2022年度の労働災害強度率において、高知県が0.41で全国1位、栃木県が0.02で最下位となり、約0.39という大きな格差が存在しています。この指標は労働時間1000時間当たりの労働損失日数を示し、労働災害の重篤度を表す重要な指標です。数値が高いほど重篤な労働災害が発生していることを意味し、地域ごとの労働安全衛生の状況や産業構造の違いを反映しています。最大格差は20.5倍に達し、四国・中国地方と関東・東北地方で対照的な結果となっており、全国平均は0.09となっています。
概要
労働災害強度率は労働時間1000時間当たりの労働損失日数を示す指標で、労働災害の重篤度を客観的に評価する重要な指標です。この数値が高い地域ほど重篤な労働災害が発生しており、労働安全対策の強化と救急医療体制の整備が必要な状況を示しています。
この指標が重要な理由として、労働災害の質的側面を評価できることがあります。発生頻度だけでなく重篤度を測定することで、より深刻な労働安全問題を特定できます。地域の産業構造や安全管理体制の違いを反映し、救急医療体制の充実度も影響します。労働災害による社会的コストの大きさを示します。
2022年度の全国平均は0.09となっています。林業や建設業、重工業の比率が高い地域で高い傾向があり、一方で製造業中心で安全管理が充実した地域では低い傾向が見られます。都道府県間で極めて大きな格差が存在し、地域の産業構造や安全管理体制、救急医療体制の違いが明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
高知県(1位)
高知県は0.41(偏差値87.6)で全国1位となりました。林業や漁業など第一次産業が盛んで、これらの業種における重篤な労働災害の発生が影響していると考えられます。特に林業は傾斜地での作業が多く、一度事故が発生すると重篤化しやすい特性があります。
山間部が多く、救急医療機関へのアクセスが制限される地域があり、事故発生後の迅速な対応が困難な場合があります。高所作業や重機作業での転落・挟まれ事故が重篤化しやすい環境です。県全体で労働安全対策と救急医療体制の強化が急務となっています。
新潟県(2位)
新潟県は0.39(偏差値85.3)で2位となりました。豪雪地帯であることや、建設業・製造業が盛んであることが高い労働災害強度率に関連している可能性があります。特に冬季の除雪作業や雪下ろし作業における重篤な事故が影響していると考えられます。
積雪による視界不良や足場の不安定さが事故の重篤化を招いています。除雪機械による巻き込み事故や屋根からの転落事故が深刻な問題となっています。冬季特有の労働環境における安全対策の強化が重要な課題です。
広島県(3位)
広島県は0.35(偏差値80.5)で3位となりました。造船業や自動車産業など製造業が盛んで、機械設備による重篤な災害が発生している可能性があります。建設業における災害も影響していると考えられます。
重工業での大型機械や重量物の取り扱いによる挟まれ・巻き込み事故が重篤化しやすい環境です。高所作業や溶接作業での事故リスクも高く、一度事故が発生すると深刻な結果を招く可能性があります。
徳島県(4位)
徳島県は0.19(偏差値61.7)で4位となりました。林業や建設業における重篤な労働災害の発生が影響していると考えられます。特に山間部での作業環境が厳しい地域では、事故の重篤化リスクが高まります。
急峻な地形での林業作業や建設工事において、転落や土砂崩れなどの重大事故が発生しやすい環境です。医療機関へのアクセスが困難な山間部では、事故後の対応の遅れが重篤化を招く要因となっています。
和歌山県(5位)
和歌山県は0.14(偏差値55.8)で5位となりました。化学工業や製紙業など、重篤な災害につながりやすい業種の集積に加え、林業などの第一次産業における労働災害の影響も考えられます。
化学プラントでの爆発・火災事故や有毒ガス中毒などの重篤な災害リスクがあります。紀伊山地での林業作業における転落事故や重機事故も重篤化しやすい環境です。
下位5県の詳細分析
栃木県(46位)
栃木県は0.02(偏差値41.7)で46位となりました。製造業が盛んですが、大手企業を中心に安全管理体制の整備が進んでいることが、低い労働災害強度率につながっていると考えられます。自動車関連産業での安全管理の徹底が成果を上げています。
県内に立地する大手自動車メーカーや部品メーカーでは、厳格な安全管理基準と迅速な応急処置体制が整備されています。比較的重篤化しにくい精密加工業や電子部品製造業の割合が高いことも影響しています。
鳥取県(46位)
鳥取県は0.02(偏差値41.7)で46位タイとなりました。重篤な労働災害につながりやすい業種の比率が比較的低く、安全管理体制の整備が進んでいることが影響していると考えられます。
県内の産業構造が相対的に安全性の高い業種中心で構成されており、重篤な労働災害の発生リスクが低い状況です。医療機関へのアクセスも比較的良好で、事故発生時の迅速な対応が可能な環境です。
宮城県(38位)
宮城県は0.03(偏差値42.9)で38位となりました。東日本大震災後の復興事業における安全対策の徹底や、製造業での安全管理体制の強化が効果を上げていると考えられます。
県内の主要企業では震災の教訓を活かした安全管理体制が構築されており、重篤な労働災害の予防に効果を上げています。医療機関の充実により、事故発生時の迅速な対応が可能な環境です。
秋田県(38位)
秋田県は0.03(偏差値42.9)で38位タイとなりました。重篤な労働災害につながりやすい業種の比率が比較的低く、安全意識の高さが影響していると考えられます。
県内企業での安全教育の徹底や、地域の安全文化の醸成が重篤な労働災害の防止に寄与しています。人口減少に伴い危険な作業現場の減少も影響している可能性があります。
山梨県(38位)
山梨県は0.03(偏差値42.9)で38位タイとなりました。山岳地帯が多いにもかかわらず労働災害強度率が低い点が特筆され、安全意識の高さや地域の労働安全衛生の取り組みが効果的に機能している可能性を示唆しています。
県内企業での安全管理体制の充実や、地域の安全文化の浸透が重篤な労働災害の防止に効果を上げています。観光業中心の産業構造により、相対的に安全性の高い職場環境が多いことも影響しています。
地域別の特徴分析
関東地方
栃木県0.02が46位と最も安全な一方、埼玉県0.10が12位、千葉県0.12が8位、神奈川県0.12が8位と中位の県もあります。東京都0.06、群馬県0.08、茨城県0.05は比較的安全です。
製造業中心の産業構造で、大手企業での安全管理体制の整備が進んでいる地域が多くなっています。医療機関の充実により、事故発生時の迅速な対応が可能な環境です。
関西地方
三重県0.03が38位、滋賀県0.03が38位、山口県0.03が38位と安全な県がある一方、大阪府0.13が6位、和歌山県0.14が5位は上位に位置しています。京都府0.06、兵庫県0.08、奈良県0.05は中位から下位に分布しています。
都市部では医療機関の充実により重篤化を防げる一方、重工業が集積した地域では重篤な労働災害のリスクが高くなっています。
中部地方
愛知県0.12が8位と上位にある一方、長野県0.03が38位、岐阜県0.04が33位、静岡県0.05が30位は比較的安全です。新潟県0.39が2位、富山県0.08が18位、石川県0.07が20位、福井県0.06が25位の北陸地方は中位から上位に分布しています。
自動車産業や精密機械産業での安全管理が進んでいる一方、豪雪地帯では冬季の労働災害が重篤化しやすい環境があります。
九州・沖縄地方
大分県0.06が25位、佐賀県0.03が38位、宮崎県0.08が18位、鹿児島県0.09が15位、沖縄県0.07が20位と中位に分布し、福岡県0.06、熊本県0.09、長崎県0.05も中位から下位に位置しています。
重化学工業が発達した地域では安全管理が進んでいる一方、第一次産業や中小企業が多い地域では相対的にリスクが高い状況です。
中国・四国地方
高知県0.41が1位、広島県0.35が3位、徳島県0.19が4位、和歌山県0.14が5位、島根県0.13が6位と上位に多くの県が位置しています。香川県0.11が11位、岡山県0.04が33位、鳥取県0.02が46位と県による格差が大きくなっています。
林業や重工業が盛んな地域で重篤な労働災害が発生しやすく、山間部では医療機関へのアクセスが困難な場合があります。一方で、安全管理が進んだ地域では低い値となっています。
東北・北海道地方
宮城県0.03が38位、秋田県0.03が38位、山形県0.03が38位と安全な県が多い一方、北海道0.10が12位、青森県0.07が20位、岩手県0.06が25位、福島県0.05が30位は中位に分布しています。
全体的に重篤な労働災害の発生率が低く、地域の安全文化や医療体制の充実が寄与していると考えられます。冬季の厳しい条件下でも安全対策が効果的に機能しています。
社会的・経済的影響
1位高知県と46位栃木県の格差0.39は、20.5倍の開きを示しており、この地域間格差は労働者の安全と地域経済に極めて大きな影響を与えています。
労働者の安全への影響として、重篤な労働災害は労働者の生命に直接的な脅威となります。重度の後遺症や長期療養は労働者とその家族の人生に深刻な影響を与えます。重篤な労働災害への恐怖は労働者の精神的負担となり、生産性にも影響します。
地域経済への影響では、重篤な労働災害は高額な医療費や補償費を発生させます。熟練労働者の長期離脱は企業の生産性に深刻な影響を与えます。労働災害の多発は企業の社会的信用と競争力を低下させます。
産業構造による格差として、林業、漁業、建設業、重工業では一度事故が発生すると重篤化しやすい傾向があります。高所作業、重機作業、危険物取り扱いなどの作業環境が重篤化リスクを高めます。地理的条件により救急医療へのアクセスが制限される地域では重篤化しやすくなります。
対策と今後の展望
各都道府県では地域特性に応じた取り組みが進められています。栃木県や鳥取県など重篤化防止対策が進んでいる地域の好事例の共有や横展開が効果的です。
重要な取り組みとして、危険作業の安全対策強化により、高所作業、重機作業、危険物取り扱いでの安全基準の徹底が必要です。救急医療体制の充実により、事故発生時の迅速な対応体制の整備が重要です。安全教育の充実により、重篤化防止のための知識と技能の習得を図る必要があります。
事故対応体制の強化として、事業所内での応急処置訓練の実施や、救急搬送体制の整備が重要です。技術革新の活用により、危険作業の自動化・ロボット化による重篤化リスクの削減が期待されます。
産業別安全対策の推進として、林業、建設業、重工業など重篤化リスクの高い業種での特別な安全対策が必要です。地域連携の強化により、企業間での安全情報の共有や協力体制の構築が重要です。
指標 | 値 |
---|---|
平均値 | 0.1 |
中央値 | 0.1 |
最大値 | 0.41(高知県) |
最小値 | 0.02(栃木県) |
標準偏差 | 0.1 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国の労働災害強度率の平均値は約0.09ですが、中央値は約0.06となっています。平均値が中央値よりも高いことから、分布が右に歪んでいることがわかります。これは、高知県0.41、新潟県0.39、広島県0.35など、一部の県で特に高い値が見られるためです。
高知県0.41、新潟県0.39、広島県0.35の3県は、他の都道府県と比較して著しく高い値を示しており、明確な外れ値と考えられます。これらの値は全国平均の3倍以上、標準偏差の3倍以上であり、統計的にも明らかな外れ値です。
第1四分位数は約0.03、第3四分位数は約0.10であり、四分位範囲は約0.07となります。特に下位25%の都道府県は0.03以下と非常に低い値で集中しており、労働災害の重篤度が非常に低い水準にあることを示しています。
標準偏差は約0.09と比較的大きく、平均値0.09と同程度のばらつきがあることを示しています。変動係数は約100%と非常に高い値となっており、都道府県間の労働災害強度率に極めて大きな格差があることを数値で表しています。
この分布パターンは、産業構造の違い(林業・重工業vs軽工業・サービス業)、地理的条件(山間部vs都市部)、救急医療体制の充実度、安全管理技術の普及度が複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2022年度の労働災害強度率分析により、極めて重要な課題が明らかになりました。
高知県が0.41で全国1位となり、林業や漁業での重篤な労働災害が深刻な問題となっています。栃木県との間に0.39の格差があり、最大20.5倍の地域格差が存在します。四国・中国地方で高く、関東・東北地方で低い傾向が見られます。
産業構造と地理的条件が重篤度に大きく影響しており、林業、建設業、重工業では一度事故が発生すると重篤化しやすい傾向があります。山間部や離島など医療機関へのアクセスが困難な地域では事故の重篤化リスクが高まります。
労働災害度数率と強度率は必ずしも相関せず、発生頻度と重篤度は異なる要因で決まることが明らかになりました。重篤な労働災害を減少させるためには、各地域の特性に応じた安全対策が重要です。
特に労働災害強度率が高い地域では、危険性の高い作業における安全対策の強化、労働者への安全教育の充実、事故発生時の迅速な対応体制の整備が求められます。事前の予防策だけでなく、事故発生後の迅速かつ適切な対応も重要です。
救急医療体制の充実や事業所内での応急処置訓練なども効果的な対策となります。労働安全衛生の向上は、労働者の健康と生命を守るだけでなく、企業の生産性向上や社会的コストの削減にもつながる重要な課題です。
今後も継続的な取り組みと改善により、全国どこでも重篤な労働災害を防げる安全な職場環境の実現を目指すことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 () | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 0.41 | 87.6 | +412.5% |
2 | 新潟県 | 0.39 | 85.3 | +254.6% |
3 | 広島県 | 0.35 | 80.5 | +600.0% |
4 | 徳島県 | 0.19 | 61.7 | +533.3% |
5 | 和歌山県 | 0.14 | 55.8 | +180.0% |
6 | 大阪府 | 0.13 | 54.7 | +116.7% |
7 | 島根県 | 0.13 | 54.7 | +116.7% |
8 | 千葉県 | 0.12 | 53.5 | +71.4% |
9 | 神奈川県 | 0.12 | 53.5 | +140.0% |
10 | 愛知県 | 0.12 | 53.5 | +140.0% |
11 | 大分県 | 0.11 | 52.3 | -15.4% |
12 | 北海道 | 0.10 | 51.1 | -28.6% |
13 | 茨城県 | 0.10 | 51.1 | -28.6% |
14 | 埼玉県 | 0.10 | 51.1 | +42.9% |
15 | 岡山県 | 0.09 | 49.9 | +28.6% |
16 | 香川県 | 0.09 | 49.9 | -50.0% |
17 | 宮崎県 | 0.09 | 49.9 | +12.5% |
18 | 群馬県 | 0.08 | 48.8 | -20.0% |
19 | 愛媛県 | 0.08 | 48.8 | +166.7% |
20 | 青森県 | 0.07 | 47.6 | -46.1% |
21 | 山形県 | 0.07 | 47.6 | - |
22 | 兵庫県 | 0.07 | 47.6 | -56.3% |
23 | 鹿児島県 | 0.07 | 47.6 | -87.5% |
24 | 沖縄県 | 0.07 | 47.6 | -50.0% |
25 | 岩手県 | 0.06 | 46.4 | +20.0% |
26 | 東京都 | 0.06 | 46.4 | -33.3% |
27 | 静岡県 | 0.06 | 46.4 | -14.3% |
28 | 京都府 | 0.06 | 46.4 | -60.0% |
29 | 奈良県 | 0.06 | 46.4 | -25.0% |
30 | 福岡県 | 0.06 | 46.4 | -14.3% |
31 | 長崎県 | 0.06 | 46.4 | -14.3% |
32 | 福島県 | 0.05 | 45.2 | - |
33 | 石川県 | 0.05 | 45.2 | - |
34 | 富山県 | 0.04 | 44.1 | - |
35 | 福井県 | 0.04 | 44.1 | - |
36 | 岐阜県 | 0.04 | 44.1 | -55.6% |
37 | 熊本県 | 0.04 | 44.1 | -20.0% |
38 | 宮城県 | 0.03 | 42.9 | -40.0% |
39 | 秋田県 | 0.03 | 42.9 | -50.0% |
40 | 山梨県 | 0.03 | 42.9 | -25.0% |
41 | 長野県 | 0.03 | 42.9 | - |
42 | 三重県 | 0.03 | 42.9 | -62.5% |
43 | 滋賀県 | 0.03 | 42.9 | -86.4% |
44 | 山口県 | 0.03 | 42.9 | +50.0% |
45 | 佐賀県 | 0.03 | 42.9 | -80.0% |
46 | 栃木県 | 0.02 | 41.7 | -60.0% |
47 | 鳥取県 | 0.02 | 41.7 | - |