サマリー
医療施設に従事する看護師・准看護師数で、全国に大きな地域格差が存在することが判明。最上位の高知県が1631.5人(偏差値70.9)に対し、最下位の埼玉県は704.7人(偏差値32.3)と、2.3倍の格差が発生。特に九州・四国地方が上位を独占する一方、首都圏が下位に集中する特徴的な分布となっている。この指標は地域の医療体制充実度を示す重要な指標である。
概要
医療施設に従事する看護師・准看護師数(人口10万人当たり)は、地域の医療サービス提供体制を測る重要な指標である。
この指標が重要な理由は以下の通り:
- 医療アクセス:看護師数が多い地域ほど充実した医療サービスを受けられる
- 高齢化対応:高齢化が進む地域では看護師の確保が地域医療維持の鍵となる
- 医療格差:都道府県間の格差は国民の健康格差に直結する社会問題
全国平均は1,111.8人で、最大格差は2.3倍に達している。西日本、特に九州・四国地方が上位を占める一方、首都圏が軒並み下位という明確な地域差が存在する。
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上位5県の詳細分析
高知県(1位)
高知県は1631.5人(偏差値70.9)で堂々の全国1位。全国平均を大幅に上回る充実した看護師配置を実現している。
- 人口減少地域における医療拠点としての役割が大きい
- 高知大学医学部や高知県立大学看護学部など人材育成基盤が充実
- 県全体の医療提供体制が人口規模に対して手厚い
鹿児島県(2位)
鹿児島県は1543.6人(偏差値67.2)で全国2位。離島医療も含めた広域医療体制の充実が特徴的。
- 鹿児島大学医学部を中心とした医療人材育成
- 離島医療対応のため看護師配置が手厚い
- 高齢化率の高さに対応した医療体制整備
佐賀県(3位)
佐賀県は1535.3人(偏差値66.9)で全国3位。九州地方の医療充実の一翼を担っている。
- 佐賀大学医学部による医療人材供給
- 福岡都市圏との連携による医療機能分担
- コンパクトな県域での効率的な医療提供体制
長崎県(4位)
長崎県は1523.5人(偏差値66.4)で全国4位。離島医療の先進県として知られる。
- 長崎大学医学部を核とした医療人材育成
- 離島・僻地医療への長年の取り組み
- 高齢化対応の先進的な医療体制構築
熊本県(5位)
熊本県は1510.7人(偏差値65.9)で全国5位。九州地方の医療拠点としての機能が大きい。
- 熊本大学医学部による高度医療人材供給
- 九州中央部の医療拠点としての役割
- 熊本地震復興過程での医療体制再構築
下位5県の詳細分析
埼玉県(47位)
埼玉県は704.7人(偏差値32.3)で全国最下位。首都圏でありながら深刻な医療人材不足に直面している。
- 東京都への医療依存が高く、県内医療体制が相対的に薄い
- 急激な人口増加に医療インフラ整備が追いついていない
- 医師・看護師の東京流出が慢性的な課題
神奈川県(46位)
神奈川県は711.8人(偏差値32.6)で全国46位。人口規模に対する看護師数の不足が顕著。
- 東京都への依存度が高い医療構造
- 横浜市・川崎市の都市部でも看護師不足
- 人口集中に対する医療インフラ整備の遅れ
千葉県(45位)
千葉県は745.3人(偏差値34.0)で全国45位。ベッドタウン化による医療需要増に対応困難。
- 東京通勤圏としての発達で医療機能が相対的に薄い
- 高齢化の急激な進行に医療体制が追いついていない
- 県内での医療人材育成・確保が課題
東京都(44位)
東京都は792.2人(偏差値35.9)で全国44位。医療の中心でありながら人口当たり看護師数は低位。
- 高度医療機関集積にも関わらず人口当たりでは看護師不足
- 全国からの患者流入で実質的な医療需要がさらに増大
- 医療従事者の絶対数は多いが人口比では不足
茨城県(43位)
茨城県は810.2人(偏差値36.7)で全国43位。医師不足と合わせて医療人材確保が深刻な課題。
- 県内医療機関の慢性的な看護師不足
- 東京圏への人材流出が常態化
- 筑波大学があるものの医療人材の県内定着率が低い
地域別の特徴分析
九州・沖縄地方
九州地方が上位を独占する特徴的な分布を示している。熊本県(5位)、長崎県(4位)、佐賀県(3位)、鹿児島県(2位)がトップ10入り。
- 各県に国立大学医学部が設置され、医療人材育成基盤が充実
- 離島・僻地医療への長年の取り組みが看護師確保につながる
- 高齢化先進地域として医療体制整備が進んでいる
四国地方
高知県が全国1位と圧倒的な存在感を示す。徳島県も上位に位置し、四国全体で看護師確保が進んでいる。
- 人口規模に対する医療機関の充実度が高い
- 地域医療への行政・大学・病院の連携が強固
- 県外流出防止策が効果を上げている
首都圏
埼玉県(47位)、神奈川県(46位)、千葉県(45位)、東京都(44位)と軒並み下位に集中。人口集中に医療インフラ整備が追いついていない。
- 急激な人口増加と高齢化に対応困難
- 東京都への医療依存構造が定着
- 医療費・人件費の高さが看護師確保を困難にしている
近畿地方
大阪府、兵庫県など人口集中地域は中下位に位置。都市部特有の医療人材確保困難が表面化している。
- 医療需要の高さに対する供給不足
- 私立医療機関の比重が高く、公的医療体制が相対的に薄い
社会的・経済的影響
高知県と埼玉県の格差は926.8人と、看護師数で2.3倍の開きが存在する。この地域間格差は以下の深刻な影響をもたらしている。
医療アクセス格差の拡大:
- 下位県では救急医療や専門医療への アクセスが制限される
- 在宅医療・訪問看護の充実度に大きな差が生じる
社会経済への影響:
- 看護師不足地域では医療関連産業の発達が阻害される
- 高齢者の生活の質に直接的な影響が及ぶ
- 医療費増大や社会保障制度への負荷拡大
人口移動への影響:
- 医療体制の充実度が移住・定住選択の重要要因となる
- 地域間格差の固定化が進行するリスク
対策と今後の展望
看護師確保対策として以下の取り組みが展開されている。
人材育成強化:
- 看護学部・学科の新設・定員増による養成数拡大
- 奨学金制度や地域定着支援の充実
働き方改革:
- 労働環境改善による離職防止と復職促進
- 夜勤負担軽減や子育て支援の充実
広域連携の推進:
- 都道府県を越えた看護師派遣システムの構築
- 遠隔医療やICT活用による効率的な医療提供
成功事例として、高知県の「看護師確保対策事業」や熊本県の「地域医療支援センター」による取り組みが注目される。今後はデジタル技術活用と働き方改革を両輪とした対策が重要となる。
統計データの詳細分析では、平均値1,111.8人に対し中央値1,076.0人となっており、上位県の影響で平均値がやや高くなっている。標準偏差247.1人は全体的なばらつきの大きさを示している。
分布の特徴として、第3四分位1,271.5人以上に九州・四国地方が集中する一方、第1四分位964.3人以下に首都圏が多く含まれる二極化傾向が顕著。最大値1,631.5人(高知県)と最小値704.7人(埼玉県)の格差は全国的な医療体制格差を象徴している。
この分布パターンは、地理的要因、医療政策の違い、人口動態が複合的に影響した結果と考えられ、全国レベルでの調整機能の必要性を示している。
まとめ
2022年度の医療施設看護師数調査から以下の重要な課題が明らかになった:
- 九州・四国地方と首都圏で2.3倍の格差が存在する深刻な地域間格差
- 高知県1,631.5人対埼玉県704.7人という極端な分布状況
- 人口集中地域ほど看護師不足が深刻化する逆転現象
- 医療アクセス格差が国民の健康格差に直結するリスク
- 働き方改革と人材育成強化による改善の可能性
- デジタル技術活用による効率化の必要性
今後は**全