サマリー
2022年度の都道府県別薬局数(人口10万人当たり)調査で、佐賀県が63.8所(偏差値72.7)で全国1位となった。最下位は沖縄県の39.3所(偏差値26.7)で、両県の格差は1.6倍に達している。
地域の医療アクセスと薬物療法の充実度を測る重要な指標として注目される。上位県は九州・四国・中国地方に集中し、下位県は首都圏に多い傾向が見られた。この地域格差は住民の医療アクセスに直接影響する重要な課題だ。
概要
薬局数(人口10万人当たり)は、地域住民が薬物療法を受けられる医療体制の充実度を示す。この指標は医療アクセスの平等性、高齢化対応、地域医療の質を評価する上で重要だ。
全国平均は49.4所で、最上位と最下位の格差は24.5所の開きがある。地方部では高齢化に対応した医療体制が充実している一方、都市部では人口密度の高さが影響している。
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上位県・下位県の比較
上位5県の詳細分析
1位:佐賀県(63.8所)
佐賀県は63.8所(偏差値72.7)で全国トップに立った。高齢化率の高さと地域密着型医療体制の充実が要因だ。県内の薬剤師会と医師会の連携も強く、地域包括ケアシステムが機能している。
主な特徴:
- 在宅医療支援薬局の整備が進んでいる
- 薬剤師の地域定着率が高い
- 医療機関との連携体制が充実
2位:山口県(59.9所)
山口県は59.9所(偏差値65.4)で2位となった。中山間地域が多く、地域医療を支える薬局の役割が重要視されている。県の薬局機能強化事業も効果を上げている。
特徴的な取り組み:
- へき地医療支援薬局の配置
- ICTを活用した服薬指導システム
- 薬剤師の研修体制充実
3位:高知県(59.6所)
高知県は59.6所(偏差値64.8)で3位に位置する。全国トップクラスの高齢化率に対応した医療体制が整っている。かかりつけ薬局の普及率も高い水準だ。
主な強み:
- 24時間対応薬局の充実
- 在宅訪問服薬指導の普及
- 多職種連携の推進
4位:山梨県(59.0所)
山梨県は59.0所(偏差値63.7)で4位となった。県土の8割が山地で交通アクセスが限られる中、住民の利便性を重視した薬局配置が行われている。
特色ある施策:
- 山間地域への薬局誘致支援
- 調剤業務の効率化推進
- 薬学生の地域実習強化
5位:香川県(58.2所)
香川県は58.2所(偏差値62.2)で5位にランクイン。コンパクトな県土を活かした効率的な医療提供体制が構築されている。災害時の医薬品供給体制も整備済みだ。
注目ポイント:
- 県内どこからでも30分でアクセス可能
- 電子お薬手帳の普及率が高い
- 薬局間の情報共有システム完備
下位5県の詳細分析
43位:奈良県(43.9所)
奈良県は43.9所(偏差値35.4)で43位となった。大阪のベッドタウン化が進み、県外医療機関への依存度が高い。県内薬局の機能強化が課題となっている。
主な課題:
- 薬剤師の県外流出
- 南部地域での薬局不足
- 夜間・休日対応の不足
44位:埼玉県(43.0所)
埼玉県は43.0所(偏差値33.7)で44位に位置する。人口増加に薬局整備が追いついていない状況だ。都心部への通院患者が多く、県内薬局利用率が低い。
改善すべき点:
- 人口に対する薬局数の不足
- 地域偏在の解消
- かかりつけ薬局の推進
45位:福井県(42.6所)
福井県は42.6所(偏差値32.9)で45位となった。人口減少が進む中、薬局の統廃合が進んでいる。効率的な薬局配置の見直しが求められている。
課題と対策:
- 薬局の集約化と機能強化
- へき地への薬剤師派遣
- オンライン服薬指導の活用
46位:千葉県(42.0所)
千葉県は42.0所(偏差値31.8)で46位に留まった。人口密度が高い地域での薬局不足が深刻だ。東京都内への患者流出も影響している。
解決策の方向性:
- 薬局の新規開設支援
- 薬剤師確保対策の強化
- 地域医療連携の推進
47位:沖縄県(39.3所)
沖縄県は39.3所(偏差値26.7)で最下位となった。離島が多く薬剤師確保が困難な状況が続いている。本土との格差是正が急務だ。
特有の課題:
- 離島での薬剤師不足
- 医薬品の輸送コスト高
- 台風等災害時の供給途絶
地域別の特徴分析
九州地方
九州地方は佐賀県(1位)を筆頭に上位にランクインする県が多い。高齢化に対応した地域医療体制の充実が特徴だ。長崎県(6位)、熊本県(8位)も上位に位置している。
地域の強み:
- 在宅医療支援薬局の普及
- 薬剤師の地域定着率が高い
- 医療機関との連携が密接
四国地方
高知県(3位)、香川県(5位)が上位を占めている。全国最高水準の高齢化率に対応した医療体制が整備されている。愛媛県(7位)、徳島県(9位)も全て上位圏内だ。
中国地方
山口県(2位)を中心に、地方部での薬局機能が充実している。中山間地域での医療アクセス確保に重点が置かれている。
関東地方
首都圏では薬局数が相対的に少ない傾向がある。埼玉県(44位)、千葉県(46位)が下位に位置し、人口増加に対応した薬局整備が課題だ。
社会的・経済的影響
最上位の佐賀県と最下位の沖縄県では1.6倍の格差が生じている。この格差は地域住民の医療アクセスに直接的な影響を与える重要な問題だ。
薬局数の不足による影響:
- 服薬指導機会の減少
- 医薬品の適正使用阻害
- 在宅医療支援体制の不備
- 災害時の医薬品供給不安
経済的な側面では、薬局不足地域では医療費の増加や生産性低下のリスクがある。適切な薬物療法が受けられないことで、重症化防止や早期治療の機会を逸する可能性が高まる。
対策と今後の展望
薬局不足地域では、薬剤師確保対策と薬局機能の強化が急務となっている。オンライン服薬指導の活用や薬局間連携システムの構築が有効な解決策だ。
具体的な改善策:
- 薬剤師の地域偏在解消
- ICTを活用した遠隔服薬指導
- 薬局の24時間対応体制整備
- かかりつけ薬局・薬剤師制度の推進
成功事例として、山口県のへき地医療支援薬局制度や香川県の県内薬局ネットワークシステムが注目されている。これらの取り組みを他県にも展開することで、全国的な格差縮小が期待される。
統計データの基本情報
統計分析の結果、全国平均49.4所に対して標準偏差は6.5所となっている。分布は比較的正規分布に近く、極端な外れ値は見られない。
中央値は48.7所で平均値とほぼ同じ水準だ。第3四分位(53.1所)と第1四分位(45.2所)の差は7.9所で、地域間のばらつきは中程度といえる。
最大値と最小値の差は24.5所で、全国での格差は約1.6倍に及んでいる。この格差は地理的条件や人口構造の違いを反映したものだが、医療アクセスの観点からは是正が必要な水準だ。
まとめ
2022年度の薬局数(人口10万人当たり)ランキングから、以下の重要な知見が得られた:
- 佐賀県が63.8所で全国1位、地域医療体制の充実が評価された
- 九州・四国地方が上位を占め、高齢化対応が進んでいる
- 首都圏では薬局不足が深刻で、沖縄県は39.3所で最下位
- 最大格差は1.6倍に達し、医療アクセスの地域格差が顕在化
- オンライン服薬指導など新技術の活用が格差解消の鍵
今後は薬剤師の地域偏在解消とICT活用による効率化が重要になる。継続的なモニタリングにより、全国民が等しく質の高い薬物療法を受けられる体制整備を進めることが求められている。