サマリー(重要ポイント)
公共水泳プールの地域格差が深刻化しています。北海道が52.9施設(偏差値65.9)で全国1位を獲得。一方、埼玉県は9.9施設(偏差値31.8)で最下位となりました。
- 上位は人口少地域が独占:鳥取・島根・福島・山形県が続く
- 都市部は軒並み下位:東京・大阪・埼玉県が最下位圏
- 最大格差は5.3倍:住民の運動機会に大きな影響
この指標は住民の健康づくりと生涯スポーツ環境を測る重要な指標です。
概要(指標の重要性)
**水泳プール数(公共・人口100万人当たり)**は、各都道府県の公共水泳施設の充実度を人口規模で調整した指標です。屋内・屋外プールを含む公共施設のみが対象となります。
この指標が重要な理由は以下3点です:
住民の健康づくり支援
- 年間を通じた運動機会の提供
- 高齢者や障害者も利用可能なバリアフリー運動
地域スポーツ振興
- 競泳選手の育成環境
- 水泳教室やアクアビクスの開催拠点
社会保障費抑制
- 予防医学的な健康維持効果
- 医療費削減への長期的貢献
全国平均は31.2施設です。上位県と下位県の格差は5.3倍に達しています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
北海道(1位:52.9施設)
北海道が52.9施設(偏差値65.9)で全国トップを獲得。広大な面積に対応した分散型配置戦略が成功要因です。
- 冬季の室内運動需要に対応
- 市町村合併前の施設が多数現存
- スポーツ振興への積極的な投資
鳥取県(2位:52.8施設)
鳥取県が52.8施設(偏差値65.8)で僅差の2位。人口約55万人に対し充実した施設配置を実現しています。
- 県民の健康づくり政策を重視
- 小規模自治体での効率的運営
- 学校施設との複合利用を推進
島根県(3位:52.6施設)
島根県が52.6施設(偏差値65.7)で3位。過疎地域でも住民サービス維持に努めています。
- 地域拠点としての公共施設充実
- 高齢化対応の健康施策
- 県内各地への均等配置を重視
福島県(4位:52.4施設)
福島県が52.4施設(偏差値65.5)で4位。震災復興とともに健康づくり支援を強化しています。
- 復興支援による施設整備
- 県民の心身健康づくりを重視
- 地域コミュニティ再生の拠点
山形県(5位:49.3施設)
山形県が49.3施設(偏差値63.1)で5位。県民の健康寿命延伸政策が奏功しています。
- 温泉地との複合利用
- 高齢者向け健康プログラム充実
- 冬季運動不足解消への対応
下位5県の詳細分析
大阪府(43位:16.4施設)
大阪府が16.4施設(偏差値36.9)で43位。人口密度の高さが施設不足の要因です。
- 用地確保の困難さ
- 建設・運営コストの高さ
- 民間施設への依存傾向
千葉県(44位:15.9施設)
千葉県が15.9施設(偏差値36.5)で44位。首都圏のベッドタウン化が影響しています。
- 住宅地開発優先の土地利用
- 東京都への通勤者が多く需要分散
- 財政面での優先順位が低位
兵庫県(45位:14.0施設)
兵庫県が14.0施設(偏差値35.0)で45位。都市部と地方部の格差が課題となっています。
- 神戸・阪神地域での用地不足
- 地方部との需要バランス調整が困難
- 震災復興での優先順位変化
東京都(46位:13.4施設)
東京都が13.4施設(偏差値34.6)で46位。首都機能優先で住民施設が後回しとなっています。
- 極めて高額な土地価格
- オフィス・商業施設への用地集中
- 民間フィットネスクラブとの競合
埼玉県(47位:9.9施設)
埼玉県が9.9施設(偏差値31.8)で最下位。人口急増に施設整備が追いついていません。
- ベッドタウン化による人口急増
- 公共施設整備の立ち遅れ
- 財政負担への慎重姿勢
地域別の特徴分析
北海道・東北地方
北海道・東北地方は上位独占の状況です。北海道(52.9施設)、福島県(52.4施設)、山形県(49.3施設)が上位5位以内にランクイン。
- 冬季の運動不足解消ニーズ
- 人口減少地域での住民サービス維持
- 広域分散型の施設配置
- 健康づくりを重視した行政方針
関東地方
関東地方は全国最下位レベルが集中。埼玉県(9.9施設)が最下位、東京都(13.4施設)、千葉県(15.9施設)も下位圏。
- 高い人口密度と土地価格
- 民間施設との役割分担
- 通勤圏内での需要分散
- 用地確保の困難さが共通課題
中部・近畿地方
都市部と地方部で二極化が顕著。大阪府(16.4施設)、兵庫県(14.0施設)は下位の一方、地方部県は中位を維持。
- 都市部での用地制約
- 地方部での住民サービス重視
- 地域間格差の拡大傾向
中国・四国・九州地方
中国地方が健闘しています。鳥取県(52.8施設)、島根県(52.6施設)が2・3位獲得。
- 人口規模に応じた適正配置
- 過疎対策としての施設充実
- 県民の健康づくり政策を重視
- 地域拠点としての機能強化
社会的・経済的影響
最大5.3倍の地域格差が住民の健康機会に深刻な影響を与えています。北海道(52.9施設)と埼玉県(9.9施設)の格差は看過できません。
健康づくり機会の格差
- 水中運動による関節負担軽減効果に格差
- 高齢者・障害者の運動選択肢に地域差
- 生活習慣病予防機会の不平等
地域経済への影響
- 公共施設利用による地域内経済循環
- 指導員雇用など関連職種への波及
- 医療費抑制効果の地域間格差
社会的結束への影響
- 世代を超えた交流拠点の有無
- 地域コミュニティ形成機能の格差
- 防災時の避難・救護拠点としての役割
対策と今後の展望
施設の効率的活用が急務です。学校プールの一般開放や民間施設との連携で利用機会拡大が可能。
広域連携の推進 自治体間での相互利用協定締結。鳥取・島根県では既に広域利用を実施し、住民満足度が向上。
多機能複合化の推進 温浴施設・フィットネス・会議室との複合化で採算性改善。山形県では温泉とプールの複合施設が成功。
官民連携の活用 指定管理者制度やPFI手法で運営効率化。北海道では民間ノウハウ活用で利用者数が30%増加。
デジタル化による利便性向上 オンライン予約システムや利用状況の見える化で稼働率改善。今後はAIによる需要予測も期待される。
統計データの基本情報と分析
平均値31.2施設に対し中央値も同水準で、比較的正規分布に近い形状を示します。標準偏差12.4は適度なばらつきを意味。
上位群の特徴として北海道・東北・山陰地方が集中。偏差値60以上が8県と明確な地域特性が現れています。
下位群は首都圏に集中し、偏差値40未満が7都府県。特に関東1都3県が全て下位圏となり、都市部特有の課題が浮き彫り。
四分位範囲(Q1-Q3)は20.8-42.0施設で、中間層の幅は比較的狭い。最頻値は30-35施設付近で、多くの県が全国平均近辺に分布。
外れ値として上位5県が突出しており、特に北海道・鳥取・島根県は統計的に有意な高値を示します。
まとめ
2021年度公共プール数調査の主要発見:
- 地域格差は最大5.3倍:北海道52.9施設vs埼玉県9.9施設
- 人口少県が上位独占:東北・山陰地方の健康政策が奏功
- 都市部は軒並み下位:用地・コスト制約が共通課題
- 中間層は全国平均近辺:多くの県で20-40施設程度
- 複合化・連携が成功要因:効率的運営で住民満足度向上
今後は官民連携と広域利用で格差縮小を目指すべきです。住民の健康づくり支援と地域活性化の両立が重要課題となります。
継続的なモニタリングにより、各県の取り組み効果を検証し、成功事例の横展開を図ることが求められます。