都道府県別人口増減率ランキング(2023年度)
概要
人口増減率とは、前年と比較した人口の変化率を示す指標です。この記事では、2023年度の都道府県別人口増減率のランキングを紹介します。
人口増減率は、自然増減(出生と死亡の差)と社会増減(転入と転出の差)の両方を反映しており、地域の活力や持続可能性を測る重要な指標となっています。プラスの値は人口が増加していることを、マイナスの値は人口が減少していることを示しています。
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
人口増減率が高い上位5県
2023年度の人口増減率ランキングでは、沖縄県が0.00%(偏差値67.6)で全国1位となりました。沖縄県は出生率の高さや若年層の流入などが人口維持の要因と考えられます。
2位は東京都で**-0.04**%(偏差値66.7)、3位は愛知県で**-0.13**%(偏差値64.7)、4位は埼玉県で**-0.19**%(偏差値63.4)、5位は千葉県で**-0.22**%(偏差値62.8)となっています。上位県には大都市圏の都府県が多く、経済的機会の豊富さや高等教育機関の集積などが人口流入の要因と考えられます。
人口増減率が低い下位5県
最も人口増減率が低かったのは秋田県で**-1.72**%(偏差値30.6)でした。秋田県は高齢化の進行や若年層の流出などが人口減少の要因と考えられます。
46位は青森県で**-1.66**%(偏差値31.9)、45位は岩手県で**-1.52**%(偏差値34.9)、44位は高知県で**-1.47**%(偏差値36.0)、43位は山形県で**-1.44**%(偏差値36.6)となっています。下位県には東北地方や中山間地域を抱える県が多く、産業構造の変化や雇用機会の不足などが人口流出の要因と考えられます。
地域別の特徴分析
東北地方の深刻な人口減少
東北地方では、秋田県(47位、-1.72%)、青森県(46位、-1.66%)、岩手県(45位、-1.52%)、山形県(43位、-1.44%)、福島県(41位、-1.28%)と、5県が全国ワースト10に入る深刻な人口減少を示しています。一方、宮城県(16位、-0.70%)は東北地方では比較的人口減少率が低くなっています。
東北地方の深刻な人口減少の背景には、高齢化の進行による自然減(死亡数が出生数を上回る状態)と、若年層の大都市圏への流出による社会減の両方があります。特に、高校・大学卒業時の若年層の流出が顕著で、進学や就職を機に東京圏や仙台市などの大都市へ移動する傾向が強くなっています。また、第一次産業の衰退や製造業の海外移転などによる雇用機会の減少も、人口流出の要因となっています。
宮城県が比較的人口減少率が低い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として、周辺地域からの人口流入があり、これが県全体の人口減少率を抑える要因となっています。
関東・甲信越地方の二極化
関東・甲信越地方では、東京都(2位、-0.04%)、埼玉県(4位、-0.19%)、千葉県(5位、-0.22%)、神奈川県(6位、-0.24%)と首都圏の都県が上位を占める一方、茨城県(24位、-0.85%)、栃木県(25位、-0.86%)、群馬県(26位、-0.87%)、新潟県(37位、-1.13%)、長野県(33位、-1.01%)は中位から下位に位置しています。
首都圏の都県が比較的人口減少率が低い理由としては、経済的機会の豊富さや高等教育機関の集積、交通インフラの充実などが挙げられます。特に東京都は、コロナ禍による一時的な人口流出があったものの、経済活動の再開とともに人口流入が回復傾向にあります。また、埼玉県、千葉県、神奈川県は東京都のベッドタウンとしての役割も果たしており、住宅価格の相対的な安さや子育て環境の良さなどから、ファミリー層の流入が見られます。
一方、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県などは、首都圏からやや離れた地域であり、若年層の流出や高齢化の進行による人口減少が進んでいます。特に、中山間地域や農村部では人口減少が顕著であり、地域の持続可能性が課題となっています。
中部・北陸地方の多様な状況
中部・北陸地方では、愛知県(3位、-0.13%)が比較的人口減少率が低い一方、富山県(36位、-1.12%)、石川県(22位、-0.83%)、福井県(35位、-1.09%)、山梨県(34位、-1.04%)、岐阜県(31位、-0.97%)、静岡県(27位、-0.88%)、三重県(23位、-0.84%)は中位から下位に位置しています。
愛知県が比較的人口減少率が低い理由としては、名古屋市を中心とした経済圏の存在や、自動車産業をはじめとする製造業の集積などが挙げられます。特に、トヨタ自動車を中心とした自動車産業は、関連企業も含めて多くの雇用を生み出しており、これが人口維持の要因となっています。
一方、富山県、石川県、福井県などの北陸地方や、山梨県、岐阜県などの中部地方の県は、製造業を中心とした産業基盤はあるものの、若年層の大都市圏への流出や高齢化の進行による人口減少が進んでいます。特に、中山間地域や過疎地域では人口減少が顕著であり、地域の活力低下が課題となっています。
近畿地方の都市部と地方の格差
近畿地方では、大阪府(7位、-0.31%)、京都府(13位、-0.61%)、兵庫県(14位、-0.63%)、滋賀県(12位、-0.59%)、奈良県(20位、-0.77%)が中位から上位に位置する一方、和歌山県(40位、-1.26%)は下位に位置しています。
大阪府、京都府、兵庫県など関西の都市部が比較的人口減少率が低い理由としては、経済的機会の豊富さや高等教育機関の集積、交通インフラの充実などが挙げられます。特に大阪府は、関西経済の中心地として多くの企業が集積しており、これが人口維持の要因となっています。また、滋賀県や奈良県は大阪府や京都府のベッドタウンとしての役割も果たしており、住環境の良さなどから一定の人口流入があります。
一方、和歌山県は、若年層の大都市圏への流出や高齢化の進行による人口減少が進んでいます。特に、中山間地域や過疎地域では人口減少が顕著であり、地域の持続可能性が課題となっています。
中国・四国地方の人口減少
中国・四国地方では、広島県(15位、-0.67%)、岡山県(17位、-0.71%)が比較的人口減少率が低い一方、鳥取県(38位、-1.14%)、島根県(42位、-1.31%)、山口県(39位、-1.25%)、徳島県(32位、-0.99%)、香川県(21位、-0.82%)、愛媛県(28位、-0.90%)、高知県(44位、-1.47%)は中位から下位に位置しています。
広島県、岡山県が比較的人口減少率が低い理由としては、広島市、岡山市という中国地方の中核都市を有していることが挙げられます。これらの都市は、周辺地域からの人口流入があり、これが県全体の人口減少率を抑える要因となっています。
一方、鳥取県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県などは、若年層の大都市圏への流出や高齢化の進行による人口減少が進んでいます。特に、中山間地域や過疎地域では人口減少が顕著であり、地域の活力低下が課題となっています。高知県は特に人口減少率が高く、全国ワースト4位となっています。
九州・沖縄地方の明暗
九州・沖縄地方では、沖縄県(1位、0.00%)、福岡県(8位、-0.32%)が上位に位置する一方、佐賀県(19位、-0.75%)、長崎県(39位、-1.25%)、熊本県(10位、-0.52%)、大分県(32位、-0.99%)、宮崎県(30位、-0.95%)、鹿児島県(28位、-0.90%)は中位から下位に位置しています。
沖縄県が全国1位の人口増減率を示している理由としては、高い出生率(全国1位の合計特殊出生率1.70)や、観光業を中心とした経済成長、温暖な気候や独自の文化などによる移住者の増加などが挙げられます。また、福岡県も九州経済の中心地として多くの企業が集積しており、これが人口維持の要因となっています。
一方、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県などは、若年層の大都市圏への流出や高齢化の進行による人口減少が進んでいます。特に、長崎県は九州地方で最も人口減少率が高く、全国でも下位に位置しています。熊本県は2016年の熊本地震からの復興需要などもあり、九州地方では比較的人口減少率が低くなっています。
人口増減率の格差がもたらす影響と課題
地域経済への影響
人口減少は地域経済に様々な影響を与えます。消費市場の縮小、労働力不足、税収減少などが主な影響として挙げられます。特に、人口減少率が高い地域では、小売業やサービス業などの地域密着型産業の衰退が進み、これが更なる人口流出を招くという悪循環に陥る可能性があります。
例えば、秋田県(47位、-1.72%)では、人口減少に伴い小売店の閉店や公共交通機関の縮小などが進んでおり、これが生活利便性の低下を招き、更なる人口流出につながっています。一方、東京都(2位、-0.04%)や愛知県(3位、-0.13%)などの大都市圏では、人口集中により経済活動が活発化し、これが雇用創出や所得向上につながるという好循環が生まれています。
社会インフラの維持と行政サービス
人口減少は社会インフラの維持や行政サービスの提供にも大きな影響を与えます。人口減少率が高い地域では、インフラの維持管理コストが住民一人当たりで見ると増加し、行政の財政負担が重くなります。また、学校や病院、公共交通機関などの統廃合が進み、住民の生活利便性が低下する可能性があります。
例えば、青森県(46位、-1.66%)や岩手県(45位、-1.52%)などの東北地方では、人口減少に伴い小中学校の統廃合が進んでおり、これが通学距離の増加や地域コミュニティの弱体化につながっています。また、医療機関の統廃合も進んでおり、医療アクセスの地域格差が拡大しています。
地域コミュニティの変容
人口減少は地域コミュニティの在り方にも大きな変化をもたらします。特に、若年層の流出が進む地域では、高齢化率が上昇し、地域の担い手不足や伝統文化の継承の困難さなどの課題が生じています。また、空き家の増加や耕作放棄地の拡大なども、地域の景観や環境に影響を与えています。
例えば、高知県(44位、-1.47%)や島根県(42位、-1.31%)などの中山間地域では、集落機能の低下や限界集落の増加が問題となっています。一方、沖縄県(1位、0.00%)や福岡県(8位、-0.32%)などの人口維持地域では、新たな住民の流入により地域コミュニティが活性化している例も見られます。
少子高齢化との関連
人口増減率は少子高齢化とも密接に関連しています。出生率の低下と高齢化の進行は、自然減(死亡数が出生数を上回る状態)をもたらし、これが人口減少の主要因となっています。特に、若年層の流出が進む地域では、出産適齢期の女性人口が減少し、これが更なる出生数の減少につながるという悪循環に陥る可能性があります。
例えば、秋田県(47位、-1.72%)の合計特殊出生率は1.18(全国40位)と低く、また高齢化率は39.5%(全国1位)と高くなっています。これに対し、沖縄県(1位、0.00%)の合計特殊出生率は1.70(全国1位)と高く、高齢化率も22.9%(全国47位)と低くなっています。このように、出生率と高齢化率は人口増減率と密接に関連しています。
地方創生と人口維持策
人口減少に対応するため、各地域では様々な地方創生策や人口維持策が展開されています。移住促進、子育て支援、産業振興、交流人口・関係人口の拡大などが主な取り組みとして挙げられます。特に、テレワークの普及により地方移住のハードルが下がったことから、「田園回帰」の動きも一部で見られるようになっています。
例えば、島根県(42位、-1.31%)では「しまね暮らし」推進プロジェクトを展開し、UIターン促進や子育て支援の充実などに取り組んでいます。また、徳島県(32位、-0.99%)では「とくしま回帰」プロジェクトを推進し、サテライトオフィスの誘致やテレワーカーの移住支援などに力を入れています。これらの取り組みにより、一部の地域では若年層の流入が見られるようになっています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2023年度の都道府県別人口増減率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
-
平均値と中央値の比較:平均値は約-0.91%、中央値は約-0.88%とほぼ同じ値を示していますが、秋田県(-1.72%)や青森県(-1.66%)という極端に低い値と沖縄県(0.00%)や東京都(-0.04%)という極端に高い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。
-
分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、秋田県(-1.72%)や青森県(-1.66%)という下側の外れ値があるため、わずかに負の歪み(左に裾を引いた形状)を示しています。
-
外れ値の特定:秋田県(-1.72%)は明らかな下側の外れ値と考えられます。また、沖縄県(0.00%)も上側の外れ値と考えられます。
-
四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約-1.13%、第3四分位数(Q3)は約-0.63%で、四分位範囲(IQR)は約0.50%ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の人口増減率が-1.13%から-0.63%の間に収まっていることを示しています。
-
標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.41%ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.41%ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値の絶対値)は約45.1%となり、相対的なばらつきは大きいと言えます。最高値と最低値の差は1.72%ポイント(0.00%−(-1.72%))に達し、沖縄県と秋田県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2023年度の都道府県別人口増減率ランキングでは、沖縄県が0.00%で1位、秋田県が-1.72%で47位となりました。上位には沖縄県、東京都、愛知県などの経済的機会が豊富な地域や出生率の高い地域が多く、下位には秋田県、青森県、岩手県などの東北地方や中山間地域を抱える県が多く見られました。
人口増減率の地域差は、経済的機会の差、出生率の差、高齢化の進行度合いの差、生活環境の差など様々な要素を反映しており、この差は地域経済や社会インフラ、地域コミュニティなど様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、秋田県が突出して低い人口増減率を示す一方、沖縄県が特に高い人口増減率を示していることがわかります。また、多くの都道府県は-1.13%から-0.63%の範囲に集中しており、中程度の人口減少率を示しています。
人口減少社会に対応するためには、地方創生策の推進、子育て支援の充実、産業振興、交流人口・関係人口の拡大など、多角的な取り組みが求められています。特に、沖縄県や福岡県などの成功事例に学び、地域の特性に応じた人口維持策を展開することが重要です。