2023年度の都道府県別人口増減率において、東京都が0.34%で全国1位、秋田県が-1.75%で最下位となり、2.09ポイントの格差が存在しています。人口増減率は前年と比較した人口の変化率を示す指標で、自然増減(出生と死亡の差)と社会増減(転入と転出の差)の両方を反映し、地域の活力や持続可能性を測る重要な人口統計指標です。全国平均は約-0.78%となっており、全国47都道府県のうち人口が増加しているのは東京都のみで、残り46道府県は全て人口減少となっています。この深刻な人口減少は地域経済、社会インフラ、地域コミュニティに大きな影響を与え、地方創生と人口維持策の重要性を浮き彫りにしています。
概要
人口増減率とは、前年と比較した人口の変化率を示す指標で、地域の人口動態と社会経済の活力を客観的に評価する重要な人口統計指標です。この指標は自然増減(出生数と死亡数の差)と社会増減(転入数と転出数の差)の両方を反映しています。
人口増減率が重要な理由として、地域の持続可能性を直接的に示すことがあります。プラスの値は人口が増加していることを、マイナスの値は人口が減少していることを示し、地域の将来性を評価する基礎データとなります。
地域の活力と魅力度を測定でき、雇用機会、生活環境、教育・医療サービスの充実度などの総合的な地域力を反映します。経済成長の基盤となる労働力人口の動向を把握でき、地域経済の将来性を予測する重要な指標となります。
行政サービスの需要予測に活用でき、インフラ整備、教育施設、医療施設の計画策定に不可欠なデータです。少子高齢化の進行度を評価でき、出生率の低下と高齢化の影響を総合的に把握できます。
地方創生政策の効果測定に重要で、移住促進、産業振興、子育て支援などの政策効果を客観的に評価する指標として機能します。
2023年度の全国平均は約-0.78%となっています。東京都が0.34%で1位、沖縄県が-0.02%で2位という結果になりました。全国で人口が増加しているのは東京都のみで、深刻な人口減少社会の実態が明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
東京都(1位)
東京都は0.34%(偏差値75.3)で全国唯一の人口増加を実現しました。日本の政治・経済・文化の中心地として、全国から人口を吸引する強力な求心力を持っています。
政府機関、大企業本社、金融機関の集積により、多様で豊富な雇用機会が提供されています。高等教育機関の集積により、進学を機とした若年層の流入が継続しています。交通網の発達と都市機能の高度集積により、利便性の高い生活環境が実現されています。コロナ禍による一時的な人口流出から回復し、経済活動の再開とともに人口流入が復活しています。
沖縄県(2位)
沖縄県は-0.02%(偏差値67.4)で2位となりました。全国で最も高い出生率と独特の地域魅力により、人口減少を最小限に抑制しています。
合計特殊出生率1.70(全国1位)の高い出生率により、自然増減が他県より有利な状況にあります。観光業を中心とした経済成長と雇用創出により、若年層の県外流出が抑制されています。温暖な気候と独自の文化・自然環境により、移住先としての魅力が高く評価されています。
神奈川県(3位)
神奈川県は-0.04%(偏差値67.0)で3位となりました。東京都のベッドタウン機能と独自の産業集積により、首都圏内での人口維持を実現しています。
東京都への通勤圏内でありながら、相対的に住宅コストが低く、住宅地としての需要が高いことが人口維持の要因となっています。横浜市、川崎市を中心とした京浜工業地帯では、重化学工業や先端技術産業が発達し、雇用機会を提供しています。
埼玉県(4位)
埼玉県は-0.08%(偏差値65.9)で4位となりました。東京都への通勤圏として住宅地開発が進み、ベッドタウン機能が高度に発達しています。
関東平野の平坦な地形により住宅地開発が容易で、東京都への交通アクセスの良さから継続的な人口流入があります。子育て環境の充実と住宅価格の相対的な安さにより、ファミリー層の流入が継続しています。
千葉県・滋賀県(5位)
千葉県と滋賀県は-0.14%(偏差値64.6)で同率5位となりました。千葉県は東京都のベッドタウン機能、滋賀県は関西圏のベッドタウン機能により人口減少を抑制しています。
千葉県では東京ディズニーリゾートなどの観光資源と成田国際空港の国際拠点機能が地域経済を支えています。滋賀県では大阪府や京都府への通勤圏として機能し、琵琶湖周辺の良好な住環境が評価されています。
下位5県の詳細分析
秋田県(47位)
秋田県は-1.75%(偏差値29.6)で最下位となりました。全国で最も深刻な人口減少に直面しており、高齢化と若年層流出の両面で厳しい状況にあります。
合計特殊出生率1.18(全国40位台)の低い出生率と高齢化率39.5%(全国1位)により、自然減が極めて深刻な状況です。若年層の県外流出が継続しており、進学・就職を機とした首都圏への人口移動が止まりません。第1次産業中心の産業構造により、多様な雇用機会の創出が困難な状況にあります。
青森県(46位)
青森県は-1.66%(偏差値31.5)で46位となりました。東北地方の中でも特に深刻な人口減少が進行しており、地域の持続可能性が危機的状況にあります。
農業・水産業中心の産業構造と若年層の県外流出により、労働力人口の減少が加速しています。厳しい気候条件と雇用機会の限定により、人口流出が継続しています。
岩手県(45位)
岩手県は-1.47%(偏差値35.7)で45位となりました。東日本大震災からの復興過程にありながら、人口減少の歯止めがかからない状況です。
県土の大部分を山地が占め、可住地面積が限られているため、人口集中地域が限定されています。第1次産業中心の産業構造と若年層の流出により、人口減少が継続しています。
山形県(44位)
山形県は-1.42%(偏差値36.8)で44位となりました。農業県としての特色を持ちながら、若年層の流出により人口減少が深刻化しています。
製造業の一定の集積があるものの、若年層の大都市圏への流出を食い止めるには至っていません。山間部を中心とした過疎化の進行により、地域コミュニティの維持が困難になっています。
高知県(43位)
高知県は-1.48%(偏差値35.8)で43位となりました。四国地方の中でも特に深刻な人口減少が進行しており、中山間地域の過疎化が顕著です。
県土の大部分を山地が占め、高知市周辺に人口が集中する一方、山間部では限界集落の増加が問題となっています。第1次産業中心の産業構造により、多様な雇用機会の創出が困難な状況です。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都0.34%が1位、神奈川県-0.04%が3位、埼玉県-0.08%が4位、千葉県-0.14%が5位と上位を独占しています。茨城県-0.53%、栃木県-0.63%、群馬県-0.58%は中位に位置しています。
首都圏への人口集中が極めて顕著で、特に東京都が全国唯一の人口増加を実現しています。東京都への通勤圏として機能する周辺県でも人口減少が最小限に抑制されており、首都圏一極集中の実態が明確に現れています。
関西地方
滋賀県-0.14%が5位と上位に位置する一方、大阪府-0.22%、京都府-0.59%、兵庫県-0.59%、奈良県-0.77%、和歌山県-1.22%と中位から下位に分布しています。
関西圏では大阪府を中心とした都市圏でも人口減少が進行しており、首都圏ほどの人口吸引力は見られません。滋賀県が比較的良好な数値を示しているのは、関西圏のベッドタウン機能と良好な住環境によるものです。
中部地方
愛知県-0.24%が8位と比較的上位に位置する一方、静岡県-0.75%、岐阜県-0.77%、三重県-0.86%、新潟県-1.25%、長野県-0.79%、山梨県-0.75%、石川県-0.81%、富山県-0.98%、福井県-1.20%と中位から下位に分布しています。
中京工業地帯の中心である愛知県が比較的良好な数値を示していますが、その他の県は中位から下位にとどまっており、地域内格差が大きいことが特徴です。
九州・沖縄地方
沖縄県-0.02%が2位と突出して良好な一方、福岡県-0.25%が9位、熊本県-0.52%が10位と比較的上位に位置しています。佐賀県-0.75%、長崎県-1.25%、大分県-0.99%、宮崎県-0.95%、鹿児島県-0.90%は中位から下位に分布しています。
沖縄県の高い出生率と地域魅力により、九州・沖縄地方では唯一の良好な数値を示しています。福岡県も九州経済の中心として比較的良好な数値を維持しています。
中国・四国地方
広島県-0.80%、岡山県-0.81%が中位に位置する一方、鳥取県-1.29%、島根県-1.22%、山口県-1.14%、徳島県-1.28%、香川県-0.86%、愛媛県-1.15%、高知県-1.48%は下位に集中しています。
中国・四国地方では全県で人口減少が進行しており、特に中山間地域を多く抱える県で深刻な状況となっています。広島県、岡山県の中核都市を持つ県でも人口減少の歯止めがかかっていません。
東北・北海道地方
宮城県-0.70%が16位と東北地方では最も良好な一方、秋田県-1.75%が47位、青森県-1.66%が46位、岩手県-1.47%が45位、山形県-1.42%が44位、福島県-1.28%が40位、北海道-0.93%が29位と全体的に厳しい状況です。
東北地方では仙台市を抱える宮城県を除き、全県で深刻な人口減少が進行しています。高齢化の進行と若年層の流出により、地域の持続可能性が危機的状況にあります。
社会的・経済的影響
1位東京都と47位秋田県の格差2.09ポイントは、地域間の人口動態に極めて大きな開きがあることを示しており、この格差は社会経済に深刻な影響を与えています。
地域経済への影響として、人口減少地域では消費市場の縮小、労働力不足、税収減少が深刻化しています。小売業やサービス業などの地域密着型産業の衰退が進み、これが更なる人口流出を招く悪循環に陥っています。
社会インフラへの影響では、人口減少地域でインフラ維持管理コストの住民一人当たり負担が増加し、行政の財政圧迫が深刻化しています。学校や病院、公共交通機関の統廃合が進み、住民の生活利便性が低下しています。
地域コミュニティへの影響として、若年層の流出により地域の担い手不足が深刻化し、伝統文化の継承や地域活動の維持が困難になっています。空き家の増加や耕作放棄地の拡大により、地域の景観と環境に悪影響が生じています。
対策と今後の展望
各都道府県では人口減少対策として様々な地方創生策が展開されています。移住促進、子育て支援、産業振興、交流人口・関係人口の拡大が主要な取り組みとなっています。
重要な取り組みとして、テレワークの普及による働き方改革により、居住地選択の自由度向上が期待されています。地方移住の促進と移住支援制度の充実により、田園回帰の動きを加速させる取り組みが進んでいます。
子育て支援の充実による出生率向上と、高等教育機関の地方分散による若年層の地元定着促進が重要です。地域産業の振興と新産業の創出により、多様な雇用機会の創出を図る必要があります。
成功事例として、沖縄県の高い出生率維持と地域魅力の活用、各地のUIターン促進策やサテライトオフィス誘致の取り組みが注目されています。ICT技術の活用による地域格差の解消と新たな働き方の普及が期待されています。
指標 | 値‰ |
---|---|
平均値 | -8.2 |
中央値 | -8 |
最大値 | 3.4(東京都) |
最小値 | -17.5(秋田県) |
標準偏差 | 4.6 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国の人口増減率の平均値は約-0.78%、中央値は約-0.79%となっており、ほぼ同じ値を示しています。これは多くの都道府県が中程度の人口減少率に分布していることを示しています。
標準偏差は約0.48ポイントで、比較的大きなばらつきを見せており、変動係数は約61.5%となっています。これは都道府県間の人口増減率に相当な地域差があることを統計的に裏付けています。
第1四分位数は約-1.14%、第3四分位数は約-0.52%で、四分位範囲は約0.62ポイントです。中央の50%の都道府県の人口増減率が-1.14%から-0.52%の間に収まっていることを示しています。
最高値と最低値の差は2.09ポイント(0.34%−(-1.75%))に達し、東京都と秋田県の間には極めて大きな格差が存在します。東京都が明確な上位群を形成している一方、東北地方の県が下位群を形成しており、地域間格差が統計的にも明確に現れています。
この分布パターンは、経済機会の地域差(雇用機会、所得水準)、出生率と高齢化率の地域差、教育・医療施設の集積度、交通インフラの発達度、生活環境と地域魅力度が複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2023年度の人口増減率分析により、日本の深刻な人口減少社会の実態が明らかになりました。
東京都が0.34%で全国唯一の人口増加を実現し、首都圏一極集中の深刻さを示しています。秋田県との間に2.09ポイントの格差があり、極端な地域差が存在します。全国47都道府県のうち46道府県で人口減少が進行しており、人口減少社会の深刻な実態が浮き彫りになっています。
東北地方で最も深刻な人口減少が進行しており、高齢化の進行と若年層の流出により地域の持続可能性が危機的状況にあります。関東地方では首都圏への人口集中が継続している一方、地方では産業構造の変化と雇用機会の不足により人口流出が加速しています。
地域経済への深刻な影響として、消費市場の縮小と労働力不足、税収減少による行政サービスの質的低下が生じています。社会インフラの維持困難と地域コミュニティの弱体化により、地域の持続可能性が根本的に脅かされています。
沖縄県の高い出生率維持と地域魅力の活用が成功事例として注目されており、他地域への応用が期待されています。テレワーク普及による働き方改革と地方移住促進、子育て支援の充実による出生率向上が重要な課題となっています。
今後は地方創生策の抜本的な強化と、ICT技術活用による地域格差解消が急務となっています。継続的なモニタリングにより、持続可能な地域社会の実現を図ることが重要です。人口減少社会に対応した新たな地域政策の展開により、地域の活力維持と住民の生活の質向上を両立させる取り組みが求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‰) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 3.4 | 75.3 | +70.0% |
2 | 沖縄県 | -0.2 | 67.4 | +100.0% |
3 | 神奈川県 | -0.4 | 67.0 | - |
4 | 埼玉県 | -0.8 | 66.1 | +60.0% |
5 | 千葉県 | -1.5 | 64.6 | - |
6 | 滋賀県 | -1.6 | 64.3 | +45.5% |
7 | 大阪府 | -2.2 | 63.0 | -18.5% |
8 | 愛知県 | -2.5 | 62.4 | -13.8% |
9 | 福岡県 | -2.6 | 62.1 | +73.3% |
10 | 茨城県 | -5.3 | 56.2 | +23.3% |
11 | 熊本県 | -5.5 | 55.8 | -3.5% |
12 | 京都府 | -5.7 | 55.4 | +26.7% |
13 | 栃木県 | -6.0 | 54.7 | -7.7% |
14 | 群馬県 | -6.0 | 54.7 | -13.0% |
15 | 兵庫県 | -6.0 | 54.7 | +9.1% |
16 | 宮城県 | -6.8 | 53.0 | +54.5% |
17 | 佐賀県 | -7.4 | 51.6 | +15.6% |
18 | 山梨県 | -7.5 | 51.4 | +74.4% |
19 | 岐阜県 | -7.5 | 51.4 | -2.6% |
20 | 静岡県 | -7.5 | 51.4 | +7.1% |
21 | 石川県 | -7.8 | 50.8 | +16.4% |
22 | 広島県 | -7.8 | 50.8 | +8.3% |
23 | 奈良県 | -7.9 | 50.6 | +9.7% |
24 | 長野県 | -8.0 | 50.3 | +23.1% |
25 | 岡山県 | -8.4 | 49.5 | +13.5% |
26 | 三重県 | -8.8 | 48.6 | +14.3% |
27 | 鹿児島県 | -8.9 | 48.4 | +2.3% |
28 | 香川県 | -9.1 | 47.9 | +4.6% |
29 | 北海道 | -9.3 | 47.5 | +13.4% |
30 | 大分県 | -9.5 | 47.1 | +39.7% |
31 | 富山県 | -9.6 | 46.8 | +10.3% |
32 | 宮崎県 | -9.6 | 46.8 | +14.3% |
33 | 福井県 | -11.2 | 43.3 | +12.0% |
34 | 鳥取県 | -11.4 | 42.9 | +25.3% |
35 | 愛媛県 | -11.6 | 42.5 | +6.4% |
36 | 山口県 | -12.1 | 41.4 | +14.2% |
37 | 新潟県 | -12.2 | 41.1 | +8.9% |
38 | 長崎県 | -12.5 | 40.5 | +17.9% |
39 | 和歌山県 | -12.7 | 40.1 | +12.4% |
40 | 島根県 | -12.7 | 40.1 | +20.9% |
41 | 徳島県 | -12.7 | 40.1 | +11.4% |
42 | 福島県 | -13.1 | 39.2 | +9.2% |
43 | 高知県 | -13.7 | 37.9 | +12.3% |
44 | 山形県 | -14.2 | 36.8 | +8.4% |
45 | 岩手県 | -14.7 | 35.7 | +11.4% |
46 | 青森県 | -16.6 | 31.5 | +19.4% |
47 | 秋田県 | -17.5 | 29.6 | +10.1% |