2022年度の都道府県別有料老人ホーム数(65歳以上人口10万人当たり)のランキングを分析します。このデータは、各地域の高齢者向け住環境の整備状況や、介護サービスの供給体制を理解する上で重要な指標です。
概要
有料老人ホーム数は、高齢者が多様なライフスタイルに応じて住まいを選択できる社会の成熟度を示す指標の一つです。この数値は、地域の高齢化率、地価、自治体の政策、民間事業者の参入意欲など、複合的な要因によって変動します。特に、九州地方で高く、近畿地方で低いという顕著な地域差が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングでは、九州地方の県が上位を占める結果となりました。これらの地域では、高齢化が進行する中で、民間事業者によるサービス供給が活発であることがうかがえます。
宮崎県
宮崎県は、65歳以上人口10万人当たりの有料老人ホーム数が139.77所(偏差値79.6)で、全国1位です。温暖な気候や比較的安価な土地が、高齢者向け施設の立地に適していると考えられます。
沖縄県
沖縄県は125.87所(偏差値75.0)で2位にランクインしました。高い高齢化率に加え、本土からの移住者向けの施設需要も多いことが背景にあると推測されます。
佐賀県
佐賀県は112.75所(偏差値70.6)で3位です。福岡市という大都市圏に隣接し、サービスの需要と供給のバランスが取れている地域である可能性があります。
青森県
青森県は112.65所(偏差値70.6)で4位でした。東北地方の中では際立って高い数値であり、行政の積極的な誘致策などが功を奏しているのかもしれません。
大分県
大分県は100.8所(偏差値66.7)で5位に入りました。温泉地として有名であり、観光資源を活かした特色ある高齢者向け施設が多いことが考えられます。
下位5県の詳細分析
下位の都道府県は、主に近畿地方やその周辺に集中しています。これらの地域では、地価の高さや、在宅介護を重視する文化などが、有料老人ホームの普及を抑制している可能性があります。
栃木県
栃木県は19.41所(偏差値39.6)で43位です。首都圏へのアクセスが良い一方で、高齢者向け施設の整備は比較的進んでいないようです。
山梨県
山梨県は17.06所(偏差値38.8)で44位でした。山がちな地形で、施設の建設に適した土地が限られていることなどが影響している可能性があります。
京都府
京都府は14.3所(偏差値37.9)で45位です。歴史的な景観を維持するための建築規制などが、新たな施設の建設を難しくしている一因かもしれません。
福井県
福井県は13.19所(偏差値37.5)で46位でした。三世代同居率が高く、家族内で高齢者のケアを行う文化が根強いことが、施設数の少なさに影響していると考えられます。
滋賀県
滋賀県は12.7所(偏差値37.4)で最下位の47位となりました。京阪神のベッドタウンとして発展し、地価が比較的高騰していることが、施設建設の障壁になっていると推測されます。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
有料老人ホームの数は、高齢者の「住まいの選択肢」の多様性に直結します。施設数が多い地域では、高齢者は自身の健康状態や経済状況に応じて、様々なタイプの住居やサービスを選ぶことができます。これにより、高齢者自身のQOL(生活の質)の向上だけでなく、介護を行う家族の負担軽減にもつながります。一方、施設数が少ない地域では、選択肢が限られるため、希望するサービスを受けられなかったり、住み慣れた地域を離れて施設を探さなければならないといった問題が生じます。これは、高齢者の心身の健康に影響を与えるだけでなく、地域経済の観点からも、介護サービスの雇用創出機会を逃すことになりかねません。
対策と今後の展望
高齢者向け住居の地域差を解消するためには、国と地方自治体が連携し、地域の実情に合わせた整備計画を進めることが重要です。例えば、地価の高い都市部では、既存の建物をリノベーションして高齢者向け住居に転用する取り組みや、小規模多機能型居宅介護のような地域密着型サービスを拡充することが有効です。一方、地方では、空き家を活用したグループホームの整備や、医療・介護・生活支援サービスを一体的に提供する「日本版CCRC(生涯活躍のまち)」の構築などが考えられます。今後は、施設の「数」を増やすだけでなく、多様なニーズに応える「質」の高いサービスをいかに提供していくかが、すべての地域にとっての課題となるでしょう。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値所 |
---|---|
平均値 | 50.7 |
中央値 | 40.3 |
最大値 | 139.77(宮崎県) |
最小値 | 12.7(滋賀県) |
標準偏差 | 30.1 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の有料老人ホーム数ランキングは、日本の高齢者向け住環境が、地域によって大きく異なる実態を浮き彫りにしました。九州地方で施設整備が進んでいる一方、近畿地方では立ち遅れが目立ちます。この背景には、地価や高齢化率、地域の文化といった、それぞれの地域が抱える複雑な事情があります。すべての高齢者が、尊厳を持って自分らしい生活を送れる社会を実現するためには、こうした地域差を乗り越え、多様な住まいの選択肢を確保していくことが不可欠です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 139.77 | 79.6 | +1.6% |
2 | 沖縄県 | 125.87 | 75.0 | +0.2% |
3 | 佐賀県 | 112.75 | 70.6 | +5.2% |
4 | 青森県 | 112.65 | 70.6 | +1.3% |
5 | 大分県 | 100.80 | 66.7 | +3.0% |
6 | 群馬県 | 90.66 | 63.3 | +3.3% |
7 | 熊本県 | 88.95 | 62.7 | +0.8% |
8 | 鹿児島県 | 72.08 | 57.1 | -0.4% |
9 | 福岡県 | 69.84 | 56.4 | +0.7% |
10 | 山形県 | 67.68 | 55.6 | +0.4% |
11 | 岩手県 | 66.42 | 55.2 | +1.8% |
12 | 北海道 | 65.95 | 55.1 | +0.9% |
13 | 山口県 | 61.90 | 53.7 | +3.2% |
14 | 大阪府 | 60.98 | 53.4 | +8.7% |
15 | 愛媛県 | 60.72 | 53.3 | +1.4% |
16 | 長崎県 | 56.78 | 52.0 | +0.4% |
17 | 和歌山県 | 55.70 | 51.7 | +7.9% |
18 | 岐阜県 | 54.47 | 51.3 | +12.5% |
19 | 愛知県 | 53.85 | 51.0 | +7.0% |
20 | 神奈川県 | 46.96 | 48.8 | +2.6% |
21 | 千葉県 | 46.21 | 48.5 | +4.8% |
22 | 石川県 | 45.27 | 48.2 | +4.1% |
23 | 香川県 | 45.03 | 48.1 | +4.2% |
24 | 長野県 | 40.33 | 46.6 | +3.1% |
25 | 三重県 | 39.92 | 46.4 | +5.5% |
26 | 鳥取県 | 38.33 | 45.9 | +3.0% |
27 | 岡山県 | 37.98 | 45.8 | +3.5% |
28 | 島根県 | 37.55 | 45.6 | +2.4% |
29 | 埼玉県 | 34.83 | 44.7 | -3.4% |
30 | 宮城県 | 34.29 | 44.5 | +2.1% |
31 | 東京都 | 31.70 | 43.7 | +5.5% |
32 | 兵庫県 | 31.22 | 43.5 | +8.2% |
33 | 富山県 | 31.04 | 43.5 | +5.7% |
34 | 秋田県 | 30.64 | 43.3 | +1.2% |
35 | 奈良県 | 29.79 | 43.0 | +5.0% |
36 | 広島県 | 29.30 | 42.9 | +0.6% |
37 | 福島県 | 29.01 | 42.8 | +4.8% |
38 | 高知県 | 28.28 | 42.5 | +8.3% |
39 | 静岡県 | 28.07 | 42.5 | +4.2% |
40 | 徳島県 | 28.05 | 42.5 | +3.4% |
41 | 茨城県 | 23.84 | 41.1 | +7.3% |
42 | 新潟県 | 20.78 | 40.1 | +7.3% |
43 | 栃木県 | 19.41 | 39.6 | -0.5% |
44 | 山梨県 | 17.06 | 38.8 | +7.5% |
45 | 京都府 | 14.30 | 37.9 | +7.4% |
46 | 福井県 | 13.19 | 37.5 | +15.3% |
47 | 滋賀県 | 12.70 | 37.4 | +11.0% |