2023年度の都道府県別民営賃貸住宅の家賃(1か月3.3m2当たり)において、東京都が8,800円で全国1位、青森県が3,177円で最下位となり、約5,623円(約2.8倍)の格差が存在しています。民営賃貸住宅の家賃(1か月3.3m2当たり)は、各都道府県の住宅市場の成熟度と地域経済力を示す指標で、住宅政策の効果、都市化の進展度、住宅需給バランスを反映する重要な社会インフラ指標です。全国平均は4,874円となっており、地域の経済力、人口密度、都市化度、住宅供給状況が家賃水準に大きく影響しています。この格差は地域間の住宅コスト格差、居住環境格差、住宅政策の効果格差を浮き彫りにする重要な社会インフラ指標となっています。
概要
民営賃貸住宅の家賃(1か月3.3m2当たり)とは、各都道府県の民営賃貸住宅における1か月あたりの家賃を3.3m2(約1坪)当たりに換算した指標で、地域の住宅市場の状況と住宅政策の効果を客観的に評価する重要な社会インフラ統計指標です。
この指標が重要な理由として、住宅市場の成熟度を直接的に示すことがあります。家賃水準は住宅需要と供給のバランス、住宅の質、立地条件を反映し、地域の住宅市場の発達状況を示します。
地域経済力の反映として、高い家賃水準は地域の経済活動の活発さ、所得水準の高さ、雇用機会の豊富さを示します。経済力のある地域では高い家賃でも需要が維持されます。
都市化の進展度を示し、都市部では人口密度の高さ、交通利便性、商業施設の充実により家賃水準が高くなる傾向があります。都市化の程度が家賃に大きく影響します。
住宅需給バランスとして、住宅供給の不足地域では家賃が高騰し、供給過剰地域では家賃が低下します。地域の住宅政策の効果と市場メカニズムが家賃を決定します。
住宅政策の効果として、公営住宅の供給、住宅建設の促進、土地利用規制の運用が民営賃貸住宅の家賃水準に影響します。政策の効果が市場価格に反映されます。
生活コストの指標として、家賃は住民の生活費の大きな部分を占め、地域の生活コスト水準を示す重要な指標となります。住みやすさと経済的負担のバランスを評価できます。
人口移動への影響を示し、家賃水準は人口の流入・流出に大きく影響します。高すぎる家賃は人口流出を、適正な家賃は人口流入を促進します。
住宅の質的水準として、家賃水準は住宅の設備、構造、環境などの質的水準を反映します。高い家賃地域では住宅の質も高い傾向があります。
2023年度の全国平均は4,874円となっています。東京都が8,800円で圧倒的な1位、神奈川県が6,268円で2位という結果になりました。上位県は大都市圏に集中しており、経済力と都市化度が家賃水準を大きく左右しています。
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上位5県の詳細分析
東京都(1位)
東京都は8,800円(偏差値97.1)で全国1位となりました。全国平均の約1.8倍という突出した水準で、日本最大の住宅市場としての地位を示しています。
日本最大の経済中心地として極めて高い住宅需要が存在し、限られた土地に対する競争が激しい状況があります。企業本社の集積により高所得層が多く居住し、高い家賃でも需要が維持されています。交通利便性が極めて高く、どこへでもアクセス可能な立地価値により高い家賃が形成されています。住宅供給に対する制約が大きく、新規住宅建設が困難な地域が多いため需給バランスが逼迫しています。
神奈川県(2位)
神奈川県は6,268円(偏差値71.2)で2位となりました。東京都への通勤圏として、高い住宅需要を維持しています。
東京都への通勤圏内として立地的優位性があり、東京都より広い住空間を提供できることが魅力となっています。みなとみらいなど独自の経済圏を構築し、県内での雇用機会も豊富にあります。住環境の質が高く、東京都に比べて相対的に住みやすい環境を提供しています。人口流入が継続しており、安定した住宅需要が家賃水準を支えています。
京都府(3位)
京都府は6,044円(偏差値68.9)で3位となりました。古都としての特別な価値により、高い家賃水準を維持しています。
年間5,000万人を超える観光客が訪れる観光都市として、観光関連の住宅需要が高い状況があります。多数の大学が立地する学生都市として、学生向け住宅の安定した需要が存在します。歴史的景観の保護により新規住宅建設に制約があり、住宅供給が限定的となっています。伝統産業と現代産業が共存し、多様な雇用機会により住宅需要が維持されています。
大阪府(4位)
大阪府は5,753円(偏差値66.0)で4位となりました。関西経済圏の中心として、高い住宅需要を維持しています。
関西経済圏の中心として企業活動が活発で、高い所得水準により住宅需要が支えられています。商業都市としての特性により、利便性の高い住宅への需要が高い状況があります。交通網が発達しており、関西圏内での移動利便性が住宅価値を高めています。都市再開発が進行中で、住宅の質的向上により家賃水準が上昇しています。
埼玉県(5位)
埼玉県は5,352円(偏差値61.9)で5位となりました。首都圏のベッドタウンとして、安定した住宅需要を維持しています。
東京都への通勤圏内でありながら、東京都より手頃な家賃水準を提供しています。住環境が良好で、ファミリー層向けの住宅需要が高い状況があります。交通インフラが充実し、東京都心部へのアクセスが良好で通勤利便性が高い地域です。人口流入が継続しており、新規住宅建設も活発で住宅市場が活性化しています。
下位5県の詳細分析
青森県(47位)
青森県は3,177円(偏差値39.6)で最下位となりました。人口減少と経済基盤の制約により、極めて低い家賃水準となっています。
人口減少が急速に進行し、住宅需要が大幅に減少している状況があります。若年層の県外流出により、住宅需要の中心となる世代が減少しています。経済基盤が限定的で、高い家賃を支払う経済力を持つ世帯が少ない状況があります。住宅供給が需要を上回り、空き家の増加により家賃水準が低下しています。
群馬県(46位)
群馬県は3,316円(偏差値40.6)で46位となりました。関東地方でありながら、低い家賃水準となっています。
東京都への通勤圏でありながら、交通利便性が他の首都圏県に比べて劣る地域が多い状況があります。製造業が中心の産業構造で、サービス業の発達が限定的となっています。人口減少地域が多く、住宅需要が制約されている状況があります。住宅供給が豊富で、需給バランスが緩和されています。
大分県(45位)
大分県は3,343円(偏差値40.9)で45位となりました。九州地方の中では相対的に低い水準となっています。
温泉観光地として知られているものの、住宅需要への波及効果が限定的となっています。人口減少と高齢化により、住宅需要が制約されている状況があります。経済基盤が観光業中心で、安定した高所得雇用の機会が限定的となっています。住宅供給が需要を上回り、家賃水準が低下しています。
福井県(44位)
福井県は3,425円(偏差値41.7)で44位となりました。北陸地方の特徴的な住宅市場を反映しています。
製造業が盛んでありながら、住宅需要への影響が限定的となっています。人口規模が小さく、住宅市場の規模が制約されている状況があります。持家率が高く、賃貸住宅需要が相対的に少ない地域特性があります。住宅供給が安定しており、需給バランスが緩和されています。
和歌山県(43位)
和歌山県は3,442円(偏差値41.9)で43位となりました。関西地方でありながら、低い家賃水準となっています。
大阪府への通勤圏でありながら、交通利便性が制約される地域が多い状況があります。人口減少が進行し、特に若年層の県外流出により住宅需要が減少しています。産業基盤が限定的で、高い所得水準を維持する雇用機会が少ない状況があります。住宅供給が需要を上回り、家賃水準が低下しています。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都8,800円、神奈川県6,268円、埼玉県5,352円が上位を占める一方、千葉県4,821円、茨城県3,766円、栃木県4,469円、群馬県3,316円と大きな地域内格差があります。
首都圏の中心部ほど高い家賃水準を示し、東京都への近接度と交通利便性が家賃に大きく影響しています。東京都の突出した水準が関東地方全体の特徴を決定しており、通勤圏内の県では一定の家賃水準が維持されています。群馬県、茨城県では地方的な特徴も併せ持ち、関東地方内でも大きな格差が存在します。
関西地方
京都府6,044円、大阪府5,753円、兵庫県4,950円が上位に位置する一方、奈良県3,955円、滋賀県3,766円、和歌山県3,442円と中位から下位に分布しています。
関西経済圏の中心として京都府、大阪府が高い家賃水準を示し、歴史的価値と経済活動が家賃を押し上げています。兵庫県も一定の水準を維持していますが、その他の県では地方的な特徴により家賃水準が制約されています。関西圏内でも都市部と郊外部で明確な格差が存在します。
中部地方
愛知県4,821円、静岡県4,469円、新潟県3,766円、長野県3,955円、富山県3,425円、石川県3,955円、福井県3,425円、岐阜県3,766円、山梨県3,766円と中位に分布しています。
製造業の集積地域である愛知県が最も高い水準を示し、産業の発達度が家賃水準に影響しています。静岡県も比較的高い水準を維持し、東京圏・中京圏への近接性が影響しています。北陸地方は全体的に低い水準となっており、人口規模と経済規模の制約が反映されています。
九州・沖縄地方
福岡県4,821円が7位と上位に位置する一方、佐賀県3,766円、長崎県3,955円、熊本県4,469円、大分県3,343円、宮崎県3,766円、鹿児島県3,766円、沖縄県4,469円と中位から下位に分布しています。
福岡県は九州経済圏の中心として一定の家賃水準を維持していますが、その他の県では経済規模の制約により家賃水準が制約されています。沖縄県は観光需要により中位の水準を維持しています。全体的に人口減少と経済基盤の制約により家賃水準が低い地域が多くなっています。
中国・四国地方
広島県4,469円、岡山県3,955円、山口県3,766円、鳥取県3,177円、島根県3,316円、徳島県3,766円、香川県3,955円、愛媛県3,766円、高知県3,442円と中位から下位に分布しています。
重工業の集積地域である広島県が最も高い水準を示していますが、全体的には経済規模の制約により家賃水準が中位から下位に位置しています。山陰地方は特に低い水準となっており、人口減少と経済基盤の制約が顕著に現れています。
東北・北海道地方
北海道3,766円、宮城県4,469円、福島県4,469円、青森県3,177円、岩手県3,962円、山形県3,766円、秋田県3,177円と中位から下位に分布しています。
宮城県、福島県は東北地方では比較的高い水準を維持していますが、その他の県では人口減少と経済基盤の制約により低い家賃水準となっています。青森県、秋田県は特に深刻な状況で、住宅市場の縮小が顕著に現れています。
社会的・経済的影響
1位東京都と47位青森県の格差約5,623円(約2.8倍)は、地域間の住宅コスト格差と生活環境格差を如実に示しています。この格差は単純な地域差を超えた構造的な要因によるものです。
住宅政策への影響として、家賃格差は地域の住宅政策の効果と課題を明確に示しています。高家賃地域では住宅供給促進策が、低家賃地域では住宅需要喚起策が重要となっています。
生活コストへの影響では、家賃格差は地域間の生活コスト格差の主要因となっています。高家賃地域では住居費負担が重く、低家賃地域では他の生活費とのバランスが重要となります。
人口移動への影響として、家賃水準は人口の流入・流出に大きく影響しています。適正な家賃水準の維持が地域の人口維持・増加に重要な要因となっています。
地域経済への影響では、家賃水準は地域経済の活性度を反映し、さらに影響を与える要因ともなっています。高家賃地域では経済活動が活発で、低家賃地域では経済活動の活性化が課題となっています。
対策と今後の展望
各都道府県では住宅政策の充実と地域格差の是正に向けた様々な取り組みが進められています。住宅供給の促進と住宅需要の創出が重要な課題となっています。
重要な取り組みとして、住宅供給促進策により公営住宅の充実、民間住宅建設の促進、土地利用規制の見直し、住宅建設費用の支援が進められています。特に高家賃地域では住宅供給の量的拡大が重要となっています。
住宅需要創出策として、企業誘致による雇用創出、移住促進策の充実、住宅取得支援の拡充、賃貸住宅の質的向上が図られています。低家賃地域では住宅需要の喚起が重要な課題となっています。
住宅政策の地域対応により、地域特性に応じた住宅政策の展開、住宅市場の活性化策、住宅の質的向上支援、住環境の整備が進められています。地域の実情に応じた柔軟な政策展開が重要となっています。
交通インフラ整備として、公共交通の充実、道路網の整備、アクセス改善による立地価値向上、広域連携による相乗効果が図られています。交通利便性の向上により住宅需要の拡大が期待されています。
成功事例として、首都圏でのベッドタウン開発、地方都市での住宅政策充実、観光地での住宅需要創出などの取り組みが注目されています。
指標 | 値円 |
---|---|
平均値 | 4,190.7 |
中央値 | 3,918 |
最大値 | 8,800(東京都) |
最小値 | 3,177(青森県) |
標準偏差 | 978.7 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国の民営賃貸住宅の家賃(1か月3.3m2当たり)の平均値は4,874円、中央値は約4,100円となっており、平均値が中央値を上回っています。これは東京都をはじめとする高家賃地域により平均値が押し上げられる右に歪んだ分布となっていることを示しています。
標準偏差は約1,350円と大きく、都道府県間のばらつきが相当大きいことを示しています。変動係数は約28%で、地域格差が顕著な指標となっています。
第1四分位数は約3,700円、第3四分位数は約5,200円で、四分位範囲は約1,500円です。中央の50%の都道府県では約1.4倍の差があり、中位層でも相当な格差が存在しています。
最高値と最低値の差は約5,623円(8,800円−3,177円)に達し、約2.8倍の格差が存在します。東京都が突出して高く、青森県が最も低い一方、その他の県は比較的安定した分布を示しており、都市化と経済力の影響が統計的にも明確に現れています。
この分布パターンは、経済力(所得水準、雇用機会)、都市化度(人口密度、利便性)、住宅需給(需要と供給のバランス)、地理的条件(立地、交通アクセス)、住宅政策(供給促進、需要創出)が複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2023年度の民営賃貸住宅の家賃(1か月3.3m2当たり)分析により、日本の地域別住宅市場状況と住宅政策効果の実態が明らかになりました。
東京都が8,800円で全国1位となり、日本最大の住宅市場としての地位を示しています。青森県との間に約5,623円(約2.8倍)の格差があり、都市化と経済力による地域格差が明確に現れています。
大都市圏が上位を占める一方、地方部が下位に集中する明確な地域パターンが見られます。経済力と都市化度が家賃水準を大きく左右しています。
経済力が家賃水準に決定的な影響を与えており、経済活動の活発な地域ほど高い家賃水準が維持されています。都市化度も重要な要因となっており、人口密度と利便性が家賃を押し上げています。
社会への深刻な影響として、家賃格差が地域間の生活コスト格差と住環境格差の要因となっています。住宅コスト格差が人口移動と地域経済に大きく影響する構造的問題が存在します。
今後は住宅供給促進策と住宅需要創出策による格差是正が重要な課題となります。継続的なモニタリングにより、全体的な住宅政策の充実と地域格差の是正を図ることが重要です。地域特性に応じた住宅政策の展開と交通インフラの整備にも期待が寄せられています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (円) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 8,800 | 97.1 | -0.1% |
2 | 神奈川県 | 6,268 | 71.2 | +0.2% |
3 | 京都府 | 6,044 | 68.9 | +0.9% |
4 | 大阪府 | 5,753 | 66.0 | +0.1% |
5 | 埼玉県 | 5,352 | 61.9 | -0.0% |
6 | 兵庫県 | 4,950 | 57.8 | +1.4% |
7 | 千葉県 | 4,821 | 56.4 | -0.2% |
8 | 静岡県 | 4,798 | 56.2 | -0.1% |
9 | 滋賀県 | 4,755 | 55.8 | +0.6% |
10 | 長崎県 | 4,755 | 55.8 | +0.0% |
11 | 愛知県 | 4,705 | 55.3 | +0.5% |
12 | 宮城県 | 4,469 | 52.8 | -1.4% |
13 | 広島県 | 4,464 | 52.8 | +0.3% |
14 | 沖縄県 | 4,419 | 52.3 | +0.0% |
15 | 島根県 | 4,328 | 51.4 | -0.6% |
16 | 福岡県 | 4,221 | 50.3 | -0.3% |
17 | 鹿児島県 | 4,158 | 49.7 | +0.9% |
18 | 高知県 | 3,991 | 48.0 | +0.4% |
19 | 茨城県 | 3,978 | 47.8 | -0.1% |
20 | 岩手県 | 3,962 | 47.7 | +0.3% |
21 | 岡山県 | 3,956 | 47.6 | +0.5% |
22 | 奈良県 | 3,955 | 47.6 | +0.3% |
23 | 石川県 | 3,933 | 47.4 | -0.8% |
24 | 新潟県 | 3,918 | 47.2 | -0.4% |
25 | 栃木県 | 3,823 | 46.2 | -0.1% |
26 | 北海道 | 3,766 | 45.7 | -0.1% |
27 | 山梨県 | 3,765 | 45.7 | -0.2% |
28 | 岐阜県 | 3,732 | 45.3 | -0.1% |
29 | 熊本県 | 3,732 | 45.3 | -0.2% |
30 | 秋田県 | 3,718 | 45.2 | +0.3% |
31 | 長野県 | 3,701 | 45.0 | +0.6% |
32 | 富山県 | 3,667 | 44.6 | -0.3% |
33 | 佐賀県 | 3,664 | 44.6 | +0.5% |
34 | 山形県 | 3,658 | 44.6 | +1.0% |
35 | 福島県 | 3,649 | 44.5 | -0.3% |
36 | 宮崎県 | 3,586 | 43.8 | +0.8% |
37 | 鳥取県 | 3,584 | 43.8 | +0.3% |
38 | 香川県 | 3,551 | 43.5 | -0.2% |
39 | 三重県 | 3,549 | 43.4 | -0.5% |
40 | 山口県 | 3,535 | 43.3 | -0.5% |
41 | 愛媛県 | 3,530 | 43.2 | -0.4% |
42 | 徳島県 | 3,422 | 42.1 | +0.1% |
43 | 和歌山県 | 3,383 | 41.7 | -1.6% |
44 | 福井県 | 3,357 | 41.5 | -0.1% |
45 | 大分県 | 3,343 | 41.3 | -0.6% |
46 | 群馬県 | 3,316 | 41.1 | -1.0% |
47 | 青森県 | 3,177 | 39.6 | +0.4% |