都道府県別自動車損害賠償責任保険新契約保険料ランキング(2022年度)

はじめに

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車の所有者に加入が義務付けられている強制保険です。交通事故による被害者救済を目的とした社会保障制度の一環として機能しており、各都道府県の新契約保険料は、人口規模や車両台数、交通事情などを反映した重要な指標となります。

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上位県と下位県の比較

上位5県の詳細分析

1位 愛知県:自動車王国の圧倒的な保険料規模

愛知県530億5,546万円(偏差値78.9)で全国1位となっています。トヨタ自動車をはじめとする自動車産業の集積地である愛知県は、自動車保有台数が全国最多レベルであり、それに伴って自賠責保険の新契約保険料も圧倒的な規模となっています。製造業従事者の多さや通勤での自動車利用率の高さが、この数値に大きく影響しています。

2位 東京都:人口密度と経済活動の中心

東京都453億5,434万円(偏差値72.8)で2位に位置しています。日本最大の人口を擁する東京都では、人口密度は高いものの、業務用車両や法人車両の保有台数が多く、経済活動の活発さが自賠責保険料の高さに反映されています。

3位 埼玉県:首都圏のベッドタウン

埼玉県415億8,074万円(偏差値69.8)で3位となっています。首都圏のベッドタウンとして発展した埼玉県は、通勤や日常生活での自動車依存度が高く、人口に比例した自動車保有台数の多さが保険料の高さにつながっています。

4位 神奈川県:産業と住宅地の複合

神奈川県413億6,705万円(偏差値69.6)で4位に位置しています。横浜・川崎の工業地帯と湘南地域の住宅地を抱える神奈川県は、多様な自動車利用形態があり、それが保険料の高さに反映されています。

5位 大阪府:西日本の経済中心地

大阪府408億3,099万円(偏差値69.2)で5位となっています。西日本最大の経済圏である大阪府は、商業・サービス業の集積と高い人口密度により、自動車保有台数と保険料が高水準となっています。

下位5県の詳細分析

47位 島根県:人口減少と高齢化の影響

島根県39億8,255万円(偏差値40.1)で最下位となっています。人口減少と高齢化が進む島根県では、自動車保有台数の減少により、自賠責保険の新契約保険料も最も低い水準となっています。

46位 鳥取県:最小人口県の特徴

鳥取県43億500万円(偏差値40.4)で46位に位置しています。全国最小の人口を持つ鳥取県は、自動車保有台数も少なく、それに伴って保険料も低水準となっています。

45位 高知県:四国の地方部

高知県43億2,563万円(偏差値40.4)で45位となっています。人口減少が進む高知県では、自動車保有台数の減少により保険料も低い水準にあります。

44位 沖縄県:特殊な地理的条件

沖縄県52億3,661万円(偏差値41.1)で44位に位置しています。島嶼部という地理的特性により、本土とは異なる自動車利用パターンがあり、比較的低い保険料水準となっています。

43位 佐賀県:九州の地方部

佐賀県58億5,147万円(偏差値41.6)で43位となっています。人口規模が小さく、農業県的性格が強い佐賀県では、自動車保有台数も相対的に少なく、保険料も低水準です。

地域別の特徴分析

首都圏の高水準

首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)は全て上位に位置し、特に埼玉県(3位)、神奈川県(4位)、千葉県(6位)は東京都(2位)に次ぐ高い保険料水準を示しています。これは人口集中と自動車依存の高さを反映しています。

中京圏の突出

愛知県が圧倒的な1位となっており、自動車産業の集積による影響が顕著に表れています。隣接する静岡県も10位と健闘しており、中京圏の自動車産業クラスターの影響が見て取れます。

関西圏の安定

大阪府(5位)、兵庫県(9位)が上位に位置し、関西圏の経済規模を反映した結果となっています。

地方部の低水準

中国・四国・九州の人口減少地域では、軒並み保険料が低水準となっており、特に島根県、鳥取県、高知県など人口規模の小さい県で顕著です。

格差と課題の考察

全国最高の愛知県(530億5,546万円)と最低の島根県(39億8,255万円)では、約13.3倍の格差があります。この格差は単純な人口差を超えた構造的な要因を示しています。

自動車産業の集積地域と地方部では、自動車に対する依存度や利用形態に大きな違いがあり、それが保険料の地域格差として表れています。人口減少が進む地方部では、今後さらに保険料が減少する可能性があり、保険制度の持続可能性についても検討が必要な状況です。

また、首都圏や中京圏などの大都市圏では、交通渋滞や駐車場不足などの課題がある一方で、自動車への依存度は依然として高く、保険料の高水準が続くと予想されます。

統計データの基本情報と分析

統計分析の結果、平均値は約170億円、中央値は約142億円となっており、平均値が中央値を上回っていることから、一部の大都市圏が全体の数値を押し上げる右裾の長い分布となっています。

標準偏差は約128億円と大きく、都道府県間のばらつきが相当大きいことが分かります。特に愛知県、東京都、埼玉県などの上位県が外れ値的に高い数値を示しており、これらの県を除くと分布はより正規分布に近くなります。

四分位範囲を見ると、第1四分位(約84億円)から第3四分位(約241億円)まで約157億円の幅があり、中位の県でも大きな格差が存在することが確認できます。この分析結果は、日本の地域間格差と自動車依存度の違いを明確に示しています。

まとめ

2022年度の都道府県別自動車損害賠償責任保険新契約保険料ランキングは、各地域の人口規模、経済活動、自動車産業の集積度、そして自動車依存度を如実に反映した結果となりました。

愛知県の圧倒的な1位は自動車王国としての地位を明確に示しており、首都圏各県の上位入りは大都市圏の自動車需要の高さを表しています。一方で、人口減少が進む地方部では保険料も低水準となっており、地域間格差の拡大が懸念されます。

今後、自動車の電動化や自動運転技術の普及、さらには人口減少の進行により、この傾向にも変化が生じる可能性があり、継続的な動向注視が必要です。

出典