概要
生産年齢人口とは、15歳から64歳までの人口を指し、労働力の中核を担う年齢層です。この記事では、2023年度の都道府県別生産年齢人口のランキングを紹介します。
生産年齢人口は、地域の経済活力や労働市場の規模を示す重要な指標であり、税収や社会保障制度の持続可能性にも大きく関わっています。少子高齢化が進む日本では、全国的に生産年齢人口の減少が課題となっていますが、その程度には地域差があります。
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上位県と下位県の比較
生産年齢人口が多い上位5県
2023年度の生産年齢人口ランキングでは、東京都が8,942,000人(偏差値100.0)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多くの企業や教育機関が集中していることから、若年層を中心に人口が集まっています。
2位は神奈川県で5,747,000人(偏差値77.9)、3位は大阪府で5,438,000人(偏差値75.7)、4位は愛知県で4,795,000人(偏差値71.2)、5位は埼玉県で4,582,000人(偏差値69.7)となっています。上位県はいずれも三大都市圏に位置しており、経済活動の集積と人口集中が顕著に表れています。
生産年齢人口が少ない下位5県
最も生産年齢人口が少なかったのは鳥取県で285,000人(偏差値41.7)でした。鳥取県は日本で最も人口が少ない県であり、若年層の流出や少子化の影響で生産年齢人口も少なくなっています。
46位は島根県で338,000人(偏差値42.0)、45位は高知県で362,000人(偏差値42.2)、44位は徳島県で368,000人(偏差値42.2)、43位は福井県で401,000人(偏差値42.4)となっています。下位県には中国地方や四国地方の県が多く、地方圏における若年層の流出と高齢化の進行が顕著に表れています。
地域別の特徴分析
三大都市圏と地方圏の格差
生産年齢人口の分布を見ると、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)と地方圏の間に大きな格差があることがわかります。東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県の上位5県だけで、全国の生産年齢人口の約3割を占めています。これは、経済活動や雇用機会、教育機関などが都市部に集中していることを反映しています。
地方中枢都市の状況
福岡県(7位)や宮城県(14位)など、地方の中枢都市を持つ県は比較的上位にランクしています。これらの県は、周辺地域から若年層を吸収する「ダム機能」を果たしており、地方における人口集中の拠点となっています。
北海道・東北地方の特徴
北海道は9位と比較的上位にランクしていますが、これは面積が広く、札幌市という大都市を有しているためです。一方、東北地方の県は中位から下位に分布しており、特に秋田県(40位)や山形県(37位)は低位にあります。これらの地域では、若年層の流出と高齢化が進行しています。
中部・北陸地方の状況
愛知県(4位)は自動車産業を中心とした製造業の集積地として高位にありますが、同じ中部・北陸地方でも富山県(38位)や福井県(43位)などは下位に位置しています。これらの県では、製造業の基盤はあるものの、若年層の流出が続いています。
近畿地方の二極化
大阪府(3位)や兵庫県(6位)は上位にランクしていますが、同じ近畿地方でも滋賀県(27位)や奈良県(29位)は中位、和歌山県(41位)は下位に位置しています。近畿地方内でも都市部と周辺部の格差が見られます。
中国・四国地方の低迷
中国・四国地方の県は総じて下位に集中しており、特に鳥取県(47位)、島根県(46位)、高知県(45位)、徳島県(44位)は最下位グループを形成しています。これらの地域では、若年層の流出が長期にわたって続いており、生産年齢人口の減少が著しくなっています。
九州・沖縄地方の多様性
九州・沖縄地方では、福岡県(7位)が突出して高位にある一方、佐賀県(42位)は下位に位置しています。福岡県は九州の経済・文化の中心として周辺県から若年層を集めている一方、周辺県では若年層の流出が続いています。沖縄県(24位)は出生率が高く、若年人口の割合が比較的高いことが特徴です。
生産年齢人口の格差が生み出す課題
地域経済への影響
生産年齢人口の地域格差は、地域経済の活力にも大きな影響を与えています。生産年齢人口が多い都市部では経済活動が活発である一方、少ない地方では労働力不足や消費市場の縮小が地域経済の停滞を招いています。
社会保障制度への影響
生産年齢人口の少ない地域では、高齢者を支える現役世代の負担が大きくなり、社会保障制度の持続可能性に課題が生じています。特に医療や介護のサービス提供体制の維持が困難になりつつある地域もあります。
インフラ維持の課題
生産年齢人口の減少は、道路や上下水道、公共施設などのインフラ維持にも影響を与えています。人口減少地域では、インフラの維持管理コストが住民一人当たりで見ると増加し、財政を圧迫する要因となっています。
地域コミュニティの変容
生産年齢人口の減少は、地域コミュニティの担い手不足にもつながっています。祭りや伝統行事の継承、自治会活動、消防団など、地域を支える活動の維持が難しくなっている地域が増えています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2023年度の都道府県別生産年齢人口データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約1,702,000人、中央値は約828,000人と大きく異なっています。これは、東京都や大阪府などの極端に高い値が平均値を引き上げているためで、データの分布が右に強く歪んでいることを示しています。
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分布の歪み:データは強い正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。多くの県が比較的少ない生産年齢人口である一方、少数の都府県が非常に多い値を示しています。
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外れ値の特定:東京都(8,942,000人)、神奈川県(5,747,000人)、大阪府(5,438,000人)は、他の都道府県と比べて特に高い値を示しており、統計的に見ると外れ値と考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約474,000人、第3四分位数(Q3)は約1,352,000人で、四分位範囲(IQR)は約878,000人です。これは、中央の50%の都道府県の生産年齢人口が474,000人から1,352,000人の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約1,800,000人で、平均値(1,702,000人)と比較すると非常に大きな値となっています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約106%となり、相対的なばらつきが極めて大きいことを示しています。これは、都道府県間の生産年齢人口に極めて大きな地域差があることを統計的に裏付けています。
まとめ
2023年度の都道府県別生産年齢人口ランキングでは、東京都が8,942,000人で1位、鳥取県が285,000人で47位となりました。上位には三大都市圏の都府県が、下位には中国・四国地方の県が多く見られました。
生産年齢人口の地域差は、経済機会の地域差、教育機関の集積、交通インフラの発達、産業構造の違い、生活環境の魅力など様々な要因によって生じており、この差は地域経済の活力、社会保障制度の持続可能性、インフラ維持の課題、地域コミュニティの変容など多方面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の生産年齢人口に極めて大きなばらつきがあり、最多地域と最少地域の差は約31倍(8,942,000人÷285,000人)に達することがわかります。この極めて大きな地域差は、日本の人口分布の不均衡を示すとともに、地方創生や国土の均衡ある発展の難しさを物語っています。
少子高齢化が進む日本において、生産年齢人口の確保は全国共通の課題ですが、その対応策は地域の特性に応じて異なるアプローチが必要です。都市部では生産性向上や女性・高齢者の労働参加促進、地方では若者の流出防止や移住促進など、地域の実情に合わせた取り組みが求められています。