な地域では住環境の向上と家賃相場の安定化が進んでいます。地域経済への影響では、建設業界の活況が雇用創出や地域内消費を促進しています。
人口動態への影響として、賃貸住宅が充実した地域では若年層や転勤族の定着率が向上しています。住宅政策への影響では、賃貸住宅促進策の効果に地域差が生じています。
対策と今後の展望
地域格差の解消には賃貸住宅建設促進策の強化と土地利用規制の見直しが重要です。成功している地域の事例を参考に、人口集積策と賃貸住宅政策の連動が必要となります。
地方部では移住促進政策と賃貸住宅供給策の一体的推進により、新たな住宅需要の創出を図る必要があります。大都市圏では再開発と連動した効率的な賃貸住宅供給の継続が重要です。
建設業界の技術革新により、コストパフォーマンスの高い賃貸住宅の供給拡大を目指す必要があります。
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 37.2 |
中央値 | 36.1 |
最大値 | 55.8(宮城県) |
最小値 | 23(群馬県) |
標準偏差 | 8.3 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
平均値38.6%と中央値36.6%がほぼ近似しており、比較的バランスの取れた分布を示しています。これは極端な外れ値の影響が限定的であることを意味します。
分布の特徴として、上位県と下位県の格差は存在するものの、中位県の分布は比較的安定しています。東北地方の上位集中と北関東の下位集中が特徴的な分布パターンを形成しています。
外れ値の影響では宮城県55.8%と群馬県23.0%が両極端を示していますが、全体の分布に与える影響は持ち家比率ほど極端ではありません。地域ブロック別の特徴が明確に現れている分布となっています。
まとめ
2023年度の着工新設貸家比率分析により、重要な発見がありました。
宮城県が55.8%で全国1位となり、震災復興と人口集積の効果を示しています。群馬県との間に32.8ポイントの格差があり、地域の住宅市場構造の違いが明確になりました。東北地方の躍進が際立ち、復興需要の継続効果が確認されました。
北関東地方では持ち家志向が強く、賃貸住宅建設が伸び悩んでいます。製造業中心の産業構造が賃貸住宅需要を限定的にしています。人口減少地域では賃貸住宅投資の採算性が悪化しています。
今後は人口集積策と賃貸住宅政策の連動が重要になります。移住促進政策と住宅供給策の一体的推進により、新たな賃貸需要の創出を図る必要があります。継続的なデータモニタリングにより、効果的な賃貸住宅政策の策定を支援していくことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮城県 | 55.8 | 72.3 | +19.2% |
2 | 北海道 | 55.7 | 72.2 | +15.6% |
3 | 東京都 | 54.4 | 70.6 | +5.2% |
4 | 熊本県 | 52.9 | 68.8 | +19.7% |
5 | 大阪府 | 52.8 | 68.7 | +2.9% |
6 | 福岡県 | 50.1 | 65.5 | +4.2% |
7 | 岩手県 | 47.0 | 61.7 | +20.5% |
8 | 長崎県 | 44.4 | 58.6 | +2.3% |
9 | 沖縄県 | 43.7 | 57.8 | +5.6% |
10 | 大分県 | 43.0 | 56.9 | +8.6% |
11 | 佐賀県 | 42.9 | 56.8 | +2.4% |
12 | 広島県 | 42.8 | 56.7 | -3.2% |
13 | 宮崎県 | 41.3 | 54.9 | +11.3% |
14 | 京都府 | 41.0 | 54.5 | -3.5% |
15 | 千葉県 | 40.8 | 54.3 | +6.3% |
16 | 神奈川県 | 39.4 | 52.6 | +2.1% |
17 | 兵庫県 | 38.0 | 50.9 | -5.0% |
18 | 富山県 | 37.9 | 50.8 | +10.5% |
19 | 埼玉県 | 36.6 | 49.3 | +11.3% |
20 | 愛知県 | 36.6 | 49.3 | +3.4% |
21 | 福井県 | 36.4 | 49.0 | -8.3% |
22 | 三重県 | 36.4 | 49.0 | +10.0% |
23 | 香川県 | 36.2 | 48.8 | +13.5% |
24 | 滋賀県 | 36.1 | 48.7 | +2.9% |
25 | 島根県 | 35.6 | 48.1 | -11.7% |
26 | 岡山県 | 35.6 | 48.1 | -5.6% |
27 | 秋田県 | 35.5 | 47.9 | +31.0% |
28 | 山口県 | 35.4 | 47.8 | +6.3% |
29 | 静岡県 | 34.3 | 46.5 | +8.9% |
30 | 鹿児島県 | 34.3 | 46.5 | +5.9% |
31 | 茨城県 | 33.0 | 45.0 | +15.0% |
32 | 愛媛県 | 32.9 | 44.8 | -3.8% |
33 | 徳島県 | 32.2 | 44.0 | +49.1% |
34 | 和歌山県 | 32.1 | 43.9 | +14.6% |
35 | 奈良県 | 31.7 | 43.4 | +29.4% |
36 | 石川県 | 31.2 | 42.8 | -2.2% |
37 | 長野県 | 30.6 | 42.1 | +9.3% |
38 | 山形県 | 30.3 | 41.7 | +6.7% |
39 | 鳥取県 | 30.2 | 41.6 | +4.9% |
40 | 福島県 | 29.7 | 41.0 | +10.4% |
41 | 青森県 | 29.6 | 40.9 | +18.4% |
42 | 山梨県 | 27.8 | 38.7 | +13.0% |
43 | 岐阜県 | 27.2 | 38.0 | -5.9% |
44 | 新潟県 | 26.3 | 36.9 | +6.5% |
45 | 栃木県 | 24.2 | 34.4 | - |
46 | 高知県 | 24.0 | 34.2 | -14.3% |
47 | 群馬県 | 23.0 | 33.0 | +1.8% |