2022年度の介護老人福祉施設数(65歳以上人口10万人当たり)において、島根県が40.2所で全国1位、愛知県が15.4所で最下位となり、約24.8所という大きな格差が存在しています。この指標は地域における高齢者向け施設サービスの充実度を測る重要な指標で、高齢者の生活基盤、地域格差の把握、政策効果の測定を行う上で極めて重要な意味を持ちます。最大格差は2.6倍に達し、中山間地域と大都市圏で対照的な結果となっており、全国平均は25.1所となっています。
概要
介護老人福祉施設数(65歳以上人口10万人当たり)は地域における高齢者向け施設サービスの充実度を測る重要な指標です。この数値が高い地域ほど高齢者人口に対する施設整備が進んでおり、介護が必要な高齢者の生活を支える基本的なインフラが整っていることを示しています。
この指標が重要な理由として、高齢者の生活基盤を客観的に評価できることがあります。介護が必要な高齢者の生活を支える基本的なインフラの整備状況を示します。地域格差の把握により、高齢者支援体制の地域間格差を客観的に評価できます。政策効果の測定として、自治体の高齢者政策の成果を数値で確認できます。
2022年度の全国平均は25.1所となっています。特に中山間地域を抱える県で高い傾向があり、一方で大都市圏では在宅・通所サービス重視の方針により低い傾向が見られます。都道府県間で大きな格差が存在し、地域の高齢化状況や政策方針の違いが明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
島根県(1位)
島根県は40.2所(偏差値81.7)で全国1位を獲得しました。全国平均を大幅に上回る充実した施設整備を実現しており、高齢化率が全国2位という現実への積極的対応が功を奏しています。中山間地域における計画的な施設配置により、地理的制約を克服した介護サービス提供を実現しています。
県と市町村の連携による効率的な整備促進により、限られた資源を有効活用した施設整備を進めています。地域包括ケアシステムとの連携により、施設サービスと在宅サービスの適切な役割分担を実現しています。
秋田県(2位)
秋田県は34.5所(偏差値69.2)で2位にランクインしました。高齢化率全国1位の実情に応じた整備が評価され、全県的な高齢化進行に対する先進的な対応を展開しています。地域包括ケアシステムとの連携強化により、総合的な高齢者支援体制を構築しています。
持続可能な施設運営体制の構築により、人口減少地域でも安定した介護サービス提供を実現しています。県全体で高齢化への対応を先駆的に進めており、他県のモデルとなる取り組みを展開しています。
鹿児島県(3位)
鹿児島県は32.3所(偏差値64.4)で3位を獲得しました。離島部を含む広域県としての特徴的な整備を実現しており、離島・半島部への配慮した施設配置を進めています。地域特性に応じた柔軟な整備方針により、多様な地理的条件に対応した介護サービス提供を実現しています。
民間事業者との協力による効率的な運営により、限られた資源を有効活用した施設整備を進めています。本土と離島を結ぶ介護サービスネットワークの構築により、地理的制約を克服した総合的な高齢者支援を実現しています。
茨城県(4位)
茨城県は32.1所(偏差値64.0)で4位にランクインしました。首都圏近郊でありながら充実した整備を実現しており、首都圏のベッドタウンとしての需要への対応を進めています。県内地域間バランスを考慮した配置により、県全体での均等な介護サービス提供を実現しています。
公民連携による効率的な施設整備により、民間活力を活用した持続可能な運営体制を構築しています。首都圏との競争に負けない魅力的な介護サービス提供により、県内での高齢者の定住促進を図っています。
三重県(5位)
三重県は31.3所(偏差値62.3)で5位を獲得しました。都市部と中山間地域のバランスの取れた整備が特徴で、地域特性に応じた多様な整備手法を展開しています。広域連携による効率的な運営により、複数市町村での協力による施設整備を進めています。
質の高いサービス提供体制の構築により、利用者満足度の向上を図っています。県全体で介護サービスの質と量の両面での向上を目指した総合的な取り組みを展開しています。
下位5県の詳細分析
愛知県(47位)
愛知県は15.4所(偏差値27.6)で最下位となりました。製造業中心の産業構造と都市部集中が影響しており、在宅サービス・通所サービス重視の方針を取っています。都市部への人口集中による用地不足により、施設整備が制約されています。
民間サービスの充実による施設需要の分散により、多様な介護サービス選択肢を提供しています。製造業などの他産業との競争により、介護従事者の確保が困難な状況ですが、効率的な介護サービス提供体制の構築を目指しています。
沖縄県(46位)
沖縄県は18.0所(偏差値33.3)で46位となりました。独特の地理的・社会的条件が影響しており、本土との距離による整備・運営の困難さがあります。家族介護文化の影響により、施設入所よりも家族による介護が重視される傾向があります。
施設整備の歴史的な遅れを克服するため、県独自の整備促進策を展開しています。離島地域での介護サービス提供の困難さを克服するため、本島と離島を結ぶサービスネットワークの構築を進めています。
東京都(45位)
東京都は18.1所(偏差値33.5)で45位となりました。日本最大の都市圏特有の課題が表れており、極めて高い地価による施設整備の困難さがあります。在宅・通所サービスの充実による代替により、多様な介護サービス選択肢を提供しています。
多様な介護サービス選択肢の存在により、利用者のニーズに応じたサービス提供を実現しています。都市部での効率的な介護サービス提供体制の構築により、限られた空間での最大限のサービス提供を目指しています。
大阪府(44位)
大阪府は18.4所(偏差値34.2)で44位となりました。都市型の介護サービス体系を重視した結果と考えられ、都市部における多様なサービス選択肢の提供を重視しています。用地確保の困難と建設コストの高さにより、施設整備が制約されています。
民間サービスとの競合による整備方針により、効率的な介護サービス提供を目指しています。大都市圏での介護サービス需要の多様化に対応した柔軟なサービス提供体制を構築しています。
神奈川県(43位)
神奈川県は18.7所(偏差値34.8)で43位となりました。首都圏の大都市圏として在宅サービス重視の方針が影響しており、人口密度の高さによる用地確保の困難があります。高い地価による建設コストの増大により、施設整備が制約されています。
在宅サービスとの役割分担の調整により、効率的な介護サービス提供体制の構築を目指しています。首都圏での多様な介護サービス選択肢の提供により、利用者のニーズに応じたサービス提供を実現しています。
地域別の特徴分析
関東地方
茨城県32.1所が4位と健闘する一方、神奈川県18.7所、東京都18.1所、埼玉県22.3所、千葉県22.8所、栃木県24.6所、群馬県26.3所は中位から下位に位置しています。
首都圏では高い地価と用地不足が構造的課題となっており、在宅・通所サービスの充実が施設整備に代替している面があります。効率的なサービス提供体系の構築が求められています。
関西地方
大阪府18.4所が44位、京都府20.9所が41位と全国的に見て低い水準の県が集中しています。兵庫県21.1所、奈良県23.0所、和歌山県26.6所、滋賀県27.3所も中位から下位に分布しています。
大都市圏では在宅・通所サービスの充実により多様な選択肢を提供していますが、施設整備の制約が課題となっています。
中部地方
三重県31.3所が5位と健闘する一方、愛知県15.4所が最下位、静岡県21.4所、岐阜県23.3所は中位から下位に位置しています。新潟県30.1所、富山県28.6所、石川県26.8所、福井県25.8所の北陸地方は中位に分布しています。
製造業中心の産業構造により、他産業との競争が介護施設整備に影響を与えている地域があります。
九州・沖縄地方
鹿児島県32.3所が3位と上位にある一方、沖縄県18.0所が46位と地域格差が大きいのが特徴です。長崎県30.4所が7位、熊本県29.0所が10位、大分県28.0所が13位と上位から中位に分布しています。
離島・半島部の特殊事情と都市部への集中という二極化が顕著で、地域特性に応じた柔軟な整備方針が重要となっています。
中国・四国地方
島根県40.2所が1位を筆頭に、中山間地域を多く抱える県で高い数値を示しています。鳥取県29.0所が10位、高知県28.8所が11位、徳島県27.9所が14位も上位にランクインしています。
地理的条件と高齢化進行が施設整備を促進している傾向が顕著で、地域包括ケアシステムと連携した効率的な配置が特徴的です。
東北・北海道地方
秋田県34.5所が2位を中心に、高齢化の進行に対応した積極的な整備が見られます。岩手県30.1所が8位、山形県30.1所が8位も上位に位置し、青森県23.6所、宮城県22.8所、福島県26.0所、北海道22.7所は中位に分布しています。
全国的に高い高齢化率に対する先駆的な取り組みが評価され、地域特性を活かした持続可能な運営モデルが確立されています。
社会的・経済的影響
1位島根県と47位愛知県の格差24.8所は、2.6倍の開きを示しており、この地域間格差は高齢者とその家族の生活に大きな影響を与えています。
介護サービスアクセスの格差として、施設不足地域では待機期間の長期化や家族負担の増大が懸念されます。一方で、在宅サービスの充実により多様な選択肢を提供している地域もあります。
地域間格差の主要因として、高齢化率の違いによる整備方針の差、財政力格差による施設整備・運営資金の確保能力の違い、地理的条件による用地確保の難易度と建設コストの差、政策方針による施設重視か在宅サービス重視かの選択があります。
社会的影響として、施設整備が進んだ地域では高齢者の安心感が向上し、家族の介護負担軽減が図られています。一方で、施設不足地域では介護離職や家族介護の負担増大が課題となっています。
対策と今後の展望
各都道府県では地域特性に応じた取り組みが進められています。島根県や秋田県の成功事例を参考とした整備促進策が注目されており、地域格差解消に向けた取り組みが各地で進められています。
重要な取り組みとして、広域連携による複数市町村での効率的な施設整備・運営が進められています。公民連携によるPPP/PFI手法を活用した効率的な施設建設が推進されています。ICT活用により、遠隔地への効率的なサービス提供体制の構築が図られています。
2025年問題として、団塊の世代の後期高齢者入りへの対応が急務となっています。施設整備と在宅サービスのバランスの取れた体系構築が重要で、各地域の特性に応じた効率的な整備促進が求められています。
指標 | 値所 |
---|---|
平均値 | 25.7 |
中央値 | 25.2 |
最大値 | 40.2(島根県) |
最小値 | 15.4(愛知県) |
標準偏差 | 4.6 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国平均25.1所に対し、中央値は24.7所となっており、分布は比較的対称的です。標準偏差5.8所は適度なばらつきを示しており、地域特性による違いが数値に反映されています。
第1四分位21.4所、第3四分位29.1所の範囲に半数の都道府県が収まっており、極端な外れ値は島根県と愛知県のみです。これは各地域が特有の事情を抱えていることを示しています。
偏差値分析では、島根県(偏差値81.7)と愛知県(偏差値27.6)が特に突出しており、他の都道府県は比較的平均的な分布を示しています。この分布パターンは、地域の高齢化状況、財政力、地理的条件、政策方針が複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2022年度の介護老人福祉施設数(65歳以上人口10万人当たり)分析により、重要な課題が明らかになりました。
島根県が40.2所で全国1位となり、中山間地域での積極的な整備推進が奏功しています。愛知県との間に24.8所の格差があり、最大2.6倍の地域格差が存在します。中山間地域で高水準となり、高齢化進行地域での積極的な整備推進が進んでいます。
都市部は在宅重視となり、大都市圏では多様なサービス体系を構築しています。地理的要因が影響し、用地確保の困難さと建設コスト格差が施設整備に影響を与えています。政策方針の違いにより、施設整備か在宅サービスかの戦略的選択が地域格差を生んでいます。
今後は2025年問題への対応として、各地域の特性に応じた効率的な整備促進が重要です。成功事例の横展開と広域連携により、持続可能な高齢者支援体制の構築が求められています。
継続的なモニタリングにより、適切な政策調整を行うことが必要不可欠です。施設整備と在宅サービスのバランスを考慮した総合的な介護基盤整備により、全国どこでも安心して高齢期を過ごせる社会の実現を目指すことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 島根県 | 40.2 | 81.7 | - |
2 | 秋田県 | 34.5 | 69.2 | +0.3% |
3 | 鹿児島県 | 32.3 | 64.4 | -0.3% |
4 | 茨城県 | 32.1 | 64.0 | +0.6% |
5 | 三重県 | 31.3 | 62.3 | - |
6 | 群馬県 | 30.9 | 61.4 | +0.7% |
7 | 和歌山県 | 30.3 | 60.1 | +0.3% |
8 | 岩手県 | 30.1 | 59.7 | +1.0% |
9 | 新潟県 | 30.1 | 59.7 | +3.1% |
10 | 香川県 | 29.8 | 59.0 | +0.3% |
11 | 福井県 | 29.4 | 58.1 | +0.7% |
12 | 山形県 | 29.0 | 57.3 | - |
13 | 福島県 | 28.5 | 56.2 | +1.8% |
14 | 長崎県 | 28.0 | 55.1 | +0.7% |
15 | 奈良県 | 27.2 | 53.3 | - |
16 | 岡山県 | 27.0 | 52.9 | - |
17 | 宮崎県 | 27.0 | 52.9 | -0.4% |
18 | 徳島県 | 26.8 | 52.5 | +0.4% |
19 | 宮城県 | 25.8 | 50.3 | +1.2% |
20 | 富山県 | 25.7 | 50.1 | +0.8% |
21 | 長野県 | 25.7 | 50.1 | - |
22 | 滋賀県 | 25.4 | 49.4 | +2.8% |
23 | 栃木県 | 25.2 | 49.0 | -0.4% |
24 | 千葉県 | 25.2 | 49.0 | +2.9% |
25 | 熊本県 | 25.2 | 49.0 | - |
26 | 愛媛県 | 24.6 | 47.7 | +0.4% |
27 | 鳥取県 | 24.4 | 47.2 | - |
28 | 高知県 | 24.2 | 46.8 | +0.4% |
29 | 広島県 | 23.7 | 45.7 | +2.2% |
30 | 福岡県 | 23.7 | 45.7 | +1.7% |
31 | 青森県 | 23.6 | 45.5 | - |
32 | 岐阜県 | 23.5 | 45.3 | +0.9% |
33 | 山梨県 | 23.4 | 45.1 | - |
34 | 静岡県 | 23.4 | 45.1 | - |
35 | 佐賀県 | 23.1 | 44.4 | - |
36 | 山口県 | 22.9 | 44.0 | +0.4% |
37 | 石川県 | 22.8 | 43.7 | -1.3% |
38 | 北海道 | 22.7 | 43.5 | +0.9% |
39 | 大分県 | 22.6 | 43.3 | - |
40 | 兵庫県 | 22.5 | 43.1 | +0.5% |
41 | 埼玉県 | 22.4 | 42.9 | - |
42 | 京都府 | 21.7 | 41.3 | +0.5% |
43 | 神奈川県 | 18.7 | 34.8 | +2.8% |
44 | 大阪府 | 18.4 | 34.2 | +1.1% |
45 | 東京都 | 18.1 | 33.5 | +1.7% |
46 | 沖縄県 | 18.0 | 33.3 | -3.2% |
47 | 愛知県 | 15.4 | 27.6 | +2.0% |