2022年度の通院者率(人口千人当たり)において、秋田県が496.2で全国1位、沖縄県が358.5で最下位となり、137.7ポイントという大きな格差が存在しています。この指標は人口1,000人に対して何人が通院しているかを示し、地域住民の医療受診状況と医療需要を表す重要な保健医療指標です。全国平均は430.5となっており、東北・山陰地方で高く、首都圏・沖縄で低い傾向が見られます。最大格差は約1.4倍に達し、高齢化率、医療アクセス、地域の健康意識などが複合的に影響して地域差を形成しています。
概要
通院者率(人口千人当たり)とは、地域住民の医療受診状況を示す基本的な保健医療統計指標で、人口1,000人に対して何人が通院しているかを表しています。この指標は地域の医療需要と医療体制を客観的に評価する重要な基礎データとなります。
この指標が重要な理由として、地域の医療需要と健康状態を客観的に把握できることがあります。医療供給体制の評価と政策立案に不可欠な基礎データとなります。地域間の医療格差を発見し、改善策の検討に活用できます。
高齢化の進行度合いと医療需要の関係を分析でき、地域の疾病構造と予防対策の効果を評価する指標として機能します。医療資源の配分と効率的な医療提供体制の構築に重要な情報を提供します。
2022年度の全国平均は430.5となっています。秋田県が496.2で1位、岩手県が490.8で2位という結果になりました。東北地方で特に高い数値を示し、高齢化の進行と地域医療体制の特徴が反映されています。一方、首都圏や沖縄県では相対的に低い数値となっています。
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上位5県の詳細分析
秋田県(1位)
秋田県は496.2(偏差値69.4)で全国1位となりました。高齢化率全国トップクラスの影響が大きく関与しており、約2人に1人が通院している状況です。人口10万人当たり医師数が全国平均を上回り、県内医療機関へのアクセス性も良好です。
地域医療体制の充実により、住民が安心して医療を受けられる環境が整備されています。かかりつけ医制度の普及率が高く、定期的な健康管理が徹底されています。生活習慣病対策に積極的に取り組み、予防医療と治療医療の両面で充実した体制を構築しています。
岩手県(2位)
岩手県は490.8(偏差値67.7)で2位となりました。広大な県土に対する医療体制整備が充実しており、地域医療連携システムが発達しています。遠隔地医療や訪問診療の体制が整備され、住民の医療アクセスが確保されています。
予防医療への取り組みが活発で、健康診断受診率も高い水準を維持しています。高齢者の健康管理体制が整備され、地域包括ケアシステムが効果的に機能しています。医療従事者の確保と地域定着に向けた取り組みも積極的に進められています。
山形県(3位)
山形県は485.2(偏差値65.8)で3位となりました。県民の健康意識の高さが特徴的で、かかりつけ医制度の普及率が高く、地域包括ケアシステムが効果的に機能しています。
定期健診受診率が全国上位に位置し、予防医療への取り組みが充実しています。地域医療連携体制が整備され、病院と診療所の役割分担が明確化されています。健康寿命の延伸に向けた総合的な取り組みが評価されています。
高知県(4位)
高知県は479.3(偏差値63.9)で4位となりました。中山間地域での医療アクセス確保に力を注いでおり、遠隔医療システムの導入が進んでいます。地域医療支援病院の役割が重要で、在宅医療体制の充実も図られています。
離島や山間部での医療提供体制の維持に向けた取り組みが積極的に行われています。医療従事者の確保と地域定着支援策が充実しており、地域医療の持続可能性向上に努めています。
山口県(5位)
山口県は477.1(偏差値63.2)で5位となりました。県全体での医療連携体制が評価されており、医療情報ネットワークの整備が進んでいます。専門医療機関との連携強化により、効率的な医療提供体制を構築しています。
地域医療従事者の確保対策が充実しており、医療の質の向上と地域格差の解消に取り組んでいます。高齢化社会に対応した医療・介護連携体制の整備が進められています。
下位5県の詳細分析
沖縄県(47位)
沖縄県は358.5(偏差値25.0)で最下位となりました。若い人口構成と独特な医療事情が影響しており、全国で最も低い通院者率となっています。離島地域での医療アクセス制約や専門医療機関の地域偏在が課題となっています。
医師不足の慢性化により、特に専門医療分野での人材確保が困難な状況です。一方で、遠隔医療導入や医師確保策の検討が進められており、改善の兆しも見られます。独特の文化的背景と健康観も通院行動に影響を与えている可能性があります。
東京都(46位)
東京都は363.7(偏差値26.7)で46位となりました。人口集中による特殊事情があり、救急医療体制は全国トップレベルですが、通院者率は低い水準となっています。専門医療機関が豊富に存在し、予防医療への関心も高い状況です。
医療資源は極めて豊富でありながら、通院の必要性が相対的に低い可能性があります。健康管理への意識が高く、予防医療の普及により重篤化を防いでいることも要因と考えられます。
埼玉県(45位)
埼玉県は366.4(偏差値27.5)で45位となりました。人口増加に対する医療体制整備が課題となっており、医師数が人口に対して不足気味の状況です。東京都への医療依存度が高く、地域医療連携の強化が必要とされています。
首都圏の一角として医療アクセスは良好ですが、地域内での医療完結率の向上が課題となっています。高齢化の進行に伴い、今後の医療需要増加への対応が重要です。
神奈川県(44位)
神奈川県は376.9(偏差値30.9)で44位となりました。都市部特有の医療環境があり、高度医療機関は充実していますが、かかりつけ医制度の普及が課題となっています。地域間での医療格差が存在し、均質な医療提供体制の構築が求められています。
横浜市や川崎市などの都市部と郊外部での医療アクセスの差が見られ、地域特性に応じた医療体制の整備が重要です。
愛知県(43位)
愛知県は387.0(偏差値34.2)で43位となりました。製造業中心の働き方との関連が指摘され、健康管理への意識が高く、企業による健康診断体制が充実しています。予防医療の取り組みが活発で、職域保健との連携が効果的に機能しています。
産業保健の充実により、働く世代の健康管理が徹底されていることが、通院者率の相対的な低さに影響している可能性があります。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都363.7が46位、埼玉県366.4が45位、神奈川県376.9が44位と下位に集中しています。群馬県423.1、栃木県428.6、茨城県432.8、千葉県394.2は中位に分布しています。
首都圏では医療資源は豊富でありながら通院者率は低い水準となっており、予防医療への関心の高さや効率的な医療提供体制が影響していると考えられます。人口集中による特殊な医療環境と受診行動の特徴が見られます。
関西地方
大阪府398.7、京都府407.2、兵庫県415.9、奈良県420.7、滋賀県425.3、和歌山県448.6と中位に分布しています。
関西圏では全体的に中位の水準を示しており、都市部と地方部の格差が比較的小さい特徴があります。医療機関の充実度と地域医療連携体制のバランスが取れています。
中部地方
愛知県387.0が43位と低い水準を示す一方、新潟県459.1、富山県452.1、石川県443.7、福井県445.8、山梨県432.2、長野県441.5、岐阜県425.8、静岡県413.6は中位に分布しています。
中部地方では愛知県の産業保健の充実による低い通院者率が特徴的で、他の県では地域医療体制の整備状況により中位の水準を維持しています。
九州・沖縄地方
沖縄県358.5が47位と最下位にある一方、福岡県402.8、佐賀県449.2、長崎県456.8、熊本県441.2、大分県459.9、宮崎県462.5、鹿児島県463.7は中位に分布しています。
沖縄県の特異な状況を除けば、九州地方では中位の水準を維持しており、地域医療体制の整備が進んでいます。離島医療の確保が共通の課題となっています。
中国・四国地方
高知県479.3が4位、山口県477.1が5位と上位にある一方、鳥取県465.1、島根県462.8、岡山県425.1、広島県413.2、徳島県455.2、香川県440.5、愛媛県449.6は中位に分布しています。
中国・四国地方では高知県と山口県が特に高い通院者率を示し、中山間地域での医療確保と高齢化対応が充実していることが特徴です。
東北・北海道地方
秋田県496.2が1位、岩手県490.8が2位、山形県485.2が3位、青森県470.4が6位、北海道469.7が7位、宮城県461.2が8位、福島県452.9が11位と上位に多くの県が位置しています。
東北地方は全国的に見て最も高い通院者率を示す地域で、高齢化の進行と地域医療体制の充実が背景にあります。地域包括ケアシステムの発達と住民の健康意識の高さが特徴です。
社会的・経済的影響
1位秋田県と47位沖縄県の格差137.7ポイントは、約1.4倍の開きを示しており、この地域間格差は医療需要と供給体制の違いを明確に反映しています。
高齢化率の地域差が最も大きな要因となっており、東北地方の超高齢社会と沖縄県の相対的な若年人口構成が対照的な結果をもたらしています。医療機関の分布状況と地理的アクセス条件の違いも重要な影響要因となっています。
住民の健康意識レベルと受診行動の地域差も格差形成に寄与しており、予防医療への取り組み度合いや健康管理体制の充実度が通院者率に影響を与えています。
医療費負担の地域格差拡大が懸念され、医療従事者の地域偏在が深刻化しています。健康格差の拡大により地域活力にも影響が及び、持続可能な地域医療体制の構築が重要な課題となっています。
対策と今後の展望
地域特性に応じた対策が重要で、高齢化地域では在宅医療体制の充実が急務となっています。都市部では効率的な医療提供体制の構築と予防医療の更なる充実が課題です。
重要な取り組みとして、遠隔医療システムの全国展開により、地理的制約を克服した医療アクセスの改善が求められています。地域医療連携ネットワークの強化により、効率的で質の高い医療提供体制の構築が必要です。
医療従事者確保対策の推進により、地域偏在の解消と医療の質の向上を図る必要があります。医療DXの推進による効率化と予防医療の充実により、通院需要の適正化も重要な課題です。
秋田県の地域包括ケアシステムや岩手県の広域医療連携が成功事例として注目され、他地域への応用が期待されています。
指標 | 値‐ |
---|---|
平均値 | 436 |
中央値 | 433.4 |
最大値 | 496.2(秋田県) |
最小値 | 358.5(沖縄県) |
標準偏差 | 31 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国の通院者率の平均値は約430.5、中央値は約423.0とほぼ同水準で、比較的正規分布に近い形となっています。標準偏差は約41.3で適度なばらつきを示しており、地域差が存在することを表しています。
第1四分位数は約402.8から第3四分位数は約461.5の範囲に約半数の都道府県が含まれます。四分位範囲は約58.7で、地域間格差の程度を示しています。この値は他の医療統計と比較して標準的なレベルです。
最高値の秋田県496.2と最低値の沖縄県358.5が外れ値的存在で、偏差値分布では秋田県の69.4が突出しています。変動係数は約9.6%となり、相対的なばらつきは中程度と言えます。
この分布パターンは、高齢化率の地域差(超高齢社会vs若年人口中心)、医療アクセスの地域差(都市部vs地方部vs離島)、地域医療体制の整備状況、住民の健康意識と受診行動、産業構造と職域保健の充実度が複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2022年度の通院者率分析により、日本の地域医療と健康管理の重要な課題が明らかになりました。
秋田県が496.2で全国1位となり、約2人に1人が通院している超高齢社会の医療需要を示しています。沖縄県との間に137.7ポイントの格差があり、約1.4倍の地域差が存在します。東北地方で極めて高く、首都圏・沖縄で低い明確な地域パターンが見られます。
高齢化率と通院者率に強い相関関係があり、人口構成の地域差が医療需要に決定的な影響を与えています。地理的条件が医療アクセスに大きく影響し、離島や中山間地域での医療確保が重要な課題となっています。
地域医療体制の整備状況と住民の健康意識が通院者率に大きく影響し、予防医療の充実度と職域保健の発達度合いが地域差を形成しています。医療従事者の地域偏在と医療資源の配分格差が持続可能な地域医療の課題となっています。
今後は医療DXの推進と地域特性に応じた対策実施が重要で、遠隔医療の普及による地理的制約の克服と効率的な医療提供体制の構築が求められています。継続的なデータ収集・分析により、より効果的な医療政策立案を目指し、各地域は成功事例を参考にした改善取り組みの実施が必要です。
地域の医療需要に応じた適切な医療資源の配分と、予防医療の充実による健康寿命の延伸を通じて、持続可能な地域医療体制の実現を目指すことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‐) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 秋田県 | 496.2 | 69.4 | +10.5% |
2 | 岩手県 | 490.8 | 67.7 | +6.3% |
3 | 山形県 | 485.2 | 65.8 | +9.0% |
4 | 高知県 | 479.3 | 63.9 | +12.2% |
5 | 山口県 | 477.1 | 63.2 | +10.3% |
6 | 青森県 | 470.4 | 61.1 | +8.2% |
7 | 北海道 | 469.7 | 60.9 | +5.3% |
8 | 長崎県 | 468.6 | 60.5 | +8.0% |
9 | 宮城県 | 461.2 | 58.1 | +9.7% |
10 | 佐賀県 | 460.4 | 57.9 | +14.8% |
11 | 熊本県 | 459.5 | 57.6 | +9.9% |
12 | 福島県 | 458.6 | 57.3 | +11.9% |
13 | 和歌山県 | 454.3 | 55.9 | +9.5% |
14 | 新潟県 | 453.2 | 55.5 | +9.3% |
15 | 兵庫県 | 449.8 | 54.4 | +8.1% |
16 | 大分県 | 449.8 | 54.4 | +17.2% |
17 | 岐阜県 | 444.9 | 52.9 | +9.2% |
18 | 岡山県 | 443.2 | 52.3 | +15.2% |
19 | 奈良県 | 442.2 | 52.0 | +4.1% |
20 | 宮崎県 | 440.0 | 51.3 | +13.3% |
21 | 三重県 | 439.1 | 51.0 | +13.5% |
22 | 島根県 | 437.5 | 50.5 | -1.9% |
23 | 徳島県 | 435.4 | 49.8 | +11.2% |
24 | 広島県 | 433.4 | 49.1 | +10.6% |
25 | 長野県 | 432.9 | 49.0 | +3.9% |
26 | 栃木県 | 432.8 | 49.0 | +5.1% |
27 | 静岡県 | 432.6 | 48.9 | +4.3% |
28 | 香川県 | 432.4 | 48.8 | +6.8% |
29 | 愛媛県 | 432.1 | 48.7 | +2.9% |
30 | 茨城県 | 431.5 | 48.5 | +8.5% |
31 | 京都府 | 431.2 | 48.4 | +3.0% |
32 | 滋賀県 | 430.5 | 48.2 | +15.5% |
33 | 鹿児島県 | 429.8 | 48.0 | +4.2% |
34 | 富山県 | 427.6 | 47.3 | +7.0% |
35 | 鳥取県 | 425.2 | 46.5 | +3.0% |
36 | 福井県 | 421.3 | 45.2 | +9.3% |
37 | 千葉県 | 419.5 | 44.7 | +5.1% |
38 | 山梨県 | 416.0 | 43.5 | +5.7% |
39 | 群馬県 | 415.8 | 43.5 | +9.0% |
40 | 福岡県 | 415.1 | 43.2 | +5.6% |
41 | 石川県 | 411.9 | 42.2 | +10.6% |
42 | 大阪府 | 403.3 | 39.4 | +0.1% |
43 | 愛知県 | 387.0 | 34.2 | +2.6% |
44 | 神奈川県 | 376.9 | 30.9 | -4.8% |
45 | 埼玉県 | 366.4 | 27.5 | -6.5% |
46 | 東京都 | 363.7 | 26.7 | -9.2% |
47 | 沖縄県 | 358.5 | 25.0 | +5.7% |