2022年度の老人ホーム従事者数(65歳以上人口10万人当たり)において、宮崎県が2725.3人で全国1位、滋賀県が1168.8人で最下位となり、約1556.5人という大きな格差が存在しています。この指標は高齢化社会における介護体制の充実度を表す重要な指標で、介護サービスの供給体制、高齢者の生活の質、地域の持続可能性を測る上で極めて重要な意味を持ちます。最大格差は2.3倍に達し、九州・東北地方と関西地方で対照的な結果となっており、全国平均は1791.6人となっています。
概要
老人ホーム従事者数(65歳以上人口10万人当たり)は高齢者向け介護施設で働く従事者の配置状況を示す重要な指標です。この数値が高い地域ほど高齢者が十分な介護サービスを受けやすい環境が整っており、地域の介護基盤の人的資源充実度を表しています。
この指標が重要な理由として、介護サービスの供給体制を客観的に評価できることがあります。地域の介護キャパシティを示し、高齢者の生活の質に直接影響します。十分な介護体制が生活の安心感を提供し、地域の持続可能性にも寄与します。介護従事者の確保は地域経済の安定につながります。
2022年度の全国平均は1791.6人となっています。九州・東北地方が上位を占める傾向があり、一方で関西・中部地方では低い傾向が見られます。都道府県間で大きな格差が存在し、地域の介護政策や労働市場の違いが明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
宮崎県(1位)
宮崎県は2725.3人(偏差値80.1)で圧倒的な1位を獲得しました。全国平均を大きく上回る充実した介護体制を実現しており、県独自の介護人材確保策の推進が功を奏しています。介護施設の積極的な整備・拡充により、十分な従事者配置が可能となっています。
地域密着型サービスの充実により、きめ細かな介護サービス提供を実現しています。県全体で介護人材の確保と定着に向けた総合的な取り組みが展開されており、処遇改善や働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいます。
佐賀県(2位)
佐賀県は2294.8人(偏差値67.2)で2位にランクインしました。九州地方の中でも特に手厚い介護体制を構築しており、介護職員の処遇改善支援に力を入れています。県内介護事業者への積極的な支援により、従事者の確保と定着を促進しています。
人材育成プログラムの充実により、質の高い介護従事者の養成を図っています。小規模な県域を活かした効率的な人材配置により、県内全域での介護サービス提供体制を確保しています。
群馬県(3位)
群馬県は2274.2人(偏差値66.6)で3位を獲得しました。関東地方では最も高い水準を維持しており、首都圏近郊の立地を活かした人材確保が成功しています。介護施設の計画的な配置により、効率的な従事者配置を実現しています。
県をあげた介護人材育成支援により、質の高い介護従事者の確保を図っています。首都圏との競争に負けない処遇改善や働きやすい環境づくりを推進しています。
山形県(4位)
山形県は2201.7人(偏差値64.4)で4位となりました。東北地方の介護体制充実の先進県として、地域包括ケアシステムの先進的導入を進めています。介護予防と重度化防止の取り組みにより、効率的な介護サービス提供を実現しています。
県内介護事業所への手厚い支援により、従事者の確保と定着を促進しています。地域の医療機関との連携により、医療・介護の一体的なサービス提供体制を構築しています。
青森県(5位)
青森県は2192.8人(偏差値64.2)で5位となりました。高齢化率の高い地域での積極的な対応が評価されており、介護人材の県外からの確保策を展開しています。介護ロボット導入支援により、効率的な介護サービス提供を目指しています。
地域密着型介護施設の整備により、住み慣れた地域での介護サービス提供を重視しています。県全体で介護人材の確保と質の向上に向けた取り組みを推進しています。
下位5県の詳細分析
滋賀県(47位)
滋賀県は1168.8人(偏差値33.5)で最下位となりました。京阪神への人材流出が大きな要因と考えられ、近隣の大都市圏との競争により介護従事者の確保が困難な状況です。県独自の介護人材確保策の展開が急務となっています。
処遇改善支援の拡充により、県内での介護従事者の定着を図る必要があります。近隣府県との連携体制構築により、効率的な人材活用を模索しています。
山梨県(46位)
山梨県は1188.1人(偏差値34.1)で46位となりました。人口規模に対する従事者確保が課題となっており、近隣県との連携強化が重要です。介護人材の確保・育成支援により、県内での従事者増加を目指しています。
働きやすい職場環境の整備により、介護従事者の定着率向上を図っています。地理的制約を克服した効率的な介護サービス提供体制の構築が求められています。
栃木県(45位)
栃木県は1206.8人(偏差値34.6)で45位となりました。首都圏近郊でありながら従事者数が少ない状況で、首都圏への人材流出対策が重要な課題です。県内定着支援の強化により、介護従事者の確保を図る必要があります。
介護施設整備の促進により、従事者の働く場の確保を進めています。首都圏との競争に負けない処遇改善や働きやすい環境づくりが求められています。
京都府(44位)
京都府は1250.9人(偏差値35.9)で44位となりました。観光業中心の産業構造が影響している可能性があり、大学連携による人材育成強化が期待されています。観光業との連携による雇用創出の可能性を探っています。
府内介護事業者への支援拡充により、従事者の確保と定着を促進する必要があります。都市部での高い地価により施設整備コストが高く、効率的な運営が課題となっています。
愛知県(43位)
愛知県は1317.1人(偏差値37.9)で43位となりました。製造業中心の産業構造により、他産業との人材獲得競争が激化しています。都市部への人口集中による需要の集中が課題となっています。
介護職員の確保・定着の困難さを克服するため、処遇改善や働きやすい環境づくりが重要です。製造業との競争に負けない魅力的な職場環境の構築が求められています。
地域別の特徴分析
関東地方
群馬県2274.2人が3位と健闘する一方、栃木県1206.8人、茨城県1457.8人、埼玉県1378.9人、千葉県1577.2人、神奈川県1656.7人は中位から下位に位置しています。東京都1637.3人も中位にとどまっています。
首都圏への人材流出や他産業との競争が影響し、介護従事者の確保が困難な状況です。高い地価により施設整備コストが高く、効率的な運営が制約されています。
関西地方
滋賀県1168.8人が最下位、京都府1250.9人が44位と全国的に見て低い水準の県が集中しています。大阪府1387.8人、兵庫県1455.6人、奈良県1519.8人、和歌山県1746.0人も中位から下位に分布しています。
大都市圏への人材集中や近隣府県との競争により、介護従事者の確保が困難な状況です。近隣府県との連携強化や処遇改善支援が重要な課題となっています。
中部地方
愛知県1317.1人、静岡県1482.8人、岐阜県1596.8人は中位から下位に位置し、山梨県1188.1人、長野県1516.7人も低水準です。新潟県1936.2人、富山県1831.8人、石川県1712.5人、福井県1635.5人の北陸地方は中位に分布しています。
製造業などの他産業との競争により、介護従事者の確保が困難な地域が多くなっています。地域の産業構造が介護人材確保に影響を与えています。
九州・沖縄地方
宮崎県2725.3人が1位、佐賀県2294.8人が2位と上位を独占しています。青森県2192.8人、山形県2201.7人、群馬県2274.2人に続き、鹿児島県2140.2人、熊本県2093.5人、長崎県2064.1人、大分県2016.7人も上位に集中しています。
高齢化率の高さに対応した積極的な体制整備と、地域密着型サービスの充実が特徴です。県をあげた介護人材確保への取り組みが成果を上げています。
中国・四国地方
島根県2151.9人、高知県1996.2人、徳島県1911.6人、愛媛県1887.8人が上位から中位に位置し、香川県1743.5人、鳥取県1740.1人、山口県1713.4人、広島県1699.2人、岡山県1674.3人は中位に分布しています。
中国・四国地方では地域により格差があるものの、全体的には中位以上の水準を維持している県が多くなっています。地域包括ケアシステムの積極導入が進んでいます。
東北・北海道地方
青森県2192.8人が5位、山形県2201.7人が4位と健闘し、岩手県2097.3人、北海道1759.0人、秋田県1737.8人、福島県1635.5人、宮城県1635.5人と中位に分布しています。
人口減少・高齢化への先進的対応と、地域包括ケアシステムの積極導入が特徴です。介護予防と重度化防止への注力により、効率的な介護サービス提供を実現しています。
社会的・経済的影響
1位宮崎県と47位滋賀県の格差1556.5人は、2.3倍の開きを示しており、この地域間格差は高齢者とその家族の生活に大きな影響を与えています。
介護サービスアクセスの格差として、従事者数の少ない地域では介護サービスの利用しやすさに制約があり、家族介護への依存度が高まっています。高齢者の生活の質に地域格差が生じており、十分な介護を受けられない高齢者が存在します。
地域経済への影響では、介護関連産業の発達度合いに差が生じ、雇用創出や地域経済活性化への効果に格差があります。高齢者人口の定住・移住判断に影響を与え、地域の持続可能性に長期的な影響をもたらしています。
労働市場への影響として、介護従事者の地域間移動が促進され、他産業との人材獲得競争が激化しています。介護人材確保策の地域間格差が拡大し、従事者の処遇や働きやすさに差が生じています。
対策と今後の展望
各都道府県では地域特性に応じた取り組みが進められています。宮崎県や佐賀県では処遇改善や働きやすい環境整備に積極的に取り組んでおり、これらの取り組みが参考になります。
重要な取り組みとして、人材確保策の強化により、処遇改善や働きやすい環境整備が急務です。地域連携の推進により、近隣自治体との連携による効率的な人材活用が可能になります。技術活用の促進として、介護ロボットやICT活用により、少ない人数でも質の高いサービス提供が実現できます。
成功事例の展開により、上位県の取り組みを他地域に展開することで、全国的な底上げが期待できます。2025年には団塊世代が後期高齢者となり、介護需要がさらに増加するため、計画的な体制整備が不可欠です。
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 1,720 |
中央値 | 1,671.2 |
最大値 | 2,725.3(宮崎県) |
最小値 | 1,168.8(滋賀県) |
標準偏差 | 333.8 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国平均1791.6人に対し、中央値は1743.5人となっており、平均値がやや高いことから、上位県が全体を押し上げていることがわかります。標準偏差432.1人は比較的大きなばらつきを示しており、地域間格差が顕著であることを表しています。
第1四分位1453.2人と第3四分位2089.4人の差は636.2人で、中位50%の都道府県でも相当な格差があることがわかります。上位の宮崎県、佐賀県、群馬県は統計的に突出した値を示しており、これらの県の取り組みが注目されます。
この分布パターンは、地域の介護政策の違い、産業構造による労働市場の特性、人材確保策の充実度、他産業との競争状況が複合的に影響した結果と考えられます。九州・東北地方の積極的な取り組みと、関西・中部地方の人材確保の困難さが対照的に現れています。
まとめ
2022年度の老人ホーム従事者数(65歳以上人口10万人当たり)分析により、重要な課題が明らかになりました。
宮崎県が2725.3人で全国1位となり、積極的な介護人材確保策が奏功しています。滋賀県との間に1556.5人の格差があり、最大2.3倍の地域格差が存在します。九州・東北地方が上位を占め、積極的な介護体制整備を実現しています。
関西・関東地方の一部で人材確保が困難な状況が継続しており、他産業との競争や大都市圏への人材流出が影響しています。人材確保策の充実が上位県の共通した成功要因となっており、処遇改善や働きやすい環境づくりが重要です。
技術活用と地域連携による効率化が今後の鍵となり、2025年問題を見据えた計画的な体制整備が急務です。継続的なデータ分析と効果的な対策の実施により、全国的な介護体制の底上げを図ることが重要です。
各自治体は成功事例を参考に、地域特性に応じた独自の取り組みを推進していく必要があります。介護従事者の確保と定着、質の向上を通じて、全国どこでも安心して高齢期を過ごせる社会の実現を目指すことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 2,725.3 | 80.1 | -5.0% |
2 | 佐賀県 | 2,294.8 | 67.2 | +3.0% |
3 | 群馬県 | 2,274.2 | 66.6 | +7.7% |
4 | 山形県 | 2,201.7 | 64.4 | -5.8% |
5 | 青森県 | 2,192.8 | 64.2 | -1.4% |
6 | 島根県 | 2,185.6 | 63.9 | -0.4% |
7 | 鹿児島県 | 2,140.2 | 62.6 | -1.7% |
8 | 沖縄県 | 2,113.4 | 61.8 | +10.9% |
9 | 岩手県 | 2,097.3 | 61.3 | +0.2% |
10 | 熊本県 | 2,035.1 | 59.4 | +1.9% |
11 | 大分県 | 2,032.4 | 59.4 | +5.1% |
12 | 秋田県 | 2,003.3 | 58.5 | -0.1% |
13 | 福岡県 | 1,844.9 | 53.7 | +2.0% |
14 | 福島県 | 1,791.0 | 52.1 | +1.4% |
15 | 石川県 | 1,784.6 | 51.9 | -2.5% |
16 | 高知県 | 1,777.5 | 51.7 | +2.7% |
17 | 鳥取県 | 1,775.6 | 51.7 | -1.9% |
18 | 愛媛県 | 1,766.8 | 51.4 | +2.9% |
19 | 長崎県 | 1,760.7 | 51.2 | +4.1% |
20 | 北海道 | 1,759.0 | 51.2 | +0.8% |
21 | 香川県 | 1,750.3 | 50.9 | +2.5% |
22 | 新潟県 | 1,738.1 | 50.5 | +2.8% |
23 | 和歌山県 | 1,716.6 | 49.9 | +0.4% |
24 | 神奈川県 | 1,671.2 | 48.5 | +2.4% |
25 | 山口県 | 1,657.4 | 48.1 | +1.6% |
26 | 岡山県 | 1,647.9 | 47.8 | +2.9% |
27 | 宮城県 | 1,635.5 | 47.5 | +4.0% |
28 | 千葉県 | 1,629.0 | 47.3 | +7.2% |
29 | 長野県 | 1,581.7 | 45.9 | -1.4% |
30 | 三重県 | 1,556.5 | 45.1 | +2.2% |
31 | 東京都 | 1,532.9 | 44.4 | +1.5% |
32 | 茨城県 | 1,526.6 | 44.2 | +3.2% |
33 | 埼玉県 | 1,518.1 | 44.0 | -2.0% |
34 | 大阪府 | 1,512.4 | 43.8 | +3.5% |
35 | 福井県 | 1,505.1 | 43.6 | -0.8% |
36 | 奈良県 | 1,492.9 | 43.2 | +0.3% |
37 | 岐阜県 | 1,439.6 | 41.6 | +3.9% |
38 | 徳島県 | 1,437.4 | 41.5 | +1.4% |
39 | 兵庫県 | 1,423.2 | 41.1 | +3.0% |
40 | 広島県 | 1,420.6 | 41.0 | +1.9% |
41 | 静岡県 | 1,416.5 | 40.9 | +4.2% |
42 | 富山県 | 1,343.9 | 38.7 | -2.0% |
43 | 愛知県 | 1,317.1 | 37.9 | +2.8% |
44 | 京都府 | 1,250.9 | 35.9 | -2.4% |
45 | 栃木県 | 1,206.8 | 34.6 | -2.4% |
46 | 山梨県 | 1,188.1 | 34.1 | +1.1% |
47 | 滋賀県 | 1,168.8 | 33.5 | -2.2% |