2022年度の都道府県別身体障害者更生相談所取扱実人員(人口千人当たり)のランキングを分析します。このデータは、身体に障害のある人々が、専門的な相談や支援をどの程度利用しているかを示す指標であり、各地域の福祉サービスのアクセス性や積極性を反映しています。
概要
身体障害者更生相談所は、補装具の判定や、自立支援医療の提供、専門的な相談など、身体障害者の社会復帰を支援するための重要な拠点です。この施設の取扱実人員が多いということは、それだけ多くの人が専門的な支援を求めている、あるいは、自治体が積極的に利用を促していることを示唆します。この数値は、単に障害者の数だけでなく、福祉制度の運用実態や、地域住民の制度への認知度なども影響する複雑な指標です。
ランキング表示
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングで取扱実人員が多かったのは、地理的な特性や、独自の福祉文化を持つ県が目立ちました。
沖縄県
沖縄県は、人口千人当たりの取扱実人員が8.06人(偏差値84.5)で、全国で最も高い数値となりました。離島が多く、専門的な医療やリハビリテーションへのアクセスが限られるため、更生相談所の役割が非常に重要になっていると考えられます。
山梨県
山梨県は7.18人(偏差値79.1)で2位にランクインしました。県として、障害者支援に力を入れており、相談しやすい体制が整っていることが、高い利用率につながっている可能性があります。
高知県
高知県は6.91人(偏差値77.4)で3位でした。高齢化率が全国で最も高い県の一つであり、加齢に伴う身体機能の低下から、更生相談所を利用する人が多いと推測されます。
新潟県
新潟県は5.2人(偏差値66.9)で4位です。広大な県域を持つため、各地域に相談窓口を設け、住民がアクセスしやすい環境を整備していることが、この結果につながっているのかもしれません。
石川県
石川県は3.67人(偏差値57.4)で5位に入りました。伝統的に地域コミュニティのつながりが強く、福祉サービスに関する情報が行き渡りやすいことも、利用率の高さに影響していると考えられます。
下位5県の詳細分析
取扱実人員が少なかったのは、大都市圏やその周辺の県でした。これらの地域では、民間のリハビリテーション施設などが充実しており、公的な相談所以外の選択肢が多いことも一因と考えられます。
茨城県
茨城県は0.69人(偏差値39.0)で44位です。首都圏に隣接し、比較的若い人口構成であることが、利用率の低さにつながっている可能性があります。
福井県
福井県は0.62人(偏差値38.5)で45位でした。家族のサポート体制が手厚い地域性も、公的な相談機関の利用率に影響しているかもしれません。
埼玉県
埼玉県は0.54人(偏差値38.1)で46位です。人口が多い一方で、相談所の数が相対的に少なく、一人当たりの相談員が多くのケースを抱えているといった課題も考えられます。
三重県
三重県は0.44人(偏差値37.4)で最下位の47位となりました。更生相談所の存在や機能が、県民に十分に認知されていない可能性も指摘できます。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
身体障害者更生相談所の利用率の地域差は、障害を持つ人々の社会参加の機会に影響を与えます。利用率が高い地域では、専門的な支援を通じて、多くの人が就労や社会活動への復帰を果たしている可能性があります。これは、個人のQOL向上だけでなく、労働力の確保や社会保障費の抑制といった、社会経済的なメリットにもつながります。一方で、利用率が低い地域では、潜在的なニーズが埋もれてしまい、本来支援を受けられるはずの人々が、社会から孤立してしまう危険性があります。障害を持つ人々がその能力を最大限に発揮できる社会を築くためには、こうした支援へのアクセス格差をなくしていくことが不可欠です。
対策と今後の展望
身体障害者更生相談所の利用率を高め、地域差を是正するためには、まず相談所の存在と機能を広く住民に周知することが第一歩となります。自治体の広報誌やウェブサイト、SNSなどを活用した積極的な情報発信が求められます。また、相談所へのアクセスが困難な地域では、オンラインでの相談や、職員が地域に出向いていくアウトリーチ型の支援も有効です。さらに、医療機関やハローワーク、地域の障害者団体など、関連機関との連携を強化し、支援が必要な人を早期に発見し、適切なサービスにつなげるネットワークを構築することも重要です。今後は、一人ひとりの障害の特性やニーズに合わせた、より個別化された支援計画を作成・実行していくことが、更生相談所の重要な役割となるでしょう。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 2.5 |
中央値 | 2 |
最大値 | 8.06(沖縄県) |
最小値 | 0.44(三重県) |
標準偏差 | 1.6 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の身体障害者更生相談所取扱実人員ランキングは、各都道府県の障害者福祉に対する姿勢や、地域社会の特性を反映した結果となりました。沖縄県や山梨県のように、利用率が際立って高い地域がある一方で、大都市圏を中心に低い数値にとどまる県も多く、その差は歴然としています。このデータは、すべての障害者が、どこに住んでいても必要な支援を受け、その人らしく生きていける社会を実現するために、私たちが取り組むべき課題を示唆しています。制度の存在を知らせ、利用へのハードルを下げ、一人ひとりに寄り添った支援を届ける。そのための地道な努力が、今、求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 沖縄県 | 8.06 | 84.5 | -2.3% |
2 | 山梨県 | 7.18 | 79.1 | +9.4% |
3 | 高知県 | 6.91 | 77.4 | +46.7% |
4 | 新潟県 | 5.20 | 66.9 | +2.0% |
5 | 石川県 | 3.67 | 57.4 | -0.5% |
6 | 宮崎県 | 3.52 | 56.5 | -1.7% |
7 | 山形県 | 3.48 | 56.2 | +5.8% |
8 | 京都府 | 3.47 | 56.2 | +8.1% |
9 | 青森県 | 3.45 | 56.0 | +2.4% |
10 | 佐賀県 | 3.38 | 55.6 | -5.8% |
11 | 岩手県 | 3.36 | 55.5 | -0.6% |
12 | 栃木県 | 3.32 | 55.2 | -2.4% |
13 | 和歌山県 | 2.90 | 52.6 | +3.6% |
14 | 福岡県 | 2.84 | 52.3 | -8.4% |
15 | 長崎県 | 2.76 | 51.8 | +15.5% |
16 | 長野県 | 2.68 | 51.3 | -12.4% |
17 | 北海道 | 2.64 | 51.0 | +10.0% |
18 | 愛知県 | 2.54 | 50.4 | +0.8% |
19 | 山口県 | 2.50 | 50.2 | +4.2% |
20 | 鳥取県 | 2.49 | 50.1 | -3.1% |
21 | 広島県 | 2.47 | 50.0 | +2.1% |
22 | 富山県 | 2.23 | 48.5 | +0.9% |
23 | 静岡県 | 2.11 | 47.8 | -3.2% |
24 | 熊本県 | 2.02 | 47.2 | -9.8% |
25 | 滋賀県 | 1.91 | 46.5 | +1.6% |
26 | 大阪府 | 1.87 | 46.3 | +5.1% |
27 | 香川県 | 1.86 | 46.2 | -5.1% |
28 | 宮城県 | 1.84 | 46.1 | +7.0% |
29 | 秋田県 | 1.80 | 45.8 | +4.7% |
30 | 奈良県 | 1.75 | 45.5 | +6.7% |
31 | 徳島県 | 1.73 | 45.4 | -30.0% |
32 | 島根県 | 1.69 | 45.2 | -10.1% |
33 | 大分県 | 1.66 | 45.0 | -6.2% |
34 | 岡山県 | 1.54 | 44.2 | +3.4% |
35 | 鹿児島県 | 1.44 | 43.6 | - |
36 | 千葉県 | 1.43 | 43.6 | -1.4% |
37 | 兵庫県 | 1.39 | 43.3 | +3.0% |
38 | 福島県 | 1.35 | 43.1 | +5.5% |
39 | 岐阜県 | 1.23 | 42.3 | -6.1% |
40 | 神奈川県 | 1.19 | 42.1 | +12.3% |
41 | 東京都 | 1.17 | 41.9 | +1.7% |
42 | 愛媛県 | 1.12 | 41.6 | - |
43 | 群馬県 | 0.78 | 39.5 | +6.8% |
44 | 茨城県 | 0.69 | 39.0 | -5.5% |
45 | 福井県 | 0.62 | 38.5 | -6.1% |
46 | 埼玉県 | 0.54 | 38.1 | +3.9% |
47 | 三重県 | 0.44 | 37.4 | - |