2022年度の都道府県別周産期死亡率(出生数千当たり)のランキングを分析します。このデータは、妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡を合わせたもので、各地域の母子保健や周産期医療の水準を示す重要な指標です。
概要
周産期死亡率は、国の医療水準や公衆衛生の状態を反映する指標として国際的にも重視されています。この率が低いことは、質の高い産科・新生児医療体制が整備され、妊婦健診の受診率が高く、社会経済的に安定した環境であることを示唆します。逆に、率が高い場合は、医療資源の不足やアクセスへの障壁、あるいは地域特有の健康課題が存在する可能性を示します。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングで周産期死亡率が高かったのは、山間部や離島を抱え、医療機関へのアクセスに課題がある県が目立ちます。
山形県
山形県は、周産期死亡率が5.1(偏差値80.1)で全国で最も高い結果となりました。産科医の不足や、冬期の積雪による交通の困難などが、緊急時の対応を難しくしている可能性があります。
香川県
香川県は4.6(偏差値71.5)で2位です。瀬戸内海に多くの島々を抱えており、離島からの緊急搬送体制の確保が課題となっていることが推測されます。
和歌山県
和歌山県は4.4(偏差値68.1)で3位でした。紀伊半島の広大な山間部では、専門的な周産期医療を受けられる施設へのアクセスが容易でないことが影響していると考えられます。
新潟県
新潟県は4.2(偏差値64.6)で4位です。広大な県域と、山形県同様、冬期の豪雪が医療アクセスへの障壁となっている可能性があります。
愛媛県
愛媛県も4.2(偏差値64.6)で4位タイでした。四国山地や沿岸部の島嶼地域など、地理的に多様な環境が、均質な医療サービスの提供を難しくしているのかもしれません。
下位5県の詳細分析
周産期死亡率が低かったのは、大都市圏に近く、高度な医療機関へのアクセスが良い県が中心でした。
宮崎県
宮崎県は2.8(偏差値40.5)で41位タイです。県立病院や大学病院を中心とした周産期医療ネットワークが機能していると考えられます。
秋田県
秋田県は2.7(偏差値38.7)で44位でした。人口減少や高齢化が進む中でも、医療の質を維持するための取り組みが成果を上げていると言えるでしょう。
鹿児島県
鹿児島県は2.5(偏差値35.3)で45位です。多くの離島を抱えながらも、ドクターヘリの活用など、遠隔地医療の体制整備が進んでいることが、この結果につながっていると考えられます。
徳島県
徳島県は2.4(偏差値33.6)で46位でした。大学病院への医療機能の集約と、県内医療機関との連携が効果的に機能していることが推測されます。
滋賀県
滋賀県は2.2(偏差値30.1)で全国で最も低い死亡率となりました。京阪神という大都市圏に隣接し、高度な医療機関へのアクセスが非常に良いことが最大の要因と考えられます。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
周産期死亡率の地域差は、その地域で安心して子どもを産み育てられる環境が整っているかどうかを示す、重要な指標です。この率が高い地域では、妊婦やその家族が大きな不安を抱えることになり、結果として出生数の減少や、若年層の他地域への流出につながる可能性があります。また、周産期医療は高度な医療技術と多くの専門スタッフを必要とするため、この体制が脆弱であることは、地域全体の医療水準に対する信頼を損なうことにもなりかねません。逆に、周産期死亡率が低い地域は、「子育てしやすい街」としての評価が高まり、若者世代の移住・定住を促進する効果も期待できます。
対策と今後の展望
周産期死亡率の地域差を改善するためには、各地域の地理的・社会的な特性を踏まえた、多角的なアプローチが必要です。産科医や新生児科医が不足している地域では、医師の派遣やオンライン診療の活用などを通じて、専門的な医療へのアクセスを確保することが急務です。また、山間部や離島では、ドクターヘリや救急搬送体制の強化が不可欠です。さらに、すべての妊婦が必要な健診を受けられるよう、経済的な支援や、交通手段の確保といったサポートも重要になります。今後は、AIによるリスク予測など、新しいテクノロジーを活用して、より早期にハイリスクな妊娠を発見し、適切な医療につなげていく取り組みも期待されます。安全で安心な出産環境を全国どこでも提供できるようにすることが、日本の未来にとって重要な課題です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値‐ |
---|---|
平均値 | 3.4 |
中央値 | 3.2 |
最大値 | 5.1(山形県) |
最小値 | 2.2(滋賀県) |
標準偏差 | 0.6 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の周産期死亡率ランキングは、日本の周産期医療が全体として高い水準にある一方で、地域による格差が依然として存在することを明らかにしました。特に、地理的な条件が医療アクセスを困難にし、それが死亡率に影響を与えている実態が浮き彫りになりました。すべての母親と赤ちゃんが、住んでいる場所にかかわらず、質の高い医療を受けられる社会を実現するために、医療資源の適切な配置と、地域の実情に合わせたきめ細やかな支援体制の構築が求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‐) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 山形県 | 5.1 | 80.1 | +75.9% |
2 | 香川県 | 4.6 | 71.5 | +119.0% |
3 | 和歌山県 | 4.4 | 68.1 | +100.0% |
4 | 新潟県 | 4.2 | 64.6 | -10.6% |
5 | 愛媛県 | 4.2 | 64.6 | +31.3% |
6 | 石川県 | 4.1 | 62.9 | +28.1% |
7 | 富山県 | 4.0 | 61.2 | -9.1% |
8 | 山口県 | 4.0 | 61.2 | -9.1% |
9 | 高知県 | 3.8 | 57.7 | +2.7% |
10 | 大分県 | 3.8 | 57.7 | - |
11 | 群馬県 | 3.7 | 56.0 | +8.8% |
12 | 神奈川県 | 3.7 | 56.0 | +12.1% |
13 | 岐阜県 | 3.7 | 56.0 | +19.4% |
14 | 岩手県 | 3.6 | 54.3 | +24.1% |
15 | 福島県 | 3.6 | 54.3 | -12.2% |
16 | 茨城県 | 3.6 | 54.3 | -21.7% |
17 | 島根県 | 3.6 | 54.3 | +24.1% |
18 | 岡山県 | 3.5 | 52.5 | +20.7% |
19 | 大阪府 | 3.4 | 50.8 | +3.0% |
20 | 東京都 | 3.3 | 49.1 | +13.8% |
21 | 奈良県 | 3.3 | 49.1 | - |
22 | 長崎県 | 3.3 | 49.1 | -15.4% |
23 | 青森県 | 3.2 | 47.4 | -15.8% |
24 | 千葉県 | 3.2 | 47.4 | -3.0% |
25 | 静岡県 | 3.2 | 47.4 | -20.0% |
26 | 鳥取県 | 3.2 | 47.4 | +6.7% |
27 | 福岡県 | 3.2 | 47.4 | -13.5% |
28 | 北海道 | 3.1 | 45.6 | -20.5% |
29 | 山梨県 | 3.1 | 45.6 | +19.2% |
30 | 広島県 | 3.1 | 45.6 | -3.1% |
31 | 佐賀県 | 3.1 | 45.6 | -35.4% |
32 | 沖縄県 | 3.1 | 45.6 | -3.1% |
33 | 栃木県 | 3.0 | 43.9 | -23.1% |
34 | 京都府 | 3.0 | 43.9 | -14.3% |
35 | 宮城県 | 2.9 | 42.2 | -12.1% |
36 | 福井県 | 2.9 | 42.2 | -9.4% |
37 | 愛知県 | 2.9 | 42.2 | -17.1% |
38 | 三重県 | 2.9 | 42.2 | +3.6% |
39 | 兵庫県 | 2.9 | 42.2 | -14.7% |
40 | 熊本県 | 2.9 | 42.2 | -23.7% |
41 | 埼玉県 | 2.8 | 40.5 | - |
42 | 長野県 | 2.8 | 40.5 | -17.6% |
43 | 宮崎県 | 2.8 | 40.5 | -6.7% |
44 | 秋田県 | 2.7 | 38.7 | -15.6% |
45 | 鹿児島県 | 2.5 | 35.3 | -37.5% |
46 | 徳島県 | 2.4 | 33.6 | -29.4% |
47 | 滋賀県 | 2.2 | 30.1 | +29.4% |