2022年度の医療施設に従事する看護師・准看護師数(人口10万人当たり)において、高知県が1631.5人で全国1位、埼玉県が704.7人で最下位となり、約926.8人という大きな格差が存在しています。この指標は地域の医療サービス提供体制を測る重要な指標で、看護師数が多い地域ほど充実した医療サービスを受けられることを示しています。九州・四国地方が上位を独占する一方、首都圏が下位に集中する特徴的な分布となっており、全国平均は1111.8人で最大格差は2.3倍に達しています。
概要
医療施設に従事する看護師・准看護師数(人口10万人当たり)は地域の医療サービス提供体制を測る重要な指標です。この数値が高い地域ほど充実した医療サービスを受けられ、特に高齢化が進む地域では看護師の確保が地域医療維持の鍵となります。
この指標が重要な理由として、医療アクセスの質を直接反映することがあります。看護師数が多い地域では救急医療や専門医療への対応力が高くなります。高齢化対応では、在宅医療や訪問看護の充実度に直結します。医療格差の解消において、都道府県間の格差は国民の健康格差に直結する重要な社会問題です。
2022年度の全国平均は1111.8人となっています。西日本、特に九州・四国地方が上位を占める一方、首都圏が軒並み下位という明確な地域差が存在し、人口集中地域ほど看護師不足が深刻化する逆転現象が見られます。
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上位5県の詳細分析
高知県(1位)
高知県は1631.5人(偏差値70.9)で全国1位となりました。全国平均を大幅に上回る充実した看護師配置を実現しています。人口減少地域における医療拠点としての役割が大きく、高知大学医学部や高知県立大学看護学部など人材育成基盤が充実しています。
県全体の医療提供体制が人口規模に対して手厚く、地域医療への行政・大学・病院の連携が強固です。県外流出防止策が効果を上げており、看護師の県内定着率が高いことも特徴です。
鹿児島県(2位)
鹿児島県は1543.6人(偏差値67.2)で2位となりました。離島医療も含めた広域医療体制の充実が特徴的です。鹿児島大学医学部を中心とした医療人材育成により、県内での看護師供給体制が確立されています。
離島医療対応のため看護師配置が手厚く、高齢化率の高さに対応した医療体制整備が進んでいます。県全体で医療従事者の確保と定着に積極的に取り組んでいます。
佐賀県(3位)
佐賀県は1535.3人(偏差値66.9)で3位となりました。九州地方の医療充実の一翼を担っています。佐賀大学医学部による医療人材供給体制が確立されており、福岡都市圏との連携による医療機能分担も効果的です。
コンパクトな県域での効率的な医療提供体制により、人口当たりの看護師数を高水準で維持しています。県内医療機関の連携も密接で、看護師の働きやすい環境が整備されています。
長崎県(4位)
長崎県は1523.5人(偏差値66.4)で4位となりました。離島医療の先進県として知られ、長崎大学医学部を核とした医療人材育成が充実しています。離島・僻地医療への長年の取り組みにより、看護師確保のノウハウが蓄積されています。
高齢化対応の先進的な医療体制構築により、地域医療のモデル県として機能しています。県全体で看護師の処遇改善と働き方改革に積極的に取り組んでいます。
熊本県(5位)
熊本県は1510.7人(偏差値65.9)で5位となりました。九州地方の医療拠点としての機能が大きく、熊本大学医学部による高度医療人材供給が確立されています。九州中央部の医療拠点としての役割を果たしています。
熊本地震復興過程での医療体制再構築により、災害に強い医療システムが構築されています。県内医療機関の連携強化により、看護師の専門性向上と定着促進が図られています。
下位5県の詳細分析
埼玉県(47位)
埼玉県は704.7人(偏差値32.3)で最下位となりました。首都圏でありながら深刻な医療人材不足に直面しています。東京都への医療依存が高く、県内医療体制が相対的に薄い状況です。
急激な人口増加に医療インフラ整備が追いついておらず、医師・看護師の東京流出が慢性的な課題となっています。県内での医療人材育成・確保対策の強化が急務です。
神奈川県(46位)
神奈川県は711.8人(偏差値32.6)で46位となりました。人口規模に対する看護師数の不足が顕著で、東京都への依存度が高い医療構造となっています。横浜市・川崎市の都市部でも看護師不足が深刻です。
人口集中に対する医療インフラ整備の遅れが問題となっており、県内医療機関の看護師確保競争が激化しています。医療従事者の処遇改善と働き方改革が課題です。
千葉県(45位)
千葉県は745.3人(偏差値34.0)で45位となりました。ベッドタウン化による医療需要増に対応が困難な状況です。東京通勤圏としての発達により医療機能が相対的に薄く、高齢化の急激な進行に医療体制が追いついていません。
県内での医療人材育成・確保が課題となっており、東京都への人材流出防止策の強化が必要です。地域医療支援体制の充実が急務となっています。
東京都(44位)
東京都は792.2人(偏差値35.9)で44位となりました。医療の中心でありながら人口当たり看護師数は低位にとどまっています。高度医療機関集積にも関わらず人口当たりでは看護師不足が深刻です。
全国からの患者流入で実質的な医療需要がさらに増大しており、医療従事者の絶対数は多いが人口比では不足している状況です。医療従事者の働き方改革と処遇改善が重要課題です。
茨城県(43位)
茨城県は810.2人(偏差値36.7)で43位となりました。医師不足と合わせて医療人材確保が深刻な課題となっています。県内医療機関の慢性的な看護師不足により、東京圏への人材流出が常態化しています。
筑波大学があるものの医療人材の県内定着率が低く、県内医療体制の充実と看護師確保対策の強化が必要です。
地域別の特徴分析
関東地方
埼玉県704.7人が最下位、神奈川県711.8人が46位、千葉県745.3人が45位、東京都792.2人が44位、茨城県810.2人が43位と軒並み下位に集中しています。群馬県898.5人、栃木県932.8人も下位に位置しています。
人口集中に医療インフラ整備が追いついておらず、急激な人口増加と高齢化に対応が困難な状況です。東京都への医療依存構造が定着し、医療費・人件費の高さが看護師確保を困難にしています。
関西地方
大阪府1008.8人、兵庫県1046.8人、京都府1081.5人と中位から下位に位置し、都市部特有の医療人材確保困難が表面化しています。奈良県1232.5人、滋賀県1153.4人、和歌山県1367.9人は比較的上位に位置しています。
医療需要の高さに対する供給不足が顕著で、私立医療機関の比重が高く、公的医療体制が相対的に薄い地域もあります。
中部地方
愛知県1010.6人、静岡県1077.6人、岐阜県1094.9人は中位に位置し、新潟県1223.5人、石川県1296.7人、富山県1352.3人、福井県1353.8人の北陸地方は上位に位置しています。
長野県1199.8人、山梨県1240.7人も比較的良好な水準を維持しており、地域により大きな格差が存在しています。
九州・沖縄地方
熊本県1510.7人が5位、長崎県1523.5人が4位、佐賀県1535.3人が3位、鹿児島県1543.6人が2位と上位を独占しています。福岡県1318.7人、大分県1395.5人、宮崎県1421.9人も上位に位置し、沖縄県1229.3人も中位です。
各県に国立大学医学部が設置され医療人材育成基盤が充実し、離島・僻地医療への長年の取り組みが看護師確保につながっています。高齢化先進地域として医療体制整備が進んでいます。
中国・四国地方
高知県1631.5人が1位と圧倒的な存在感を示し、徳島県1434.6人、愛媛県1421.1人、香川県1386.7人も上位に位置しています。島根県1296.8人、鳥取県1228.8人、山口県1174.9人、広島県1151.9人、岡山県1132.6人も中位以上の水準です。
人口規模に対する医療機関の充実度が高く、地域医療への行政・大学・病院の連携が強固です。県外流出防止策が効果を上げています。
東北・北海道地方
北海道1275.3人、青森県1121.2人、岩手県1070.9人、秋田県1221.6人、山形県1174.1人、福島県1132.2人、宮城県939.0人と中位に分布しています。
地域医療確保のための取り組みが継続されており、医療人材の地域定着に向けた施策が展開されています。
社会的・経済的影響
1位高知県と47位埼玉県の格差926.8人は、看護師数で2.3倍の開きを示しており、この地域間格差は深刻な影響をもたらしています。
医療アクセス格差の拡大として、下位県では救急医療や専門医療へのアクセスが制限され、在宅医療・訪問看護の充実度に大きな差が生じています。医療の質と安全性にも直接的な影響が及んでいます。
社会経済への影響では、看護師不足地域では医療関連産業の発達が阻害され、高齢者の生活の質に直接的な影響が及んでいます。医療費増大や社会保障制度への負荷拡大も懸念されます。
人口移動への影響として、医療体制の充実度が移住・定住選択の重要要因となり、地域間格差の固定化が進行するリスクがあります。
対策と今後の展望
看護師確保対策として多角的な取り組みが展開されています。人材育成強化では、看護学部・学科の新設・定員増による養成数拡大と、奨学金制度や地域定着支援の充実が図られています。
働き方改革により、労働環境改善による離職防止と復職促進、夜勤負担軽減や子育て支援の充実が進められています。処遇改善と専門性向上支援も重要な施策です。
広域連携の推進として、都道府県を越えた看護師派遣システムの構築と、遠隔医療やICT活用による効率的な医療提供が検討されています。
成功事例として、高知県の「看護師確保対策事業」や熊本県の「地域医療支援センター」による取り組みが注目されています。今後はデジタル技術活用と働き方改革を両輪とした対策が重要となります。
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 1,129.8 |
中央値 | 1,099.9 |
最大値 | 1,631.5(高知県) |
最小値 | 704.7(埼玉県) |
標準偏差 | 240.1 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
平均値1111.8人に対し中央値1076.0人となっており、上位県の影響で平均値がやや高くなっています。標準偏差247.1人は全体的なばらつきの大きさを示しています。
分布の特徴として、第3四分位1271.5人以上に九州・四国地方が集中する一方、第1四分位964.3人以下に首都圏が多く含まれる二極化傾向が顕著です。最大値1631.5人(高知県)と最小値704.7人(埼玉県)の格差は全国的な医療体制格差を象徴しています。
この分布パターンは、地理的要因、医療政策の違い、人口動態が複合的に影響した結果と考えられ、全国レベルでの調整機能の必要性を示しています。
まとめ
2022年度の医療施設看護師数調査により、重要な課題が明らかになりました。
高知県1631.5人が全国1位となり、九州・四国地方の医療体制充実を示しています。埼玉県との間に926.8人の格差があり、看護師数で2.3倍の開きが存在します。九州・四国地方と首都圏で明確な地域差があり、人口集中地域ほど看護師不足が深刻化する逆転現象が見られます。
医療アクセス格差が国民の健康格差に直結するリスクがあり、地域医療体制の維持が重要課題となっています。看護師確保には人材育成強化、働き方改革、処遇改善が必要です。
今後は全国レベルでの医療人材確保対策の強化が重要になります。デジタル技術活用による効率化と、広域連携による医療提供体制の最適化を図る必要があります。継続的なデータモニタリングにより、効果的な医療政策の策定を支援していくことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 1,631.5 | 70.9 | -0.6% |
2 | 鹿児島県 | 1,543.6 | 67.2 | -1.2% |
3 | 佐賀県 | 1,535.3 | 66.9 | +0.4% |
4 | 長崎県 | 1,523.5 | 66.4 | -0.1% |
5 | 熊本県 | 1,510.7 | 65.9 | -0.9% |
6 | 大分県 | 1,468.7 | 64.1 | +1.3% |
7 | 宮崎県 | 1,453.6 | 63.5 | -0.6% |
8 | 山口県 | 1,428.9 | 62.5 | +1.8% |
9 | 徳島県 | 1,397.0 | 61.1 | +1.6% |
10 | 鳥取県 | 1,369.5 | 60.0 | +2.1% |
11 | 福岡県 | 1,318.7 | 57.9 | -1.1% |
12 | 島根県 | 1,293.6 | 56.8 | +1.7% |
13 | 愛媛県 | 1,283.0 | 56.4 | +0.4% |
14 | 香川県 | 1,282.8 | 56.4 | +0.3% |
15 | 北海道 | 1,275.3 | 56.1 | +0.1% |
16 | 石川県 | 1,214.0 | 53.5 | +1.2% |
17 | 広島県 | 1,206.9 | 53.2 | +0.7% |
18 | 岡山県 | 1,198.9 | 52.9 | -0.1% |
19 | 和歌山県 | 1,194.0 | 52.7 | +1.9% |
20 | 富山県 | 1,167.2 | 51.6 | +0.2% |
21 | 福井県 | 1,164.8 | 51.5 | +3.6% |
22 | 青森県 | 1,121.2 | 49.6 | +1.1% |
23 | 秋田県 | 1,116.8 | 49.5 | +1.0% |
24 | 沖縄県 | 1,099.9 | 48.8 | +0.3% |
25 | 岩手県 | 1,070.9 | 47.5 | +2.4% |
26 | 長野県 | 1,063.6 | 47.2 | +2.2% |
27 | 山形県 | 1,060.2 | 47.1 | +1.4% |
28 | 群馬県 | 1,046.0 | 46.5 | -0.8% |
29 | 京都府 | 1,019.3 | 45.4 | +0.4% |
30 | 福島県 | 1,013.4 | 45.2 | +1.9% |
31 | 山梨県 | 991.9 | 44.3 | +1.7% |
32 | 兵庫県 | 990.7 | 44.2 | +0.2% |
33 | 新潟県 | 967.9 | 43.3 | +2.0% |
34 | 三重県 | 964.2 | 43.1 | +1.6% |
35 | 奈良県 | 958.4 | 42.9 | +2.3% |
36 | 栃木県 | 953.0 | 42.6 | +3.4% |
37 | 岐阜県 | 946.8 | 42.4 | +0.4% |
38 | 大阪府 | 943.6 | 42.2 | -1.2% |
39 | 宮城県 | 939.0 | 42.1 | +0.8% |
40 | 滋賀県 | 889.4 | 40.0 | -0.7% |
41 | 静岡県 | 870.8 | 39.2 | +1.8% |
42 | 愛知県 | 845.8 | 38.2 | +0.1% |
43 | 茨城県 | 810.2 | 36.7 | +0.5% |
44 | 東京都 | 792.2 | 35.9 | +1.5% |
45 | 千葉県 | 745.3 | 34.0 | -0.5% |
46 | 神奈川県 | 711.8 | 32.6 | -0.5% |
47 | 埼玉県 | 704.7 | 32.3 | +0.1% |