都道府県別老年人口ランキング(2023年度)

概要

老年人口とは、65歳以上の人口を指します。この記事では、2023年度の都道府県別老年人口のランキングを紹介します。

老年人口は、高齢化の進行度や社会保障制度の負担、医療・介護需要などを考える上で重要な指標です。日本は世界有数の高齢社会であり、全国的に老年人口の増加が続いていますが、その規模には地域差があります。

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上位県と下位県の比較

老年人口が多い上位5県

2023年度の老年人口ランキングでは、東京都3,205,000人(偏差値85.5)で全国1位となりました。東京都は総人口も多いため、老年人口の絶対数も多くなっています。

2位は大阪府2,424,000人(偏差値74.1)、3位は神奈川県2,390,000人(偏差値73.6)、4位は埼玉県2,012,000人(偏差値68.1)、5位は愛知県1,923,000人(偏差値66.8)となっています。上位県はいずれも三大都市圏に位置しており、人口集中地域であることが反映されています。

老年人口が少ない下位5県

最も老年人口が少なかったのは鳥取県179,000人(偏差値41.4)でした。鳥取県は日本で最も人口が少ない県であり、老年人口の絶対数も少なくなっています。

46位は島根県227,000人(偏差値42.1)、45位は福井県235,000人(偏差値42.2)、44位は高知県242,000人(偏差値42.3)、43位は徳島県246,000人(偏差値42.4)となっています。下位県には中国・四国地方や福井県など、総人口自体が少ない地域が目立ちます。

地域別の特徴分析

三大都市圏と地方圏の格差

老年人口の分布を見ると、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)と地方圏の間に大きな格差があることがわかります。東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、愛知県の上位5都府県だけで、全国の老年人口の約30%を占めています。これは、総人口の集中を反映したものですが、今後の高齢者向けサービスの需要が都市部に集中することを示しています。

地方中枢都市の状況

千葉県(6位、1,756,000人)、北海道(7位、1,681,000人)、兵庫県(8位、1,609,000人)、福岡県(9位、1,452,000人)など、地方の中枢都市を持つ道県は比較的上位にランクしています。これらの地域は、周辺地域からの人口流入の歴史があり、その世代が高齢化したことで老年人口が多くなっています。

北海道・東北地方の特徴

北海道は7位と上位にランクしていますが、これは面積が広く、札幌市という大都市を有しているためです。東北地方では、宮城県(15位、662,000人)が仙台市を擁するため比較的上位にありますが、他の県は中位から下位に分布しています。特に青森県(29位、417,000人)、岩手県(30位、407,000人)、秋田県(34位、357,000人)、山形県(33位、361,000人)は人口減少が著しく、若年層の流出も続いている地域です。

中部・北陸地方の状況

愛知県(5位、1,923,000人)は自動車産業を中心とした製造業の集積地として高位にありますが、同じ中部・北陸地方でも富山県(38位、333,000人)や石川県(37位、338,000人)、福井県(45位、235,000人)などは下位に位置しています。静岡県(10位、1,101,000人)は比較的上位にありますが、これは東京都や愛知県の間に位置する地理的要因と人口規模によるものと考えられます。

近畿地方の二極化

大阪府(2位、2,424,000人)や兵庫県(8位、1,609,000人)は上位にランクしていますが、同じ近畿地方でも滋賀県(31位、380,000人)や奈良県(28位、423,000人)、和歌山県(39位、305,000人)は中位から下位に位置しています。近畿地方内でも都市部と周辺部の格差が見られます。

中国・四国地方の特徴

中国・四国地方の県は総じて下位に集中しており、特に鳥取県(47位、179,000人)、島根県(46位、227,000人)、徳島県(43位、246,000人)、高知県(44位、242,000人)は最下位グループを形成しています。広島県(12位、825,000人)は中国地方の中では例外的に上位に位置しており、これは広島市という中核都市を有していることが主な理由です。

これらの地域は総人口自体が少なく、若年層の流出も続いているため、老年人口の絶対数は少ないものの、高齢化率(総人口に占める老年人口の割合)は高い傾向にあります。

九州・沖縄地方の多様性

九州・沖縄地方では、福岡県(9位、1,452,000人)が突出して高位にある一方、佐賀県(42位、252,000人)や宮崎県(35位、351,000人)、沖縄県(36位、350,000人)は下位に位置しています。沖縄県は若年層の割合が高く、相対的に老年人口の割合が低いことが特徴です。熊本県(22位、552,000人)や鹿児島県(24位、524,000人)は中位に位置しています。

老年人口の増加がもたらす課題

医療・介護需要の地域差

老年人口の多い都市部では、医療・介護サービスの需要が集中し、施設やスタッフの不足が課題となっています。一方、老年人口は少なくても高齢化率の高い地方では、広い地域に分散した高齢者へのサービス提供が課題となっています。

例えば、東京都(1位、3,205,000人)では、高齢者向け施設の不足や待機老人の問題が深刻化していますが、鳥取県(47位、179,000人)では、過疎地域での高齢者の見守りや医療・介護サービスの提供体制の維持が課題となっています。

社会保障制度への影響

老年人口の増加は、年金、医療、介護などの社会保障費の増大につながります。特に老年人口が多い都市部では、社会保障サービスの需要が集中し、財政的な負担が大きくなっています。

例えば、大阪府(2位、2,424,000人)では、医療費や介護費の増大が府の財政を圧迫しており、効率的なサービス提供体制の構築が急務となっています。一方、島根県(46位、227,000人)では、人口減少に伴う税収減の中で、高齢者向けのサービスをいかに維持するかが課題となっています。

地域コミュニティの変化

老年人口の増加は、地域コミュニティの在り方にも影響を与えています。特に老年人口が多い地域では、高齢者向けの生活支援や社会参加の機会創出が重要な課題となっています。

例えば、神奈川県(3位、2,390,000人)では、高齢者の孤立防止や社会参加の促進が重要な政策課題となっています。一方、福井県(45位、235,000人)では、伝統的な地域コミュニティの中で高齢者が役割を持って生活できる環境づくりが進められています。

都市インフラの再構築

老年人口が多い都市部では、バリアフリー化や公共交通の整備など、高齢者に配慮した都市インフラの再構築が求められています。一方、老年人口は少なくても高齢化率の高い地方では、コンパクトシティ化や地域公共交通の維持が課題となっています。

例えば、埼玉県(4位、2,012,000人)では、郊外に広がる住宅地の高齢化に伴い、公共交通の再編や生活サービスの効率的な提供が課題となっています。一方、徳島県(43位、246,000人)では、過疎化が進む中山間地域での生活インフラの維持が大きな課題となっています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2023年度の都道府県別老年人口データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約767,000人、中央値は約417,000人と大きく異なっています。これは、東京都や大阪府などの極端に高い値が平均値を引き上げているためで、データの分布が右に強く歪んでいることを示しています。

  2. 分布の歪み:データは強い正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。多くの県が比較的少ない老年人口である一方、少数の都府県が非常に多い値を示しています。

  3. 外れ値の特定:東京都(3,205,000人)、大阪府(2,424,000人)、神奈川県(2,390,000人)は、他の都道府県と比べて特に高い値を示しており、統計的に見ると外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約246,000人、第3四分位数(Q3)は約825,000人で、四分位範囲(IQR)は約579,000人です。これは、中央の50%の都道府県の老年人口が246,000人から825,000人の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約767,000人で、平均値(767,000人)と同程度の大きさとなっています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約100%となり、相対的なばらつきが極めて大きいことを示しています。これは、都道府県間の老年人口に極めて大きな地域差があることを統計的に裏付けています。

まとめ

2023年度の都道府県別老年人口ランキングでは、東京都が3,205,000人で1位、鳥取県が179,000人で47位となりました。上位には三大都市圏の都府県が、下位には中国・四国地方の県が多く見られました。

老年人口の地域差は、総人口の規模、過去の人口移動パターン、産業構造の変化など様々な要因によって生じており、この差は医療・介護需要、社会保障制度、地域コミュニティ、都市インフラなど多方面に影響を与えています。

統計分析からは、都道府県間の老年人口に極めて大きなばらつきがあり、最多地域と最少地域の差は約17.9倍(3,205,000人÷179,000人)に達することがわかります。この極めて大きな地域差は、日本の人口分布の不均衡を示すとともに、高齢化対策の地域差の必要性を物語っています。

高齢化が進む日本において、老年人口への対応は全国共通の課題ですが、その対応策は地域の特性に応じて異なるアプローチが必要です。都市部では医療・介護サービスの充実や都市インフラの再構築、地方では地域包括ケアシステムの構築や地域公共交通の維持など、地域の実情に合わせた取り組みが求められています。

出典