2022年度の都道府県別医薬品販売業数(可住地面積100km2当たり)のランキングを分析します。このデータは、人々が実際に居住し、生活しているエリアに、どれくらいの密度で薬局やドラッグストアが存在するかを示しており、医薬品への物理的なアクセスしやすさを測る指標です。
概要
医薬品販売業数の面積当たりの密度は、都市化の度合いと密接に関連しています。人口が密集し、商業施設が集中する都市部では、販売業数も多くなる傾向があります。一方、広大な土地に人口が点在する地方では、密度は低くなります。この指標は、単に店舗の数を見るだけでなく、住民が医薬品を必要としたときに、どれだけ容易にアクセスできる環境にあるかを浮き彫りにします。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングでは、大都市圏が上位を独占しました。これらの地域では、高い人口密度と商業活動の活発さが、医薬品販売業の高密度な配置につながっています。
東京都
東京都は、可住地面積100km2当たりの医薬品販売業数が348.8所(偏差値99.6)と、全国で断トツの1位です。世界有数の大都市であり、至る所に薬局やドラッグストアが存在するため、住民は非常に高い利便性を享受しています。
大阪府
大阪府は263.6所(偏差値85.4)で2位にランクインしました。西日本の経済・商業の中心地であり、特に都心部では医薬品販売業が密集しています。
神奈川県
神奈川県は154.5所(偏差値67.2)で3位です。横浜市や川崎市といった大都市を抱え、人口密度が高いことが、販売業数の多さに直結しています。
埼玉県
埼玉県は91.5所(偏差値56.7)で4位でした。東京都のベッドタウンとして多くの住宅地が広がり、住民の日常生活を支える形で医薬品販売業が展開されています。
奈良県
奈良県は85.6所(偏差値55.7)で5位に入りました。大阪府のベッドタウンとしての側面が強く、住宅地の密度が販売業数の多さに影響していると考えられます。
下位5県の詳細分析
下位の都道府県は、いずれも広大な面積を持つ、あるいは山間部が多い地域でした。これらの地域では、人口が分散しているため、面積当たりの販売業数は必然的に少なくなります。
福島県
福島県は17.7所(偏差値44.4)で43位です。広大な面積に加え、東日本大震災後の人口減少も、販売業数の密度に影響を与えている可能性があります。
青森県
青森県は17.6所(偏差値44.3)で44位でした。冬の積雪など厳しい自然環境も、店舗の維持や住民のアクセスに影響を与えているかもしれません。
岩手県
岩手県は16.3所(偏差値44.1)で45位です。本州で最も広い面積を持つ県であり、人口が広範囲に点在していることが、密度の低さに直結しています。
秋田県
秋田県は14.8所(偏差値43.9)で46位でした。全国で最も人口減少率が高い県の一つであり、それが販売業数の密度にも反映されています。
北海道
北海道は9.4所(偏差値43.0)で最下位の47位となりました。圧倒的な面積の広さが、この結果の最大の要因です。都市部とそれ以外の地域とで、医薬品へのアクセスに大きな差があることが推測されます。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
医薬品販売業数の面積当たりの密度は、住民の生活の利便性に直接影響します。密度が高い都市部では、夜間や休日でも営業している店舗を見つけやすく、急な体調不良にも対応しやすい環境にあります。また、競争が働くことで、価格やサービスの面で消費者の選択肢が広がるというメリットもあります。一方、密度が低い地方では、最寄りの薬局まで車で長時間移動しなければならないケースも少なくありません。特に、高齢者や交通弱者にとっては、医薬品へのアクセスが困難になることは、健康上のリスクを高める深刻な問題です。この「医療アクセス格差」は、都市部と地方の間に存在する様々な格差の一つであり、地域社会の持続可能性にも影響を与えます。
対策と今後の展望
医薬品アクセスの地域差を解消するためには、物理的な店舗の配置だけでなく、新しい技術の活用が鍵となります。オンライン診療と連携した服薬指導や、処方薬のドローン配送といった実証実験が各地で始まっています。こうした取り組みは、特に過疎地域や離島における医療アクセスを劇的に改善する可能性を秘めています。また、地域に根ざした小規模な薬局が、健康相談の拠点として機能することも重要です。薬剤師が地域住民の健康状態を継続的に把握し、適切なアドバイスを行うことで、病気の予防や早期発見に貢献できます。今後は、大規模チェーン店と地域密着型薬局、そしてオンラインサービスが、それぞれの長所を活かしながら共存し、地域の実情に応じた最適な医薬品提供体制を構築していくことが求められます。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値所 |
---|---|
平均値 | 51.5 |
中央値 | 34.3 |
最大値 | 348.8(東京都) |
最小値 | 9.4(北海道) |
標準偏差 | 59.9 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の医薬品販売業数(可住地面積当たり)ランキングは、日本の国土利用のあり方と、都市部への人口・商業機能の集中を如実に示しています。東京都の圧倒的な密度の高さと、北海道の広大さとの対比は、日本の多様な地域性を象徴していると言えるでしょう。このデータは、私たちが日頃何気なく利用している薬局やドラッグストアが、決して均一に存在しているわけではないことを教えてくれます。すべての人が、どこに住んでいても安心して医療サービスを受けられる社会を目指す上で、この指標が示す地域差は、重く受け止めなければならない課題です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 348.8 | 99.6 | +0.3% |
2 | 大阪府 | 263.6 | 85.4 | +1.0% |
3 | 神奈川県 | 154.5 | 67.2 | -0.3% |
4 | 埼玉県 | 91.5 | 56.7 | +0.1% |
5 | 奈良県 | 85.6 | 55.7 | +0.6% |
6 | 愛知県 | 82.1 | 55.1 | +1.0% |
7 | 京都府 | 79.8 | 54.7 | +6.5% |
8 | 福岡県 | 68.1 | 52.8 | -0.7% |
9 | 兵庫県 | 62.9 | 51.9 | -0.6% |
10 | 千葉県 | 48.6 | 49.5 | -0.2% |
11 | 岐阜県 | 47.3 | 49.3 | -2.3% |
12 | 広島県 | 45.8 | 49.0 | -0.2% |
13 | 静岡県 | 45.7 | 49.0 | -1.7% |
14 | 滋賀県 | 45.6 | 49.0 | -0.7% |
15 | 和歌山県 | 44.9 | 48.9 | -1.5% |
16 | 石川県 | 44.4 | 48.8 | -1.6% |
17 | 沖縄県 | 42.9 | 48.6 | +1.9% |
18 | 香川県 | 40.7 | 48.2 | -3.1% |
19 | 福井県 | 38.4 | 47.8 | +0.5% |
20 | 山梨県 | 37.7 | 47.7 | - |
21 | 富山県 | 36.6 | 47.5 | -4.4% |
22 | 群馬県 | 35.9 | 47.4 | +0.3% |
23 | 山口県 | 34.9 | 47.2 | -1.4% |
24 | 三重県 | 34.3 | 47.1 | -2.0% |
25 | 徳島県 | 34.2 | 47.1 | -1.7% |
26 | 愛媛県 | 33.4 | 47.0 | +0.9% |
27 | 長崎県 | 32.6 | 46.8 | -4.1% |
28 | 岡山県 | 31.5 | 46.7 | -2.5% |
29 | 宮城県 | 30.0 | 46.4 | -3.2% |
30 | 長野県 | 29.5 | 46.3 | -2.6% |
31 | 鳥取県 | 28.8 | 46.2 | +1.4% |
32 | 佐賀県 | 28.5 | 46.2 | -2.7% |
33 | 熊本県 | 26.5 | 45.8 | -1.1% |
34 | 茨城県 | 26.2 | 45.8 | -1.1% |
35 | 宮崎県 | 24.9 | 45.6 | -1.2% |
36 | 島根県 | 24.8 | 45.5 | -3.5% |
37 | 大分県 | 24.7 | 45.5 | -1.6% |
38 | 高知県 | 24.6 | 45.5 | -6.1% |
39 | 栃木県 | 24.5 | 45.5 | - |
40 | 鹿児島県 | 21.6 | 45.0 | -1.8% |
41 | 新潟県 | 19.9 | 44.7 | -2.0% |
42 | 山形県 | 18.9 | 44.6 | +1.1% |
43 | 福島県 | 17.7 | 44.4 | -1.7% |
44 | 青森県 | 17.6 | 44.3 | +1.1% |
45 | 岩手県 | 16.3 | 44.1 | -4.1% |
46 | 秋田県 | 14.8 | 43.9 | - |
47 | 北海道 | 9.4 | 43.0 | -1.1% |