都道府県別労働災害度数率ランキング(2022年度)

概要

労働災害度数率は、労働時間100万時間当たりの労働災害による死傷者数を示す指標で、労働安全衛生の状況を表します。本記事では、2022年度の都道府県別労働災害度数率のランキングを紹介し、地域間の差異や特徴について分析します。この指標は高いほど労働災害の発生頻度が高いことを意味し、地域ごとの労働安全衛生の取り組みや産業構造の違いを反映しています。

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上位県と下位県の比較

上位5県と下位5県の詳細説明

上位5県の特徴

沖縄県4.95(偏差値83.8)で全国1位となっています。建設業や観光関連産業が盛んな沖縄県では、これらの業種における労働災害の発生が影響していると考えられます。また、中小企業が多く、安全管理体制の整備が十分でない事業所も存在する可能性があります。

北海道3.88(偏差値70.8)で2位につけています。広大な面積を持つ北海道では、第一次産業や建設業などの労働災害リスクが比較的高い業種の割合が高いことが影響していると考えられます。また、冬季の厳しい気象条件も労働災害の発生に影響している可能性があります。

青森県長崎県はともに3.29(偏差値63.7)で3位タイとなっています。青森県では第一次産業の比率が高く、また冬季の厳しい気象条件下での作業が労働災害の発生に影響している可能性があります。長崎県では造船業や水産業など、労働災害リスクが比較的高い業種が集積していることが影響していると考えられます。

愛媛県3.28(偏差値63.5)で5位です。造船業や紙・パルプ産業など、労働災害リスクが比較的高い製造業が集積していることが影響していると考えられます。

下位5県の特徴

栃木県0.82(偏差値33.7)で47位となっています。製造業が盛んな栃木県ですが、大手企業を中心に安全管理体制の整備が進んでいることが、低い労働災害度数率につながっていると考えられます。

山口県1.02(偏差値36.2)で46位です。化学工業や製鉄業など大規模事業所が多く、これらの事業所では安全管理が徹底されていることが影響していると考えられます。

三重県1.08(偏差値36.9)で45位となっています。自動車関連産業など、安全管理体制が整備された大手製造業が集積していることが、低い労働災害度数率につながっていると考えられます。

大分県1.18(偏差値38.1)で44位です。石油化学コンビナートなど、安全管理が徹底された大規模事業所が存在することが影響していると考えられます。

滋賀県1.32(偏差値39.8)で43位となっています。精密機器製造業など、比較的労働災害リスクが低い業種の割合が高いことが影響していると考えられます。

地域別の特徴分析

地域ブロック別の傾向

九州・沖縄地方は全体的に労働災害度数率が高い傾向にあります。沖縄県(1位、4.95)、長崎県(3位、3.29)、愛媛県(5位、3.28)、宮崎県(14位、2.81)、鹿児島県(13位、2.82)など、上位に位置する県が多く見られます。

東北地方も比較的高い傾向があり、青森県(3位、3.29)、山形県(8位、2.98)が上位に入っています。一方、秋田県(40位、1.37)は東北地方の中では低い値となっています。

中部地方や近畿地方は比較的低い傾向にあり、栃木県(47位、0.82)、三重県(45位、1.08)、滋賀県(43位、1.32)、愛知県(41位、1.35)などが下位に位置しています。

都市部と地方の比較

大都市を抱える都道府県では、労働災害度数率が比較的低い傾向が見られます。東京都(31位、1.76)、大阪府(29位、1.83)、愛知県(41位、1.35)などは中位から下位に位置しています。これらの地域ではサービス業など比較的労働災害リスクが低い業種の割合が高いことや、大企業を中心に安全管理体制の整備が進んでいることが影響していると考えられます。

一方で、埼玉県(11位、2.92)と千葉県(10位、2.94)は大都市圏でありながら比較的高い値を示しており、製造業や物流業など労働災害リスクが比較的高い業種の集積が影響している可能性があります。また、神奈川県(7位、3.00)も高い値を示しており、工業地帯における労働災害の影響が考えられます。

産業構造による影響

第一次産業や建設業の比率が高い地域では、労働災害度数率が高い傾向が見られます。北海道(2位、3.88)、青森県(3位、3.29)などがその例です。また、造船業や重工業が盛んな地域も高い傾向があり、長崎県(3位、3.29)、愛媛県(5位、3.28)、香川県(12位、2.88)などが該当します。

一方、製造業が中心でも、大手企業が多く安全管理体制が整備されている地域では、労働災害度数率が低い傾向にあります。栃木県(47位、0.82)、愛知県(41位、1.35)、三重県(45位、1.08)などがその例です。特に自動車産業や精密機械産業など、安全管理が徹底されている業種が多い地域では低い値となっています。

格差や課題の考察

産業構造と労働災害

労働災害度数率の地域差には、産業構造の違いが大きく影響しています。建設業、林業、漁業などの第一次産業、製造業の中でも重工業などは、労働災害リスクが比較的高い傾向にあります。これらの業種の割合が高い地域では、労働災害度数率も高くなる傾向があります。

データを見ると、沖縄県(1位、4.95)と栃木県(47位、0.82)の間には6倍以上の開きがあり、この格差は産業構造の違いだけでなく、安全管理体制の差も反映していると考えられます。

企業規模と安全管理

中小企業が多い地域では、安全管理体制の整備が十分でない事業所も存在し、労働災害度数率が高くなる傾向があります。一方、大企業が多い地域では、安全管理に投資する余力があり、労働災害防止の取り組みが進んでいることが多いです。

例えば、自動車産業が集積する愛知県(41位、1.35)では、大手メーカーを中心に安全管理の取り組みが進んでおり、労働災害度数率が低くなっています。一方、中小企業が多い沖縄県(1位、4.95)では、安全管理体制の整備が十分でない事業所も存在する可能性があります。

地域特性と労働環境

気象条件や地理的特性も労働災害の発生に影響を与えます。北海道(2位、3.88)や青森県(3位、3.29)など、冬季の厳しい気象条件下での作業が必要な地域では、凍結や積雪による転倒災害などのリスクが高まります。また、山間部が多い地域では、地形による制約から安全対策が難しい場合もあります。

一方、温暖な気候の地域でも、沖縄県(1位、4.95)のように高い労働災害度数率を示す場合があり、気象条件だけでなく、産業構造や安全管理体制の整備状況など複合的な要因が影響していると考えられます。

統計データの基本情報と分析

統計データの分析

平均値と中央値の比較

全国の労働災害度数率の平均値は約2.11ですが、中央値は約1.94となっています。平均値が中央値よりもやや高いことから、分布がやや右に歪んでいることがわかります。これは、沖縄県(4.95)や北海道(3.88)など、一部の県で特に高い値が見られるためです。

分布の歪みと外れ値

沖縄県の労働災害度数率(4.95)は特に高く、外れ値と考えられます。北海道(3.88)も比較的高い値となっています。これらの外れ値を除くと、他の都道府県はより均一な分布となります。

具体的には、沖縄県の値は全国平均(2.11)の2.3倍以上、標準偏差(約0.89)の3倍以上離れており、明らかな外れ値と言えます。

四分位範囲による分布の特徴

第1四分位数(下位25%の境界)は約1.41、第3四分位数(上位25%の境界)は約2.94であり、四分位範囲は約1.53となります。この範囲に全体の半数の都道府県が含まれており、中程度の分散があることを示しています。

第1四分位数以下の都道府県は比較的安全な労働環境が整っていると考えられる一方、第3四分位数以上の都道府県では労働安全衛生対策の強化が特に求められる状況にあると言えるでしょう。

標準偏差によるばらつきの程度

標準偏差は約0.89と比較的大きく、データのばらつきがあることを示しています。これは都道府県間の労働災害度数率に一定の格差があることを数値で表しています。

平均値(2.11)に対する標準偏差の比率は約42%であり、データのばらつきが相対的に大きいことがわかります。このことからも、労働安全衛生の取り組みに地域差があることが示唆されます。

まとめ

2022年度の都道府県別労働災害度数率ランキングでは、沖縄県(4.95)が最も高く、北海道(3.88)、青森県と長崎県(ともに3.29)が続いています。一方、栃木県(0.82)が最も低く、山口県(1.02)、三重県(1.08)が続いています。労働災害度数率には地域間で最大6倍以上の格差があり、これは産業構造、企業規模、地理的特性など様々な要因によって影響を受けています。

全体的な傾向として、九州・沖縄地方と東北地方で高く、中部地方や近畿地方で低い傾向が見られます。また、大都市を抱える都道府県では比較的低い傾向がありますが、埼玉県、千葉県、神奈川県などは例外的に高い値を示しています。

労働災害を減少させるためには、各地域の特性に応じた安全対策が重要です。特に労働災害度数率が高い地域では、安全管理体制の強化や労働者への安全教育の充実、行政による指導・支援の強化などが求められます。また、栃木県や山口県など安全対策が進んでいる地域の好事例の共有や横展開も効果的でしょう。

労働安全衛生の向上は、労働者の健康と生命を守るだけでなく、企業の生産性向上や社会的コストの削減にもつながる重要な課題です。今後も継続的な取り組みと改善が必要とされています。

出典