2022年度の都道府県別生活保護被保護実人員(月平均人口千人当たり)のランキングを分析します。このデータは、各地域における公的な生活支援を必要とする人々の割合を示し、社会経済的な安定性を測る上で重要な指標です。
概要
生活保護被保護実人員は、その地域の経済状況、雇用環境、高齢化の度合い、さらには家族形態の変化など、様々な社会的要因を映し出す鏡と言えます。この率が高い地域は、経済的に困難な状況にある人々が多いことを示唆しており、セーフティネットのあり方が問われます。逆に、率が低い地域は、安定した雇用や強固な地域コミュニティが存在し、住民が経済的に自立しやすい環境にあると考えられます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングで被保護実人員の割合が高かったのは、大都市や、特定の産業構造を持つ地域でした。
大阪府
大阪府は、人口千人当たりの被保護実人員が30.46人(偏差値75.9)で、全国で最も高い数値となりました。日雇い労働者が多い西成区などの存在や、中小零細企業が多く、経済変動の影響を受けやすい産業構造が背景にあると考えられます。
北海道
北海道は29.49人(偏差値74.4)で2位です。広大な土地ゆえに都市部へのアクセスが困難な地域が多いことや、冬季に仕事が減少する季節労働者の存在が、生活保護受給率を押し上げる一因とされています。
沖縄県
沖縄県は26.69人(偏差値70.0)で3位でした。全国に比べて賃金水準が低いことや、観光業など季節変動の大きい産業への依存度が高いことが、雇用の不安定さにつながっていると指摘されています。
高知県
高知県は25.58人(偏差値68.3)で4位です。深刻な人口減少と高齢化に直面しており、働き手が少なく、地域経済が縮小傾向にあることが、被保護実人員の多さに影響していると考えられます。
福岡県
福岡県は23.35人(偏差値64.8)で5位に入りました。かつての主要産業であった炭鉱の閉山による影響が今なお残っており、失業者の生活支援が必要な状況が続いていることが背景にあると推測されます。
下位5県の詳細分析
被保護実人員の割合が低かったのは、主に北陸地方の県でした。これらの地域では、安定した雇用と、家族や地域社会の強い絆が、セーフティネットとして機能していると考えられます。
岐阜県
岐阜県は5.9人(偏差値37.5)で44位です。製造業が盛んで、比較的安定した雇用環境が維持されていることが、低い数値につながっていると考えられます。
福井県
福井県は5.61人(偏差値37.0)で45位でした。共働き率や持ち家率が全国トップクラスであり、世帯収入が安定していることが、生活保護に頼らずに生活できる基盤となっています。
長野県
長野県は5.41人(偏差値36.7)で46位です。製造業からサービス業まで多様な産業がバランス良く存在し、安定した雇用を生み出していることが要因と考えられます。
富山県
富山県は4.13人(偏差値34.7)で全国で最も低い数値となりました。製造業、特に製薬業が盛んで、高い所得水準を維持していることに加え、三世代同居が多く、家族内での支え合いが機能していることも大きな要因です。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
生活保護被保護実人員の地域差は、日本の社会保障制度が直面する課題を浮き彫りにしています。被保護率が高い地域では、自治体の財政負担が増大し、他の行政サービスにしわ寄せが及ぶ可能性があります。また、貧困の世代間連鎖といった問題も深刻化しやすく、地域全体の活力が失われることにもつながりかねません。一方で、被保護率が低い地域は、経済的に安定していると言えますが、それが故に、潜在的な貧困問題が見過ごされやすいという側面もあります。経済状況の変化によっては、これまで安定していた地域でも、生活に困窮する人々が急増するリスクをはらんでいます。
対策と今後の展望
生活保護制度は、誰もが尊厳を保ちながら生きていくための最後のセーフティネットです。この制度を持続可能にし、真に支援を必要とする人々に行き届かせるためには、多角的な取り組みが求められます。まず、被保護率が高い地域では、ハローワークなどと連携した就労支援を強化し、経済的な自立を促すことが重要です。また、ひとり親家庭や高齢者など、特に生活困窮に陥りやすい層へのきめ細やかな支援も欠かせません。さらに、被保護率が低い地域においても、社会からの孤立を防ぎ、必要な時にためらわずに支援を求められるような環境づくりが必要です。今後は、生活保護に至る前の段階で人々を支える、予防的な福祉サービスの充実が、ますます重要になってくるでしょう。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 13.9 |
中央値 | 13.2 |
最大値 | 30.46(大阪府) |
最小値 | 4.13(富山県) |
標準偏差 | 6.4 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の生活保護被保護実人員ランキングは、日本の各地域が抱える社会経済的な課題を色濃く反映しています。大阪府や北海道、沖縄県などで高い数値が見られる一方、北陸地方では際立って低い水準にあります。この差は、単なる個人の問題ではなく、産業構造や雇用環境、家族や地域のあり方といった、社会全体の構造的な問題と深く結びついています。すべての人が安心して暮らせる社会を築くために、このデータから読み取れる課題に、私たち一人ひとりが向き合っていく必要があります。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大阪府 | 30.46 | 75.9 | -0.8% |
2 | 北海道 | 29.49 | 74.4 | -0.4% |
3 | 沖縄県 | 26.69 | 70.0 | +0.9% |
4 | 高知県 | 25.58 | 68.3 | -0.6% |
5 | 福岡県 | 23.35 | 64.8 | -0.7% |
6 | 青森県 | 23.10 | 64.4 | -0.7% |
7 | 京都府 | 21.05 | 61.2 | -1.5% |
8 | 長崎県 | 20.40 | 60.2 | -0.4% |
9 | 東京都 | 19.81 | 59.2 | -1.1% |
10 | 鹿児島県 | 18.55 | 57.3 | -0.8% |
11 | 兵庫県 | 18.27 | 56.8 | -0.4% |
12 | 徳島県 | 17.81 | 56.1 | -0.3% |
13 | 大分県 | 16.86 | 54.6 | -0.8% |
14 | 神奈川県 | 16.58 | 54.2 | -0.1% |
15 | 宮崎県 | 16.08 | 53.4 | -1.0% |
16 | 和歌山県 | 15.95 | 53.2 | +0.3% |
17 | 愛媛県 | 15.07 | 51.8 | -0.7% |
18 | 広島県 | 14.38 | 50.8 | -0.5% |
19 | 千葉県 | 14.29 | 50.6 | +0.8% |
20 | 秋田県 | 14.03 | 50.2 | -1.1% |
21 | 熊本県 | 13.97 | 50.1 | +0.1% |
22 | 奈良県 | 13.86 | 49.9 | -1.3% |
23 | 埼玉県 | 13.30 | 49.1 | +0.5% |
24 | 宮城県 | 13.22 | 48.9 | +1.4% |
25 | 岡山県 | 12.68 | 48.1 | +0.1% |
26 | 鳥取県 | 11.95 | 46.9 | -0.3% |
27 | 香川県 | 10.90 | 45.3 | +0.6% |
28 | 岩手県 | 10.59 | 44.8 | +0.2% |
29 | 栃木県 | 10.42 | 44.6 | -0.1% |
30 | 山口県 | 10.33 | 44.4 | -0.4% |
31 | 愛知県 | 10.15 | 44.1 | -0.1% |
32 | 茨城県 | 10.12 | 44.1 | +1.1% |
33 | 福島県 | 9.65 | 43.3 | +1.3% |
34 | 新潟県 | 9.61 | 43.3 | +1.4% |
35 | 佐賀県 | 9.21 | 42.7 | -1.4% |
36 | 静岡県 | 9.07 | 42.4 | +1.4% |
37 | 三重県 | 9.02 | 42.4 | +0.3% |
38 | 山梨県 | 8.75 | 41.9 | -0.1% |
39 | 島根県 | 8.16 | 41.0 | -0.7% |
40 | 群馬県 | 7.86 | 40.5 | +1.7% |
41 | 滋賀県 | 7.77 | 40.4 | +0.5% |
42 | 山形県 | 7.52 | 40.0 | +0.3% |
43 | 石川県 | 6.33 | 38.2 | +1.3% |
44 | 岐阜県 | 5.90 | 37.5 | - |
45 | 福井県 | 5.61 | 37.0 | +1.3% |
46 | 長野県 | 5.41 | 36.7 | - |
47 | 富山県 | 4.13 | 34.7 | +4.8% |